Heaven's Tragedy~nonLinear Metal DynamiX 2016 GRAND FINAL!
9月にMarshall Blogに登場したHeaven's Tragedy。
昨年末に開催されたイベントでとうとうその姿を現した!
その「イベント」というのはココでも紹介した『nonLinear Metal DynamiX SUPER COMPILATION Vol.2』というメタル系バンドのコンピレーション・アルバムのレコ発ライブ。
その2日目にステージに上がったのだ。
ボーカルズ、YOSH。
(筆者注:Marshall Blogでは正しい英単語語法にならって「vocal」と「keyboard」と「drum」を常に複数形で書き表すことにした。
英語圏の人は例えひとりでも「ボーカル」とはふつう言わず、特にバンドのメンバー紹介の時は必ず「ボーカルズ、〇〇!」とやる。もちろん単数形もあるが、この言葉を使うときは必ず複数形で使う。
したがって、レコードやCDの表記も必ず「Vocals」となっている。
ウソだと思ったらFrank Zappaのライブ音源を聴いてみなさい。たいていZappaはメンバー紹介をライブ音源に収録しているのでよく聴きとることができる。もちろん、コレはZappaだけではないからね。
ちなみにイギリス人は歌い手のことは「vocals」とは言わず、通常「singer」と呼んでいる。
「vocals」というのは「歌い手」という意味よりも「歌のパート」という意味合いが強いようだ。
この辺りは目下研究中。
大きなお世話だけど、正しい英語に向かって、小さなことからコツコツと…。)
この人、若いのに機材が渋い!
何しろJMP-1が大好き。
アナログ・サウンドを信奉する頼もしいヤツだ。
JMP-1にVALVESTATEのパワーアンプを組み合わせて使っている…と言いたいところだが、このVALVESTATEのパワー・アンプがどうしても手に入らないそうだ…変わったヤツだ。
仕方がないので現在のところ他ブランドのパワー・アンプを代用している。
VALVESTATEのパワー・アンプは、初代の時はステレオ40W+40Wの8004と、同じく80W+80Wの8008がラインナップされていた。
それが二代目のVALVESTATEの時代にはステレオ120W+120WのVS PRO 120/120に様変わりした。
Jienくんは、さらにラック式マルチ・エフェクターのJFX-1も狙っているという。
どれもそれほど出回ったモデルではないので、なかなか出てこないとは思うけど、不要なコレらのモデルをお持ちの方はゼヒJienくんに知らせてあげてください。
さて、重厚なパイプオルガンのオープニングSEに導かれて5人がステージに上がる。
オープニングの曲は「Lamentation Wing」。
よくこんな単語知ってるな。
「lamentation」とは「悲哀」とかいう意味だけど、外人が口にしているのを一回聴いたことないぞ。
有名なトロンボーン奏者のJ.J. Johnsonに「Lament」という有名なバラードがあるけど。Coltraneにも「Lonnie's Lament」という曲がある。
あ、そういえばJienくんはラーメン好きだもんね。
メタル系の方々の曲名は日常の会話に絶対に出てこないようなビッグ・ワードがよく出て来て勉強になる。
「vengence」なんて「出る単」にも載ってなかったでしょ?ま、この単語の元ネタがJudasだってことえお比較的最近知ったけど。
リフのないシンフォニックなドライビング・チューン。
いきなりYOSHさんの声が炸裂!
