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2015年11月 2日 (月)

鮎川誠と祝うMuddy Waters生誕100年 <前編>~SHEENA & THE ROKKETS、永井"ホトケ"隆登場!

今のロック好きの若い人たちにはとても考えられない話かもしれないが、昔、熱心にギターをやっている連中の大半は「ブルース」という音楽に興味を持ったものだ。
憧れのロック・ミュージシャンが揃ってブルースの影響を受けていたからだ。
自分の大好きなギタリストが、やれRobert JohnsonだのB.B.Kingだのという名前を口にすれば「一体どんな音楽なのか?」と気になるのが普通だ。
私もご多分に漏れずディスク・ガイドに従ってB.B. Kingの『Live at Regal』とか『Albert King Live』なんかを買って聴いてみたけど…ダメだったな。シブすぎちゃって。
ま、14、15歳ぐらいの時の話だからね。


高校の時に観た屋根裏でのウシャコダのライブで藤井さんが「一旦、ブルースの魅力に憑りつかれてしまうと…ロック(ブルブルブルブル←頭を左右に振っているところ)、ジャズ(ブルブルブルブル)、クラシック(ブルブルブルブル)…とても他の音楽は聴けなくなっちゃうよ」とおっしゃっていたことを今でもよく覚えている。ウシャコダ大スキだったから。
それでも、ウシャコダはよくてもピュアな「ブルース」はどうも苦手だった…というのが正直なところ。
この年になって時折聴くようにはなったし、時々「いいな~」と思うことはあってもどうしても「勉強聴き」の域を出ない。
でも、ロックにとってブルースの重要性はよ~く理解している。
だから最近の若い子たちが聴いているロック的なものが「ロック」を感じさせず、圧倒的に「フォーク」か「童謡」に聴こえてしまうのはブルース・フィーリングが欠落していることに起因している…という考え方は支持できると思っている。
70年代のロックを体験した世代に換言させれば、「日本の若年層の間にはもうロックは存在していない」という風になってしまうことに異論を唱えるものは少ないだろう。
善し悪しのことを言っているのではないんですよ。時代の変化だからどうしようもない。

そこへ行くと、イギリスってThe DarknessとかThe Answerとか、時折思い出したように70年代のサウンドに自分たちの世代のテイストをミックスしたようなカッコいいロック・バンドが出て来るでしょう?
何でだろうな~?と考えるに、イギリスのロックはスキッフルが発祥と言われているものの、それよりも基本的なロックの土台がブルースでできているからではないか?と最近思いついた。
コレは演る方だけでなく、聴く方もそういう下地を持っていることは間違いない。
イギリス人はブルース・ロックが大好きだからね~。


ロックをジャンル分けするときによく言われることのひとつにプログレッシブ・ロックのことを、「ブルース・フィーリングがないロック」として定義づけることがあるが、ま、そうでしょう。同感。
でも、演っている人達はそうではない。
例えばRober Frip。
Peter Gabrielのソロでむせび泣くようなブルージーなギターを弾いているし、初期の重要なレパートリー「A Man a City」は変形マイナー・ブルースだし、後期には「ProzaKc Blues」なんて曲も演ってる。
Pink FloydのDave Gilmoreはどうだ?
あのギターにブルースを感じないものはいまい。Syd Barrettのダルな曲にだってブルースのフィーリングを感じる。
ビートルズだって「Fying」がある。
50年代後半~60年代前半のロンドンのクラブに関して研究すると、驚くほどみんなブルースに夢中になっていたかがよくわかる。


そこへ行くと、日本は「ロック」というものがある日いきなり「ボッコン!」と海の向こう入って来て「コリャ金になりそうだワイ」と、ロックが何たるか、ワケがわからないウチにはびこってしまった。(コレは故佐久間正英さんの受け売り。実際に当時のレコード会社のプロデューサーの回想ではみんなそう言ってる。つまり自分が売っている商品がサッパリわからないという驚くべき状況だったのだう。こんなこと普通の商売ではあり得ない)
それでも昔のミュージシャンは冒頭に書いたように自分の手本のミュージシャンのルーツに興味を持ち、さかのぼってロックを勉強した。
もちろん今でも若い日本のミュージシャンの中にも同じようなことをしている人がいるのだろうけど、ブルースまでさかのぼっている人はまずいまい。
皆さん、驚くほど昔のロックをご存知ない。
ま、コレも無理はなくて、我々の世代は、4、5年もさかのぼればまだビートルズがいた時代で、原点に行きつくなんてことは何でもなかった。
今の若い人は大変だよ。ビートルズのデビューまで50年以上もあるんだから。ブルースどころではない。


