稲葉囃子~スキスキ四人囃子! <後編>
名ギタリスト、稲葉政裕と四人囃子メンバーが合体した稲葉囃子。
さて、後半は一体ナニを演るのかな?
四人囃子の素晴らしい音楽を演出するのはMarshallとNATAL。
第二部のオープニングは『ゴールデン・ピクニックス』から名曲ちゅうの名曲「Lady Violetta(レディ・ヴィオレッタ)」。森園さんの作品。
この稀代の名曲については『ミュージック・ジャケット・ギャラリー』に詳しく書いておいたので是非コチラをご覧頂きたい。
「いい曲だね~」としみじみおっしゃった稲葉さん。
演奏も素晴らしい。
そして、ギターの音の美しさは非の打ちどころがない。
大二さんのドラムはまるで稲葉さんと一緒にメロディを歌っているようだ。
最上の素材に最高の演奏がうまく合致するとこういうことになる。
坂下さんは『包』に収録されている「Sweet Lover Song」という何とも愛らしい曲でリード・ボーカルを担当しているが、コレがホンワカしていて実にいいのだ。
今回の二曲のうちの一曲は「I Shall Be Released」。Bob Dylanはホントに有名どころしか聴いていない私でもコレがメチャクチャいい曲だということぐらい知っている。
このバンド、またコーラスがシッカリしているのだ。
もちろん坂下さんのメローなムードもウマい具合に発揮されていてショウの進行上とてもいいアクセントになった。
次は待ってましたの難曲。
同じく『ゴールデン・ピクニックス』から「なすのちゃわんやき」。別名「Continental Laid Back Breakers」。コレどういう意味なんだろう?今度大二さんに訊いてみよう。
この曲は初代ベーシスト、「中村君の作った曲」の故中村真一さんの作品。まったくスゴイ曲を作ったもんだ。
四人囃子は大二さん、森さん、中村さんが高校の時に組んだトリオ・バンド、「ザ・サンニン(←いい名前だ!)」が母体となっている。
中村さんはこの曲が収録されている『ゴールデン・ピクニックス』にはクレジットされていない。
しかし、この日本人離れしたアクロバチックな難曲の作曲者として、日本のロック史に永遠にその名前を刻むことになった。
中村さんはいつもMarshall Blogを応援してくれる私の友人も参加してしていたOrangeNotes(メンバーが中央線沿線の住民)というバンドをやっていたが、残念ながら2011年の5月に急逝してしまった。
下はその年の9月に開催された中村さんを追悼するコンサートのプログラム。
森さんや大二さん、坂下さん、末松さんら四人囃子の関係者の他にCharさんや金子マリさん、安全バンドのメンバーの方々、ROLLYさんらも駆けつけ、盛大な音楽の夕べとなった。
さて、この「なすちゃ」、何でもが四人囃子の合宿中に中村さんが「こんな曲作っちゃった~」とポコンと持って来られたそうだ。
ところが内容は凝りに凝った、そして、ヒネリにヒネった難曲だったというワケ。
私は四人囃子のこういう曲が大スキで、自分流に言わせれば10ccなんだよね。
四人囃子というと、必ず「日本を代表するプログレッシブ・ロック・バンド」という枕詞が付いて回るけど、私はこのバンドがプログレッシブ・ロックのバンドだと思ったことはほとんどないんだよね。
私が認識しているプログレッシブ・ロックとは違うんだな。どちらかといえば「日本の10cc」なんだよね。「5cc」、「二人囃子」とバンド名を二つに割ることができるところも似ている?
プログレッシブ・ロックって最後までどこかワケがわからない部分が残っていて、日本人のリスナーにとってはまず歌詞がそのわからない部分であったりするんだけど、四人囃子は全部わかっちゃう。
いいメロディを複雑な構造の曲に乗せて圧倒的な演奏でわかりやすく聴かせちゃう。スタジオ・ミュージシャンの集まりだった10ccがまさにそれであり、四人囃子も同じ範疇に入ると私は観ている。
というのは、最近フト気がついたんだけど、この「プログレッシブ・ロック」というカテゴライズほど定義がアヤフヤなものはないのではないかと…。
聴く本人が自分が聴いている音楽を「プログレ」だと思えばそれは「プログレ」になっちゃう。これはどんなタイプの音楽にも当てハマるんだろうけど、プログレはその幅がやたらと広く、グッチャグチャなんだな。その定義自体がワケわからないところがプログレッシブ・ロックなのかも。
その点、四人囃子は何をやってもわかりやすい。すごくポップなのだ。
また笑っちゃったのが、今回はワザと前半しか演奏しなかったんだよ~。
続きが聴きたい人はまた観に来てくださいだって!
