CURE METAL NITE 2016 - THE LAST <後編>
さて、『CURE METAL NITE 2016 - THE LAST』も後半に入る。
ココでまたシーンが変わった。
ここから「刃-yaiba-」のメンバーによる『NARUTO-ナルト-疾風伝』のコーナーとなる。
茂戸藤さんが説明しているのは「刃」のサイン。
「刃」とか「匕首」とか、このあたりの漢字の読みは特殊だ。
曲は『NARUTO』からの新曲で「勇ある者たち」だってばよ。
元永さんがステージに用意した尺八。
尺八という楽器は、その長さが「一尺八寸(約54.5cm)」であることからその名前がついたとされているが、実際にはいろんな大きさのものがある。
曲に合わせてサイズが選ばれる。
ショウも後半に入り、ますますシャープさを増す健至さんのギター。
健至さんがステージに用意したMarshall。
Marshallというギター・アンプはその創設者かJim Marshallということよりその名がつき、色々なモデルがある。
ハードなロックばかりに使われているようなイメージがあるが、音楽に合わせてモデルとサイズが選ばれる。
健至さんのMarshallはジョーサトリアーニのシグネチャー・モデルJVM410HJSと1960Bだ。
-KIJI-さんは以前にもMarshall Blogにご登場頂いたことがあるってばよ。
『GRANRODEO LIVE 2013 ヤッホー ワンダホー FUJIYAMA!!』の時のことだ。
さらに新曲がふたつ…「永遠に眠れ」と「轟地に立つ」を披露。
元永さんは篠笛もプレイ。
私、武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」が好きなのね。
知っている人も多いと思うけど、武満徹は世界で最も評価が高い日本人の作曲家で、1996年に亡くなった時は、アメリカの新聞は自国の大統領級の訃報を掲載したほどに偉大な人。
その時日本では最初、NHKが「『夢千代日記』の音楽の作者」と紹介したという。
日本人の恐るべき音楽的民度の低さを露呈してしまった。(しかし、この国はイギリスと並んで文学については世界一だ。両方は土台ムリ。イギリスはロックは最強だが、クラシック音楽の大作曲がいない。ヘンデルとエルガーぐらいか?そのヘンデルも元はドイツ人だ)
1959年にストラヴィンスキーが来日した際、武満の「弦楽のためのレクイエム」をいう作品を耳にし、大絶賛したことで評価を得た。
そして、武満徹の名前を世界的な作曲家に押し上げたのは、小澤征爾の仲介でニューヨーク・フィルから委嘱されて作ったのがその「ノヴェンバー・ステップス」という1967年の作品。
この曲はオーケストラに琵琶と尺八が用いられ、カーネギー・ホールで初演されたのだが、この時の尺八奏者は横山勝也という人で、ナント元永さんはその方の孫弟子に当たるのだそうだ。
その流派は「虚無僧」系。
一方、この時の琵琶奏者は鶴田錦史という人。
この人の生きざまがまたすさまじい。
元は女性なのだが、人生の途中から終生男性として過ごしたという天才琵琶奏者だ。
『さわり(小学館刊)』という伝記が出版されているので興味のある人はどうぞ。
立て続けに「形勢逆転」。
テクニカルにしてパーカッシブな三味線のサウンドがパワフルに鳴り響く!
このセクションは問答無用、驚天動地のメドレー形式。
次から次へと次ぐ演奏に高梨さんもエキサイトだってばよ!
そのまま突入した次のコーナーは打楽器の祭典。
イヤ、火花を散らすような和洋の打楽器の共演はやはり「バトル」と呼ぶべきだろう。
あるいは「デュエル」か、それとも「バウト」か?
でも、別に共演しているだけで決してケンカしているワケではない。
それなのに何となく太鼓を応援しているような気になってしまうのは日本人の性か…。
市川さん、ごめんなさい。
でもMarshallもNATALというドラムやってますから!
昔、大映に『妖怪大戦争』という映画があって、西洋の妖怪ダイモンに挑む日本の妖怪を思い出してしまう…と言ったら怒られるか?
この映画、6歳の時に一度見たきりなのに、私もよく覚えているな~。
今では3分前に名刺を交換した人の名前が出てこないで絶句することもめずらしくない。
そして、流れ出したるはチャイコフスキーの『序曲1812年』
打楽器の人たち、コレ好きだな~。
今年見たいくつかのドラムソロでこの曲が使われるのはコレで3回目だわ!
