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2014年1月31日 (金)

【イギリス-ロック名所めぐり <番外編>】マーブロ聖林へ行く~Mar-Blo Goes to Hollywood <後編>

<後編>もSunset Boulevardから。

540_2コレ、朝の6:30ぐらい。
夕焼けじゃなくて朝焼けなの。
朝は空気が澄んでいるし、湿気が少なくて本当に気持ちがいい。
日本でいえば4月の上旬くらいの気温だろうか。
でも、毛布を頭からかぶった人達がウロウロしていて結構コワイ。
目が合ったりしちゃうとマジでビビるよ。
色のせいもあるのだろうけど、とにかく目ツキがまったく普通じゃないんだ。

560_2さて、この「サンセット大通り」…

570_2私にとっては何と言っても下のヤツ。
ビリー・ワイルダー(映画の話題の時の人名はカタカナ表記にしよう)。
もう何回観たことか!
もっとも好きな映画のひとつ。1950年公開。
グロリア・スワンソン、ウィリアム・ホールデン、エリッヒ・フォン・シュトロハイム。
それぞれの役名をノーマ・デズモンド、ジョー・ギリス、マックスという。
ジョーの若い恋人はベティ・シェイファー。
いい映画は役名もいい。
他にセシル・B.デミル、バスター・キートンらが実名で登場しているのは有名な話。
脚本もワイルダー。
ストーリーの面白さもさることながら、小道具の使い方や伏線の張り方が尋常でなく巧妙だ。
それに引き換え最近のアメリカ映画ときたら…。
もうハリウッドはこういう緻密で面白い脚本を書ける才能が絶滅してしまった。
 
そう言えば帰りの飛行機の中で「情婦(Witness for the Prosecution)」をやっていた。
アガサ・クリスティ原作の法廷劇だ。
これもビリー・ワイルダー。
タイロン・パワー、マルネーネ・ディートリッヒ、チャールズ・ロートン、エルザ・ランチェスター(弁護士とその看護婦を演じた最後の2人は本当の夫婦)という英米独混合の最高の配役。
大ドンデン返しがウリの1957年作品。
これももう4、5回見ていて、もちろんドンデン返しのネタもわかりきっているのだが、つい観てしまう。
そういうのが本当にいい映画。新しい発見なんかなくてもいい。
問答無用に何度も観れる映画がいい映画。
 
飛行機での他の新しい映画があまりにもドイヒーだ。
イギリスを勉強するつもりで『ダイアナ』とかいうのに挑戦したが、とても最後まで観れたものではなかった。
退屈で耐えられなかった。
とにかく洋のの東西を問わず映画は瀕死の状態にあることは否めまい。
アニメは「アニメ映画」であって「映画」とは違う。
ワイルダーやキャプラ、黒澤らと、宮崎を一緒に語るべきではない。
  
それと観たのが小津の『秋刀魚の味』。
いいナァ、小津は。
ようやくその良さがわかって来た。御前さまや黄門さまの演技もいいが、岩下志麻のナント美しく愛らしいことか!
さらに佐田啓二のカッコよさ!
今のイケメンと言われている子たちが百人束になってもカッコよさではかなうまい。
美男美女の基準はこうでなければならない。
杉村春子がつまんない役で出ているのもオモシロかった。
 
とにかくまだ『サンセット大通り』や『情婦』を観ていない人が心底うらやましい!

580v_2

そんな大好きな映画だからミュージカルも好きだった。
ロンドンのウエスト・エンドでは1993年にアデルファイで初演、ブロードウェイの初演は1994年のミンスコフ。
ブロードウェイで初代ノーマ・デズモンドを演じたのは『ガープの世界』、『危険な情事』や『101』のグレン・クローズ。これを観たかった!
私もミンスコフで観たのだが、タッチの差でノーマは2代目になっていた。
でも、これを演じたのはエレイン・ペイジだった。
エレインはウエスト・エンドで『Cats』で最初にグリザベラを演じ「Memory」を歌った人。
イギリスのスーパースターだ。
「アンドリュー・ロイド・ウェバーの最新作と超豪華なセット」ということでが話題を呼んだが、残念ながら『キャッツ』や『ファントム』のような超ロングランにはならなかった。
でも、ジャズを基調とした挿入曲はどれも素晴らしくて、「As If We Never Said Good-Bye」という名曲が生まれた。
下はオリジナル・ブロードキャストによるCD。