…と言ってもしゃべってるのはほとんど大二さんと稲葉さんのふたりだけど。
とにかく当時の日本のロックに関する貴重な話が聞けるのがうれしい。
いつか大二さんのその辺りのことについてインタビューしたいと思ってるんだ。
で、今回死ぬほど笑ったのが、大二さんの話し。
ま、チョットお酒が進むと眠くなっちゃうのは年を取れば仕方ない。
で、ある地方公演でチョット進んでしまった大二さん、ステージでウトウトしてしまった。それでももちろん演奏は完璧。手足はちゃんと動いている。達人だから。
ところがものすごくヘヴィなファンの方が「不謹慎だ!」と終演後注意をしたらしい。
すると傍らにいた森さんが、「大二は自動操縦ができる」と言ったらそのお客さんが余計に怒っちゃった!
「ナニが自動操縦だ!」ってな具合。
坂下さん曰く、「アレを言ったからホントに怒っちゃったんだよ」。
もう大爆笑!はじめて聞いた「自動操縦」だなんて!
でも、居眠りの話しは今に始まったことではなくて、かのCharlie Parkerもスゴかったらしい。ビッグ・バンドに参加して、自分が吹かなくていいパートでは本番中に爆睡していたらしい。ところが自分のソロが回ってくると誰も起こさないのにサッと正気に戻り、文字通り目の覚めるような素晴らしいアドリブ・ソロを披露したという。
大二さんはドラムだから休むわけにはいかないので、「自動操縦」の機能が備わっている。この日はすべてマニュアルで演奏されていました。
また、稲葉さんがお話しがウマくておもしろいんだ~。すごくソフトで上品なんだな。
この日、やたらとステージに向かって声をかけて来るお客さんがいらっしゃったんだけど、その人とのやり取りが上手で大笑いしてしまったよ!
満さんが参加した最初のアルバム、1977年の『PRINTED JELLY』から一曲。
オリジナルではマンドリンを用いたイントロを坂下さんがキーボードで奏でる。
「ハレソラ」だ。
コレも高校の時に聴いてビビビときたもんですよ。
「♪晴れた空に一筋煙が見えてきたら~」
稲葉さんの歌があまりにも素晴らしい。
めまぐるしく場面が展開していくローラーコースター・ソング。
昔はこの曲をコピーして演奏する乞う構成バンドなんて結構いたんだけどね。まさに隔世の感がありますな。
昔の人は高校生でもスゴかった。
そして最後はこれまた待ってましたの「一触即発」。
今回は収録アルバムのジャケットを掲載してみた。この時代のアルバムって四人囃子の作品に限らずジャケットもメチャクチャいいと思わない?
十分海外の作品に対抗できる。
音楽だけでなく、ビジュアルも後世に残す価値のあるものばかりだ。
相手が日本のロックの至宝のひとつだけに、薄皮を慎重に剥いていくかのような丁寧な演奏。
もちろん充実した完璧なパフォーマンスであることは言うまでもない。
『'73四人囃子』のような坂下さんのオルガンのリードのアレンジも聴きたいナァ。
この曲のアイデアのベースが「Wipping Post」とはね~。
「♪ああ、空が破ける、ああ音もたてずに…」、歌詞もいいんだよな~。
稲葉さんの絶唱!
頭に戻るところなんて感動モノよ!
こんな曲よく作って、そして演ったもんだ。
コレもコンセプト、歌詞、曲、アレンジ、演奏のすべてが完璧な、時代と若者たちの才気が生んだ奇跡と呼べる作品。
メルヘンチックな歌詞とシンプルなメロディ、そして複雑なアレンジ。
どれをとっても楽しめる。
1975年にシングルとしてリリースされた。B面のロック・ボッサともいうべき「ブエンディア」という曲は大二さんの作品。
コレもいい曲なんだわ。
いつかゼヒ演奏してもらいたい。
本当はコレで終わる予定だったのだが、アンコールの呼び声が収まらず、一旦楽屋に戻った四人が再びステージに立った。
ところが、曲のストックがなかったため、第一部で演奏した「カーニバルがやってくるぞ(パリ野郎ジャマイカへ飛ぶ)」をプレイした。
それにしても40年も前の曲の数々が今でもこうしてみずみずしく演奏されるのは一体どうしたことだろう?
「曲のパワー」としか言いようがない。
一曲一曲がまるで宝石にように高貴に輝いているではないか。
果たして今巷間で流れている曲たちは40年もの風雪に耐えることができるだろうか?否、それは愚問というものか?
とにかく、このバンド、観れる機会があったらゼッタイに観ておいて欲しいと思う。
大二さん、最後にキメた「Smoke on the Water」〆め!
このバンドでは皆さん付き合ってくれました。ヨカッタね大二さん!
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版:現在日本語版作ってます!不慣れな作業でもうヘロヘロ!)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト
(一部敬称略 2015年9月13日 高円寺JIROKICHIにて撮影)