Their Time Has Come ~Crying Machine登場!
シリーズで展開している東京キネマ倶楽部でのKelly SIMONZのコンサート。『"the 5th" High Resolution Live 2013』と題されてその第5回目が開催された。
今回サポート・アクトとして登場したバンドがCrying Machine。2009年結成の関西出身のバンドだ。
また、関西ですよ。ロックの世界において、どうしてこうも関西勢というのはいつの世も強いのだろう。私も大阪に数年住んでいたことがあるが、生活は別に東京と変わらないといえば変わらない。ポークカレーとチクワブがないことぐらいか?それなのに古今東西、ナント関西出身のバンドの強力なことよ!
これがですよ…大変によろしい。何の予備知識もないままに当日のリハーサルではじめて音を聴いたのだが、思わず聴き入ってしまった。
メンバーは;
Hundred Voltage VocalのHILE。
Emotional GuitarのMASHA。
Satanic KeyboardのYOSISI。
Stylish BassのFUKO。
Alternative DrumのSHUNの5人。
ひとりひとりのキャラが際立っていていい感じ!
「ま、シゲさんが「いい!」なんて言うところを見ると、どうせギターのヤツがピロピロっとバップ・フレーズを弾いたかプログレ風味がちりばめられている…とかそんなところだろう」…なんて思ってるでしょ?
ゼンゼンちゃうねん。
サウンドはX JAPAN以降世代のハード~メタル風味にB'zが好きだった、あるいは好きなんだろうナァと思わせるものだが、まったくそれだけに収まらない、「バンド」としての魅力にあふれかえっているのだ。
下は2012年9月に発表されたセカンド・アルバム『The Time Has Come』。A面とB面に6曲ずつ収録されている…といってもまさか両面CDというワケではなく、B面の1曲目にインストを持ってきてチョイと雰囲気を変えてはいるが、全12曲が続けて収録されている。Kellyさんがライナーを寄稿している。
ああ~、色々言いたい!
どの曲もよく練られていて、聴きどころが満載だ。「Sail Away」 という曲の3:02から3:15には度胆を抜かれたよ。中間部のアイリッシュ風のパートも最高にカッコいい。
ギター・リフも秀逸だ。
我々世代がCrying Machineというバンドを形容するとすれば、シンプルに「ポップなハード・ロック」ということになってしまうのだが、前述のA/B面のアイデアもしかり、このバンドにはロックの黄金時代と今をつなぐ見えないパイプのようなものを感じたね。
できればCDを聴いてからライブを観たかったな…。
こちらは5月8日に発売されたばかりのシングル『Brilliant Future』。「Brilliant」はイギリス人がよく使う言葉だ。アメリカ人は滅多に言わないような気がするな。やっぱりCrying Machine、ちゃんと黄金のブロティッシュ・ロックを吸収しているか?
爽快なドライビング・チューンが2曲収録されている。Mashaのギターもスロットル全開だ。
さて、ライブ。
当然ステージでのパフォーマンスもCDとまったく変わらない密度の濃さで抜群の演奏力を見せる。
「100V」どころか「230V」もあるのではないかいうステップアップしまくりのHILE。
最初から最後まで気合の入った歌いっぷりは見事だ。
ハッキリ言って、この人は最高です。『The Time Has Come』にも数々の作品を提供している中心人物ひとり。
もう、とにかくアクションがスゴイ!ま、気を悪くされるかもしれないが、「ふなっしー」のような鋭敏な動きでステージ狭しと暴れまくる。どうにもそのアクションが曲とマッチしておらず、かえってモノスゴイ存在感をクリエイトしてしまう。あんまり動きが速くて写真が撮りにくいのがタマにキズってか?
Flying Vベースを下げて黙々と低音を刻み続けるFUKO。
え、なんでこういう音楽やってるの?と思わせなくもないたたずまいだが、よく練られたベース・ラインがガッチリとバンド・サウンドに食い込んでいる。
パワフルでへヴィなドラミング。
SHUNのドラムはCrying Machineのサウンドをハードに演出している大きな要素だ。
そしてMASHA。
ギター・ソロが絶滅しそうな状況下、皮肉なことに続々と現れ続けるシュレッダー。弾けないか、弾きすぎるか…MASHAはこの激しい2極化の環境下に現れた新しいギター・ヒーローかもしれない。
そのカギは「メロディ」とトーンを含めた意味での「フィーリング」だ。
MASHAも他の追随を許さない抜群のテクニックを持ったシュレッダーだが、それだけに収まりきれないスケールの大きさがあり、また反対に密度の濃さを感じさせる。
そして、トーン。おそらく右手のアタックがものすごく力強く正確なのであろう。じつに小気味のいいギター・サウンドだ。愛器は1987。彼も根っからのマーシャリストだ。名前からしてMASHAだからね。Marshallはそういうギタリストを裏切らないし、Marshallを愛するギタリストはそれを知っている。
シュレッディングというのは両刃の剣のようなところがあって、好きな人なら死ぬまで速く弾いてくれることを望むのだろうが、そうでない一般ファンにはチトつらい。全部同じに聴こえちゃうからね。いいメロディとD難度の技をうまくちりばめることがどうしても肝要になってくる。
Paul GilbertやJoe Satrianiなんかはそういうところを実にうまくコントロールしていて、ギターだけ弾いていても観る者を飽きさせない。このMASHAのプレイにもそういうところがあるように思える。そして、ギター・ソロが曲を殺すことがない。
曲があってのギター・ソロ…彼はそれがよくわかっているのではなかろうか?
私がこのバンドをなぜ気に入ったのかというと、答えはいつもMarshall Blogに書いてきたことを感じたからだ。
それは、もうロックが進化することができなくなっていて、音楽の抜け殻しか作れなくなってきていることは論を俟たない。これを打開するにはもう温故知新しかない。でも、ただ古いモノを聴いてそれをマネするだけでは意味がないというか、またぞろロクでもないものができてしまうことは明らかだ。
60年代や70年代初頭のロックがなぜあれほどクリエイティブでカッコよかったかというと、アレを生み出す空気があったからで、今同じことをやっても「ああ、なつかしい」で終わってしまうだろう。
今の若い人たちには、自分の育った環境で培った感性を持って温故知新をしてもらいたいのだ。
これは私が勝手に感じたことなので本人たちはどう思うかはわからないが、Crying Machineはそれ実践しているように見えたのだ。
今回のアルバムはセルフ・プロデュースで制作されたが、次回はドロッドロのブリティッシュ・ロッカーのベテラン・ギタリストあたりがプロデュースを手伝ったら面白くなるのでは?と個人的好みで期待したりもしている。
アコギももって歌ってみたかったというHILE。バッチリきまってたよん!
少しの乱れも見せずに1時間のステージを完璧にこなしたMASHA。すごい集中力だ。
エレガントにステージを舞い、バンドをドライブさせたFUKO。
SHUNのハードなドラミングも最後まで爆発し続けだった!
なんか一筋の光明をCrying Machineに見出したような気すらしたね。まさに「Brilliant Future」だ。そしてそんなバンドをMarshallがサポートしていることがうれしい。やっぱりいいロックにはMarshallが必要なのだ。
「The time has come」…そう、Crying Machineの時代が来た。
Crying Machineの詳しい情報はコチラ⇒Crying Machine Official Website
(一部敬称略 2013年4月27日 東京キネマ倶楽部にて撮影)