BLOOD BROTHERS~RAZOR HIGHWAYの巻
CALAVERASのステージが終わり、『BLOOD BROTHERS』も後半に突入する。
オープニングSEの「Flammable Souls」が場内に流れ、深い霧の中に浮かび上がるメロイック。
RAZOR HIGHWAYのお出ましだ!
Marshall Blogには早くも2度目のご登場~!
深澤AKI
田中"OMMY"輝臣
高橋史男
池田督樹
矢浪雅也
1曲目は昨年発表したセカンド・アルバム『FLAMMABLE SOULS~Blaze of the Rebirth』から「Ashes and Dust」。
ノッケから凄まじいテンション!
まさにレーザー光線のような鋭い演奏で幕を開けた。
2曲目には早くもキラー・チューンのひとつ「Rest in Power」。
ゴリンゴリンと池田さんが出す豪放磊落なベースに乗って…
AKIさんが左のコブシを見せて歌うドライビング・ナンバー。
そこへ切り込んで来るのがOMMYさんのソロだ。
今日OMMYさんが使っているMarshallは「JCM900 4500」。
100Wモデルの「4100」の弟分。
こうしてMarshallを普通に使って出す音はやはり太く、美しいね。
遠慮のないOMMYさんのシュレッディングから…
高橋さんとのツイン・リード・アンサンブルへと続く。
何度聴いても「♪Rest in Power」というキメのフレーズと唱えるパートが気持ちいい。
「Hello, Kichijoji!
キチジョウジ、キチジョウジ、キチジョウジ…Oh my God Kichijoji!
英語はこのくらいでいいかな?
今日はこんなにたくさん集まってくれてありがとうございます。
今日は60分ありますのでたくさん演ります。
早くもジャンピング・タイムだぞ。
足腰が悪い人はやらなくていいです…ということでイキましょう!」
3曲目は『FLAMMABLE SOULS』の曲順通りに「Under Pressure」。
これまたスカっと来るノリのよい1曲。
ココでも池田さんのダイナミックなベースが鳴り響く。
力を込めて叫ぶ「♪Pressure」!
これこそスゴイ圧力。
そしてMasayaさんのパワフルなスティックさばきがフィーチュアされる。
そして、歌のメロディをナゾるOMMYさんのソロが続く。
もう1曲続けて「Born Crusader」。
ココまで『FLAMMABLE SOULS』の曲順通りに展開した。
随所に現れるコーラスがとても勇ましい。
パートが進むたびに転調を繰り返す「直下型コード進行」ナンバー。
もちろんギター・ソロのパートでも効果的に転調が導入される。
「Oh, Kichijyoji!
キチジョージ、キチジョージ、キチジョージ…。
今日は『Blood Brothers』という素晴らしいイベントにこんなにたくさん集まって頂いて本当にありがとうございます!」
繰り返し感謝の言葉を述べるAKIさん。
「今日はまず最初に…」と、ポケットからメモを取り出してOAを務めたバンドの名前を確認してから紹介するAKIさん。
OAのバンドは「Botolph Dissidents(ボトルフ・ディシデンツ)」。
そう…名前を間違えてしまっては失礼だからね、コレでいいのだ。
いわゆる「大人の事情」で今回は当レポートにご登場頂けなかったが、そのバンド名がどうにも気になってチョット調べてみた。
「dissident」というのは「意見が違う人」とか「反対者」という意味…コレは普通の英単語だからわかる。
問題は「Botolph」の方。
70年代に大人気だったバンドとか野球の「レッドソックス」、「バークリー音楽院」なんかで馴染みのあるマサチューセッツ州の「Boston(ボストン)」という街があるでしょ?
この街は1630年にイギリスの東岸のリンカンシャーにある「Boston」から移住してきた清教徒たちがその名前を移植して付けられた地名なんだね。
そして、ボストンというのは「Botolph's Town」の略称で「ボトルフの町」という意味なのだそうだ。
この「ボトルフ」というのはナンのことかと言うと、7世紀にそのイギリスのボストンに僧院を建立した僧侶の名前。
ボトルフはもちろん聖人(Saint)であり、大修道長(Abbot)という高い地位のお方。
イギリスにはこのボトルフに捧げられた教会、すなわち「St. Botolph's Church」が71堂もあるという。
色々と調べて「ボトルフ」についてはわかったんだけど、バンド名の「ボトルフ反対者」というのがナニを意味するのかはわからなかった。
代りにココで取り上げたいのはこの「聖人」。
生存中にキリストの模範に忠実に従ってその教えを完全に実行した人たちの称号が「聖人」なんだけど、聖人に認められるのはメチャクチャ大変なんですよ。
認定されるまで何百年もかかったという人もいるぐらい。
かつてジョン・コルトレーンが「聖人になりたい」という発言をしたことはジャズ・ファンの間ではよく知られている。
じゃ、日本でも世界的に有名な聖人がいるのをご存知か?
