ベトナムに行ってきた! vol.6 ~ MAV見学 <後編>
Marshallベトナム工場見学の<後編>。
エレクトロニクスのエリアから木工の工程を経て、カバリングを貼る前の段階ですること。
それは、ケーシングへの黒塗料の塗布。
コレもイギリスの工場でやっている工程だ。
この機械の内側の壁には水が流れているのね。
何のためかと思ったら、機械を汚さないようにするためだって!
さて、カバリング貼りの工程に入る。
すべての作業の中でももっとも技術を要するとされている工程。
まずはカバリングの材料を切り出す。
ケーシングには予め特殊な接着剤が塗布してあって、カバリングを材料をスッポリとかぶせる。
後は余分な素材を切り落として…
キレイに切り落とすよ~。
女性は手先が細かいからこういう作業には有利だろう。
スゴイ!人海戦術。
生産量が多いからね。
それでも機械化せず飽くまで手作りで対応している。
考えてみれば、多少のデザインの変更は避けられないが、初めからカバリングを貼り付けた化粧板を作っておいて、それを切って組み立てた方がはるかに作業効率がいい。
でもそれをやらないのが「Marshall Quality」…すなわち「伝統」だ。
56年前からこのやり方でやっているのだ。
この工程、イギリスの工場では男性だけが従事しているが、どうだろう、MAVでは女性の数の方が多いのかな?
イギリスのようすを見てみようか?
こちらもケーシングにカバリングをスッポリとかぶせて…
手にする道具はカッター・ナイフとハサミとこの人が右手に持っている白い棒。
私はコレが気になって、気になって…何という道具がを尋ねてみた。
「あ~コレかい?オレたちは『ボーン(Bone)』って呼んでるゼ」
なるほど。
このボーン、狭い角っこなど指が入らない箇所に当ててしごき、カバリングをケーシングに完全に密着させるスグレモノ…ってほどのモンでもないか?
ベトナムに戻って…とにかくみんなモクモクと作業をしている。
これだけ若い人が集まっていればたいてい笑い声のひとつも出そうなモノだけど、聞こえてくるのは「シャッシャッ」というカバリング素材を切る音か、「カツカツ」という素材を貼り付ける音だけ。
みるみるうちにカバリングをまとった美しいケーシングが作り出されていく。
ココも女性ばっかり。
「バチンバチンバチンバチン」というステイプラーの音が小気味よい。
場内は飲食も携帯も厳禁!
イヤイヤ、みなさん真剣でとてもそんなことできる雰囲気ではありません。
リアパネルを取り付けたり…。
イギリスで生産しているモデルは大きくて重いので、このセクションは男性でないとまず務まらない。
同様にこの工程はベトナム工場でも男性が多いが、女性がいないでもない。
シャシを取り付ける。
ベトナム工場の製品はトランスが小さいモデルだからね。女性でもOK。
イギリスの工場で聞いたことだが、実はこうした最終段階に近い工程が一番大変なのだそうだ。
理由はふたつ。
上で触れたように、最終段階に近づけば近づくほど、搭載された部品の数が増えて重量が増す…ということがひとつ。
スピーカーなんかが取り付けられると格段に重量が増すからね。
コレはリアパネルを作っているところ。
前の工程でカバリングが貼られた部材にメッシュを取り付ける。
そして、今ひとつの理由は、取り扱っているモノに絶対にキズを付けないように細心の注意を払わなければならないということだ。
リアパネルをはめ込んで慎重にビスを埋めていく。
この段階でツルッなんて、電動ドライバーでカバリングを破いちゃったら台無しだからね。
コレが大変なんだって。
回路的にはOKでも、イザ商品になって音が出ないなんて言ったらコトだからね。
そして、最後の製造部のセクションに到達。
検品済のステッカーを貼って…
ビニール袋をかぶせて…
オリャ~、段ボール箱への詰め込みだ~!
