Sound Experience 27 <前編>~Voodoo Butterfly
毎度おなじみ三宅庸介率いるStrange,Beautiful and Loudのシリーズ企画『Sound Experience』の第27回目。
今回はVoodoo Butterflyとのダブル・ヘッドライナーだ。
今井さん、Marshall Blogは久しぶりだな…と思って調べて見ると、前回ご登場頂いたのは2015年3月の「Sound Experience 15」の時のことだった。
この時、他にDAMIEN♡REGANと銘打って、赤尾和重、島紀史、高橋竜、下田武男が登場した。
もちろんバンドのことは覚えているけど、トリプル・ヘッドライナーのSounde Experienceがあったことは忘れていた。
さて、本題に入ってもいないのに脱線。
イヤ、本題に入っていないから「脱線」にはならないか?
イジリたかったのはこの「butter」と「fly」から成るこの「butterfly」という英単語。
「butter」はあのバターね…パンに塗るバター(我が家ではマーガリンを絶対に使わない。ちなみに「マーガリン」は英語で「マージェリン」と発音する)。
「fly」というのは「ハエ」だよね。もちろん「飛ぶ」という意味。
アメリカのスラングでは「カッコいい」という意味で、あのCurtis Mayfieldの「Super Fly」は「メチャかっこいい」ということ。
ま、このアルバム、私も持ってはいても、100万年に1回ぐらいしか聴かない。
「-fly」でいくつかの虫の名前を表すことができるのが皆さんもご存知の通り。
「firefly」で「蛍」。コレはわかりやすい。
「dragonfly」で「トンボ」。トンボはまっすぐにしか飛ばないから日本では縁起のよい虫とされている。だから「素直にそだつように」…と子供の浴衣のデザインによく採用される。
「虻」は「gadfly」。「gad」というのは家畜を追い回す時に使う棒っきれのこと。虻は家畜を狙うからね。
で、どうしてバターが飛ぶと蝶になるのか?
その前に…。
ココでも何回か書いているけど、英語ってこういう表現がすごくおもしろいよね。
この辺りの知識をつけるのは英語を勉強するひとつの楽しみだ。
私がすごく好きなのは「ヤドカリ」。
「ヤドカリ」を英語で言うと「hermit crab」という。
「crab」は「カニ」でしょ。
「hermit」とは、1978年のTodd Rundgrenのソロ・アルバムに『Hermit of Mink Hollow』という作品があるように「世捨て人」のこと。
このアルバム、リリースされたと同時に買って、一時期よく聴いた。
「hermit crab」…カッコいいじゃん?
家も持たない、世を捨て去ったカニが「ヤドカリ」よ。
それともうひとつ、「ladybug」。
コレはご存知の方も多いだろう。
そう、「テントウムシ」のこと。
赤地に黒の水玉模様なんてデザインがオシャレじゃん?だから「レディ」の「虫」かと思っていたらさにあらず。
この「lady」は「Our Lady」、すなわちそこら辺の女性ではなくて、聖母マリア様のことなのだそうだ。
本場では「マリア様」とは言わずに「Our Lady」と呼ぶことの方が多いらしい。
ちなみに「ノートルダム(Norte-Dame)」も「Our Lady」という意味、「Dame」はイギリスの女性貴族の称号でもあるよね…「デイㇺ」と発音するけど。
ところでどうしてテントウムシが「Our Lady」なのかと言うと、古来よりテントウムシは葉っぱを食い荒らす虫を駆除する益虫と考えられていたかららしい。「ありがたいもの」ってこと。
ま、害虫のテントウムシもいるけどね。
そういえば近年テントウムシなんて東京では全く見なくなっちゃったナァ。
で、この「ladybug」、イギリスでは「ladybird」と鳥になっちゃう。
ハイ、ココから本格的な脱線。
久しぶりの音楽脱線ね。
「ladybird」と来れば「Lady Bird」。
ピアニストのTadd Dameron作のビ・バップのスタンダード曲よ。
この人、日本ではほとんど名前を聞かないけど、「Hot House」とか「if You Could See me Now」とか「Good Bait」とか「Our Delight」とか有名な曲をいくつも書いてるんだよね。
コレはCharlie Parkerのアダ名である「bird」あるいは「yardbird」から来ているんだと思うけど、Tadd Dameronはこの曲で「Tadd Dameron Turnaround」なるものを開発した。
