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« 鮎川誠と祝うMuddy Waters生誕100年 <前編>~SHEENA & THE ROKKETS、永井"ホトケ"隆登場! | メイン | 稲葉囃子~スキスキ四人囃子! <前編> »

2015年11月 3日 (火)

鮎川誠と祝うMuddy Waters生誕100年 <後編>~サンハウス登場!

誰にでも見逃してしまって後悔したり、生まれたタイミングが合わずしてどうしても実物を体験することができなかったアーティストやグループがあるハズだ。
「ないものねだり」ってヤツ…。
私なんか欲張りということもあって、その数たるやもはや測定不能だ。何しろクラシックから、ジャズから、民族音楽まで各分野にまたがっているのだから。


「あ~、観ておいてヨカッタ~」というのももちろんたくさんある。
危うく見逃すところだったのは、SHEENA & THE ROKKETSが出演した2010年に野音で開催された『ブルーズ&ソウル・カーニヴァル』で観たSolomon Burkeだ。
ソウルやリズム&ブルース系にてんで弱い私は「King Solomon Burke」という名前ぐらいしか知らなかった。
だから、シーナさんたちの出番が終わったところで野音を失礼しようと思っていたのだが、楽屋で鮎川さんが、「なにせローリング・ストーンズの師匠のソロモン・バークじゃけん、見逃すわけにはいかんち」と興奮気味にされていたので最後まで観て行くことにした。
ちなみにその時は昨日Marshall Blogにご登場頂いた永井"ホトケ"隆さんもblues.the- butcher-590213もしゅつえんされていて白熱のステージを展開した。
そして、Solomon Burke…スゴかった。
もう、歌声を聴いただけで猛烈に鳥肌が立った。
その機会を逃さないように仕向けてくれた鮎川さんに感謝した。Solomon Burkeはその五ケ月後に亡くなってしまい、もう二度と観ることができなくなってしまったのだ。

反対に、ロックの世界でその現役時代のステージを観ることができずに実に悔しい思いをしたバンドのひとつがサンハウスだった。
私の世代はもう五年早く生まれていれば「超ロック天国」だったんよ。
サンハウスを観た年上の人達の自慢話をいつも臍を噛む思いで聞いていたものだ。
私が高校の頃、1979年ぐらいの時分にはすでにレコードも手に入らず、その年上の友人から『有頂天』と『仁輪加』と『ドライブ・サンハウス』をカセット・テープに録音してもらって、大事に大事に聴いた。
サンハウスの情報が音楽誌に載ることもなかったので、それらのアルバムのジャケットすら見たことがなかった。
それが念願かなって2010年のフジ・ロックで再結成され実物を拝見した。
ものスゴイ雨でね…。帰りの新幹線の時間を気にしながら、ステージそででジックリと堪能させて頂いた。
ものすごくうれしかったのはいいんだけど、雨でビショ濡れになって乗った帰りの「とき」の車内が冷房でキンキンに冷えていて、危うく風邪風を引くところだった。
今回はそれ以来なのだ!正反対に今日はギンギンに暑い!

三番目にMuddy Watersの生誕100周年を祝うのはサンハウス!

10_2
30v_2
鮎川誠

20_2奈良敏博

40v_2浦田賢一

50v_2今回はこの四名によるサンハウスだ。

60_2オープニングは「キングスネーク・ブルース」。
「♪オレの身体は黒くて長い、夜になったら抜け出して」…ク~、この菊さんの声!タマらんわ~!

70v_21920年代のデルタ・ブルースの「Crawling King Snake」へのオマージュか。
もちろんMuddy Watersもこの曲をレコーディングしているが、John Lee HookerやThe Doorsも『L.A.Woman』に吹き込んでいる。
私の中ではサンハウスの「キングスネーク・ブルース」が上に来る。

80vコンサートも後半に入っていよいよMarshallもヒートアップ。
ちょっと歪みが深くなった。
それにしても気持ちのよい音だ。
すべてのギタリストにこのMarshallとLes Paulが直結されたピュアなサウンドを聴いてもらいたいと思うよ。

90v_2二曲目は「爆弾」。
『仁輪加』の一曲目だ。

100_2「♪ブチこわす」、「♪付いてきな」の菊さんの声を初めて聞いた時はブッ飛んだっけナァ。
これと「ナマズ」。

120_2サンハウスの鮎川さん…やっぱりヤケクソにカッコいい!

140v_2
「ハイ、もうコレでサンハウスの曲は終わり!」と菊さん。
ココからMuddyコーナーに入る。

130まずは「I'm Ready」。

150v_2「ブルースは歌えない」とおっしゃる菊さんだが、ゼンゼン最高だ!

160_2この出で立ちと、この声だけで菊さんのブルースになっちゃう!

170_2そして、鮎川さんのギター。
何でもいいからズッと聴いていたくなるわ。

180_2続けて「Muddy Waters Twist」。
コレなんかまるっきり菊さんのオリジナル曲のようだ。

190_2

「She's Alright」…この曲もピッタリ。
やっぱりロックやブルースは「声」だナァ。肉食の「声」じゃなきゃやっぱり通用しない。
それがさ、80年代に入って、ニューウェイブとやらで素っ頓狂な声で歌うロックが出て来てからこっちはダメだ。

220v_2

オリジナル通り暴れまくるギター。鮎川さんもいい加減バッチリはまりすぎてる!

