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2015年3月27日 (金)

三文役者なわたし <後編>

昨日は私的なことをグダグダと書いてしまって失礼しました!でもホントにうれしかったんだも~ん。
今日はサラっといけます。
…ということで<後編>。

10_2休憩をはさんで着替えて登場したボーカルの花之木哲。
そもそも苗字がスゴイ。
哲さんにダマって勝手に調べさせて頂くと、「花之木」さんという名前は広島の安芸郡がオリジナルのようだ。茨城にもいらっしゃるようだが、超激レアなお名前で、今全国で10人程度しかいらっしゃらないらしい。
哲さんも広島のご出身だ。
コレが「花木」さんになると7,500人ぐらいにハネ上がる。恐るべし「之」!

20v_2ギターの大竹亨。

30v大竹さんは1962 Bluesbreakerだ。

40_2ベースは石井正夫。

50vそしてドラムはさとっちょ。

60v第二部にはゲストで元メンバーの片山一郎が登場。
片山さんは二回三文役者に参加している。どういうことかというと、一回辞めて時期を改めてまた加入したということ。
昨日さんざん書いた「私の三文役者」は大竹&片山のツインギター期を指す。
ステージ上手にストラトの大竹さん、下手にレス・ポールの片山さんというのが当時の三文役者のフォーメーションだった。

70v第二部のオープニングは「銀ラメ」。
FreeというのかAlbert Kingというのか、はたまたBooker T.というのか、「The Hunter」に似たリフを持つこの曲は、いかにも三文役者っぽい作品だ。
コレもミュージカルのための曲。

50_2「♪チョット踊りに行きましょう」の繰り返しとサビのメロディが何とも魅力的だ。
ところがこの曲、演奏経験者が押しなべて口にするのは「構成がムズカシイ!」ということ。Aメロ、Bメロが不規則に繰り返されて演奏しているうちにワケがわからなくなってしまうのだ。

80_2片山さんはボトルネックでプレイ。現役時代には見られなかったアレンジだ。
片山さんのギターには憧れた。
ピッキングが完璧で、三文役者に非常にクールなギター・アレンジを持ち込んだ。当時ハード・ロック狂いだった私は、片山さんが作った「悪魔の誘い」という曲がすごく好きだった。
片山さんの家にも遊びに行ったこともあったし、彼がウチに泊まったこともあったっけ。

そして、彼は卓球の達人で現役選手。今でも大きな大会に出場している。
一度ご一緒させてもらったことがあった。もちろん私が相手じゃ面白くもなんともないってんで、「チョット、テーブルの端にラケットを立ててごらん」と言われてその通りにすると、私の持つラケットめがけてボールを打ち放し、延々とひとりでラリーを続けていた。アレにはブッたまげた!

85v続けて「サド書簡」。
この「サド」とはあの「サド」のこと。
最近、女性も含めて平気で「S」だの「M」だのという言葉を口にしている機会を見かけるが、非常に恥ずかしいと思うね。日本人の公衆的道徳感が世界と大きく離れていることを実感する。
私は仕事柄海外人と付き合う機会が多いが、「S」だの「M」だのと口にする人は皆無だよ。
ちなみに日本でいう「SM」は英語では「S&M」という。Frank Zappaの「Bobby Brown」という曲に出て来る。

さて、この曲の主人公、マルキ・ド・サドは18世紀のフランスの貴族であり、『悪徳の栄え』で有名な小説家だ。もちろん小説の内容はご想像の通りポルノチックで快楽的。
サドは虐待と放蕩の廉でバスティーユほかの刑務所に長期間にわたって投獄される。サドの作品はほとんどは獄中で書かれたという。
そのサドが獄中で書いた手紙、すなわち「サド書簡」を小説家/フランス文学者の澁澤龍彦が日本語に翻訳し、メロディをつけたのがこの曲だ。

90_2ツインリードによるEmのペンタトニック・フレーズでこの曲は始まる。

100v_2

110vこれもミュージカルのための作品で、それだけにシアトリカルに曲は展開する。大竹さんに借りたテープで初めてこの曲を聴いた時の衝撃はかなり大きかった。日本のロックってスゴイ!と思った。
すなわち歌詞の魅力である。
ある意味では、わたしにとっては最も三文役者らしい曲かもしれない。

120v切なくももの悲しい歌詞とメロディ。
「何たる人生だ!何たる殉教者だ!」…中間部の哲さんのセリフにはかなりグッときた!