あの「伝言ゲーム」ってあるじゃない?
今のロックが出て来た過程はアレに似てるような気がする。
ブルースから始まって、ロックンロールになって…その間、プログレだ、メタルだ、テクノだの、「ロックってこんな音楽だよ」と世代間で伝言しているウチに、気が付いてみると「アレ?ロックってこんなんだったっけ?」、「ブルースの要素は一体どこへ行っちゃったの?」という感じ。

それともうひとつは、誰がこんな風にしちゃったのかは知らないけど、ギター・ソロがほとんどなくなっちゃったのもロックからブルースっぽさを払拭してしまった原因でもあると観ている。
一般的なロックのギター・ソロを構成する音はブルースと同じだからだ。

コレはやっぱりマズイのではないか…と。
だって「ロックはブルースの子供」なんだから!
今では「ありがとう」やら「がんばれ」やらでロックはすっかりヨソのウチの子になっちゃった。
やっぱりブルース・フィーリングのないロックはロックではない。

今日と明日でレポートするのは鮎川誠を中心とした、ブルースの巨人Muddy Watersの生誕100年を祝うイベントだ。
ブルース、ロックンロール、1960年代のロックと、それらは鮎川さんの世代が間近に、あるいはリアルに体験した音楽だからね。
何せビートルズの出現を高校の時の弁当を包む新聞紙で知ったというんだから…。
そんな鮎川さんと2010年に郡山美術館で開催された『スウィンギン・ロンドン 50's-60's -ビートルズたちが輝いていた時代-』で対談することになった時にはかなりビビった。

Sl 真っ先にやったことは鮎川さんの著書『'60sロック自伝』を手に入れて鮎川さん経由でブルースを勉強し直した。
この本、鮎川さんの口述筆記のスタイルで、ロックが一番輝いていた時代のことがナマナマしく記されていてものすごくおもしろいよ。
もちろんMuddy Watersの名前は何回も登場している。

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イベントは『マディーウォーターズ生誕100年祝賀ライブ 鮎川誠 Presents
THE BLUES BABY ROCK AND ROLL』と銘打たれた。
Muddy Watersは1912年の4月4日生まれというから、生きていれば102歳になっている計算。1983年に亡くなっているのでもう没後32年も経ったんだね。
なんて、知った風なことを言ってるけど、いつも言っているようにブルースは門外漢なので実際には詳しくはないのだが、Muddy Watersだけはチョットした思い入れがある。
それはThe Bandの『Last Waltz』なの。
高校一年ぐらいの時に映画館へ観に行った(東銀座の松竹セントラルだったかな?)。そこで初めてMuddy Watersを知った。
ご存知の通り、あの中には「Manish Boy」が収録されている。その中で「カンガルー顔のよぅ…」という歌詞が出て来て、「カンガルー顔」なんてあるのか?とすごく印象的に残った。
こっちは何も知らないもんだから、「エ~ムチヤ~」とか「ノービー」とかいうところも不思議だった。
それにしてもMuddy Watersが後のロックに与えた影響が尋常ではなかったことを鮎川さんのおかげで今回改めて勉強させてもらったな。

さぁ、ショウの始まりだ。
まずはシーナ&ロケッツが登場した。

20鮎川誠

30v奈良敏博

40v川嶋一秀

50v今日も鮎川さんの背後にはMarshall!

60愛用の1987たち。
下段のメインが1975年製。上段はサブで1974年製だ。
足元の写真はない。
何もないから。レスポートと1987だけの「直」!

70v会場はもうスシ詰めもいいとこ!パンパンだ~!

80オープニングは「Batman Theme」。「バットマンのテーマ」。これもブルースだ。
作曲はNeil Hefti。アメリカの有名な作曲家で、ジャック・レモンとウォルター・マッソーの『おかしな二人(The Odd Couple)』の音楽を担当している。好きな映画のひとつ。
ジャズを聴く人ならCount Basieでおなじみですな。この人、元々トランぺッターでWoody Hermanのところにいたんだネェ。
ちなみに…誰でも知ってるQuincy JonesもトランぺッターでCount Basie Orchestraにいたんだゼ。

今にもシーナさんが出て来そうだった。そんないつもと変わらないパワフルにしてシャープな演奏だ!