それは「日本二十六聖人」のこと。
キリスト教禁制下、豊臣秀吉の命で子供2人を含む26人の信者が見せしめのため、耳をそがれ、裸足で京都から長崎まで歩かされて最後に磔(はりつけ)となった。
下はその磔刑が行われた今の長崎駅の向かいの「西坂」という丘にある「日本二十六聖人」記念館の慰霊モニュメント。
コレは世界のキリスト教関係者の間では本当に知らない人がいないぐらい有名な事件で、なじみがないのは当の日本人ぐらいかも知れない。
そして、いつでも観光客で賑わっている世界遺産の「大浦天主堂」。
正式名称は「日本二十六聖殉教者天主堂」といって西坂の方を向いて建てられている。
この大浦天主堂を建てたフランス人のプチジャン神父は、まだキリストが禁制だった1866年(慶応2年)、自ら名乗り出た信者と遭遇し、絶滅したと信じられていた日本人のキリスト教信者が250年ぶりに発見された。
この事件は「信徒発見」と呼ばれていて、日本二十六聖人同様、世界中のキリスト教関係者の誰もが知っている超有名な話なのだ。
知ってた?
私はクリスチャンではないけど、「二十六聖人」は知っていた。
でも「信徒発見」については遠藤周作の『女の一生』という本を読むまで知らなかった。
脱線終わりました。
「そして、今演っていたCALAVERAS…みんないい人達ばっかりで『チョット一緒に演ろうよ~』って言って仲良くさせて頂いています。
今日は3バンド、最後まで楽しんでください。
疲れた人は椅子がありますから膝と腰を休めてください」
高橋さんのギターをバックに…
AKIさんがジックリと歌い込むバラードは「In the Arms of a Stranger」。
ファースト・アルバム『GRACE THROUGH INSANITY』の締めくくりのナンバー。
高橋さんのメロディアスなソロ。
さりげなくサブドミナント・マイナーを取り入れたりして、すごく凝った曲作りが耳を惹く。
AKIさんの歌にOMMYさんのギターが重なって曲はドラマチックにエンディングを迎えた。
曲が終わるとスッとAkiさんがOMMYさんに近づいて尋ねる。
「Oh, Are you hungry?Are you 誕生日?」
「I‘m hungry. No 誕生日」
OMMYさんが弾くソリッドなリフでスタートするのは同じくファースト・アルバムから「Hungry for Your Heart」。
OMMYさんへのAKIさんの「Are you hungry?」はこのためだったのか!?
ハード・ロックの曲調とAKIさんが歌う耳馴染みのよいメロディの混ざり具合が絶妙。
全編を通じて聴くことができる池田さんのコーラス。
このバンドのひとつの強力な武器であることは間違いない。
OMMYさんのソロ。
ソロの前に挟み込まれたバンド・アンサンブルのパートからこのソロへの流れが実にカッコよい。
外国人のお客さんに…「Every song we play tonight is from the first and second album. If you like it, you get them!」
「日本にいるんだから日本語がしゃべれるでしょう。
もう英語はいいよね。
…ということでさっきKishi KenくんがチョットMCで言ってましたけど、この前CALAVERASはアメリカに行って来たんですよね。
その前にも彼らは一度行っていて『Whisky a Go Go』とかで演っているんです。
そしたら『Akiさん、Whisky a Go Goのパーカーえらい高いんですよ!」って。
『え~、いくらすんの?』と訊いたら『80ドルもすんねん!でもペラペラですわ~』って言っていました」
「ボクらの世代だと、やっぱりね、そのWhisky a Go Goとか『Rainbow』とかのあの通りにタワーレコードがあって、そこの駐車場にキレイなお姉さん方がたくさんたむろっていて、バイカーがブンブンやっていて、モトリー・クルーが歩いていて、ガンズアンドローゼズなんかも隣で演ってるとかね…そういう時代なんです。
ですからロサンゼルスのWhisky a Go Goにはとても思入れがあるワケなんです。
次の曲は、そんな時代、1989年に思いをはせた曲でWhisky a Go GoとかRainbowとかが歌に出て来ます
皆さん、よかったら一緒に歌ってください」
AKIさんのMCで思い出した。
60&70年代のロックをコンパイルした『Amplified』とかいう下の怪しげな2枚組のCD、30年近く前に確かそのタワーレコードで買ったんだわ。
完全にジャケ買い。
さぁ、景気よくぶっ飛ばせ~!
