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2014年2月13日 (木)

フィル・ウェルズ・インタビュー~その6

マーシャルへの信頼
P:成功したのは1つの事柄だけではありませんでした。すなわち、アンプは当時誰も得られなかった

Pw_img_7798サウンドを出す事に成功しました。そして、そのシンプルでストレートな構造ゆえ、信頼性がありました。
そのアンプはアーティストたちが欲がっていたものを与えたのです。
ザ・フーがアンプを持って、ジムに「2、3台、明日までに修理して欲しいんだけど…」とショップにやって来ます。
それを「分かりました、明日までにやっておきます」と預かる。そして修理をやっておきます。こういうことがマーシャルをお客さんに所有させるチャンスを広げて行ったのです。
S:信頼性ということですか。
P:はい。

古いアンプ話しいろいろ
P:2010年でしたか…、早いものですね。我々が最初に製作した20台のアンプのうちのひとつが持ち込まれました。
本物かどうか確認したいとのことでした。そこでプラグ・インしてみたのですが、50年近く経ってもまだちゃんと動きました。もちろん、時が経つにつれていくつか部品は交換されていましたが…真空管は何度変わったか分かりません。しかし、コンデンサーやトランスなどのパーツはすべてオリジナルのままでした。問題なく動きましたよ!
持ち主も1ヵ月に1度はプレイしていたようです。
地元のクラブなどで友人とジャムっていたのですが、ある日誰かから「どこで手に入れたの?」と訊かれて、「わからないけど、すごく古いアンプでしょ!」と答えたのですが、その友人に「コレは相当価値のあるものだよ」と言われてここに持って来たそうです。
S:それはまたノンビリした話しですね。さぞ音も良かったんでしょうね。
P:はい。それでその彼はそれを売ってしまったそうです。

ディープ・パープル
S:ディープ・パープルがマーシャルのデモンストレーション・コンサートで演奏したことがあるそうです

Pw_img_7789_2が、本当ですか?
P:はい。確認したわけではありませんが、その話は聞きました。
S:ドラム・キット以外はすべてマーシャルの機材を使ったとか…。
P:はい。
S:いつ頃、どのように行なわれたんでしょう?
P:わかりません。特定しにくいです。かなり昔のことなので。
それはジムが一番知っていたと思います。残念ながらもう尋ねることも出来ませんが…。しかし、当時ディープ・パープルはまた新しく出て来たバンドという感じでした。今のように大規模な人気はありませんでしたよ。
もちろんその後どんどん大きくなっていきましたが…。ザ・フーもそうです。でもやっぱり可能性は感じさせましたね。マーシャルをたくさん使っていました。
S:アーティストに関して、あなただけが知っている面白いエピソードは他にもありますか?

アンガス・ヤング
P:そうですね、おもしろいと思った話は…この工場に移って来た時のことなんですが…。80年代初期のことです。バンドがやって来て新製品を試奏したんです。最終段階のところでの試奏でした。その頃はまだシアター(Marshallの工場内にある劇場。今ではそこで爆音が出せるようになっている)がありませんでした。
アンガスがやってきた時なんですが、彼に6セットのスタックを作ったんです。総計600Wのヘッドに4×12インチ・キャビが12台です。
工場の前の道の向かいにはB&Q(イギリスの日曜大工用品販売店。ヨーロッパ最大、世界大3位のDIYショップ)があるんですが、彼らが私に向かって文句を言うんです。「やかましい!」と言って。
そこでマネージャーが丁寧に、ボリュームをさげるようにアンガスに伝えました。爆音すぎて怒られちゃった!
S:ハハハ!アソコまで聴こえるとはすごい!

★      ★      ★      ★      ★
どっかにないかな~と思って昔の写真をヒックリ返したら何とか見つかった!
左の2階建ての白っぽい建物がMarshallの本社。
そして、Dnbigh Road(デンビー・ロード)という道路を隔てた写真右端、オレンジ色に「B」っぽい文字が見えるでしょ?これがフィルの言っている「B&Q」。
アンガスのギターは場内からココまで聴こえて、かつうるさかったというのだ。

よく、Grand Funk Railroadの演奏が後楽園ホールから池袋まで聴こえたなんていう話しを聴くけど、これは完全にガセらしい。本当にしておきたいエピソードだけどね。
でも、このアンガスの話しはマジらしい。
しかも。アンガスはコンサートではなくて、ただのMarshallの試奏だからね。試し弾きでこの爆音ではタマらん!

B_q これがシアターの内部。突き当りがステージなっている。
この空間を利用して、イギリスをツアーするMarshallのバンドのリハーサルに貸したりすることもある。
2010年のZakk Wyldeのツアーの時などは、リハーサルの最終日にMarshallの従業員をシアターに招待して演奏を披露していた。
その他、大勢が出席する会議でも使われるのだが、火の気がなくて夏でも寒い。そんな時でも半袖のTシャルのヤツいるもんね。私なんぞすっかりセーターよ。
そんな私の姿を見て、「シゲ、どうした?! 風邪でも引いたか?」とヨーロッパの人たちは心配してくれる。イエイエ、DNAが違うんですよ、寒い国から来た人達とは!
ホント、日本って「暑い国」の仲間なんだよ。
Gm_img_8322★      ★      ★      ★      ★

ゲイリー・ムーア
P:ゲイリー・ムーアがシアターを使っていた時のことも覚えています。何だったか覚えていませんが、何かを試奏していました。とにかく何かを弾いていました。曲の最後になって彼はバンドのメンバーを振り返り、「今の所は書いておかなくちゃな」と言ったんです。
あの場で曲が出来たようで、ああいう状態で曲を作るようなミュージシャンはそんなに多くはないでしょう。
彼が振り返って「書いておかなくちゃならない」と言った時、すごく良い気分でしたね。
S:確かに…。