昔、4バンドぐらい出るライブで、そのうちの2バンドがドラムソロで同じことをやったのを見たこともある。
もちろんコージー・パウエルの大きな遺産で、今もってドラマーたちに与える影響力のすごさを思い知りますな。
でも、曲の運命なんてわからないものだ。
この曲のタイトル、「1812年」はナポレオンのロシア遠征が行われた年。
チャイコフスキー自身は結構チャチャチャと書いた曲のようだ。
『交響曲第六番』とはワケが違うみたい。
なのに、こうしてたくさんの打楽器奏者に愛されているのだから面白い。
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキーも極東の島国(実はお隣さん)の『CURE METAL』なる演奏会で自分の曲が愛奏されているのを知ったら「バリショーエ・スパシーボ」と言うことだろう。
余談だが、クラシックの「もうウンザリ」という作曲家はベートーベン、ブラームス、そしてチャイコらしいよ。
私は作曲家ではないが、曲を上げれば、ロックは「Burn」、ジャズは「Spain」、クラシックは「カルミラ・ブラーナ」だ…ウンザリ。
この辺りから最終セクションに入る。
今度は『セーラームーン』から。
『セーラームーン』は知ってる。
ウチの下の子が小さい時に見ていたから。
あのオープニングの曲を覚えて歌っていたが、最後の部分の「ミラクル・ロマンス」というところを「♪ミラクルのマウス」ってやってたっけ。
ちなみに上の子は、「かごめかごめ」の「♪いついつ出やる」を「♪いついつJR」と歌っていた。
曲は「スーパーセーラームーンのテーマ」と「プラネット・パワー・メイクアップ」。
そういえば今から20年近く前、コロラドから来たアメリカ人が「娘へのおみやげに」とセーラームーンの単行本を何冊も買って行ったのを見て驚いたことがあったっけ…。
もうその頃から日本のアニメは世界でもスゴイ人気だったんだね。
考えてみると、マーブロでも何回か書いているけど、私には同じ年のアメリカ人のイトコがいて、アメリカに住んでいるその彼が「ウルトラマン」やら「アトム」を知っているのを知って子供の頃にかなり驚いたことがあった。
50年近く前の話。
げにスゴイ歴史だよ、日本のこういう文化は。
歌を歌うようにメロディを奏でる健至さん。
やっぱりMarshallの音は素晴らしい。
誰が何と言っても真空管アンプに尽きる!
攻めまくる高梨さん!
今やショルダー・キーボードは珍しくないが、ここまで活用するキーボード・プレイヤーはジョージ・デューク以来かッ?
若い人に言っておくけど、こういうの昔はなかったんだよ。
ショルキーが出て来た時、この楽器に存在自体に賛否両論あったぐらいだったんだから。
そして、クライマックスに突入!
曲は「登場!謎のプリキュア」。
ステージの8人が一丸となって怒涛のパフォーマンスを展開する。
いつか「プリキュア好きなんだよね~」と私に言っていた庄太郎ちゃん。
メッチャ楽しそうにベース弾いてる!
曲は間断なく続いて「明日への戦い」から最後の「燦然!プリキュアオールスターズ」へと移行した!
もう呆れるほどの盛り上がりよう!
こうして『CURE METAL 2016 -THE LAST-』の本編の幕が下ろされたのであった。
もちろん即座にアンコール。
高梨さんからお客さんへの丁寧な感謝の言葉が発せられた。
終演後、楽屋で高梨さんからお話を伺ったが、そのあまりにも多忙な毎日を心配すると…「ボクはインディーズの時代が長かったんです。だから自分の音楽を聴いていくれる人がいるのがすごくうれしいんです。だから、そういう人がいてくれる限りは休まずやり続けるつもりなんです」
その話をお聞きして感動しちゃったよ!
結局は絵でも音楽でも「芸術」ったって、楽しんでくれる人がいなければ何の意味もないからね。
苦労して、本当に努力しているからこそ出て来る言葉だったと思う。
曲は「今よ!ファンタジスタドール」!
これまたずいぶん可愛い曲だこと!
さあさあ、「-THE LAST-」の一番最後のところ!
会場には大きな風船から飛び出した色とりどりの小さい風船が!
とても楽しい演出なんだけど、プレスピットの中はこの通り風船だらけで歩けない!
バッツンバッツン割ってやったぜ~。ワイルドだろう?
曲にぴったりの演出でドラマティックにショウを締めくくったのであった!
高梨康治の詳しい情報はコチラ⇒Team-MAX
…と思ったら、「-THE LAST-」に寂しさを隠し切れないファンから熱烈なアンコールが沸き起こった!
それに応えて再登場!
