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2018年1月23日 (火)

Sound Experience 27 <後編>~ Strange,Beautiful and Loud

  
イヤ~、スゴイ雪でしたな~。
しかし、毎回毎回交通機関があれほどヤラれちゃって…飛行機なんかは仕方ないにしても、もう少し学習効果が出せないものかね?
渋谷のバス・ターミナルで来もしないバスを2時間半も待ってるとか、駅への入場規制をしちゃうとか、1日一生懸命仕事をして疲れ切った身体にあまりにもヒドイ仕打ちだわ。
ご苦労なさった皆さん、お疲れさまでした。
  
ところで私は30年前、学校を出て就職して、すぐに富山に赴任したんだけど、スゴかったな…北陸の冬。
当時はまだ雪が多かった。
子供の頃から毎年スキーに行っていたので、吹雪や大量の雪には驚かないつもりだったけど、イザ生活するとなると、スキーに行くのとは大違いだった。
下宿住まいで、当時はまだ携帯電話なんてなかったから、彼女(今のカミさん)に電話をしに行くにも外へ出なければならない。すると積雪でどうにも電話ボックスの扉が開かなかったりするんだよね。
車に乗る前はフロント・ガラスに山と積まれた雪と格闘したり…。
水道もチョロチョロと一晩中出しっぱなしだった。
富山の冬は一日中曇っているので、ふとんを干すこともできず、せんべい布団は鉄板布団に変わった。
でも、それほどイヤではなかったな。
それより夏のフェーン現象による異常なまでの暑さの方がツラかった。
その後、大阪を経由して長野に赴任した。
彼の地では7回ほど冬を経験したが、長野の冬は楽しかったナ。
毎週子供を連れてスキーに行って、帰りに温泉に浸かった。
長野は寒いことは寒いけれど、昼間は日が照るので道路にいつまでも雪が残っていることはない。
あの雪が降って積もった時の静けさが好きでね。
それでも朝のフロント・ガラスの雪降ろしは大変だったナ。
東京の雪といえば、1998年の1月6日。
前の会社に転職しての初出勤日だったので覚えている。
渋谷から当時住んでいた市川に帰るのに3時間以上かかったかな?
それと、直近では2014年の1月14日、成人式の日。
コレは気の毒だった。
「成人式」といえば、今年のナニあれ?
「晴れの日」どころか「怒りの日」じゃんね。
天気も人間もドンドンおかしくなってる。
お出かけになる皆さん、今日も足元に気をつけて!

3img_0246 『Sound Experience 27』の後半はStrange,Beautiful and Loud。

10_2三宅庸介20v_2三宅さんはいつものJVM210Hと1960BV。
今日、三宅さんと今井さんのバックラインは上下とも偶然おそろいだった!
コレはかなり珍しいよ。
JVMが重なることはあっても1960BVが重なるのは相当珍しい。

30v_2山本征史

40v_2征史さんも当然いつもの1992 SUPER BASSと中身がわからない1960A。

50v金光健司

60v金光さんもいつものバーチのNATAL。
フィニッシュはタバコ・フェイド。
13"のタムを取り外した。

70重く重くのしかかるようにして、バンドは三拍子で動き出す。

80v今日のオープニングは「mani」だ。

90何となく今日はハツラツとした感じ。

100v_2三宅さんから意味をうかがったことないんだけど、「mani」ってスペイン語で「ピーナッツ」っていう意味なんだよね。
で、有名なラテンのスタンダードで「The Peanut Vendor(南京豆売り)」って曲があるでしょう?
ジャズではAnita O'dayなんかがあまりにもカッコよく「♪ピーナ~ッツ」って歌ってるけど、コレ、原語のバージョンでは「♪マ~ニ~」って歌ってる。
コレをエノケンが焼き直しているんだけど「♪マ~メ~」ってやってるんだな。
ウマい!こういうのはとてもいいね。
音楽が今やるべきことは、徹底的に過去を振り返って、洗い直して、しらばっくれて古いアイデアをパクることですよ。
三宅さんの音楽はそれとはゼンゼン関係ないところにあるんだけど。

110_2続けて「devil」。
ンン~、三宅さんはこの曲をAstor Piazzollaの影響下にあると説明してくれるんだけど、凡人の私にはいつまでたってもそのことが理解できんな~。
チョット前に、そのピアソラのCD10枚組のボックスセットやKip Hanrahanがプロデュースしたアルバムを買って聴いたんだけど、さすがにチトきつかったな。
どこを切ってもアルゼンチン・タンゴだからね。
悪くないんだけど、どうしてもあのリズムだけだと飽きる。
日本でも熱心なタンゴのファンは多いようだが、最近知ったのは「Finnischer Tango」といって、フィンランドでタンゴが国民的な音楽として扱われているということ。
「Finnischer」は「Finnish」が語尾変化したもので意味は同じ。
一体ナンだって遠く離れた南米の音楽が北欧なんかで盛んなのよ?
CDを買って聴いてみた。

