衝撃の一夜、再び…今宵、あなたが目撃者になる~SUPER GUITAR SESSION
今日はすごいタイトルでしょう?
「一体どんな事件が起こってるんだッ!」って感じじゃん?
事件は会議室ではなくて、ライブハウスで起こった。
湯島というか、御徒町というか、上野広小路というか…「ファビュラス・ギターズ」というお店。
外人と話していて何かを褒めたたえる時、「magnificent」とか「splendid」とか「marvelous」とか「terrific」とか、なかなかナチュラルに口にできないよね。ノン・ネイティヴの英語学習者にとってはどうも大ゲサっぽくて恥ずかしい。
「fabulous」もそのうちのひとつ。
外人相手に一回も言ったことないな。
以前、ニューヨークのバードランドで敏子さんのオーケストラを観に行った時、Lew Tabackinのおっそろしく長いカデンツァがあった…いつものことだが。
真っ赤になって吹ききったLewに向かってひとりのお客さんが「Sensational!!」とたたえた。
カッコいいな~、こういう時に「sensational」という言葉を使うのか…と、私にとってはLewのカデンツァよりもそのお客さんの方がよっぽど「センセーショナル」だった。
こうして、英語圏に生まれた二歳児のように、ひとつひとつ英語を勉強しているんですわ。エライ時間がかかるわい。
そんなだから、私の場合、こういう類の言葉は相手がアメリカ人なら「great」一発。
イギリス人なら「lovely」か「brilliant」でだいたい済ませちゃう。その前に「bloody」を付ければ尚一層可愛がってもらえる。
さて、その「fabulous」。
ビートルズが「The Fab Four」、すなわち「fabulous four(メッチャすごい四人)」と呼ばれていたことをだいぶ後になって知った。「ゴレンジャー」みたい。
昔の職場の取り扱い商品のひとつに、ビートルズの曲のギターを教える輸入教則ビデオがあった。
不思議なことに、そのビデオのジャケットの解説には一切「The Beatles」という名前が出ていなかった。
代わりに「The Beatles」とするべきところの表記がすべて「The Fab Four」という言葉になっていた。
不思議に思って、このビデオを制作したアメリカの音楽出版社に確認したところ、権利関係の問題があって「The Beatles」という名前が使えないということだった。(ちなみにこの問い合わせ先はRed Hot Chilli PeppersのChad Smithのお兄さん。この関係でウチの家族はレッチリの来日公演はいつでもどこでもVIP待遇だった。いい時代だった)
アメリカでは「The Fab Four」という言葉が一般的で、誰でもそれがビートルズのアダ名だということを知っているので何ら問題はないという。
ハテ、日本はどうしたものか?
私はこの時はもちろん、今の今までビートルズのことを「ファブ・フォー」と呼ぶ日本人に出会ったことがない。これだけドップリ音楽関係の人たちと仕事をしていても、ただの一度もない。
そのビデオの宣材物に果たして「ファブ・フォー」などと記していいものかどうか…コレには悩んだ。
どういう風にしたのかは残念ながら記憶にないが、それなりの忖度を図ったことは間違いない。
確か本国の意向に沿い「The Fab Four」という言葉を生かしたように思う。
他の「fabulous」といえば、後は「The Fabulous Thunderbirds」ぐらい?
ちなみに映画『荒野の七人』の原題は「The Magnificent Seven」だ。
このお店には今日のライブで初めてお邪魔させて頂いた。
お店の触れ込みは「Live Bar & Total Music Shop」。
そして売りはコレ…「お昼からお酒が呑める」って!
「誰でも気軽に演れる」って!
「夜でも楽器が買える」って!
店内では中古CDなんかも扱っていて「トータル・ミュージック・ショップ」の名に恥じない内容になっているのだ。
このあたりを眺めながら昼間っからイッパイやるってワケ。
展示品の前に柵がセットされているのは夜のライブハウス態勢に入っているから。
是方博邦
そうる透
透さん、お久しぶり!
是方さんはMarshall ASTORIA CLASSIC。
普段はJVM410Cをお使い頂くことが多いが、田川ヒロアキとの「これかたがわ」でASTORIA CLASSICを試して頂いて一発でお気に召して頂いた。
後ろに見えるのは1987Xと1960AX。
Fabulous Guitarsの機材。
渋い…そして、わかっていらっしゃる!
他にも1962Bluesbreakerをご用意頂いている。
あ、これからさんも1987Xのオーナーです。
ショウは是方さんのギターでスタート。
アレ?どっかで聴いた曲!
ホラ言わないこっちゃない!
The Fab Fourの「Here, There and Evrywhere」じゃないの。
大胆なアレンジ。
続いては杉本さんの曲。
Marshall Blogで何度も紹介している杉本さんの最近作『Tomorrow Land』から「Mark the Mobster」。
コレは「~the…」の用法。「…の~」を表す。
「Jack the ripper(切り裂きジャック)」、「Mack the knife(匕首マッキー)」とかあるでしょ。
「mobster」はいわゆる「そっち系の人」という意味。このあたり詳しく説明したいんだけどやめとく。この単語は辞書に出ているので興味のある人は調べてアル・カポネの生涯でも研究してください。
ちなみに「アル・カポネ」はそのまま発音しても絶対に英語圏に人には通じません。「アル・キャポーン」が正しい発音。
で、杉本さんは「マーク」さんというそっち系の人から「ワシのために一曲作ってくれんかいの~」と頼まれて書き上げたのがこの曲。だから「Marh the Mobster」。意味は「そっち系のマーク」。
『仁義なき戦い』のテーマとはほど遠い横乗りのゴキゲンな16ビート・ナンバー。
個性的な二人のギタリストを支えるリズム隊。
田中さんはT-SQUAREのサポート・ベーシストを務めている。
完璧なバックアップ。
曲の主旨を的確にくみ取って物語を編んでいく。
続いては是方さんの作品で「Pricia」。
Jeff Beckファンの是方さんらしい、ギター以外の楽器でテーマを弾くことが考えられないようなギター好きにはタマらないラブリーなナンバー。
今日はこうして杉本さんの作品と交互にチョイスしていく趣向だ。
それにしてもピッキングが個性的なお二人!
