【訃報】足立祐二さんのこと
「どうして?ナンでYOUさん?」…ということしか思い浮かばなかった。
ギタリストの足立祐二さんの訃報を耳にした時のことだ。
だってそんなワケないでしょ?
あまりにも思いがけないことを知らされると脳ミソの演算能力が著しく低下することを思い知った。
今でも信じられない。
もう何年前のことになるだろうか?
営業の仕事で新宿の楽器屋さんへ出向いた時のこと。
店の奥の方で遠慮なくギンギンにギターを弾いている人がいて、一聴して素人ではないことがわかった。
お店の人に「どちらさんですか?」と尋ねると、「あ、足立祐二さんです」という答えが返ってきた。
Marshall Blogにいつも書いているように、私は80年代に入ってからは不謹慎なことに熱心なロックのリスナーではなかったので、そのお名前にピンと来なかった。
そんな名前を聞いたことがあるような…失礼だがそんな程度だった。
それから何年かして日比谷の野音のイベントに行った時に、河村隆一さんが出演されていて、ひとしきり歌った後、「それでは足立祐二のギターをタップリとお楽しみください」というクダリに出くわして、「あ!あの時の!」と相成った。
何のイベントだったかは全く記憶にないのだが、ア・カペラで弾いたYOUさんのギター・プレイがスゴかったことだけはハッキリと覚えている。
それからまた何年も経って、2012年12月、東京キネマ倶楽部で開催した『クルベラブリンカと究極の楽師達@東京キネマ倶楽部はちょっぴりテラローザです』というイベントで初めてYOUさんとご一緒させて頂いた。
YOUさんは「Love Missile」というチーム名でのご出演だった。
この時はじめてYOUさんの音楽を耳にしたのだが、「ポップな毒」とでも言えばいいのかな?
甘いんだけどどこか苦いようなサウンドにスッカリ惹かれてしまった。
三宅庸介さんのStrange,Beautiful and Loudとのダブルヘッドライナーの『Guitar Show 2014』というイベントだった。
YOUさんは「丸の内線の会」というチームでのご出演。
この時はアンコールで三宅さんと「Little Wing」を演奏された。
2016年9月、三宅さんのシリーズ・イベント『Sound Experience』の22回目。
この時は今もやっていらっしゃる「3 tea3」での出演。
YOUさんの曲って、わかりやすいメロディで、ポーっと聴いているとそのまま終わっちゃう。
それはそれでもちろん味わい十分なんだけど、リズムがスゴイんだよね。
変拍子が複雑に入り組んでいて、一緒に演っている星山さんや長谷川さんにイジワルをしているのではないか?なんて思ってしまうほど。
こっちもMarshall Blogにはなるべく曲の解説を詳しく書きたいので、その場で聴いたリズムを読みほどいてメモしておくワケ。
でも、写真も撮りながらでしょ?
どうしてもわからない部分が出て来ちゃう。
そういう時は終演後にYOUさんに教えてもらう。
「あの曲のあのパートは5/4拍子にナニがくっついてるんですか?」なんてやるワケ。
するとYOUさんはすごくうれしそうに答えてくれましてね~。
「ボクの曲をシゲさんみたいに真剣に聴いてくれる人は滅多にいませんよ」とおっしゃってくれるんだけど、実際に私は凝って作られた音楽が好きだし、ワラにもすがる気持ちで教えてもらっていたのです。この時は「Cocaine」なんて演ったのか…。
終盤2人のギター・バトルが見物なんだけど、三宅さんがソロを弾く番になるとYOUさんがネックをムギュッ!
オモシロかったな~。
2016年の11月はワン・オフのTerra Rosaツアーに参加。
コレ、プレスピットがものスゴク狭くてエラク苦労したんだよね。
そういえば楽屋で「これからのギターはどうなるか?」なんて話をYOUさんとしたナァ。
「もう速弾きは当たり前なので、これからはシゲさん、遅弾きですよ、遅引き!」なんておっしゃっていたっけ。
2017年7月の『横浜メタル地獄!』というイベント。
共演はCONCERTO MOONNとStrange,Beautiful and Loud。
それにYOUさんの「YOU-VAL♡メロン」を加えたトリプル・ヘッドライナー。
YOUさんのバンド名がなかなか覚えられなかったナァ。
お会いするたびに違うんだもん。
この時はドラムスがVALさんだったので「YOU-VAL」ね。
VALさんといえば、GRANRODEOの代々木体育館のコンサートの時の話し。
開演前、私が何台もカメラをブラ提げてアリーナをウロチョロしていると、「シゲさ~ん!」と聞き覚えのある声が…。
その声の方を見ると…YOUさんが1階席の階段を駆け下りて来てワザワザご挨拶してくださった…なんてこともあった。
私がお邪魔させて頂いたYOUさんのステージには一切MCがなかった。
その代わり全曲演奏し終わった後にまとめてしゃべるというスタイルが常で、コレがもう滅法オモシロかった。
トークの題材はキマって「無理な質問」。
だれか1人をテーマにして、その人がとても人前では答えられないような質問を次から次へと浴びせかけるんだな~。
もうコレがおかしくて、おかしてくて!
この時はVALさんがテーマになってしまって気の毒だったが、VALさん、ゴメンなさい。
メチャクチャ笑いました。
2019年5月の記念すべき『Sound Experience』の30回目のゲストもYOUさんだった。
「集中力」ってのが見えてくるかのようなプレイ。
機械より精密で正確、それでいてハートウォームな演奏は見聞きする者に大きな感動を与える。
人間、これほどナニかに入り込むなんてことは、そう簡単にはできないんじゃないかな?
眉間にシワを寄せるでもなく、口を開くワケでもなく…ただギターを弾く。
ただ写真がどれも同じになっちゃうの。
三宅さん、アンコールで登場したんだけど話を相手をさせられただけでギターを弾かずに終わっちゃったんだよね。
ソフトな口調でジャンジャン強烈な質問を繰り出したYOUさん。
この時もオモシロかったな~。
昨年の11月、『Marshall GALA2』のチョット前、四谷三丁目でバッタリYOUさんに出くわして「これからお肉を食べに行くんですよ。シゲさんも行きませんか?」なんてお誘い頂いたのが最後だった。
こちらはGALAの直前で用事がパンパンにツマっていたのでお断りしたが、行っておけばヨカッタ。
しかし、日本のロック界はまたしてもあまりにも大切なギタリストを失ってしまった。
「ギター」という楽器を「ギター」としてではなく「音楽」を創造する「道具」として使いこなした人。
人と同じことをするのを嫌い、徹頭徹尾自分だけのスタイルを貫いた人。
これほど高度な次元でテクニックと音楽性のバランスを保つことのできるギタリストが将来世に出て来ることはそう簡単に期待できないであろう。
偉大な音楽家のご逝去を心から悼み謹んでお悔やみ申し上げます
YOUさん、色々とありがとうございました。
★クルベラブリンカと究極の楽師達@東京キネマ倶楽部はちょっぴりテラローザです~三宅庸介&足立祐二編
★Guitar Show 2014~三宅庸介&足立祐二
★Sound Experience 22~ 足立祐二 3 tea 3編的な?
★横浜メタル地獄!! <後編>~ YOU-VAL♡メロン & Strange,Beautiful and Loud
★TERRA ROSA 〜PRIMAL TOUR 2016〜 その起源「Battle Fever」から今へ
★Sound Experience 30 ~ Strange,Beautiful and Loud & YOU-VAL メロン with 淳