2_ft 1900年代、ヨーロッパの文化の中心だったパリに渡ったタンゴがドイツ経由でフィンランドに伝わったのだそうだ。
メランコリックとされるフィンランド人の国民性にマッチしたんだろうね。
ロシア音楽の影響も混じり合って、独自の進化を遂げて国民的な音楽に発展したのだそうだ。
このCD、なかなかいいのよ。
で、聴いてて腰を抜かすほど驚いた!
期せずしてよく知ってる曲が出て来たのよ。
それは「ラ・クンパルシータ」なんて並みのモノではなく、Frank Zappaの『You can't do That on Stage Anymore vol.2』に入っている「Satumaa」という曲。
それの原曲というワケ。
「Satumaa」というのは「伝説の国」というような意味で、曲は1955年に出版され、フィーニッシュ・タンゴの大スタンダードとなったそうだ。
Zappaは客のリクエストに応じて、初見で譜面を見ながらこの曲を演奏した。
もうGeorge DukeとChester Thompsonのカッコよさったらないんだけど、Napoleon Murphy Brockが読めないフィンランド語の歌詞を当てずっぽうで歌うところがメッチャおもしろい。

120v最近、すごく思うんだけど、ヒップホップなるツマらん音楽に押されているせいかどうかは知らんが、日本人はリズム貧乏になってるのではないか?
このタンゴもそうだけど、マンボやルンバ等のラテンのリズムなんてのは普段の生活の中で全く耳にしなくなった。
言葉もそう。
これまた毎年ヘンテコリンで幼稚な言葉は増えて行くけど、落語や浪曲のような伝統的な話芸に出て来る味わい深い単語や表現が年々減って、日本人の語彙がものすごいスピードでみすぼらしくなっていると思うのだ。
音楽も同じ。
心地よいリズムや美しく味わい深いメロディがジャンジャン減っている。
でね、落語ですよ。
最近、征史さんと、犬神さんのところでシリーズでやっている吉原研究の影響で落語をよく聴いているんだけど、スゴイよ、言葉のバリエーションが!
今、使わなれなくなった言葉のオンパレード。ステキですよ。
私は何とかしがみついていけるが、それでも知らない言葉が結構出て来る。
若い人はああいうのを聴いても何もわからないんじゃないかな~?
アノね、「言葉がなくなる」というのは、「物がなくなる」ということなの。
反対に、その物が無くなるから言葉もなくなってしまうのですよ。
科学は進歩しているつもりかもしれないけど、その裏で文化はドンドン後退しているんだよ。
ね?征史さん!

130v_2もちろん三宅さんの曲はタンゴではなくて、切れ味鋭い三宅ミュージックだ。
三宅さんからご挨拶があった後、「bloom」。

140vイントロで三宅さんのギターに絡みつく金光さんのドラムスがカッコいい。
この曲も印象的なワルツ。

200v_2三宅さんの曲は、ギターをオーバーダブしたスタジオ・バージョンがまたすこぶるカッコよくて、ライブでいつか再現してもらいたいナァ…と思うんだけど、三宅さんが2人いない限りそれは実現しないであろう。
ところがこの曲に関しては田川ヒロアキとツイン・ギターで演奏したことがあって、テーマのハモリをスタジオ・バージョンさながらに聴かせてくれた。
鳥肌が立ったことは言うまでもあるまい。
そんな魅力的なメロディなのだ。1_img_0340一聴してそれとわかるドラム・イントロは「murt'n akush」。

150_2この曲のタイトルに絡めてかつてアルフレッド・ヒッチコックのことを書いたことがあったが、三宅さんはその地方の文化・芸術に思いを馳せてペンを取った。
マラケシュはモロッコの中央都市の名前だ。
極力フレンドリーなメロディとハーモニーで曲が成立するように注意したとのこと。
ウン、確かに三宅さんの曲の中ではわかりやすい方。
しかし、三宅さんにとってはあまり使うことのないキーで作られており、コードの動きも慣れないものだったのでプレイはとても難しかったそうだ。
サビに限らず、メロディのモチーフが繰り返される手法は、三宅さんのメロディに対する考え方の提示だ。
180v現在のSBLのリード・チューン、「if」。
恐らくはSBLファンの間でも最も人気が高いであろうと思われるこの曲はナント、「オルゴールで聞くような曲」を標榜して作られたのだそうだ。
こんなオルゴールあったら欲しいわ!
170これまた意外なのは、以前に書いたことがあったが、三宅さんはフランシス・レイの影響下でこの曲を作っていると分析していることだ。
中間部に野性的なリフがあり、三宅さんの激しいソロが続く。
三宅作品の典型的な展開様式だ。