古いアンプ話しいろいろ2
P:古い機材の話はたくさんあります。ロック・バンドだけではありません。3~4年前、…なんといったらいいんでしょうね、教会の牧師のような人だったんですが、この人は1963年にHanewell(ジムの

Pw_img_7800_2店のこと)でJTM45のPAを購入していました。それを教会に設置し、ずっと使い続けてきました。結婚式、お葬式、クワイアの練習といった用途でした。2008年ぐらいの事だったと思いますが、彼はここ2~3年で音質と音量が劣化して来たと感じていたそうです。
S:ずっと使って来たから…。
P:はい。そこで、「古いマーシャルを使っているのですが、どうしたら良いか分かりません」と、私達のところへ尋ねてきました。
「持って来て下されば修理しますよ」と伝えたところ、果たしてそのアンプを持っていらっしゃったのです。
買ってから一度も手をつけていないそうで、1963年に購入されたものですが、教会に設置されたきり2008年になってここに持ち込まれるまで誰もメンテをしていませんでした。
内部には1インチのほこりがたまり、真空管は1963年当時のままのオリジナル。
S:ハハハ!
P:はい、そこでパワー管を新しい物に交換しました。完璧に動きましたよ。
「コレ、これからどうしたらいいですか? オークションに出して売った方が良い? それとももう捨てた方がいいでしょうか?」と訊かれたので「いえ、売って下さい。ネットのオークションに出したらいかがですか?」と言いました。
そうして彼はそのJTM45を持ち帰ったのですが、1ヵ月ほどして再び連絡がありました。
S:彼はどうしたんですか?
P:結局あのアンプを売ったそうです。その売ったお金で教会には新しいPAのセットが導入でき、建物の修理基金に大枚充てたそうです。かなり高額で売れたようですよ!
S:へえー。
P:バンドということで考えれば、昔はよくバンドのメンバーがよく来ていましたが、最近はめっきりローディが持ってくるようになりましたね。ほとんどローディが持参しますね。
S:今は工場にシアターが出来たので、試奏などはそこで行なっています。でも昔、1977年に私が働き始めた頃は、彼らは直接工場内に遊びに来ていました。工場の中でアンプを弾いていましたよ。
つまり今より多分、もっとバンド・メンバーとの距離が近く感じられました。
しかし、私がいつも驚いていたのは、素晴らしいギタリストがとてもシャイだということです。ステージ上で見るように派手だと思いがちですが、1対1で向き合ってみるととてもシャイなんです。
S:一般的にドラマーとは全然違いますね?
P:P:全く違います。彼らはどこにいても目立ちたがり屋ですからね!

イアン・ギラン
P:あとは何だったか…ディープ・パープルでしょうか。リード・シンガーの名前はなんでしたっけ。
S:どの時代ですか? ロード・エヴァンス? イアン・ギラン?

Pw_img_7784P:イアン・ギラン。彼は凄い紳士です。イアン・ギランに関する話があります。
ミュージアムには2台のPAキャビネットがあるんですが、これはディープ・パープルの所有品です。今から数年前、イアンが奥さんや娘さんと一緒にここを訪れました。もちろんイアンはジムと知り合いで、ジムの所に来たんです。
S:昔の仕事仲間ですもんね。
P:はい。そして、私は奥さんと娘さんを連れてちょっとした工場見学をしていました。それが終了してエントランスに戻りました。
エントランスの二階はミュージアムです。
終わって階段を上がるとミュージアムです。そこでおしゃべりをしていると、イアンとジムがやって来ました。イアンが2台のキャビネットの前でしばらく立ち止まり、「これは…私のだ」と言いました。
「どういうことだい?」…ジムは「このキャビネットをディープ・パープルのためだけに作ったんだよ」と言いました。
S:何しろデモ・バンドですもんね!
P:あおう。特定のスペックで特徴のある見た目になっています。するとイアンは「これは盗品だ!」と言うんですよ!1970年ぐらいのモノだったか、詳しい時は覚えていませんが。
「どこで手に入れたですか?」とイアンに訊かれたので顛末を話しました。
 その6ヵ月前、ある青年が工場にやってきました。彼のおじいさんが亡くなったので、遺品を片付けに行ったら、裏庭の小屋の中にコレが置いてあったというのです。そこで返した方がいいのではと思い、ここに持って来たというのです。
私達もどうしていいかわからず、歴史も、作られた年代も、大体のことは特定出来るし、誰にあてた物なのかも大体分かります。
しかし、25年も前の物が突然現れてもね…。
S:それは驚きますよね。
P:イアンもかなり衝撃を受けた様子で、「どこで見つけたんだろう!」と知りたがっていましたが、「分かりません…」と言うしかありませんでした。
でもこうして2台は出て来たんです。失くしたり、盗まれたり…そういう事はよくあります。
たくさんのバンドが失くして、いろんな人が見つけてきます。なぜなら古い物は金銭的な価値が高いから。扱いにはちょっと注意した方がいいと思いますけどね!あとは…何が知りたいですか?

★        ★        ★        ★        ★

Marshall本社のエントランス。2階部分がミュージアムになっている。

Gm_img_7851これがミュージアム。
以前はガラス張りになっていたが、今ではそれが取り払われオープンな雰囲気になった。
50周年記念コンサートの前日、Jonathan ElleryのBBCのインタビューもここで収録された。

Mb_img_7943_2そして、この赤いキャビが当該のIanが所有していたとされるキャビネット。ガッチリとコレクションに組み込まれている。

Mb_img_8009 つづく

(一部敬称略 2012年9月 英Marshall社にて撮影・収録 ※協力:ヤングギター編集部、平井毅さん&蔵重友紀さん)