130_3コレもいつでも弾けるし、一生忘れられない曲だ。

140名曲「北斗星」。

150哲さんは若い頃、勘当同然に家を出て、それ以来北斗星を道しるべにして頑張ってきたという。それを言葉にしたくて作ったという曲。
そういえば、曲の由来や自分がたどって来た道など、MCでずいぶん話していた。現役時代にはなかったことだ。
哲さんは私大の法学部の最高峰を中退していて、私が高校生の時、どうして法学部に進んだのかを訊いたことがあった。
弁護士になりたいと答えていた。これから変な犯罪がドンドン増えていくだろうから弁護士の出番が多くなるというのをその理由としていた。
哲さんが弁護士ならさぞかし心強いだろうな…。

160v片山さん、泣きのソロ!
160_2
この曲を歌う時にはいつも並々ならぬ感情を注入していた。
哲さんの中でも思い入れの大きい曲なのだ。

170v_2ここでまた4人体制にもどる。
上着を取ってさらにエキサイトする哲さん。

180v10曲目は「Hello Dear Friend」。

190_2さらに「Home Again」。

200vこの辺りは『Live On』というCDに収録されている曲。
時代がCDに突入したのだ。

210_2「Home Again」では哲さんもギターを披露。
私はなじみがないのだが、この辺の曲もいいナァ。シンプルにして深い!そして楽しい!

215哲さんのギターって音数が少なくて実にいい味を出すんだよね。
よく私に「キース・リチャーズみたいに弾いてくれ」って言ってたけどできなかったナァ。
ストーンズ苦手だからね。今でも聴いていないし、まったくできん。

当時は今みたいに「打ち込み」なんてものはなくて、作曲者が簡単にデモ・テープを作るなんてことはできなかった。
どういう風に新しい曲を作っていたかというと、哲さんがコードをストラミングしながら、フガフガと頭にあるメロディを口ずさむ。私が知っている限り歌詞は後からだった。
その哲さんの弾き語りにめいめいが音を足して行き、なんとなく形になってくる頃、そこに哲さんが素晴らしい言葉を乗せて曲に命を吹き込む…こんな感じだった。

217ショウもいよいよ後半に入り全員がヒートアップ!

220v派手なアクションこそないが着実にバンドをウネらせる正夫さんのベースがカッコいい!

230v_2昨日紹介したシングル「怒雨降り(どしゃぶり)」。

250_2コレも哲さんのお気に入り。
歌詞だけ読むと演歌だが、ゴッキゲンなロックンロール・ナンバー。
240
ア~ア~、一番前に座っていた女子もステージに引っ張り上げちゃった!

260_2続けて「回転木馬」。コレもミュージカルのための曲だ。

270v_2この曲もすごく好きで、高校の時、歌詞を書いた紙を屋根裏のお客さんに渡して「みんなで歌いましょう!」なんてやったこともあった。私も若かった!誰ひとり歌わなかった。

280v_2真ん中のギターのピックアップがカッコいいんだ!
今、急に思い出した!
昨日のゲームセンターのアルバイトの後、大竹さんは古巣の新宿の喫茶店の仕事に戻ったんだけど、私はその喫茶店でアルバイトをさせてもらった。ココでもお世話になった。
ひと夏で貯めたお金を全額つぎ込んでギターを買った。その時も大竹さんに付いて行ってもらったんだっけ…。
その当時、ウルリッヒ・ロートがすごく好きだったので、メイプル指板の国産の白いストラト・モデルが欲しかったのだが、当時、白いストラトにはローズ指板のネックが組み込まれているのが普通だった。
店員さんは「真っ白でカッコ悪いよ」というアドバイスをくれたが、断ってカスタムオーダーした。
1弦が切れやすいのが難点だったが、気に入ってずいぶん使った。フレットも猛烈にスリ減ってしまい弾けなくなってしまったので手放した。今も、その店が残っていれば、白馬のディスコの壁面に飾られているはすだ。
不思議なのは、その楽器店での様子はおぼろげなのだが、大竹さんとふたりで帰り道に乗った山手線の車内の光景をものすごくクリアに覚えているのだ。ゼンゼン普通の光景なんだけどね。こういうことってない?
ゴメンナサイ。それだけの話し。イヤ、なつかしいな…と思ってサ。

290vこの「回転木馬」はアップテンポでちょっと物悲しいメロディを持っている曲なんだけど、昔からステージの最後の方に演るのが定番だった。
320
前半とか中盤で演ったという記憶がない…それぐらいクライマックスにマッチする曲なのよ!
「♪スーパースターを背中に乗せて 夜の銀河に駆け上がれ」という歌詞がステキ。

295リズム隊も猛然とドライブ!