220やっぱりこの曲は演る方も聴く方も燃えるよね。
Deep Puepleなら「Highway Star」、Frank Zappaなら「Inca Roads」、John Coltraneなら「My Favorite Things」、五代目古今亭志ん生なら「火焔太鼓」、三代目桂三木助なら「芝浜」、広沢虎造なら「勝五郎の義心」、マーブロなら「イギリス-ロック名所めぐり」だ…最近ゼンゼンご無沙汰だけど。

190v_2「if」で脱線。
ifという1969年にデビューしたイギリスのバンドがあった。
ジャズ・ロックの範疇に繰り入れられるチームだが、ブラスが入っていることより「イギリスのChicago」なんて言われたらしい。
Dick MorrisseyというSony Rollins系のバリバリのサキソフォニストがメンバーにいることもあってChicagoと関係なくジャズっぽい。
最後期のメンバーとして、Marshallのデモンストレーターを長年務めたGeoff Whitehornが在籍していたこともあって、これまでにも何度かMarshall Blogで紹介している…が、あんまりおもしろくないのが正直なところ。
GeoffはこのIfの後、Paul Kossoffの公認としてBack Street Crawlerに転籍し、バンドはCrawlerとなった。
Geoffもスゴイけど、Ifのオリジナル・メンバーのTerry Smithというギタリストがまたスゴイ。

2_0r4a4060 「私はロックに興味なない」とジャズしかアタマにないような発言をどこかの本で読んだことがあったが、だったら「if」なんかやらなきゃいいと思うんだけど。
何枚かソロ・アルバムを出していて、この「Fall Out」というデビュー作がメッチャいいの。
ビッグバンドとの共演でいまにも「男のジャズ・ギター」みたいな。
「ジャズ・ギターでも聴いてみようかいな」…なんてロック・リスナーにおススメ。
…ということが言いたかった。

2_0r4a4064最後は三宅さんの重要なレパートリーを2曲続けた。
まずは「petal」。

210_2かつて三宅さん自身が「『petal』は大切な曲」のように発言していたせいか、この曲にはものすごくSBLの個性を感じるんだよね。
今日も薄皮を1枚1枚剥いでいくかのような入魂の演奏だ。

160_2最後は「virtue」。

230vSBLの3人がこうして一緒に活動しているのもこの曲があったからだと思う…という三宅さん。
つまり、この曲が今やっていることの原点なのだ。

240v_2いつも通り長尺なインプロビゼーションのパートを経て曲は灯を落とす。

Img_0314_2 Marshall Blogでレポートした通り、前回の8月のパフォーマンスが大変に重苦しいモノだったせいもあってか、今回は何かから解き放たれたような快活な演奏を観たと私は思った。
Voodoo ButterflyにStrange,Beautiful and Loud…どちらもカスミを喰って自分たちの音楽道を突き進むようなチームだ。
やっぱりそういう音楽を聴くのはうれしいし、楽しい。
安室ちゃんもいいけど、少しだけでいいから日本人は聴く音楽の幅を広げるべきだと思う。
でも、コレもリスナーとして「痛し痒し」みたいなところがあってね。
私は今、いよいよストラヴィンスキーとバルトークとショスタコーヴィチにノメリ込んでいて、もう聴いてて楽しくてしょうがない。
中学生の頃に体験したロックの感動や楽しさと同じモノを今これらの作曲家の作品で味わっている。
ところが、こうして聴く音楽の幅を広げて愉しみを増やしたのはいいんだけど、今度はあんなに好きだったプログレッシブ・ロックが全くおもしろくなくなっちゃった!

 

三宅庸介の詳しい情報はコチラ⇒Strange Beautiful & Loud

250次にMarshall BlogがココGRAPEFRUIT MOONでの『Sound Experience』のレポートを掲載するまで間が空く予定だ。
それまでの間、皆さん、『Orchestral Supreme』を聴いて凌ぎましょう。
やっぱ聴けば聴くほどいいね。
ジャケットの写真も最高だ!

260cd 

★NATAL NEWS★
もうすぐNAMMショウですな。
それに向けてなのかな?
NATALのCafe Racerシリーズに新しいフィニッシュが加わるみたい。
 
1. Piano White with Black Sparkle Double Split
スゲエ名前だな。31のアイスにありそうな…。
写真ではまったくわからない毛d黒い2本のストライプはラメラメなのでしょう。

Nn1   

2. Green Sparkle with Black Sparkle Double Split
上のヤツのグリーン・スパークル版。
NATALのラメラメ・フィニッシュはメッチャ美しいからね~。
ホンモノが見てみたい~。

Nn2   
3. Tulip Wood Veneer
チューリップ・ウッドはローズウッドと同じ属の木。
これもイイ感じだ。

Nn3     

1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square

★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。
ドラマーの皆さん「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。

  

(一部敬称略 2017年11月17日 三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONにて撮影)