まぁ、何しろドラマチックな展開でコンテンポラリーなヘヴィ・メタルの美学を貫いている曲。
続けてJienくんのギターからスタートするのは「My Soul Will Rise Again」。
2015年に制作されたシングル『Beginning of the Tragedy』に収録されていた曲。
このシングルの帯に書かれている文句がスゴイ。
「天空を駆ける叙情の旋律 優しき悲劇が送る魂…」
…と来ると、「ああ、こんな女に誰がした」と続けたくなるけど、そうなんだよね、すごく演歌に通じるところがある。
「Let It Roll」とか「Mistreated」とか…私なんかハードなロックと演歌は紙一重のところがあると思っているのでゼンゼンこれで構わない。
おもしろいことに日本のヘヴィ・メタルってドンドン和風度が高くなっているように見えるんだね。
タイトルなんかは外人も使わないような英単語を並べるんだけど、音楽はすごく和風。
この現象はヘヴィ・メタルに限ったことではないが…。
そうそう、最近私は時々インターネット・ラジオを聴くようになったんだけど、私がいつも聴いている局のプログラムでおもしろいことを発見した。
私がいつも聴いているのは、「British Classic Rock」、「Be Bop」、「Broadway」、「Anant Garde Classical」の4つなんだけど、民族音楽も大好きなので時折「World Music」というプログラムにも手を伸ばす。
そこにあるんですよ、「日本のロック」が!
2つのプログラムが用意されていてひとつは「Japanese Rock」というジャンルで「The best of J-rock and visula Kei music」というキャプションが付いている。
スゴイよ、日本のロックは。世界から見ると、「民族音楽」と化しているのだ!
「演歌」がそうくくられるのならまだしも、まさか「日本のロック」がそういう風にみられるとは40年前、一体誰が想像したであろうか?
もうひとつは「Visual Kei」。
こちらは「Flamboyant Japanese glam rock and heavy metal」 とある。
「flamboyant」とは「ケバケバしい」という意味だ。
日本のロックが従来の西欧音楽から見事に脱却したと見るか、ルールを見失って行き場を失っているか…どう見るかはアナタ次第だ!
コレもノリノリのハード・チューン。
2曲目にしてこの盛り上がりよう!
ギターがテーマを奏でるが、ソロにはならない。
それがかえって新鮮だ!
「(2016年の)3月にライブの後に活動を停止し、メンバーを一新して復活した」と、YOSHさんのMCがあって3曲目。
「Tears of the Sky」という曲。
コレもガッチリと急速調。
イントロのギターのメロディが耳につくんだわ~。
先日紹介したWeROCK誌の付録CDに収録された、Heaven's Tragedyの目下のところのキラー・チューン。
それだけに演奏にも力が入る!
この曲でまず耳に付くのがイントロのJienくんのギター、そして「♪ビャ~」っとバンド全体にクールにかぶさるMissuちゃんのシンセなんよ。
コレはおもしろいな、と思った。
熱狂のリズム隊!
ズッパンズッパンと猪突猛進を絵にかいたようなパワフル・ドラミング。
「若さあふれる」なんて軽い形容はしたくないが、彼、17歳。若さあふれてる!
hama-のバンド・サウンドの格とも思える堂々としたプレイはサポート参加とは思えない。
すごい人気で。大きな歓声を浴びていた。
そして、ギター・ソロ。
これまたよく練られたメロディをクールに弾きこなしていた…コレで18歳!
続けて4曲目に突入。
冒頭のキメが印象的な「Gradational Sky」だ。
Sky好きだね。「空」がらみが2曲続いたよ。
アレ、Jienくん、ウリ好きとか?ぬか漬け最高!…違うか。
ここでも閃光のようなRyuyaくんのドラミングがバンドを全力疾走させる!
Jienくんはこの曲でもメロディアスなギター・ソロを聴かせてくれるんだけど、実にコンパクトなんだよね。
ギター・フィーチュアのバンドであることは間違いないんだけど、長々とソロを弾くことをしない。
バンド・トータルのサウンドで勝負しているのだ。
最近、そういうバンドが増えて来たような気がする。
こちとらMarshall屋なんで、ギターをフィーチュアされたほうがいいにキマってるんだけど、あんまりギターばっかりでも胃液が逆流して食道を傷めちゃう。
「もう速いのは十分わかったから!とにかくひと味違ったいい曲を聴かせて欲しい!」、と常日頃から思っているので、こういうアプローチは結構うれしいのだ。
そして、ココでビックリしちゃったのが「トロイカ」!
え、「トロイカ」ってナニかって?
