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2017年1月12日 (木)

EDGE OF STRINGS II <中編>~CONCERTO MOONとK-A-Z with BPM 13 Groove

昨日からレポートしているギター好きにはタマらないギター・インスト・イベント、『EDGE OF STRINGS』の第二回目の横浜公演。
考えてみると日本ってのはギター・インストの国なんだよな~。
いまだにこんなにThe Venturesに幕を掛けて崇め奉っている国って、日本の他に地球上で存在するのだろうか?
あのテケテケでいつも思うことがある。
それは、あのエレキ・ブームが「電気ギターのブーム」であったことは確かなのだが、その以前に「電気ギターを使った『音楽』のブーム」だったのではないか?ということなのだ。
もちろん、あの音楽が電気ギターでなければならなかったし、できなかったという必然性はある。
でも、あのテケテケの音色で奏でる「Walk don't Run」や「Pipeline」のメロディにヤラれちゃったんじゃないの?
ちなみに、あの「Walk don't Run」という曲はジャズ・ギタリストのJohnny Smithの作品ですからね。ヴェンチャーズが作った曲ではござらんぞ。
で、このJohnny Smith…欧米に数万人は軽くいるであろう平凡な名前を持ったギタリストの才能は極めて非凡だった。
今日の一回目の脱線。ギターがテーマの記事だからいいよね?
Johnny Smithは50年代に活躍した大ギタリストだ。
私も好きで色々聴きたいんだけど、寡作なワケでもないのに条件にあったCD(中古)に巡り合うことができなくて下の四枚しか持ってないの。
しかも、右側のピンクのと黒っぽいのはJohnny Smithの代表作とされる『Moonlight in Vermont』で、ただのジャケ違い。だから音源の内容としては3種類しか持ってないゾ、コノヤロー!
で、「Walk don't Run」は左上の『Johnny Smith's Kaleidoscope』に収録されている。
コレは1967年の録音。だからVenturesのヒットに乗じてセルフカバーした…と思いたくもなるが、67年といえば『Sgt. Peppers』が出た年だからね、今更「Walk don't Run」でもなかろうに…ということになる。
何しろVenturesの「Walk don't Run」は1960年なのだから。
でもね、演奏はすごいよ。
テンポは速めでTal Farlowスタイルの超絶技巧。ものすごくウマい人だよね。
このアルバム、「Old Folks」とか「酒バラ」とか「Sweet Lorraine」とか名曲満載でおススメです。

9_img_0262もうひとつ、ジャズの「Walk don't Run」として、Joshua Breakstoneを紹介しておこう。
この人、猛烈にわかりやすい。
「え、プロなのにそんなフレーズ弾いちゃっていいんですか?」みたいなジャズの定番フレーズを連発してくれる。
そのJoshuaがVenturesの愛奏曲を集めて録音したジャズ界から見れば一種のゲテモノ盤。
コレが実にいい。
この人、「ダレダレ集」というアルバムを得意としていて、そのうちの1枚『Remembering Grant Green』というGrant Greenの特集盤は、コレからジャズ・ギターもやってみたいな~、なんてロック・ギタリストには大いに参考になるだろう。
Johshuaの「Walk don't Run」は少しテンポを落としたJohnny Smithのバージョンで演奏している。