曲は「89」。
痛快な雅也さんのドラミング!
まさに今よりはるかに景気のよかった時代を思い出させてくれるようだ。
池田さんは低音だけじゃなくてアクションもスゴイのだ。
この日はあまりにも煙がスゴくてその華麗なアクションをキレイに写真に収めて差し上げることが出来ず臍を噛む思いをした。
このチームにとっての愛奏曲感ということが強く伝わってくるナァ。
古くはハリー・ニルソンの「One」、デヴィッド・ボウイの「1984」、クイーンの「'39」、TOTOの「99」、ジャズではマイルス・デイヴィスの「81(作曲はロン・カーター)」やジョニー・グリフィンの「49」等々、数字をタイトルにした曲って結構あるんだよね。
しかも名曲ぞろい。
この「89」も名曲のひとつと言っていいんじゃん?
コレはタイトルではないけれど、歌詞に数字を使ったスゴイのがある。
ブロードウェイ・ミュージカルの『RENT』の「Seasons of Love」という主題曲。
何せ「♪Five hundred twenty-five thousand six hundred minutes」と歌い出すのだ。
すなわち「525,600分」。
ナニを意味しているのかというと、「1年」の長さを「分」に換算するとこの数字になるワケ。
英語ならではの歌詞ですな。
ナンて説明したらいいのかな?
「♪Take me back 89」の後のGとAの2音で弾くフレーズ。
平行で長3度の音を被せている。
いうなればクリームの「Crossroads」でクラプトンが弾いているリフみたいなスタイルなんだけど、コレがアホほどカッコいい!
もちろんこんな曲にはギター・ソロはつきもの。
2人のソロがフィーチュアされた。
「1989…『1989』って言って懐かしんでいるのは、このメンバーの中でどうもオレだけなんですよ。
バンド内に年齢差がありますね。
『あのアーティストのどのアルバムを最初に聴いた?』なんて話になると、オレはどのバンドもファーストから聴いてんのよ」
「ところで、昨日はOMMYの誕生日だった。
せっかくだからビールをあげようと思って…仏壇のローソクでゴメンよ。
…ということで皆さんご一緒に。
♪Happy Birthday to you~
おめでとうございます!」
缶ビールのバースデイケーキ。
OMMYさんがローソクの火を消す。
「何歳になったかは訊かないね。
こんな安いモノもんでスミマセン!
ローソクはハズして後で使えるからね。お盆の時にね」
続いては久しぶりに取り上げたという「Face The Light」。
これまたシンプルなギター・リフが魅力的なドライビング・ナンバー。
AKIさん:♪Face the light!
お客さん:ッホイ!
のやり取りが気持ちいい~!
この曲でもギター2人のソロがフィーチュアされて…
客席から大きな歓声が上がった。
「やっぱりイスがなくてヨカッタね。
イスに座ると気持ちが萎えたりしますから。
…ということで雅也が大好きな曲を演るよ。
礼はいらないぜ!
セカンドアルバムからのモテモテ曲を演るゼ!」
以前、この曲を演奏し終えた後、雅也さんが「泣きそうになった」と発言した「In This World」。
ロマンチックなムードがハードに漂っている確かにいい曲だ。
大丈夫、泣いてはいない。
お客さんも手を左右にフリフリしてこの名曲を大いに楽しんだ。
「OK!ボクはココからそんなに遠くないラグビーの強い学校に通っていて、テニス部に入ったんですよ。
ナンでテニス部に入ったかと言うと、ビョルン・ボルグって長髪だったでしょ?
だからテニス部は長髪でいいんだと思って入ったんだけど、『ボールいきます、ボールいきます』ってズ~っとやらされて…で、『来週からアタマ坊主な』って言われて辞めました」
ヤダったよね~、坊主頭。
「それでその時代に髪を切らずにバンドを始めるワケなんですけど、隣の中学校にヴァン・ヘイレンを完コピーしてるらしいというヤツらがいてオレと同じ高校に入って来たの。
そいつらはスコーピオンズとか色々演っていてこのお店に出ていたんですよ。
オレが17の時…だからもう40年以上前の話し。
まだお店がこうしてあるんだよ!ありがとうございます!」
ハハハ!コレはスゴイ!