90v

100「黒いロックンロール。ビートルズもストーンズもMuddy Watersがいなければなかった!今のオレたちがあるのはMuddy Waterのおかげ!」とMuddy Watersを称えた鮎川さん。

110v二曲目は「Virus Cupsule」。

120お客さんも歌ってる。
「♪脳天を叩き割れ」では大合唱に!

135vシナロケのステージではおなじみ「ホラ吹きイナズマ」。

150v

絶好調感丸出しの三人。見ていてスゴク気持ちがいい!熱めのロックを風呂を浴びているようだ。もちろん源泉かけ流し!

160

鮎川さんがMuddyを初めて観たのが1980年の渋谷公会堂でのこと。
最初の曲で歌声を聴いた途端ナミダがこぼれ落ちてきたという。
170
そうやって紹介したのが次の曲。「Baby, Please Don't Go」。
鮎川さんのソロ・プロジェクト、Wilko Johnsonとの『London Session』にも収録されている。
このあたりからMuddyレパートリーになる。

130v 鮎川さん曰く「Muddyが男になった曲」だという「I Can' be Satisfied」。

220v
ストーンズの「(I Can't Get no)Satisfaction」のヒントとなった曲。
ここから「満足できない」系の曲が一体いくつ生まれ出て来たことか?もんなストーンズのフォローだろうが元はこうしてブルースにある。

180

それにしても、このギターの音のよさったら!
ギターとギター・アンプが織り成す最高に心地の良いサウンドはやっぱりピュアとしか言いようがない。「何もないのが一番いい音」をいいように鮎川さんは教えてくれる。
どんなに時代が変わって技術が進歩しても、この50年前も前から存在する真空管によるナチュラル・ディストーションにかなうものはないって!
このギターの音を聴くだけでも会場に足を運ぶ価値は十分にある。細かいことなんて何も言う必要がない。音楽を楽しむためのサウンドなのだ。

M_s41a0227 この日のテーマ・ソング的な一曲がココで登場。
「Mick Jaggerも、Ringo Starrもjohn Hammondもみんなブルースのベイビーでロックンロールしたんだゼッ!」と鮎川さん。
曲は「The Blues Had A Baby And They Named It Rock And Roll」…冒頭に書いたように、まったくその通り。
ウソ、この曲にインスパイアされてオープニングの件を書いたのさ。
「ブルースにはソウルがある
間違いない話しだ
でも誰もソイツを語らない
そしてブルースに子供ができた
ソイツをロックンロールと名付けたんだ」
…的な内容の曲だ。
問答無用でカッコいいわ。

190

歌詞もゴキゲンだけど、ブギ調の曲も最高!
ん~、ブルースっていいナァ。

200「俺がナマズだったらいいのにな」…の「Catfish Blues」。
「Rollin' & Tumblin'」のフレーズを引用してのソロ

225ここでSHEENA & THE ROKKETSの35周年を記念した最新作『ROKKET RIDE』から数曲を披露。
240cd_3
「シーナとMuddyと乗ろうぜ!」

250v

まずはアルバム・タイトル曲「ROKKET RIDE」をプレイ。

M_s41a0057

今日は奈良さんとのツイン・ボーカルだ。

140v

もう一曲、「Ride the Lightning」

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ここでギターを交換して「Pinup Baby Blues」。

270ますます冴える鮎川さんのギター!

290vそして、最後は「You May Dream」。
310v
会場は大合唱。私も歌いました、ハイ。
泣けるよね。コレはどんなにこらえても泣いてしまう。
目をこすっているお客さんもたくさんいた。
音楽の力を実感する一曲だ。

300そして、最後は「I Love You」!
やった!大スキ!

M_s41a0319 この曲は今でも機嫌がいいと「♪キミがとっても~」と口ずさんでしまう。
Muddyとは正反対にI really got satisfiedなのだ!

M_s41a0090 すさまじいパワーで駆け抜けた11曲。SHEENA & THE ROKKETS健在!