9_img_0263 Johnny Smithに戻って…。
この人がいかに人気があったかの証拠。
コレは欲しいナァ~、向かって右。

Js_2 このギターをASTORIA CLASSICにつないでさ!
最高じゃん?
大して弾けないけど…。

9_astoria_ast1c_classic_combo1 さて、本題に戻ると…「エレキ・ブーム」は「音楽」のブームだったということね。
私は楽器よりも、録音よりも、ジャケットよりも、何よりも音楽が先に来なければならないと考えていて、このイベントは「ギターのカッコよさをアッピール」するということにはなっているけど、本当は「ギターが主役の『音楽』のカッコよさを伝える」ということだと思うのですわ。
似ているようだけど意味合いが大分違う。
そのカギは演目がオリジナルかコピーかということだ。
出演する4つのバンドがそれぞれ自分たちの「音楽」でギターの魅力を発揮する…素晴らしいじゃないの!
Venturesの魅力も新しい世代にまったく伝承されていない。
Marshallの出現によってギタリストがヒーローだった音楽、すなわち70年代前半のロックもしかり。
今、巷に残っているのは、ピロピロと速く弾きまくるギターかジャンジャカかき鳴らすだけの脇役のギターばっかりじゃない?
コレじゃ本当にマズイって。Venturesの魅力を知っている世代やハードロックで育った世代の人たちがいなくなったら本当にそれらの音楽は絶滅しちゃうよ。
ま、私はいいよ。もう十分に楽しんだから。ジャズもクラシックも残っているし、民族音楽だってある。
でも、仕事で困るのよ!ギターが脇役になっちゃうと!
また、美田は子孫に残してしかるべきものでしょう。
だから、このようなイベントでギターのカッコよさが後世に伝承されることを願って止まないのだ。

15さて、二番手にステージに上がったのはへヴィ・メタル部門からCONCERTO MOON。
「おいおい、チョット待った!コレはインストのバンドのイベントじゃないの?」って?
そうなの、CONCERTO MOON(inst. ver.)と銘打った、歌わないMOONなのよ!

10
だからメンバーは久世ちゃんなしの…
島紀史

20v_2Aki

30v中易繁治

40v河塚篤史

50v当然ノンちゃんは今日も愛用のMarshall MAJORを持ち込んでいる。
昨日書き忘れたが、三宅さんが使ったキャビはノンちゃん所有の年季の入ったもので、素晴らしいサウンドだった。
もちろん、こちらのオーナーのサウンドも素晴らしいことこの上ない!

60vこの日、山本征史さんに続いてのMarshallベース・アンプ。
VBA400とVBC412。

70vCONCERTO MOONは2015年にリズム隊が交代し、新メンバーで同年9月にニュー・アルバム『Between Life and Death』を発表。
アルバムの出来に呼応するべく三度にわたってレコ発ツアーを実施し、その最後のツアーが先月終了した。
このイベントが開催されたのはそのツアーの直前のことで、当日は気合も芸も充実しきったところでのステージとなった。
Bld

オープニングは「Reason to Live」。

80おお~、ノンちゃんのソロ・アルバム『From the Womb to the Tomb』のオープナーだ!

90v考えてみると、この『From the Wonb to the Tomb』っていうのは、言葉の意味としては『Between Life and Death』の外側に位置しているんだなァ。
人間はお母さんの子宮(womb)から出て来て生(life)を受け、死(death)に、墓(tomb)に収まる。
気になるのは「womb」や「tomb」には「the」をつけて、「life」や「death」にはつけなかったこと。ノンちゃんはソロ・アルバムのタイトルをつける時、誰か特定の人の「子宮」や「墓」を想定し、CONCERTO MOONのニュー・アルバムをつける時には、生と死は生まれてきた以上、誰でも直面する普遍的なこととして「the」をつけなかった…とい意味合いか。
そんなことを考えてみるのも興味深い。

95vま、曲はそんなことは全くお構いなしのスーパー・ドライビング・チューンだ!
オイオイオイオイオイオイオイオイ、このソロ・アルバムが出てから丸8年経ってんのかよ!
ザケンなよ~。発表に当たっては前のMarshall Blogでインタビューしたっけナァ。あのアルバム、すごく好きでよく聴いた。
ホントに早いな~。コレじゃ、私もアッという間にDeathとTombのクチだな、コリャ。
あ、そういえば!私、煙草を止めて丸十年経ちました!
こっちは時の経つのがエラク遅かったな~。「まだ十年か!」って感じ。
いつかも書いたことがあったが、ヘヴィなスモーカーではなかったが、ホント止めた時はしばらくの間ツラかった。
そして、止めて本当にヨカッタ~!

S41a0193 続いては「Eye for an Eye」。
2003年の『Life on the Wire』。ホラ、ここでも「life」。

110v冒頭の垂直型フレーズからして密度の濃い、これまた「すさまじい」の一言に尽きるメタル・ギター・チューン。
ココまで2曲。
もうすでにカルビづくしの焼肉にうな丼(松)と天丼(エビ4尾)を食らったかの充実感!キムチや肝吸いを口に運んでいる余裕はない。

120Akiちゃんのキーボーズもいつも以上に大活躍だ!