590_3ブロードウェイのみやげ屋で譜面まで買っちまった。版権はLarryのところだったのね。

Us_img_0012この映画の重要な場面に出て来るパラマウント・スタジオのツアー。いつか行ってみたいと思う。
Us_psこれが私のSunset Boulevardなのだ。

570そして、今回知ったんだけど、この通りの一部はTHE SUNSET STRIP GUITARTOWNというらしい。
「Strip」とは通りのこと。
英語は「通り」を意味する単語がたくさんあるよね。
StreetやAvenueは誰でも知ってる。
NYCだとタテの通りがAvenue、ヨコの通りがStreet。
大阪で言うと「筋」と「通り」だ。
東京にはこういうのがない。
街が「碁盤の目」状じゃないからね。
日本に来た外国の人は、あまりにも道路に名前がつけられていないことに驚くらしい。
ロンドンなんかはどんなに短くて細い路地や空地でも大層な名前が付けられている。
なので、終戦直後に進駐軍が占領下の東京に来て最初にやったことのひとつは通りに名前をつけることだったという。
例えば、昭和通り…終戦直後は「Dark Street」と呼ばれていた。
 
で、英語の「通り」を示す単語の使い分けが気になってちょっと調べてみた。
Avenue : 街の広い道を指す。語源はフランス語。
Boulevard : 広い並木道を指すことが多い。
Road : 街と街をつなぐ意味が元。「ロード・レース」とかいうもんね。「車道」というイメージらしい。
Street : 街中の舗装された道のこと。人や車が行き交う道。
Strip : お店が両側にある街路。
 
イギリスに行くと、これにCrescent(三日月状の道)やCourt(これは道ではないが地名によく出て来る)なんてのが加わるが、AvenueやBoulevard、Stripというのは見たことがない。もっぱらStreetとRoadだ。
同様に、NYCでもBoulevardはお目にかかったことがない。

このギターのオブジェには「G」の字のロゴが入っている。

730Jack Danielsの広告のピックも弦に挟まってる。こっち側から見るとレフティだ。

575vこうして通りにスポンサーが付いているというのもいかにもアメリカらしい。日本も近い将来こうなるんじゃない?

595_2そして、そのバーボンの広告の根元にあるのが有名なRAINBOW。

600_2MotorheadのLemmyがひがな一日中ここで過ごしていることが名物になっている。

610_2入口の脇にはElvisのプラークが…。

635その隣はMotorhead!
ご存知の通りMotorheadはLemmyもPhil CampbellもMarshallだ。
Lemmyは1992SUPER BASSをベースにしたシグネチャーモデルを、PhilはMarshall創立50周年記念のコンサート『50 YEARS OF LOUD LIVE』に出演したことは記憶に新しい。

Phil Campbellのようすはコチラ⇒【50 YEARS OF LOUD LIVE】 Vol.4
636RAINBOWの壁に掲げてあるWHISKY A GO GOの広告。この有名なハコはココより少し東側に位置している。

620…と思って眺めていたら、アララ、Uli出てんじゃん!NAMMのついでか…。いやNAMMがついでなのかな?
その上はRobby Kriegerだ。

630お店のディスプレイ。やっぱ、レス・ポール・シェイプ。

637vすぐ隣はコレ。

640コレは感動した。
だって「ROXY」なんだもん!この前を通りかかったのは決して初めてではないハズなのに!

650もちろん、私にとってはコレね。Zappaの『ROXY & ELSEWHERE』。
アルバムの大部分の音源が1973年12月10~12日にココで録音されている。
「Son of Orange County」と「More Trouble Day」の2曲は1974年5月11日の「Elsewhere(「どこか他の所で」という意味)」での演奏。
それはペンシルバニアのEdinboro State Collegeという大学で、「Son of ~」の一部はシカゴのThe Auditriumというところで録音された。

660cd_2つまり、この世紀の大名盤はほとんどがここで録音されたワケだ。

670ああ、ここにFrank Zappaがいたなんて!
しかもあれらの究極の名曲が演奏されたなんて!
 
