クルベラブリンカと究極の楽師達@東京キネマ倶楽部はちょっぴりテラローザです~三宅庸介&足立祐二編
以前Shige Blogで『様式美でいこう!』というライブ・レポを掲載したが、そこで予告したクルベラブリンカのライブが東京キネマ倶楽部で開催された。
出演はクルべラブリンカ、Yosuke Miyake's Strange, Beautiful & Loud、そしてLove Missile。Shige Blogに書いた通り、やはりキネマ倶楽部の持つ妖艶な雰囲気は、出演の3バンドの音楽によくマッチし、予想以上に素晴らしいショウとなったのであった!
トップ・バッターは稀代のマーシャルの使い、三宅庸介率いるYosuke Miyake's Strange, Beautiful & Loud。
グループ名の由来がわかるロック通にはきっとタマラン音楽性であろう。だいたい「Yosuke Miyake's」という枕詞(?)がよい。70年代、RItchie Blackmore's RainbowとかTodd Rundgren's Utopiaとか、リーダーの名前を冠したバンドをよく見かけた。その後、JapanとかBostonとかKansasとかの地名バンド、さらにVan HalenやBon Joviみたいな固有名詞バンドとバンド名の流行もいろいろあった。最近は何と言っても、名前をくっつけっちゃうユニット名が多いよね。コレ、完全に漫才チームの影響でしょう?「ますだおかだ」とか「FUJIWARA」とかみたいの。
リッチーやトッドの場合は「れいんぼう」とか「ゆうとぴあ」じゃただの新人バンドと勘違いされて苦労しないとも限らないので、親分の名前をグッと前面に押し出したのだろうと邪推する。その証拠にバンドの人気が定着してきたら両方とも「Rainbow」とか「Utopia」だけにしたもんね。今となっては「Ritchie Blackmore's」と名乗っていたことを知る人も少なくなってきた。
三宅さんの場合はそうではなくて「Yosuke Miyake's」という枕詞が「三宅さんの『Strange, Beautiful and Loud』という特別な音楽だよ~」という意思表示をされているように思える。
Yosuke Miyake's Strange, Beautiful & Loudのメンバーは、まず三宅庸介。担当楽器はマーシャルとストラトキャスター。
三宅さんの愛用マーシャルは1997年製のDSL100と1960BV。キャビネット内のスピーカー・ユニット・ケーブルにもこだわる三宅さんだ。
1997年というとJCM2000の製造が始まった年。製造初年度の名器を大事に大事に使っている。Classic GainのCrunchを使用。
これがまた、驚天動地の「マーシャル+ストラト」サウンド!生々しいっていうのかな?
…とDSLを巧みに操る三宅さんだが、先日あるイベントでJVMを使用した。氏曰く、「何の抵抗もなく思い通りに鳴らせた」だそう。つまり「弘法筆をえらばず」だ。でも、三宅さんにそう言わしめてしまうJVMもスゴイ!さすがマーシャル!