ココも大変な作業だよ。
落としたりして商品にキズを付けたりしたら大変だからね。
一方、出来上がった商品を保管しておく倉庫はどうなってるのかな?
世界中に送り出される直前のMarshallがパンパンに詰まってる。
コレ、何の脈略もなく、雑然と積まれているように見えるでしょう?
さすがにそんなことはなくて、列ごとに行き先がキマっていて、順番がくるとガバ~っと積みだして倉庫は毎日スッカラカンになる。
世界中に出荷しているからね。
従業員の皆さんはお昼。
ホント、日当たりが強くてアツイ!
でも、女性の皆さんがさしているのは日傘ではなくて雨傘です。
コレが従業員の食堂。
工場の周囲には食べ物屋さんなんて全くないからね。
天然のエアコンつき。
従業員全員と一緒に記念撮影をしようということになった。
ベトナムの皆さん、とても小柄で私でもノッポの部類に入っちゃう。
みんなニコニコしてとても感じがいいんだよね。
以前、日本の企業がベトナムに進出し出した時、よくこんな話を聞いた。
「ベトナムの人は気立てがおとなしくマジメ。そして勤勉でとてもよく働く。まるで昔の日本人のようだ」って。
そんなこと聞くと今の日本人は「騒々しいばっかりで、まったく働かない」…みたいになってしまうけど、言わんとしていることはよくわかる。
終戦後、丸裸になってみんなで必死にナニかを作っていた時代があった。
今では世界的に産業の構造がスッカリ変わってしまい、日本における「モノづくり」の大切さが忘れられてしまった。
日本人が一番得意な分野なのに…。
工場の皆さんが脇目を振らず、一心不乱にモノづくりに取り組んでいる姿を見ていたらそんなことを考えてしまった。
工場の女性事務員さんたち。
向かって左端の女性はイギリス本社から来ていたヘレン。
心のこもったホスピタリティでとても充実した工場見学となった。
会議は大変だったけどね…いつものことなんだけど。
コレまでにも英語で知恵熱を何回出したことか。ご丁寧にこんなお土産まで頂戴した。
ベトナムの「こけし」ってところかな?
すごく気に入って事務所に飾っている。さて、はじめてのベトナム工場。
<前編>の冒頭に書いた通り、私はイギリスの工場を何度も訪れているが、初めて見たベトナム工場の製造の光景はイギリスのそれと寸分たがわぬモノであった。
ジョンがビデオの中で述べているように、両工場の責任者の密接度が窺えるというものだ。
マァ、双方の工場で異なる点と言えば、ベトナムは女性従業員の比率が高いことぐらいかしら?
もうひとつ、コレもジョンが触れていたが、設計やエンジニアリングはすべてイギリスの本社工場で行っているということ…例えて言うなら、頭がイギリス工場。
身体がベトナム工場ってこと。
その管理体制は相当厳重なモノであることがヒシヒシと伝わって来た。
つまり、Marshallにはイギリスもベトナムもない…両方がMarshallなのだ。
ハイ、帰るよ~。
あ、そうだ!外はこの景色だったんだ。
長時間工場の中にいて忘れてた。
ナニをやってるんだろうネェ?
ココでもあのイスが大活躍している。
一部にはバイク専用のレーンがあって。帰宅する人たちがワンサカだった。
グリーンベルトで見かけたオッサン。
鶏は後で食べる用。
チョット変なこと書いていい?
よくテレビで「ゲテモノを食べる罰ゲーム」なんかがあるでしょう?
アレ…肉系のモノって最初イヤがっていても、意を決して食べた時にキマって言うのが、「おいしい~!これイケますよ。ウン、鶏肉みたい」。
どんなにキテレツなモノの肉を食べてもみんな「鶏肉みたい」って言う。
決して「あ、牛肉の味ですね」とか「豚にソックリな味です」とは言わない。
ということは、逆に考えてみると我々が普段テッキリ鶏肉だと思って食べている肉が鶏肉ではない…ということがあるのかも知れないね…んなことないか。
もうひとつ、この手のゲテモノ食いの定番のリアクションに「おいしい~。すごく濃厚でクリーミー!まるで白子みたい!」というヤツ。
白子もよく出て来る…私は白子を食べないので関係ないけど。
ドワ~!