Zappaは音楽だけでなく、ビジネスにもクリエイティビティを発揮した。
かなり昔からメール・オーダーの手法を取り入れたし、海賊盤を正規盤として発売したりもした。
アダプターを付けてシングルCDを世界で最初に発売したのもZappaのハズだ。
 
ちょっと背景を話すと、この『ROXY』の時分はGeorge Duke、Chester Thompsom、Ralph Humphlry、Ruth Underwood、Napoleon Murphy Brock、Jeff Simmons、Walt, Bruce & TomのFowler兄弟というZappa史上もっともZappaらしいメンバーによるZappaらしいレパートリーが集中している時期だった。それゆえ人気も高い。
LPは2枚組なのだが、収録時間がとても短いのが残念。ファンならもっと聴きたい。
しかし、未発表の音源がまだたくさん残っていることも知られており、それがいつ発表されるかというのがZappaファンの定番の話題であり、悲願なのである。

そして、一昨年だったかな?Zappaファミリーはこの『ROXY』の未発表音源を驚くべき手法を用い公開することを発表した。
それは、「CDを販売する」にではなく、「原盤権を販売する」ということだった。
浅学にして私はこの「隣接著作権」とかこのあたりのことに詳しくないが、認識の仕方としては、「この権利を買った人は自分で好きにCDを生産して販売していい」というもの。
しばらく時間が経ったがあれからどうなったろう?…と思ったら普通にCDが出るみたいだ。

680v同じくZappaが演奏した場所といえばNYCのBeacon Theaterも訪れたことがあるが、ライブ・アルバムのタイトルになっているだけにROXYの方が感激が大きい。

690v東京で言えば今は無き「国際劇場」と「日本青年館」だ。
これが全景。
隣にRAIBOWが見える。

700RAINBOW側の壁に掲げられていたのはSABBATHの広告だった。
あ、ちなみにRoxy Musicも好きです。

710vさすがLA。街中の広告もダイナミック!

720ますます西にやって来た。Picoという所。
ここにもGuitar Centerがあるよ。

740こも店もデカイ!

750店の周りにはJeff BeckだのIngwieだの大型のポートレイトが飾ってある。その中でひと際私の目を惹いたのがコレ。唯一のジャズ・ミュージシャン。
ナンでStanly Clarkなの?!

760そして太平洋まで来たよ。Santa Monica。
こっちの人は「サナモナカ」みたいに発音するよね。770まるでブライトン!

780でもこっちの方が南国ムードだ。
ここのショッピング・モールも立派だね。驚いちゃったのが駐車代。
数時間停めてまさかの$1!
赤坂あたりだったら軽く3,000円は越すよ。
つまり、東京の中心地の駐車代はサンタモニカのソレの30倍ということになる!
ロンドンを経験した後では、東京の物価が高いとは決して思わないが、こういう所から来た人に言わせれば確かに東京の物価は「クレイジー!」ということになる。
チョット言っておきますが、もちろん為替レートにもよるけど、ロンドンの物価なんかスゴイよ。消費税(VAT)が20%も含まれているせいもある。
チョット前に確か16%から上がった。
でも、スーパーの食料品なんかは激安だ。
アイテムあたりの量が多いのがタマにキズだが、単価換算すると恐ろしく安い。
つまり、消費税の軽減税率が導入されているということ。
日本政府もマジでコレを考えてもらうことを願っている。

790vこれはロック名所というよりジャズの名所なのかな?R&Bか?
この有名な曲は1946年のBobby Troupの作品。Troupは俳優としても活躍。
お色気系ジャズ歌手、Julie Londonのダンナさまだ。

ここサンタモニカはシカゴからスタートする66号線の西の終点なのだ。

800そして、こんな記念碑が…。Will Rogersって知ってる?
私は不勉強で知らなかったが、この人、「アメリカ人なら知らない人はマズいない」的な、チェロキー族の血を受けたカウボーイ、コメディアン、ユーモア作家、社会評論家、ボードビル芸人、サイレント時代の俳優だったそうだ。
世界中を3度旅して、映画俳優としては1930年代、ハリウッドでもっともギャラが高かったという。
調べてみるともうここに書ききれないぐらいすごいキャリアの持ち主で、こに人の名前が付いた学校が数々はおろか、原潜まであるという。
 
この人いいことを言ってる。「私はまだ嫌いな人に会ったことがない」…ウソでも言ってみたいセリフだ。

810そんな美しいサナマナカでもこういう光景は当たり前。

Tree サンタモニカを後にしてド観光地、ハリウッドの真ん中に移動する。
ずいぶんここもさびれたしまった…ってコレ浅草六区じゃねーか!
ちなみにここ浅草六区は戦前は東洋一の繁華街で、映画館と寄席や芝居小屋が合わせて60近くあったという。
関東大震災の前はもっと栄えていた。
Us_img_00051こっちがホンモノ。
でもね、ハリウッドもホントに同じなのよ。
私は26年前にチョコッと見たハリウッドの姿しか知らないが、その間のハリウッド映画の幼稚化、陳腐化に呼応するようにヒドく猥雑化してしまったように感じた。
表通りの必要以上な喧騒から離れ、ちょっとウラ通りに入れば人っ子ひとり見かけず、昼間からナニが起こってもおかしくないような不気味さが漂っていた。
通りに並ぶ店のほとんどが二束三文の土産品を販売する店舗で、店員は100%と言っていいぐらい黒人。
この街は薄気味悪いことこの上ない。
サッサと移動しよう。