是方さんならではのサム・ピック。
弾きにくいそうだ…でも、コレが是方さんが確立した是方さんのスタイル。
コレで16ビートのカッティングもこなしちゃう。
ピックを使わない「ツー・フィンガー・ストローク」というオリジナル奏法。
弦を指板と平行にはじいて、アルアイレ奏法と同じ効果を作り出す。
実にウォームなサウンドだ。
このセッションは今回で二回目。
半年ほど前に杉本さんが是方さんをお誘いしたとのこと。
知らなかったんだけど、このお二人、十年ぐらい前はよくデュエットで一緒に舞台に上がっていたそうな。
今度は杉本曲。同じく『Tomorrow Land』から「はるかなる大地へ」。
一部の最後はBob Dylanの1971年のシングル「Watching the River Flow」。
私はこの曲を1978年にJoe Cockerのアルバム「Luxuary You Can Afford」で知った。
その後、Steve Gaddが『The Gadd Gang』というアルバムでこの曲を取り上げていて、Ronnie Cuberのバリトン・ソロが好きだった。
ちなみに『Luxuary You Can Afford』でドラムスを叩いているのはSteve Gaddだ。ギターもCornell Dupreeがかぶっている。
ところでこの曲、どうしても頭の中でThe Manhattan Transferの十八番「The Operator」とゴッチャになっちゃうんだよね。
コチラはSister Wynona Carrという人の1954年の「Operator,Operator」という曲がオリジナル。ゴスペル調の魅力的な曲だ。
Dylanは間違いなくこのWynonaの演奏を聴いていると思う。
昔、東京おとぼけキャッツでSteve Gaddのモノマネをされていた透さん!
「ガッド!ガッド!ガッド!ガッド!ガッド!」と乱れ打ちするのがカッコよくも面白かった。
おとぼけキャッツのものまねコーナーは「ジェフ・ベック先生」とか「クイーン」とかだけではなくてThe Crusadersとか、あの時代にBrecker Brothers Bandの「Some Skunk Funk」とか演ってたからね。
全部透さんがドラムスを叩いてた。カッコよかった。
休憩をはさんで第二部は驚きの展開となった。
衝撃の一夜とはこのことか?
私は目撃者になった!
それは杉本さんの掛け声で始まった。
「ディスコ・タ~イム!」
突然Earth, Wind & Fireの「September」等のディスコの古典をメドレーで演奏し出したのだ!
この四人が演奏するもんだからコレがめっちゃカッコいいんですわ!
ディスコ・ブーム…なつかしいね。
いつかSHOW-YAの記事にも書いた通り、私はディスコには無関係だったけど、音楽的にはかなり大きな財産を残したことは認める。
「新宿ディスコ・ボーイ」なんて曲あったナァ。
田中さんは体験されていないでしょう、さすがに。
杉本さんなんかコレもんだもん。
でも、考えてみるに今の時代は一体ナンなんだ?
チョット前までは戦争の心配なんて全くしていなかったのに…まったく信じられん。
このディスコ・ブームの頃が健全な平和の時代の最後だったような気がするのだ。
「平和でなければ音楽もできない」…この山下達郎さんの至言を音楽家も音楽ファンも今こそ噛みしめるべきだと思う。
ディスコで大暴れした後は杉本さんの「Your Breath」。
ソロではお得意のダブル・オクターブ奏法を組み込んだ。
それにしてもMarshallのクリーンっていいナァ。
「ボクがギターを弾き始めた頃、まだJimi Hendrixが生きていたんですよ。子供ながらに衝撃的でしたね」…話はCreamやLed Zeppelinにまで及んだ。
いいナァ~。
十年はチョット遠慮しておくけど、少なくとも五年は早く生まれたかった。
ちなみに、いつも書いているようにMCの内容は私のパートナー、すなわち家内がメモしてくれているんだけど、ナゼかLed Zeppelinを「レッド・チェッペリン」って書くんですよ。
おかげさまで昨日結婚三十周年の「真珠婚」を迎えさせて頂きましたが、付き合い出したまだ我々が十代の時から、いっくら注意してもナゼか「チェッペリン、チェッペリン」って言うんだよね。
もう直らないな、コリャ。ちなみに今はThe Kinksにご執心です。
ところがコレは家内だけでなく、我々も間違えていて、「Zeppelin」は「ゼペリン」と発音するのが一番ネイティブに近くて、ネイティブの人達は「Led Zeppelin」を「レッゼペリン」と呼んでいる。
で、是方さんがココで取り上げたのはチェッペリンではなくて、Jimiの「Little Wing」。
ん~、やっぱりASTORIAは素晴らしい。
杉本さんの『Tomorrow Land』から「I got It」。
最後は是方さんの曲で楽しくソロを回して本編を終了。
アンコールは是方さんの十八番「Mo Better Blues」をプレイしてすべてのプログラムを終了した。
名手ぞろいだけに見ごたえのあるショウだった。
周りは楽器だらけだし、雰囲気も抜群!
次回はアナタが目撃者だ!
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