「ターンアラウンド」というのは、次のコーラスにスムーズにいくための「つなぎ」の部分のこと。
ブルースで言えば11と12小節がそれに当たるし、ハワイアンではコレが実に重要な役割をする。
この「Tadd Dameron Turnaround」というのは。コーラスの最後の2小節を普通は「I-VI7-IIm7-V7」とするところを「I-IIIb7-VIbM7-IIb7」とやる。
要するに「I-VI7-IIm7-V7」の裏コードやね。
コレをやられると、聴いている方はギョっとしちゃう。
「Lady Bird」は有名な曲だけに、ありとあらゆる人が取り上げているんだけど、ヘソ曲がりの私は下のRichie Coleの演奏が好きだった。
Richie Coleって何であんなに冷たい扱いを受けていたんだろうな。
「笑っていいとも!」にいきなり出て来てタモリと「Bag's Groove」を演った時は幻滅したけど…。
ま、もっともこのアルバムがお気に入りだったのは、もっぱらBruce Foremanというギタリストが好きだったからなんだけどね。
この人今どうしてるんだろうナ。
で、そのTadd Dameronの「Lady Bird」をモジったのがJohn Coltraneの「Lazy Bird」。
もう何回聴いたかわからんが、いつ聴いても何度聴いてもカッコいい。
そのカッコいい有名なColtraneのソロをサックス・ソリにアレンジして演って見せたのがWoody Herman。
コレが完全にSuper Fly!
この『Thundering Herd』というアルバム…ナゼかFrank Zappaの「America Drink and Goes Home」を取り上げているんだよね。
で、肝心の「butterfly」ね。
どうしてバターが飛ぶと「蝶」になのかは、いまだに確固たる由来が見つからないらしい。
色んな説があって、蝶が舞う季節…すなわちバターは春に作り出す時期という説。
蝶のウンコがバター色という説。
スゴイのになると、夜になると魔女や妖精が飛んできてバターを盗む。その時、魔女や妖精が蝶の姿をしているんだって….。
ん?チョット待てよ…。
コレって…「Butterflies and zebras and moonbeams and fairly tales」?
「小さな翼」って「蝶の羽」のこと?
さんざん脱線したワリにはスッキリしない締めくくりでスミマセン。
あ~、でもキレイに脱線できて気持ちヨカッタ!ご高覧ありがとうございました。
ハイ、久々のVoodoo Butterfly。
オープナーは映画『E.T.』のメイン・テーマが顔を出す「Flying Butterfly」。
コレで繊細かつダイナミックなギター・サウンドをクリエイトする。
今日はSHOWさんはNATAL。
SHOWさんには前からNATALにご興味を持って頂いているのだ。
2曲目は2011年のアルバム『Virty et vice』から「Butterly Effect」。
およそマリア様とは縁遠い怪しげなリフがカッコいい!
タイトなドラミングでそのリフを引き立てるSHOWさん。
実にいいサウンド!
続いても同じアルバムから「Wuzhang Plains」。
この曲を初めて聴いた時、「和」を思い浮かべたんだけど、中国なのね。
「Wuzhang Pkains」とは中国の陝西省(せんせいしょう)にある五丈原(ごじょうげん)という原野のこと。
ちなみに『Virty et vice』にはチャイコフスキーをモチーフにした曲が2つ入っていてね、ゴキゲンなのよ。
「皆さん、こんばんは。今日はCD発売記念ということです」…と、MCではSHOWさんと2人で新譜のPR。
これがその5曲入りの新しいCD。
ナント、7年ぶりのレコーディングとなったのだそうだ。
ベースからスタートするのは「Dahlia」。5/4拍子のミディアム・チューン。
サビが6/8拍子になったりで…いいナァ。こういう曲は好き。
トレモロ・アームを多用して紡いでいくメロディがスリリングだ。
ユッタリとしたリズムに乗って今井さんのきらめくようなテクニックが披露される。
今井さんのギターも自分の言葉を持ってるよね。
この独特な歌い回しと構成は今井さんだけのモノだ。
また新作から「RISE」。
前の曲とはうって変わって7/4と4/4が入り組んだ複雑かつハードな曲。
その複雑なリズムをモノともせず、一糸乱れぬプレイで曲を編み上げるSHOWさん。
この曲、カッコいいな~。
そうそう、庄田さんはMCでバッチリNATALの紹介もしてくれたんよ!