実は私もシルバーエレファントからそう遠くない中央線沿線の高校に通っていましてね、校則で完全に長髪が禁止されていた。
1979年、その学校が創立50周年を迎えて、とある日曜日に全校生出席の大規模な記念行事が執り行われた。
ところがその日、私が組んでいたバンドが高校生の分際でシルバーエレファントに出演できることになって、サァ困った!
昔はライブハウスに出演することはかなりステイタスが高かったので何が何でも出たい!
かといって重要極まりない学校行事をサボるワケにもいくまい。
かなり迷った末にシルバーエレファントを採った。
どういう類のウソをついたのかは覚えていないのだが、とにかく学校の行事をパスさせてもらった。
シルバーエレファントのオープンは1978年なので当時はまだ出来たばかり。
現在の「プログレの聖地」とは全く趣を異にする「おしゃれなライブハウス」というイメージだった。
店内の壁は真っ白で、ステージの段もなかった。
その頃は照明やミキサー卓が設置してある中2階がまだなくて、現在楽屋として使っている小さい部屋にミキサーが設置してあったように記憶している。
出られてうれしかったネェ。
ところが!
その学校行事が終わって数日すると、ナゼかサボったことが露見してしまい職員室に呼び出されてしまった。
ビックリするほど怒られることはなかったが、当時の高校生にとっては「極刑」に値する「ボウズ」が言い渡された。
コレにはマイった!
高橋さんの前でナンだけど、ボウズはイヤだったナァ。
だってこちとらロックンローラーだったんだゼ!
この時から46年経った今では「ボウズ頭」しかできなくなっちゃったけどよ。
さてシルバーエレファント、AKIさんがおっしゃる通り、長年営業をお続けになっているのはとても喜ばしいことです。
もうすぐ50周年だもんね。
その高校生だった頃、渋谷の屋根裏や新宿のロフトはよく行ったが、吉祥寺は家から遠かったのでシルバーエレファントへはそう足を向けることはなかったが、BAD SCENEを観に来た時はタマげたナァ。
まだ「爆音」なんて言葉もない時代、自分たちでPAシステムを持ち込んで、巨大なスピーカーを会場の四隅に配置し、バカデカイ音でブリティッシュ調のハードロックを演奏して見せた。
吉祥寺が「住みやすい街」かなんか言って賑やかになり出したのは最近のことで、当時はライブが終わる頃の時間ともなると表には人っ子ひとり歩いてなくてヒッソリとしていたよ。
そんな時代が懐かしいね。
「雅也とは全然関係がない話しをしちゃってスミマセンね。
実は雅也がアメリカに旅立つことになりました。
アメリカのどこに行くんですか?」
「テネシー州のメンフィスです」
「メンフィスいいじゃないですか。エルビスに会いに行くんじゃないでしょ?
あんなに太らないでね。
ということで雅也がアメリカに行ってしまいますが、『KAZHA(カズハ)』というアメリカのバンドでに大活躍しますからSNS等で見かけたら応援してあげてください。
さよなら雅也!」
そして、最後の曲。
AKIさん自ら「代表曲」と紹介したのはファースト・アルバムの2曲目の「Call of the World」。
出番を締めくくるのにふさわしいハードな1曲。
最後もRAZOR HIGHWAYの5人がその魅力を爆発させた!
「雅也、雅也!」とアンコールでは「雅也コール」が沸き起こった。
「ナニ勝手なことをしてるんだよ!
『アンコール!アンコール!』ってやるんだと思ったら『雅也!』って…。
でも、ホントに寂しくなりますね。
新しいドラマーはまだ決まっていません。
色んな人から『もう決まっちゃった?』ってメールが来たりしています。
ところで、英語で『モテモテ』ってなんていうんですか?
ボクたちには『モテ曲』っていうのがあって、さらに『モテモテ曲』っていうのがあるんですよ。
最後は我々唯一の『モテモテ曲』…本当は『モテモテモテ曲』でいきたいと思います。
みなさんも一緒に歌ってください。いいですか?」
「モテモテ曲」は私がさっき使ったように「Killer tune」でいかがでしょうかね?
向こうの連中がよくこの言葉を使いますよ。
アンコールに選んだ1曲は「Higher than the Sky」。
再びお客さんが手を左右に振ってRAZOR HIGHWAYのステージを最後の最後まで存分に楽しんだ。
RAZOR HIGHWAYの詳しい情報はコチラ⇒RAZOR HIGHWAY Official Website
「どうもありがとう!」
雅也さん、アメリカでも身体に気をつけてガンバって!
<おしまい>
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<I Get High>
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