LIVE ROKUGENSHIN~ROCK DAY <後編>
いよいよ『LIVE ROKUGENSHIN~ROCK DAY』のレポートも最終巻に突入する。
「Black Night」でにぎやかに盛り上がった後は…
ゲスト・ギタリストの田川ヒロアキと…
山本恭司によるダブル「Ave Maria」。
ヒロアキ君は今年、その名も『Ave Maria』なるアルバムを発表しているのはいつもMarshall Blogをご覧になっていらっしゃる皆さんにはご存知の通り。
恭司さんも以前に『Mind Arc』という作品でこの曲を取り上げている。いかにも恭司さんのギターにピッタリくる曲だとは思わないかい?
ヒロアキ君は今日唯一のコンボ・プレイヤー。愛用のJMD501だ。他のスタックに負けないパワフルな音圧と「Ave Maria」を繊細に奏で出すこのバーサティリティが素晴らしい。いいアンプだったのに…。ヒロアキ君はおそらく世界一のJ「MDコンボ使い」だろう。
ク~、この静謐な空間!さっきまでこの同じ舞台でピロピロと激しいギター合戦が繰り広げられていたとはにわかには信じがたい!
しかし、このシロタマだらけの平坦なメロディをシングル・ノートで弾くこの勇気。
ギターに込めた情熱を一気に解き放つかのような華麗な恭司さんのプレイに対し、たおやかに流れるリズムの森でポツンポツンと音を置きながら散歩しているようなヒロアキ君の「うた」。ヒロアキのギターの音色がもっとも美しく響く瞬間だ。
壮絶な速弾きで技術を競い合うのもにぎやかで楽しいものだが、こうしたバラードでフィーリングをぶつけ合うのもスリリングなものだ。「油絵の勝負」と「墨絵の勝負」とでも例えようか…。
観客全員が一音も聴き逃すまいとステージに集中する。咳ひとつ出ない、まるでクラシックのコンサートのよう。
驚異のダイナミクスと美しいビブラート、恭司さんの魅力が満タンに詰まった超絶プレイ。何も速弾きだけが超絶技巧ではないということを知るべし。
それにしてもイイ曲だ。でもね、ひとつ気になっているのはこの曲の呼び方。「仰げば尊し」での「あ・お・げ・ば・と・う・と」とアクセントをつけないで最後の「し」で下げるでしょ。コレおかしい。
「仰げば」の「お」と「尊し」の「う」にアクセントが来るべきなんですよ。こんな変なイントネーションを受け入れちゃうところがまた日本語の偉大なところなんだけどね。
梶原順がステージに立つ。
「本当はCROSSOVER DAYに出るべき人」とされながらも昔取った杵柄のロック魂こもった演奏を聴かせてくれた。
まずは六弦心曲の「夏は来ぬ」。この曲を聴くと必ず石鹸のコマーシャルを思い出す。「夏は絹」ってヤツ。ウチの父がこの曲を使ったテレビCMを見て「フフン、『夏は絹』か…うまいこと考えたな…」と言ったのが忘れられないのだ。
これもメッチャいい曲だよね。ビートルズ的には「P.S. I Love You」か?意味はないけど、なんかそういう感じを受ける。あまり人の口には上らないけど、スゲェ名曲ってこと。
リハーサルの時は「夏」ということでGershwinの「Summer Time」をそのままクォーテーションしていた。カッコいい!
計算された素晴らしく抑揚の効いたプレイがショウ全体のいいアクセントになった。梶原さんのプレイもさることながらこのあたりの演出の妙は見事と言わざるを得まい。
まずはブルースでコテ調べ。Freddie King~Eric Claptonで有名な「Have you ever Loved a Woman」。作者はFreddieでもClaptonでもなくBilly Mylesという人。
エモーショナルなギターバトル!やっぱりギターにブルースは欠かせない!
ところでこの光浩さんの音!素晴らしすぎる!
実際、リハーサルの時もみんな「なんじゃコリャ?」と注目を浴びたのが後ろに見えている2203KK。そうJCM800のKerry Kingモデル。そうなんですよ。名器だったんですよ。さんざんクリニックをやったっけな~。
別にKerryのような凶暴な音を出さなくても何ら問題はないワケで…。問題どころか名器の誉れ高いJCM800 2203のパワー・アンプにKT88を搭載したモデルなんだから音が悪いワケがない。コレさんざんクリニックで言ったんだけどな~。
それをこうして名手が使いこなすのだからタマらない!「身内すぎるゲスト」なんて恭司さんおっしゃってたけど、やっぱりシックリくるね。クドイようだけど、私がこのおふたりをはじめて拝見したのはエアロスミスの初来日の時の武道館だった。
あれから35年以上経って…武道館のテッペンからBow Wowを見て感動した少年には色んなことがあって、今こうしてMarshallから直々にMarshallの仕事をさせていただいて、恭司さんともお仕事でごいっしょさせていただいて…メッチャ不思議。
その間、このおふたりはあれからもズーっと第一線で音楽をされて来たことに畏敬の念を抱く。
曲は「Silver Lightning」。ブリティッシュ風味テンコ盛りのへヴィ・チューン!
そして、本編最後の曲に突入する。
「Signal Fire」だ!
日本のロックを代表する不滅のハード・ロック・ナンバー!
リハーサルの時、思わず「気持ちイイ!」と楽しそうに快哉の声を上げた恭司さん。
ここまでリハを入れて3日間、弾きっぱなしの石黒彰。
こちらも弾きっぱなしの二家本亮介。
叩きっぱなしの山本真央樹。
素晴らしいプレイだった!
曲はこの一大ギター絵巻の閉幕にふさわしい六弦聖の「Purple Haze」。
ギュワワワ~ン!ヒロアキ君のスライド・ウォッチに恭司さんもビックリ!
やはりこのテクニックがなければこんなイベントのバックは務まらんわな~。
でも、この3人は翌日の<CROSSOVER DAY>が待ってるでね~。ホント、すごい人たちです。
そしてエンディング!
やはりこうしたジャム・セッションはこの手のイベントの華だ。運動会でいえばクラス対抗リレーだ。「赤勝て、白勝て!」…しかし、今日のコンサートに勝者はいない。強いていえば出演者も観客もノックアウトしてしまったロックとギターが勝者ということか。
台風一過。まだ『LIVE ROKUGENSHIN』は終わらない。
熱くなった気持ちをクールダウンさせるがごとく、恭司さんの美しい独奏による「蛍の光」が用意されていた。
ギタリストとして、そしてホストとして感動的な仕事ぶりを発揮してくれた恭司さん、やっぱり日本のロック界の宝モノだ!
終演後記念にパチリ。
恭司さん、大野さん、バックのお三方はまた明日!
六弦心の詳しい情報はコチラ⇒六弦心Official Website
『LIVE ROKUGENSHIN~CROSSOVER DAY』につづく
(一部敬称略 2013年9月21日 東京キネマ倶楽部にて撮影)