130「楽しんでますか!オレはうさぎの7倍寂しがり屋だから、みんなが反応してくれないと寂しいぞ!」
普段のMCではココで久世ちゃんとカラむところだが、今日のMCはノンちゃんのソロ。
関西の公演ではそのノンちゃんトークが長くなって時間をオーバーしてしまったとか?!

140MCの後もガツンと来た!
すき焼きと火鍋と大盛ナポリタンの追加だ!
それは「Change my heart」と「Between Life and Death」と「Alone in paradise」のソロ・パートのメドレーだ!ムッチャするな~。

150特濃のナンバーの連続に難なくついていくリズム隊。

160vイヤ、反対か!グイグイと引っ張っていく!
180v
久世ちゃんが絶好調なだけに、「歌のないCONCERTO MOON」はどうなの?なんて思った人もいるかもね。
私はゼンゼン心配していないどころか、すごく楽しみにしていた。
それは久世ちゃんのボーカルズ(Marshall BlogはKruberablinkaの赤尾和重さんからのご指摘を尊重し、正式な英語表現を取り入れて、今年から歌のパートを指すときは「ボーカルズ」と複数形にしています。「キーボード」も同様)がない方がいいワケではござらんよ。
久世ちゃんの声はCONCERTO MOON鑑賞の大きな楽しみのひとつだからして。
私が楽しみにしていたのはノンちゃんのインプロヴィゼーションなの。

170v昔はノンちゃんとふたりで何回も「Marshall Roadshow」というMarshallのクリニックをやったもんですよ。
デモンストレーションの題材はCONCERTO MOONナンバー。当然、その時は歌なんか入らないから、歌のパートも全部ノンちゃんのギターで埋め尽くすことになるワケ。
そのソロがいつもスゴイかったんですよ。
どういう風にスゴイかと言うと、「速弾き」とかいうことではゼンゼンない。
商売柄、また年齢柄、あるいは経験上、最早どんなに速く弾くギターとかタッピングを見てももう驚くことはない。
私も若いころは速弾きに夢中になったけどね!でも音楽の楽しみは他のところにもたくさんあることを比較的早い時期に知ったって感じかな?
もちろん速弾きがよくないとは絶対言いませんし思いません。音楽的にすごいフレーズを弾いていれば話は別なのだ。
とにかくイングヴェイ以降、老若男女を問わずみんな同じことをやっているのを見るのがキツイのだ。
で、ノンちゃんはそれなの。出てくるフレーズの密度が極めて濃いのだ。
でね、ある時彼に尋ねたことがあった。
「ノンちゃん、アレ歌のパートって作ってあるんでしょ?」
「イイヤ、何にも考えてませんよ」
「ええ~、アドリブなの?」
「ああ、全部アドリブです~」
結構ビックリしたわ。
チョット、思い出しついでに…。
一度、CONCERTO MOONのツアー先の大阪でMarshall Roadshowをやったことがあったんだけど、当時のバンドのメンバーがRoadshowを見たいっていうワケ。
まさか、断るワケにもいかないし、かと言って恥ずかしいし…。
ナゼそんなもんが見たいのか?と尋ねたら、「イヤ~、だってMarshall Roadshowはおもしろいってみんな言ってますからね~」と言われてうれしかったな。一生懸命やってたからね~。
その日、私のトークとノンちゃんのギターがいつもより冴えわたったことは言うまでもなかろう。

190そんなギター・プレイがふんだんに詰め込まれたMoonナンバーのメドレーだった。
それとね、やっぱり音が素晴らしいよ。説得力のある音なんだよね、ノンちゃんのギターは。
時に説教をされているような?威厳のあるプレイだ。

200vココで「泣き」を一発。
『Black Flame』から「Until You Remember」。こんなMoonならぬMooreチックなナンバーもまたいいもんだ。