300_2さとっちょのドラミングも最高潮に達する!

310本編最後は「Goodbye my Town」という曲。

330_2そして、エンディング!
本編14曲。命を削ったかのような魂の熱演の連続だった!

350アンコールは「ヤケ酒ロックンロール」。
哲さんは、3コードで即興的な曲を時折作った。大抵はすぐに消え去ったが、この曲は案外長命を得た。
「ヤケ酒ロックンロール」…哲さんらしい。
18、19の時、池袋の極安飲み屋で初めてホッピーを飲んだ時も哲さんたちと一緒だった。イッパイ百数十円だった。
そういえばあの頃、ミュージシャンはタバコを吸うのが当たり前で、み~んなハイライトだったな。アレ、なんでだったんだろう?
私はちょっとキツくて好きではなかった。あ、今はまったくダメね、タバコ。

370長年の恋女房!
『七人侍』でいえば哲さんが勘兵衛と菊千代の二役、大竹さんは加藤大介演じるところの七郎次だ。

380正夫さんは作戦参謀的な五郎兵衛。片山さんは剣の道一筋の久兵衛。さとっちょはムードメイカーの平八だ。
え、私?へへへ、私は木村功が演じたオマメの勝四郎だよ。私はこの人たちの前では永遠にオマメで満足だ。
こんな個性的な連中だったからおもしろかったんだよね。
しかし、三文役者を辞めた後、友達に売ったあの1959、どこへ行ったかな?

390もっかい最後にジャ~ンプッ!!

400v始まる前、昔の曲を聴いたら号泣しちゃうんじゃないかと思っていた。でも案外大丈夫だった。
写真撮りながら「オエオエ」泣いてたらカッコ悪いじゃんか?助かった。
とにかくこの人たちのパワーがすごくて圧倒されまくり。懐かしくて涙ボロボロどころじゃなかった!

それとうれしかったのは哲さんがすごく元気で楽しそうに歌っていたこと。
もちろんとてもやさしくて思いやりのある人だけど、昔の哲さんはもっと音楽にガツガツした感じで、近寄っただけでヤケドをしそうなピリピリした雰囲気を持っていた。
当時は30を超えてビジネスにならないバンドをやっているなんてことは正気の沙汰ではなかった。「男子は30までに結婚すべし」という風潮があった時代だ。
哲さんもすごく焦っていたんだろう。
しかし、今回のステージはそういった「迷い」とか「焦り」とかいうものが一切ないように見えて、ものすごくハートフルな部分が露呈していたたと思う。
例えはよくないのかもしれないが、まるで覚えたての童謡を小さな子供が楽しそうに歌っているようなピュアな無邪気さを感じたのだ。
これこそがまさに<前編>に書いたように「時間の経過が与えてくれる感動」ではなかろうか?

それにつけてもやっぱり曲がいい。
三文役者の曲はブルースの形態はとっていないが、「ブルース」感に満ち溢れている。ブルーノートがどうの、とかコード進行がどうのとかいうのではなく、魂がブルースなんだな。日本人のブルースとでもいえばよいのか?
ロックの黄金時代を経験している年配の諸兄が若いロックを聴けない理由はここにあると観ている。若いバンドのサウンドにはこうしたブルース感が完全に欠落しているのだ。
これまた「時代」がそうさせるのであって、文句を言ってもはじまらない。
だから、ジジイはジジイが演るロックを聴けばいい。ジジイにはジジイしかできないこともたくさんあるのだから。
そのためにはもっと三文役者にガンバってもらわなきゃ!
360
昨日も案内した通り、4月18日、新宿URGAに出演するので是非三文役者を体験してもらいたい。

三文役者の詳しい情報はコチラ⇒三文役者オフィシャルサイト

【特報!!】
チョット、これはスゴイよ!
大人のフジロックかサマソニか、はたまた日本のHigh Voltageか?!
外道、頭脳警察、めんたんぴん、THE 卍、そして三文役者が一堂に会するスペシャル・コンサートが決定した。
おやじニンマリ。
6月28日、場所は新宿のスペースゼロ。
ここは2000年にJim Marshallを呼んで「マーシャル祭り」を開催した会場だ。
ん~、運命を感じるネェ~!

June
終演後、打ち上げで…。
「オマエはいくつになっても可愛いナァ~」って!親父にも言われたことない!

S_tetsu (一部敬称略 2015年2月21日 荻窪ルースターズ・ノースサイドにて撮影)