まるで飛来するイナゴの大群のよう。
コレがホントのイナゴ・ライダー!
帰って来た~、私のホーチミン!
ラッシュアワーだけあって市内はさすがに混み混みだわ。
この後、みんなでバスに乗って市街から30分ほど離れたエリアに会食に出かけた。
ビックリしたよ、
そのエリアはベトナムでも最も富裕層が集まる高級住宅街で、暗くてよくは見えなかったんだけど「ナニこれ?寺か?」みたいなアホほどデカい邸宅が立ち並んでいたからだ。
そこには東京でもお目にかかることができないような豪奢なレストランがひしめき合っていて、ズルズルとフォーをたぐるのが当たり前のエリアと地続きだととてもは思えない。
我々の会食の会場はその中の1軒だった。
「THE DECK」というお店。
名前の通り、デッキになっている。
雰囲気満点で、さすが高級レストラン、生ガキを出していたよ。
傍らを流れるサイゴン川。
時折巨大な藻が流れて来てギョッとしちゃう。
何しろデッキなので空調設備は付いていないが、夜になると噴き出す風がとても心地よい。
デパートの屋上で汗をダラダラとかきながら大ジョッキと皮だらけの鳥の唐揚げを交互に口に運ぶのとはワケが違う。
東京の真夏はこうはいかない。
エアコンよりこっちの方がはるかに気持ちいい。
デザートのチョコレート・アイスクリーム。
ベトナムはカカオの生産が盛んでチョコレートがおいしい。
このアイスクリームもメッチャおいしかった!
でも早く食べちゃわないと、アッという間に溶けちゃうぞ!
会議は延べ3日にわたって催された。
1日目は工場の会議室。
2日目以降は『私のホーチミン』で紹介したホテルの会議室で行われた。
ホテルの会議室は冷房が効いていて今度は寒かったよ。こんなこともあろうかと、念のために長袖を持って行ってヨカッタ。
★★★オマケ★★★
よく外人は日本人のマネをして半ばフザけて「〇〇サン」と「さんづけ」で我々のことを呼ぶんだよね。
ディストリビューターの中にダニエルという名前の人がいてね。
私のことを「シゲさん、シゲさん」と呼ぶワケ。
そうなるとこっちも「ダニエルさん」と「さんづけ」呼ばないと失礼じゃない?
で、「ダニエルさ~ん」と呼んでいたら彼も私もある時フト気が付いて、大笑いしながら相手のことを指さして同時にこう叫んだ!
「キャラリキー!!!!」
どうもどこかで聞いたことがあるな~…とお互いに思っていたんだな。
そう、『ベスト・キッド』のラルフ・マッチョの役名が「ダニエル」なんだよね!
もうコレがおかしくておかしくて!
『ベスト・キッド』の原題は『Karate kid』。アメリカ式に発音すると「キャラリキー」となる。
もちろん、私はダニエルにこう言ったよ。
「No no Daniel-san, I'm not Shige-san…Miyagi-san 」
そうしてダニエルさんと2人でケタケタ笑っていたら他の連中も集まって来て、「お~、ダニエルさん!」とか「ミヤギさん!」と言って喜んでいた。
この映画、そんなヒット作だったのか!
ン、チョット待てよ…もしかして外人が「〇〇さん」とやりたがるのは、まさかこの映画の影響なのかな?
今度誰かに訊いておくね。
<つづく>
次回から『私のホーチミン』に戻ります。
でももうすぐこの『ベトナムに行ってきた!』シリーズもおしまいだよ…寂しいナァ。