このバンドでは征史さんは1992 SUPER BASSを使う。
1992は、ご存知の通り1959のベース・バージョン。深みがあっていい音だ。1992は1981年に製造を中止し、それからマーシャルはベース・アンプのラインを別建てにしてきたため、再生産されてことがない。な~んにも特筆する機能なんかない。出力も100Wしかないし…。でも、弾き手によっては実に味のあるサウンドを提供してくれる。今こそこういうアンプが見直されていもいいのではなかろうか?4×12"キャビとセットでね。
そして、何よりもこのバンドの音楽性にマーシャルのベース・サウンドがヒジョーにきれいに溶け込んでいるのね。もちろん征史さんのベース・ラインによるところが大きいのだが…。
パワフルにして繊細。ダイナミック・レンジが極端に広い表現力に富んだバランスのよいドラミングが魅力なKK。
三宅さんのCD『Lotus and Visceral Songs』のレコーディングにも参加している、征史さん同様、気心の知れたメンバーだ。
7曲の演奏。うち、3曲がアルバム『Lotus and Visceral Songs』収録曲。私はこういう音楽が大好きなので、アルバムに入っていようがいまいが、どれも耳なじみのよいギター・ミュージックに響くのだが…。
キネマの雰囲気も手伝って一段と切れ味鋭いオリジナル・ミュージックに仕上がった。
ステージの最前列には若い女性のお客さんが並んでいたが、三宅さんの演奏に口アングリ…。でも、「すっご~い!世の中にはこんな音楽のあるのね~」的好意的友好的リアクションに見えた。ま、普段柔らかい音楽を聴いていて、三宅さんのバンドが目の前に現れてマーシャル+ストラト・サウンドが脳みそ引っ掻き回せば、そりゃ驚きますよ。
また、この三宅さんのマッド・サイエンティスト的な雰囲気がたまらない。アルバムに「Sorcerer」という曲が収録されているが、三宅さんこそ「Prince of Darkness」であり魔術師なのである。
フト思いついたのだが、『Lotus and Visceral Songs』の最後の2曲には明日マーブロに登場する赤尾和重さんのボーカルが入っているんだけど、これってマイルスの『Sorcerer』のボブ・ドローの「Nothing Like You」を想起させるな。ワザとかな?、三宅さん。
毎晩、部屋にこもりきって、ギターと抱えて、テーブルに試験管、イヤ、真空管を並べて、誰も聴いたことのないメロディ、誰も知らないヴォイシングを開発しているのだ。どうしても最後の1音が決まらない…もう、4日も寝ていない…。そんな姿を想像させる音楽なのだ。あ、みなさん別に危険なワケでは全然ないんですよ~。とにかく、音楽に対して真摯なのだ。「さくら」と比べてみなよ。三宅さんの音楽は「がんばれ」も「負けないで」も訴えない。「楽しむ人が楽しめばいい」という音楽のクールな側面をアッピールしている。
でもね、こういうのハマると後戻りできないよ。
…とここまで書けば、三宅さんの音楽を聴いてみたくなるのが人情ってものでしょう?そして、ファンの方はまた観たいと思うでしょう。
12月19日、この3人が今年最後のギグで三軒茶屋のGrpefruit Moonに集まる。この日は三宅さんのお誕生日。自分へのプレゼントとして、ナント大谷令文氏を用意してしまったという。つまりレイブンさんがゲストで出演する。
この年の瀬にマーシャル風呂(そういえばWordに「マーブロ」と入力すると「マー風呂」と変換されるのが好き)にゆっくり浸かってみるのもよろしいよ!お待ちしておりやす!
三宅庸介の詳しい情報はコチラ⇒Yosuke Miyake's "Strange, Beautiful & Loud"
続いての登場は足立祐二、YOU率いるLove Missileだ。
足立YOU祐二
YOUさんには、以前アースシェイカー関連のイベントのレポートでマーブロにご登場いただいたことがあった。あの時はDSLだったが、今まで聴いたことがないDSLサウンドでビックリした。独特なのだ。
当日がこのLove Missile(ラヴ・ミサイル)のデビューとなった。
何しろベースの瀧田さんとドラムの山崎さんが顔を合わせるのが2回目だったという。つまり1回リハをやっただけ…。
YOUさんもさすがに緊張されたらしいが…
トンデモナイ!3人がガップリ4つに組んだ完璧な演奏!「気持ちよかった~」とこれからの活動に期待を募らせるYOUさんなのだ。
親しみやすいメロディをスリリングな演奏に乗せた…とでもいおうか、聴きどころの多いツボを得た曲ばかりでまったく飽きさせない。三宅さんのバンドと素材は違えど、ともに「ギター」という楽器を極限まで知り尽くした男たちだけが創造できる贅沢なインスト・ミュージックだ。
縦横無尽に指板を行き来するテクニカルな瀧田さんのベース!
手捌き感が鋭く軽やか、クリスピー感満点の山崎さんのドラム。なぜかマホガニー・ラッシュを思い出してしまった…。
YOUさんのマーシャル・サウンド、イヤ、マーシャルのYOUさんサウンドか…また聴きたいものである。
やっぱりギターは素晴らしい!
足立祐二の詳しい情報はコチラ⇒You's Alien Blog
つづく
(一部敬称略 2012年10月13日 東京キネマ倶楽部にて撮影) 27