【I REMEMBER 令文】Sound Experience vol.1
大谷令文さんの追悼特集。
まずはお詫びから…。
数日前に公開した令文さんの一連の追悼記事の中に「令文さんは三宅庸介さんのシリーズ企画、『Sound Experience』に何度かご出演されているが、いつもゲストとして三宅さんのStrange,Beautuful and Loudに参加される格好で、ご自分のバンドを率いて出演したことはなかった」…みたいなことを書いた。
ゴメン、あったわ。
しかも、「あった」どころじゃなかったわ。
それは2010年11月2日の三軒茶屋のGrapefruit Moonでのこと。
三宅さんと電話でこの時のことを話していて初めて知ったのだが、実は『Sound Experience』というイベントの名前は令文さんがキメてくれたというのだ。
当時、三宅さんはこのイベントの名前をどうしようかと迷っていた。
長く続けていきたいと考えていたので、適当な名前を付けることだけはどうしても避けたかったのだ。
すでに第1回目のゲストは令文さんに決まっていたので、腹案だった『Sound Experience』という名前を令文さんに提案した。
すると、「三宅!それメッチャいいやんけ!」と令文さんはとても満足気な反応を示してくださったという。
こうして「ツルの一声」…イヤ、「カラスの一声」でキマったというワケ。(ココはシャレですよ~。英語の「raven:レイヴン」」は「ワタリガラス」というカラスの一種を意味します)
もちろんその時、令文さんがニヤリとしながら例の「グー・サイン」をされたことはココに書くまでもなかろう。
その第1回目に令文さんが当時取り組んでいたBLACK TIGERを率いて出演された…というのだ。
つまりバンド編成だった。
2019年7月で止まってしまってはいるが、その後31回も続けたイベント『Sound Experience』の記念すべき第1回目のレポートを今日は復刻する。
開演前のようす。
日本を代表するMarshall弾きのステージにふさわしくハーフ・スタックがズラリと並んだ。
まずはBLACK TIGERからスタート。
大谷令文と…盟友・高橋ロジャー知久と某ベーシストからなるトリオ。令文さんは愛用のMarshallを持ち込んだ。ヴィンテージの1959と1960BXのハーフスタックにコーラスエコー。
そしてスライダック。足元のようす。
今回は初代The Guv'norが入っている。令文さんは歌と…
ギターの両方でフル回転。
「令文ニラミ」…この表情がなつかしい!この時も本当にスゴイ音だった。耳をつんざく凄まじい爆音なのにちっともうるさくない。
コレぞまさにMarshall浴。
身体の芯まで温まる。そして、令文さんの気合の入ったプレイに呼応するロジャーさんの日の打ちどころのないドラミング!
レスポールに持ち替え。ギターは替わっても丸っきり令文さんの音。
こういう演奏に接すると、ホントにギターという楽器は指から音が出しているということを実感する。それと顔…間違いなく顔からも音が出てる!
ギター・サウンド云々の前に飲まれてしまう。そして、またストラトキャスターに戻って最後まで突っ走った。全9曲、まさに人とギターが「一体」となった姿を目の当たりにしたような感動的なパフォーマンスだった。自分の持ち時間を終えてご挨拶される令文さん。
この後、30回以上にも及んで開催される長寿イベントのトップ・バッターにふさわしい出演者だった。そして、すぐさまホストのStrange,Beautiful and Loudがステージに上がった。三宅庸介この頃の三宅さんは自分のJCM2000 DSL100と1960BVを持ち込まれていた。
三宅さんのDSL100は1997年製のかなり早い製造ロット。
DSLを背後に従わせた三宅さんの姿もなつかしい!
足元のようす。
人様のペダルボードだけど、この見た目はとても思い出深い。
高円寺のShowBoatで、ある理由で仕方なく左下のヤツを取り除いた。
するとギターの音が完全に別物になったのだ。
アレは本当に見事な変わりようだった。
征史さんもMarshall。今でもAmber Lumberで活躍している1992 SUPER BASSのハーフ・スタック。
このMarshallとプレシジョン・ベースが組み合わさったサウンドがこのチームの音楽に実にマッチしていた。
そして金光健司。
この頃はまだNATALが日本には入って来ていなかった。 1曲目は「Fantasia」。この曲は後年スッカリ演らなくなっちゃた。
好きなんだけどナァ。ベースが裸になるパートが実にカッコいい!ドラムスが奔放に動き回るイントロは2曲目は「Bloom」。
そして独特なメロディとともに展開していくこの曲はずっと演奏され続けていた。
この頃はファースト・アルバムの『Lotus and Visceral Songs』しかリリースされていなかったのでそのアルバムからレパートリーになると思っていたら… 3曲目で「if」をプレイ。この曲は2014年に発表したセカンド・アルバム『Orchestral Supreme』のオープナー。
この頃から演っていたんだね~。
続いてファースト・アルバムのオープナーの「Stratify」。「Kakine」でおなじみの「Solitary Past」から愛奏曲のひとつ「Virtue」を演奏して3人は出番を終えた。
自分のシリーズ・イベントの第1回目の出番を終えて満足気な三宅さん。
アンコールはSBLに令文さんが合流して1曲。
コレは「Diamond Dust」かなんかを演ったんだっけかな?
何しろ昔のMarshall Blogってセットリストを載せていなかったものだから…。
令文さん、今度はゴールド・トップを引っ提げての登場。
後ろの三宅さんの表情にもご注目。この後の回の時もそうだったが、三宅さんは令文さんと共演する時はいつも大変うれしそうだった。
何しろ三宅さんの人生をキメた人と同じ舞台に立つワケですからね。令文さんがニラミをきかせ始めた。
視線の向け先は客席だ。
一体誰をニラんでいたんだろう?ニラまれた人は相当コワかったことだろう…でも、とてもいい思い出になっているハズだ。そこへ行くと三宅さんのニラミはこの程度だから安心だ。2人だけの会話。2人で何を笑っているんだろうね。
とにかくギターで音楽を奏でることがどうしようもなく楽しいのだ。
そして、2人の間にはMarshallがある。そんな2人の会話を、これまた2人の名手がリズムで見守る。
そしてクライマックスがやって来る。2人とも思いの丈を6本の弦に託して最後まで弾き切る!2つのバンドが出ただけのとてもシンプルな内容であったが、全編を通じてギターの魅力が溢れ切った素晴らしいショウだった。令文さんのひと言があって、記念すべき第1回目の『Sound Experience』が終了した。さて、コロナ以降しばらくご無沙汰だった三宅さん…いよいよ動き出すそうです!
令文さんの分までMarshallとストラトキャスターで暴れてくれることだろう。
次回は令文さんの追悼特集の最終回です。
(一部敬称略 2010年11月2日 三軒茶屋GRAPEFRUITS MOONにて撮影)