THE TREATMENT in OZZFEST JAPAN 2013
「コレ聴いてごらん。シゲなら絶対気に入ると思うよ」…と、2年前にイギリスの友人からもらったCDがコレ。
ケンブリッジ出身のTHE TREATMENTのデビュー・アルバム『THIS MIGHT HURT』だ。
まずタイトルがいい。「痛いかもしれませよ…」。病院の治療室でこれを言われるほどイヤなものはない。何しろ医者が「痛い」って言うくらいなんだから想像を絶する苦痛が予想される。特に歯医者。「ガマンできなかったら手を挙げてくださいね」と言われた瞬間にガマンできず手が挙がるわ!
そしてジャケット。今は違うデザインになっているようだが、こっちの方がいい。ゴム手袋をはめたオッサンが処置室から顔を出して「痛いかもしれませんよ…」でメンバーが「イヤだ~!」と絶叫している図。おもしろいじゃないの。
痛くったってしょうがない、治療(Treatment)なんだから!
内容は、友人の言うことに間違いはなく、私の耳にピッタリシックリとくる、イギリス然とした正統派ハード・ロックだった。
「何が?」って、Marshallの分厚い音色で奏でられるギターリフとソロ。そして聞きようによってはスティーヴン・タイラーにも似た感のあるこれまた図太い声のボーカル。もうこれで合格。
このバンド、ギター・アンプはMarshall、ドラムはNATALを使っている。その関係でOzzfestのパフォーマンスをMarshall Blogで取材させてもらうことになった。「それじゃ自由に使っていいよ」…と、ギターのふたりとドラマーの最新のアー写も送ってきてくれた。いいバンドだ~!
そしていよいよその雄姿を現した!
ステージの袖で出番を待つ彼らのそばにしばらくいたのだが、若い…メチャクチャ若いでねーの。イヤ、若いってのは知ってたけど、そばで見るとまだ子供だよ。肌なんかツルっとしちゃって。
OZZFESTへ行ってもコレしか見ない!若いんだもん、応援してやんなきゃ!
メンバーは5人。
ボーカルのマット・ジョーンズ(Matt Jones )。
ギターのベン・ブルックランド(Ben Brookland)。
もうひとりのギター、タゴール・グレイ(Tagore Grey)。
ベースはリック"スウォグル"ニューマン(Rick"Swoggle"Newman)。
ドラムのダーニ・マンズワース(Dhani Mansworth)という面々。
今年で二十歳ぐらいなんじゃないの?
そんな若者がこういう正統派のブリティッシュ・ロックをバッチリとキメてくれるのだからうれしい限りだ。
ステージ狭しと飛び回るマット。
CDの印象とは異なる歌いっぷりで、もっとワイルドな感じだった。
喉がはちきれんばかりにシャウトする姿はホンモノのハード・ロック・シンガーだ。
丸っきり役目を分配しているワケではないが、ベンが主にソロを弾き、
タゴールがサイド・ギターに徹するというコンビネーション。
ベンにしても「オレがオレが」のチャキチャキのシュレッダーというワケではなく、あくまで曲の中で生きるソロを弾いている感じ。
タゴールもソリッドにバッキングを務め、バンド・サウンドをガッチリと固める。
リズム隊も強力だ。
スウォグルも徹底的にステージを駆け回りお客さんを扇動する。
シンプルでストレートなドラミングも気持ちがいい!
こうした直球勝負のブリティッシュ・ロックにはもってこいのリズム隊といえよう。
これも毎度Marshall Blogで書いていることだが、とにかくイギリス勢にはがんばってもらいたいところ…と思っていると、The DarknessやThe Answerのようなバンドが出てきて「さすがイギリス!」と思わせてくれるのだが、
最近どーもそういうバンドが長続きしない…。やっぱりダメなのかしらん?と思っているとこうしてまた出てくる。やっぱりイギリスはおもしろい。
しかし、このバンド、CDで聞いているより音楽のイメージがウンとAC/DCに似ていることに驚いた。
インストゥルメンタリゼーション(この言葉一度使ってみたかった!音楽を構成する楽器の配置のこと)が同じと言うことや、ふたりのギターの役割がどうとか、そういうことではない。 ましてや曲が極端に似通っているワケでもない。
おそらく、無駄をすべてそぎ落としたハングリーなロックという共通点が根底にあるからではなかろうか?
そして、やぱりこうした正統なブリティッシュ・ロックにはMarshallのギター・サウンドがシックリくる。
すなわち伝統のブリティッシュ・ロックサウンドだ。
NATALは1965年に創立したパーカッション・ブランドで数年前にMarshallが買収した。Brian Tichyが愛用していることでも知られている。
そうそう、NATALといえばThin LizzyのBrian DowneyもNATALプレイヤーだ。そのThin Lizzy、2週間前にMarshallの工場内にあるTheatre(劇場)でコンサートを開いたのだそうだ。従来のメンバーはScott GorhamとBrian Downeyしかいないが、内容は相当よかったらしい。何しろ曲がいいもんね。観たかったな~。
出てくる曲、出てくる曲がビシっと音楽的にキマっていて聴きごたえ十分!
このTHE TREATMENT、他の若手バンドと比べると、若い聴衆にはもはや毛色の違う部類に映るのだろうなァ。一体どういう風に聴こえるんだろう?
冒頭に書いた通り、このTHE TREATMENTの前後の出演者を見るにとどまったが、やはりロックは先祖返りを必要としているように感じた。
このバンドがブリティッシュ・ロックにTREATMENTを施してくれるのを期待している。少々痛いかもしれないよ!
(敬称略 2013年5月11日 幕張メッセにて撮影)