SHEENA & THE ROKKETSの詳しい情報はコチラ⇒RocketWEB

320ほんの短い休憩をはさんでステージは場面転換する。

330永井”ホトケ”隆(blues.the-butcher-590213)と…

340vキーボードの中山努がステージに上がる。

350v一曲目は「Walking Blues」。
Robert Johnsonの曲。私はThe Butterfield Blues Bandで知った。

360わかっちゃいるけど、ホトケさんの声がもうタマらん!

370vホトケさん(…というとナンカ縁起でもないな…)が下宿していた部屋の壁には高倉健と浅丘ルリ子とMudyy Watersのポスターが貼ってあって、下宿のオバサンが「健さんと浅丘ルリ子はわかるけど、この黒い人は何?」と訊かれて窮したそうだ。
そうホトケさんもドップリMuddyの息子なのだ。

380そして、ブルースに魅せられたギタリスト…イキはピッタリだ。

390二曲目はホトケさんが最初に覚えたMuddyの曲「I'm Ready」。
410v

ホトケさんのギター・ソロ。
楽器店で見つけて一度は入手をあきらめたが、「どっかのワケのわからんヤツに買われたくない!」の一念で大枚をはたいて入手したというMuddy Watersのシグネチャー・テリー。いい音しとる!

400鮎川さんのMarshall+レスポール・サウンドの雄叫びが素晴らしい!

420ベースとドラムはそのまま奈良さんと川嶋さんが担当した。

430「I Want to be Love」。
The Rollings Stonesのデビュー・シングル「Come on」のB面だったWillie Dixonのカバー曲で、ホトケさんは中学二年生の時に好きになったそうだ。中二でMuddyはスゴイ!
この曲はRegent Studioで録音された(のかな?)。

440鮎川さんはホトケさんと先の渋谷公会堂へ一緒にMuddyを観に行って、実際に本人にお会いになったそうだ。
鮎川さんは「聴いてはくれない」と思ったが、その時で出来たての『真空パック』をMuddyに手渡した。
するとMuddyは「Keep on going, keep on going!」と二回声をかけてくれたのだそうだ。
その時Muddyの傍らには27歳の若い女性がいて娘かと思ったらMuddyの奥さんだったそうだ。

M_s41a0488 「Trouble No More」はThe Allman Brothers Bandでおなじみか?1955年のMuddyの作品。

450vおなじみ「Hoochie Coochie Man」もWillie Dixonの作曲。1954年にMuddyが歌った。
ホトケさんが「精力絶倫男」と説明していたが、語源はマァ、そっち方面だ。

460v情感豊かなソロをキメるホトケさん。ん~、Muddyへの愛を感じるわ~。

500

「Blowin' Wind Blow」。
このセットになってからというもの、定番のおいしいブルース・フレーズが並ぶ鮎川さんのソロ。
ウハウハです。

470続々と出て来るMuddy Watersスタンダード。
「Longu Distance Call」。

480「40 Days 40 Night」から「I Feel so Good」…。
曲は当然のことながらすべて同じスリー・コードだが、この歌詞がスゴイ。
コンセプトというか、ソウルというか…。女とか、金のあるなしだとかに尽きる。

490v今のロックがロックを感じさせない原因のひとつは間違いなくココなんだよね。逆に言うといかにレ揺籃期のロックがブルースの伝承だったかということがよくわかる。そして、この伝承がどこかで途切れてしまっているのが現在の状況なのだ。
だからこういうイベントは絶対に必要だと思う。

520出ました「♪エ~ムチャ~」。
デンカの宝刀、「Manish Boy」。「オトコの『オ』、ガキの『ガ』じゃネェ」…日本語ではサマになりません。
ホトケさんがメチャクチャかっこいい!こんな声なら私でもブルース演りたいわ!

530さすが百戦錬磨の大ベテラン。全編にわたって素晴らしいサポートを披露してくれた中山さん。ギターやハープだけじゃなくてピアノもブルースには欠かせない楽器だ。

525

最後に持ってきたのは「Rollin' and Tumblin'」。

540イヤ~、素晴らしい演奏だった~!感動してしまった。

永井"ホトケ"隆の詳しい情報はコチラ⇒official site

550改めて鮎川さんのブルースへの愛情と造詣の深さに完全脱帽しつつ<後編>へ続く。

560v(一部敬称略 2015年9月12日 下北沢GARDENにて撮影)