「最後はキュアメタルで締めくくりたいよね!」と「プリキュアオールスターズ大活躍!」を再度演奏した。
サービス満点!
コレでとうとう最後!
感動のフィナーレ!!
お疲れさまでした~!
イヤ~疲れたわ~。
出演者の数が多いと、どうしても撮影が大変なの。上手で撮っていると下手で何かが始まっちゃったりしてもう大忙し!
でも楽しかった~!
<あとがき>
このコンサートはボストン・ポップス・オーケストラなんかのコンサートと同じなんだね。
つまり、ジョン・ウィリアムスが作曲した映画に使われた曲を「ナマでお聴かせしましょう」…というヤツ。
すなわち、映画や演劇に使われた音楽だけを聴いて楽しむ。
日本でもこの手のコンサートが時々開催されているけど、日本でやるとどうも民音あたりの『映画音楽の夕べ』みたいになってしまって雰囲気がだいぶ異なる。
英米では純粋な「コンサート」として盛んに行われている。
先週も、Marshall Blogに来てくれたグレースがロイヤル・アルバート・ホールに『エイリアン』の音楽のコンサートを観に行って大いに楽しんできたようだ。
『エイリアン』の音楽を担当したのは映画音楽作曲家の最高峰のひとりジェリー・ゴールドスミス、『エイリアン2』はジェームズ・ホーナーといって以前マーブロで紹介したこともあるイギリス王立音楽院(エルトン・ジョンの母校)でリゲティに師事した優秀な作曲家だ。
どんな曲が使われていたのかはサッパリ覚えてはいないが、そんな才人が作る音楽だからして、当然そのクォリティも素晴らしく、音楽だけでも十分独立させて楽しめるレベルのものであることは論を俟たない。
そして、音楽の楽しみ方や楽しみの幅において、英米人は日本人とではどうようしようもなく違っていることがこんなところからも見て取れると思うのだ。
さて、この『CURE METAL NITE』も主題歌や劇中歌をヘヴィ・メタルにアレンジして音楽だけを楽しもう!という企画で、内容はその名の通り、ほとんどインストのヘヴィ・メタル、あるいはハード・ロックだ。
とにかく、歌があろうとなかろうと、今テレビ等で流れるの巷の草食系ロックより格段に骨太の音楽をアニメファンの皆さんに聴いてもらっているワケだ。
私は高梨さんと丸っきり同じ世代で、同じロックを通過しているので、『CURE METAL』の音楽が比較的スンナリ入ってくる。
その私が思うに高梨さんは、『プリキュア』の音楽を演っているのと同時に「自分のロック」をやっているワケ。
そして、お客さんたちはその「高梨さんのロック」に熱狂している。
もちろんお客さんと音楽の間にはアニメが介在しているのは百も二百も承知なのだが、今日こうしてメタル版『プリキュア』の音楽を楽しんでいるお客さんは「ロック」を楽しんでいることになるワケでしょう?
いくら関連しているアニメが好きでも、音楽がウンコだったら絶対にソレを聴かないでしょう?
しからば、キッカケがアニメだとしても、この手の音楽をカッコいいと思ったら、ジャンジャン自発的に「ロック」を聴いてみたらいかがだろう?
思い起こしてみるに、父の影響で私は10歳ぐらいから海外の映画に夢中になって、その映画に使われている音楽ばかり聴いていた。
クラスの他の子が百恵ちゃんとか淳子ちゃんに夢中になっていたけど、私はゼンゼン興味がなかった。
だからもう12歳の時にはスコット・ジョプリン(ラグタイム・ピアノの大家)の名前は知っていたし、・ウィリアムスやゴールドスミスはもちろん、ジョン・バリー、ラロ・シフリン、ニーノ・ロータ、エンニオ・モリコーネ、さらにレナード・バースタインだのリチャード・ロジャースだのフレデリック・ロウだのの名前は小学生の時から諳んじて言えた。
それが、13歳になってキッパリ終了、打ち止め、さよなら…ナゼならビートルズの音楽を知ってしまったからだ。
それから20歳ぐらいまでは、ロック中心の生活になった。私も若かったし、それほど昔のロックは面白かった。
で、ナニが言いたいのかというと、今はアニメをキッカケに高梨さんの音楽を楽しんでいる人も、ちょっと幅を広めれば、ロックの魅力を知り、人生が豊かになることだろう…と大きなお世話をしているのである。
『CURE METAL NITE』はそんな「ロックへの扉」を開け放たんとする素晴らしい企画だと思う。
それが最後だとは残念至極だ。
あ、それと…カッコいいロックはMarshallから!…お忘れなく!