200_2

Led Zeppelinでおなじみの「You Shock Me」。
この曲もWillie Dixon。
「Hoochie Coochie Man」、さっきの「I'm Ready」等のMuddy のオハコの他にもCreamで有名な「Spoonful」もWillie Dixonの作品。ちゃんと印税もらったのかナァ?
私がこの人の名前を知ったのはJohnny Winterのファースト・アルバムでのこと。ジャケットに出ていた写真を見て「スッゲェ、ハラだな~」と驚いた。
「100万ドルのギタリスト」と鳴りもの入りでデビューしたJohnny Winterもブルースの大作曲家にしてMuddy Watersのところのベーシストが自分のレコーディングに参加してさぞかしうれしかったに違いない。

210v

お次が圧巻だった…「I Just Want to Make Love to You」。

185v「♪洗濯なんかしなくていい、三度の飯と昼寝つき…●●させてくれればいい」…マーブロ的にこの先は書けない。菊さんの歌詞のコンセプトはほぼ原曲通りだ。
でもコレでいいんじゃないの?ロックは肉食であるべきなんだから。
どんなにカッコつけていたって今の若い子たちにこんなロックは歌えまい。「ありがとう」はロックじゃないんだよ。
コレこそロックの原点だ。だから「ロックはブルースの子供」なんだ。

240

「キング・スネーク」も「爆弾」に出て来る魚雷もテーマは全部そっち系の話だ。
これだけはガール・ロックにマネができないロックのサンクチュアリなのだ。
イヤ、ガール・ロックにはマネして欲しくない部分でもあったりするのは個人的な意見か?
それだけにボーイズはガンガン行って欲しいワケ!

230vマラカスを手にした菊さん。曲は「Tiger in Your Tank」。
コレも強烈な歌だ。
何かすっかりブルースが面白くなって来ちゃったぞ!

250浦田さんのドラム・ソロ。
ツブ立ちのいいストロークがすごく気持ちいい!

260_2ここでいきなりサンハウスの戻って「スーツケース・ブルース」。

M_s41a1116 曲のギター・ソロにもシビれたっけナァ。

290v_2

続々出て来るサンハウスのレパートリー。正直、うれしい!「すけこまし」から…

270_2「ミルクのみ人形」!
うれしいね~。

310

そして「地獄へドライブ」。

280_2ク~、タマらん!
この曲も夢中になって聴いたもんだ。
曲も歌詞もアレンジも非の打ち所がない!

300_2そして、締めくくりはもちろん「レモンティー」!

320vコレまた会場は大合唱!

330_2「♪あなたと飲みたいレモン・ティ」!
ダメだ、カッコよすぎる!
「Train Kept a Rollin'」よりも「Honey Hush」よりも「レモン・ティ」が好き。私はこういう曲が第一から第二世代の日本のロック・バンドが残した偉大な業績だと思っている。
つまり英米ロックのエキスの輸入と翻訳と改良だ。コレがなければ今の草食系グループもなかった。
問題はどこでどうロックがおかしくなってしまったのかとうこと。
それと、どうやってこの時代のロックに戻るかだ。その解決策のひとつは「ブルース回帰」なのではなかろうか?

340v_2もうひとつは「アナログ楽器の見直し」だ。
最新の技術を詰め込んだギター・アンプ・マシーンもいい。時代と利便性には抗えない。
でも、その前にこの鮎川さんのギター・サウンドを聞いて欲しい。それからでもゼ~ンゼン遅くはないハズだ。
370
この音はこういうセットアップからしか出すことはできない。

90v_2

イヤ~、もう最高のステージだった!もっと観たい!

菊(柴山俊之)の詳しい情報はコチラ⇒BOOGIECHILLEN
380v

ホント、思わずお礼を言いたくなる感じ!

390_2アンコール。
「(お客さんが)ギュウギュウでズッと立ってて疲れただろうから、アンコールは短くしようと思ったけどそれもムリっちゃね」と鮎川さんからご挨拶。

410

「マコちゃんとふたりで演ります」と始めたのは「Rolling Stone」。
サンハウスの「ナマズの唄」の原型だ。
歌詞には「Oh Well」と出てくる。結局Fleetwood MacだってMuddyなんだな。
やっぱりみんなMuddyの子供なのだ!

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そして最後は全員集合。

400_2曲は「Go my Mojo Workin'」。

430_2しかし、この曲にしてもあまりにも強烈な内容の曲ばかりなんだよね。

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今ではインターネットでいとも簡単に曲の意味がわかるので興味のある人はゼヒ調べてみて欲しい。
ほとんどすべての曲が男女の「ヘソ下三寸」がテーマになっている。
こうした内容の曲をストレートに味わっているネイティブの人たちの受け取り方は一体どんなだろう?
ネイティブ・スピーカーでも、どんなに英語を勉強した達人でも、自然にこういう世界に生まれた人でなければわからないのかもしれないナァ。

440_2でも、ひとつ言えるのは、やっぱりコレは「そういう音楽」ということで、その子供である「ロック」は自分の親を見習うべきだとということだろう。

480_2ステージのMuddyの息子たちに最大級の歓声が浴びせられたことはいう間でもない。

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520_2「ロックはブルースのベイビー」
こういうライブこそ若い人たちに観てもらいたい。イヤ、若いミュージシャンに観てもらいたいと思うね。

SHEENA & THE ROKKETSの詳しい情報はコチラ⇒RocketWEB

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(一部敬称略 2015年9月12日 下北沢GARDENにて撮影)