海鮮丼の物販だよ。
イヤイヤ、この熱気でナマモノはマズイ。
あのロシア民謡の「トロイカ」。
「♪雪の白樺並木」…我々世代は学校で教わったような気がする。今では「テトリスの歌」の方が通りがいいらしい。
金持ちに恋人を奪われた若い馭者の悲しみを歌った曲なんだって。
そうなんですよ、こうしたスラブ系の悲哀(lamentation)を含んだメロディは絶対メタルに合うと思う。「演歌つながり」だし。
スラブ系のメロディを使ってメタルをやったバンドって以前はいるのかな?
チョット引用が長すぎたけど、ドエライ強いアクセントになったと思うよ。
カッコよかった。
「トロイカ」とは別にフト思い出しのは、昭和40年代の歌謡曲。
この曲なんか、スゴくなつかしい感じがするんだよね。
Jienくんが昭和40年代の歌謡曲なんて聴いているワケないし、こういうのは不思議だね。
そして、MCをはさんで最後の曲。
このMCではYOSHさんがMarshall Blogが取材に来ていることをアナウンスしてくれた。
ありがとうYOSHさん!
曲は「In My Rusty Heart」。
「もっと演りたい!」と実に楽しそうだった激唱のYOSHさん。
そして大活躍のJienくん!
早くRigをMarshallで固められるといいね!
最後に長年色んな音楽を聴き続けて来たジジイとしてチョット生意気なことを書かせてもらうけど、Heaven's Tragedyにはとにかく他のバンドがやらないことをやってもらいたいと思うナァ。
ずっと同じことをやるのもひとつの美学だとは思うけれど、ヘヴィ・メタルはもうそれではやっていかれないでしょう。
花形楽器のギターの花形のテクニックだった速弾きがもう極限まできてしまったし、いくら高い声が出たって音楽として意味がない。
日本のヘヴィ・メタルは、最初の方に書いたように和式に独自の進化を遂げた代わりに、どのバンドも全部同じサウンドになっちゃった!
アレは誰を手本にしてこうなってしまったたんだろうか?
特に女性のメタル・バンドは皆さんとても似通ってらして、もはや音楽だけでは見分け(聞き分け)がつかん。
40年前と違って誰もやっていないことを探すのは大変なことだし、見つけたアイデアを血肉に変えるのはもっと大変なことだとは思う。
でも、こんな時こそ色んな音楽を聴いて、自分たちの感性でそれらを消化して、人とは違う音楽をクリエイトしてもらいたいと願う。
とにかく若いミュージシャンはジャンルを問わず死ぬほど音楽を聴くことだ。
仕事がら色々なタイプの若いミュージシャンに接することがあるが、みんな本当に音楽を知らないことに驚く。
ま、私も新しいのはサッパリわからないけど、マァ、そういう若い人に比べれば、音楽全般の知識や経験の深さや幅に関してはそう簡単に負けないよ。伊達にジジイやってるワケじゃないから。
万が一ロックで負けるようなことがあったらジャズで勝負してやるし!
以前は若い人たちがビートルズを知らないことに驚いていたけど、最近は「ビートルズ」という名前を知ってるだけでもビックリするよういになってきちゃった!
そして次に、彼らが果たして本当に音楽が一番好きでバンドをやっているか疑わしくなってしまうのだ。
なんか音楽の質を競うよりも、どれだけ大きな会場で、どれだけ多くのお客さんを呼べるかを競っているような印象を受ける。
まずは音楽を聴かなきゃ。
それこそ「9以上」聴いて「1以下」を吐き出すぐらいでいいのではなかろうか?
「よいミュージシャンはよいリスナー」…将来有望な若きアーティストにまたぞろこの言葉を送って締めくくらせて頂く。
ちなみにJienくんはよく聴いてるよ~。とても18歳に思えん!
さて、Heaven's Tragedyは5月14日に開催される『non Linear Metal Dynamix EXTRA Vol.4』というイベントでクラブチッタのステージ立つ。
メタル好きの人はゼヒおでかけくだされ!
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