お気に召している証拠だね?
また前作から「Angel of the Crimea」。
タイトルの「クリミアの天使」とはフローレンス・ナイチンゲールのこと。
クリミア戦争で献身的な看護からついた別称。
この景色はよく見かけるでしょう?
私のハードディスクにはコレに似たような写真がゴマンとあるんだけど、このロケーションの背中にあたる場所の写真が残念ながら1枚もない。
探したけど出て来なかった。
この後ろにあるセント・トーマス病院の中に「ナイチンゲール看護学校」という施設がある。
そして、構内には「フローレンス・ナイチンゲール博物館」というのもあるんだけど、残念ながら入ったことはない。
今度ロンドンに行く機会があれば訪ねてみよう。
オマケ情報として、ジャズで「ナイチンゲール」といえば「A Nightingale Sang in Berkleey Square」という美しいスタンダード曲が連想される。
このまま写真の手前の方にホンの少し行くと「ランベス城」という古い古い城がある。
今でもカンタベリー大司教がロンドンに来るとこのランベス城に滞在している。
19世紀頃はこの辺りはモノスゴク治安が悪かったそうで、この周辺で発生した殺人事件の犯人を主人公にした小説がある。
この犯人はアメリカ人で、精神を病んでいたために、精神病院に収監された。
そこで取り組んだ偉業が、世界で最も包括的な単一の言語による辞書刊行物というわれる「オックスフォード英語辞典(OED)の編纂だ。そして、その小説というのがコレ。
サイモン・ウィンチェスターという人が著した『博士と狂人』。
驚いたことに、この伝記の映画化権をメル・ギブソンが買って、ショーン・ペンとの共演で映画化するとか…。
ナゼ、私が驚いているのかというと…あんまりおもしろくなかったの。
ダラダラ読んでいたせいもあって、読破するのにエラく時間がかかった。
Voodoo Butterflyのナイチンゲールは。どちらかというと、ナイチンゲールの献身的な看護よりもクリミア戦争の激しさを表現している感じ?
なにしろ今井さんのギター・プレイがすさまじい!
説得力のあるサウンドとフレーズの連続が素晴らしいのひと言に尽きる。
そして最後は新作から「FEEL」。
5/4拍子のヘヴィなナンバー。
またしても息もつかせない怒涛のインプロビゼーションを炸裂させて締めくくった。
Voodoo Butterfly…もっとガンガンと活動してもらいたいチームのひとつだ。
Voodoo Butterfly『-Z- LET IT DIE』の詳しい情報はコチラ⇒Official Website
★NATAL NEWS★
もうすぐNAMMショウですな。
それに向けてなのかな?
NATALのCafe Racerシリーズに新しいフィニッシュが加わるみたい。
1. Piano White with Black Sparkle Double Split
スゲエ名前だな。31のアイスにありそうな…。
写真ではまったくわからない毛d黒い2本のストライプはラメラメなのでしょう。
2. Green Sparkle with Black Sparkle Double Split
上のヤツのグリーン・スパークル版。
NATALのラメラメ・フィニッシュはメッチャ美しいからね~。
ホンモノが見てみたい~。
3. Tulip Wood Veneer
チューリップ・ウッドはローズウッドと同じ属の木。
これもイイ感じだ。
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。
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(一部敬称略 2017年11月17日 三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONにて撮影)