820有名なCapital Tower。
レコードの形をしているワケね。屋根のサオはレコード針なんだって。
このビルはもうすぐiPODの形になりますから。

830アメリカ西海岸地区最大のレコード・レーベル。Johnny Mercer(有名な作詞家。モノスゴイ数の作品がジャズのスタンダードになっている)が設立者のウチのひとりなんだね~。

840v50周年を迎えたThe Beatlesを祝う広告。一昨年のモノだぜ。

850ミュージカル『Mary Popins』がかかっていた。私はコレ、数年前にロンドンで観たけど、ヨカッタな。
あまり語られることがないが、これに使われているシャーマン兄弟の曲の数々は問答無用で名作だ。

860Zappaがないかと下を向きながら「Hollywood Walk of Fame」を歩く…なかった。
でもこんなものを発見。
「Walk of Fame」の50周年を記念するプラークがRUSHの所にだけ貼り付けられていた。
あ、私、Rushはまったくの苦手です。

870おなじみHard Rock Cafe。
KISSのキャンペーンをやっていた。

880チャイニーズ・シアターにも行ってみたが…

890汚ね~!
見るも無残に汚くなってしまった。
あまりにも多くの人が歩くため、石板の表面が摩耗し。文字や手形足形が薄くなってしまっているモノもある。
コレは作り返すワケにも行かないし、その内通行止めにして上を歩けなくするだろうね。
ここでもハリウッド映画、イヤ、アメリカ映画衰退のようすを見た。

900最後に…。
この日の晩、夕食を共にさせていただいたのはKenji Nakai。
マーブロ読者にはご存知の方も多かろう。
Kenjiさんは日本でレコーディング・エンジニアとして活動後、'90年に渡米し、レッチリ、Cheap Trick、Boz Scaggs、Celine Dion、Tom Scott、さらに国内ミュージシャンではChara、福山雅治、アンジェラ・アキ等とのプロジェクトに参加している。
コンサートのミキシングやマルチ・チャンネル作品、ゲーム音楽などの制作にも積極的に取り組んでいる日本を(イヤ、もうアメリカか…)代表する音響マン。
歳も限りなく近く、色々な話しがお聴きできて楽しかった。

居酒屋風のお店で会食をしたのだが、この日のお客さんはほぼ我々だけ。
実はちょうどこの日はグラミー発表の日で、多くの人は外出せず家で、もしくは仲間とスポーツ・バーで授賞式の様子をテレビで見てすごすのだそうだ。紅白状態ね。
ところが!
この放送は録画でナマじゃないんだそうだ。(時差の加減で東海岸はナマなのかも…)つまり、もうみんな結果を知ってるワケ。
にもかかわらず放送に夢中になるのは、グラミーならでは顔合わせのセッションを楽しむのだそうだ。
要するにダウンタウンが時々やってる、相方を替えて漫才とかコントをやるヤツね。

他にも食べ物の話し、アメリカ式思考の話し、チップの話し等々…定番の話題ではあるが、いつ聞いてもこの手の話しは実に楽しいものだ。
最高に楽しい夜だった。

Kn…というワケで3回にわたってお送りした<LA編>。書いてる私は十分に楽しめた。
最後に気がついたことをひとつ。
身の危険を案じてのことか、LAには携帯だかスマホだかをいじりながら歩いている人はまずいなかった。
日本人にもアレはやめてもらいたい。
エラそうに言ってる私も以前はやっていたが、今年に入ってから絶対にやるまいと決心した。何もできない私でもこれぐらいはできる!

ついでに…もうひとつは電車の優先座席で携帯イジってるヤツ。これは以前から私は絶対にしなかったが、いいオッサンやオバサンまでも黄色い吊革の下で平気で携帯をイジくってる。ルールはルール。日本人なら恥を知ろうではありませんか!

910(一部敬称略 2014年1月 ロサンゼルスにて撮影)