210そして、最後は普段もノンちゃんフィーチュアで演奏しているおなじみのインストゥルメンタル・ナンバー「To Die for」で締めくくった。

220v近々「at the end of the year ~Between life and death tour final~」もレポートすっからね。

CONCERTO MOONの詳しい情報はコチラ⇒CONCERTO MOON Official Website

230vそして、三番目にステージに上がったのはK-A-Z with BPM 13 Groove。

240K-A-ZさんはMarshallプレイヤーではないが、CLASSIC ROCK JAMなどでご一緒させていただき、何度かMarshall Blogにもご登場いただいている。

250今回もベースと…

260ドラムのトリオ、K-A-Z with BPM 13 Grooveでの登場だ。

270v

三宅さんの孤高の音楽、ノンちゃんの極上のヘヴィ・メタルときて、K-A-Zさんはそれまでとはまたガラリと変わったコンテンポラリーなギター・ミュージックを披露した。

280vK-A-Zさんも自分の思った音楽を、好きなように好きなスタイルでクリエイトするタイプのギタリストだ。
やっぱりこのルックスだしね~。ナニをしてもサマになる。
Marshallでないのがザンネンだけどね。

290でも、当日楽屋で話をした時はうれしかったな。
前述のように活躍の場が広い人だけに色んなところでK-A-Zさんとは出くわすのね。
このイベントの数日前にも幕張のKNOTFESTでお会いしたばかりだった。
ところが、あんな話をしたのは初めてだったのだ。
…というのは、このイベントについての話。
ご存知の方も多いと思うが、このイベントはK-A-Zさんが主宰している。
そのK-A-Zさんがこう言っていたのだ。
「最近は本当にギターのカッコよさが忘れられているんですよ。ギターってカッコいい楽器ですよね。それなのに若い連中はまったく興味を示さない。カッコよさを知らないんです。
そこでこういう企画をやって少しでもギター・シーンを盛り上げていきたいんです。
そのためには、とにかくコレを続けていきたいと思っています。」
うれしかったね。
ま、ここに記した字句は実際の発言と多少異なるが、こういうことをクールに言っていた。
目的や取り組みは違うかもしれないが、根っこのところでMarshall GALAとつながっていると思った。
その理由のひとつは、冒頭に書いたようにコピーではなく、自分たちのオリジナルの音楽でギターの魅力をアッピールさせようということだ。
そこで、Marshall BlogでガッチリとレポートしてPRのサポートをさせて頂くことを約束したのだった。
本当にどうして、ロックってこんなことになっちゃったんだろう?
ギター・リフもソロもないロックって一体どういうつもりなんだろう…と私の世代は思わざるを得ない。カッコいいロックを体験してきたからね。
こうした催しの意図が若い人たちにも伝番してカッコいいロックを若い人たちにまた盛り上げてもらいたいナァ。
本当にあの時代のロックは高齢化と過疎化と少子化があまりにも進んでしまった。
こういうイベントにもっと若い人たちが来るような算段はつけられないものだろうか?
とにかく日本のロック界は文化の伝承に急いで真剣に取り組むべきだ。

300しかし、大きいな~。
会場に向かう時、K-A-Zさんがコンビニの袋をさげて歩道を歩いているのが、車の運転をしていて一発で目に飛び込んで来たよ。
だって、人ごみの中から頭ひとつどころか、肩が出ちゃってんだもん!
昔、あるバンドに巨大なギターの人がいて、地方の小さなライブ・ハウスに出演した時、ステージに上がったら大きすぎて頭が天井に当たってしまい演奏できないことがあった。
それでどうしたかというと、仕方ないのでステージを取っ払ったって嵩を下げたっていうんだよね。
本当の話らしい。
それを思い出さずにはいられない!

320忙しいところ企画を立てるのも大変かもしれないが、次回のEDGE OF STRINGSも楽しみだ。
できれば、Marshallのギタリストでお願いしますね。だってガンガンレポートしたいもん!

330vK-A-Zの詳しい情報はコチラ⇒K-A-Z Neo Stylez

340<後編>につづく

(一部敬称略 2016年11月22日 横浜F.A.D.にて撮影)