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2014年2月 3日 (月)

犬神サアカス團~『不確定性原理の悪夢』発売記念巡業

3連チャンでアメリカのレポートをお届けした後は、いきなりドッロドロ和物バンドのライブレポート。

今日は拙文。イヤ、「節分」。マーブロは一年中「拙文」か…。
東京は暖かいね。「節分」は立春の前の日のこと。「節分」の名が示す通り、季節の分かれ目を指す。つまり、「暦上では春がやって来た」ということ。
このバンドは「春など永遠に来ない、鬼も逃げ出す絶望感に満ち満ちた真っ暗な音楽」を奏で続ける最高にゴキゲンなグループだ。
犬神サアカス團の登場だ!

05今年で結成20年を迎える犬神サアカス團。

10_410月にはニューアルバム『不確実性原理の悪夢』を発表。

Cd今日のレポートはその発売記念ツアーの千秋楽のようすだ。
前回お送りした『祟神』では悲惨な農民のストーリーのナレーションがオープニングに用意されたが、今回はストレートに4人がステージに現れ、演奏を開始した。

20_5犬神凶子

30_3犬神情次2号

40_3犬神ジン

50v_3犬神明

60v_41曲目は「機能不全家族」。『不確実性原理の悪夢』の最後に収録されている直球勝負のドライビング・チューン。そして「泥」へと続く。

70_3ソリッドなリフとシャープなソロで犬神サウンドを鮮やかに彩る情次兄さん。

80v_2当然情次兄さんはMarshallだ。

85JCM800 2203と1960Aのコンビネーション。

90v足元のようす。

100_3俊敏なアクションと重厚なベース・ラインの巧妙な絡み合いが魅力のジン兄さん。

110_2ジン兄さんのEDEN。WT-800とD410XSTキャビが2発。卒塔婆は国産だ。
どこにいてもまるで耳元で鳴っているかのような音抜けのよさは驚異的ですらある。

120v_2足元のようす。

130ダイナミックにしてドラマチックな明兄さんのドラミング。ドラマーの感性を忠実に表現するNATALのキットがベストマッチする。

140v明兄さんのNATAL。
12"、16"、22"、14"x5.5"のシンプルなメイプルのキット。恐ろしくヌケがよいリッチなトーンが素晴らしい。

150_2足元のようす。ハイハットスタンドとツイン・ペダルもNATALだ。

155紅蓮のバスドラ・ヘッドにバンド・ロゴとNATALロゴが映える!

160v_3そして猛烈に舌を巻きながら世にも不幸な物語を唄いつづる凶子姐さんのカッコよさ!
でもね、超満員の会場にホロっと来ちゃうシーンもあったんだゼ。

170_2「道行き」、「浅草心中」とノリノリの曲が続く。

180v_2曲調はノリノリでも「浅草心中」あたりの世界はこのグループならではのもの。

いつもマーブロ上で「ロックの黄金時代」だの「70年代のロック」などと騒ぎ立てている通り、私は古い人間だ。しかし、テレビの「下町探訪」のような番組があると「昭和の香り」っていう表現を使うでしょ?アレが気に喰わない。どこでどういう風に「平成」と違うというのだ?
ああいう言い方をされるといい気分がしないんだな…。

「昭和」と「平成」の違い…根岸出身で随筆家の山本夏彦(1915-2002)によれば、「戦前」と「今」を比べると、テレビの有無を除けば日本人の基本的な生活形態はほとんど違わないという。
上梓されたのがチョット前の本なので、今ならパソコンの有無も「戦前」と「現在」の違いに数え上げていたかもしれない。
だから、「昭和」と「平成」の違いなど目には見えないほど微細なものであるハズなのだ。

ところが、このバンドは違う。もし、この雰囲気が「昭和」ということであれば、どうしようもないぐらい「昭和」を感じてしまうのだ。以前にも書いたが黒岩重吾の「西成シリーズ」の世界。
それが犬神サアカス團を他のバンドと相違させている点であり、魅力と受け止めし、それを楽しんでいる。

それにしても何だって最近の歌は「がんばって」と「負けないで」ばっかりになっちゃったんだろうね。世の中の競争が激化したことの表れなのかね?あんまり応援してプレッシャーかけなさんなって!却って落ち込むわ。

心理学的にはツライ時、悲しい時にハッピーなものに接すると。気持ちが明るくなるどころか、実はそれは反対で、余計ふさぎこんでしまうらしい。
ツライ時は、ツライものに接することがいいらしい…っていうので、だ~いぶ昔、イヤなことがあった時、これを思い出して実践したことがあった。
それには『マッチ工場の少女』とかいうフィンランドの映画を用いた。何かの評で「映画史上もっとも悲惨なストーリー」とかいう風に書かれていたからだ。
一体主人公がどれだけ悲惨な目に遇うか…期待に胸を膨らませて観てみた。

ところが、あまりにも映画のつくりが拙くて観ていて段々腹が立って来てしまい、とても最後までは観れなかった!…と同時に忘れたかったイヤなことはもうどこかへ失せていた。
かくしてその悲惨な映画は見事効果を発揮したのであった!

岡林信康の「山谷ブルース」だの「チューリップのアップリケ」や「手紙」なんて歌を聴いてごらん。最近テレビで見かける友川さんの作品でもいい。
「昭和」、いいかえれば70年代の音楽のすごさが実感できるよ。
そんなパワーを持っているのが犬神サアカス團だ。

音楽に関していうと明らかに「昭和」と「平成」は違うのだ。

190_2ニュー・アルバムから「冒涜と呵責」と「秘密倶楽部」。「冒涜~」は実にいい。
続けて「太陽を待っている」。

200_2ここでグッと落として「ねむり姫」、「青蛾の群」、「瓶詰めの胎児」
…しかし、スゴイ曲名だニャ~。

220_2「一つ目小僧」、「お金を払って」…ここから後半戦に入る。
210v_2曲調を尊重したソロがバシバシとキマる!やっぱりJCM800のサウンドはこうしたソリッドなハード・ロックによく似合う。

230_3「燐寸喞筒」。これで「マッチポンプ」。こうした見慣れない文字や難読漢字を曲名に使うと案外独自な世界を作り出すものだ。

240v前半が語り、後半が唄のスタイルを取る「父親憎悪」。
物語性に富んだシアトリカルなロックが日本にはなかなか見当たらない。
繰り返すが、不幸、悲惨、貧困、不遇、病気、憎悪等、をテーマに犬神サアカス團の物語は見事としかいいようがない。
「ニホンノロックハドウイウモノデスカ?」と海外の人から尋ねられた時、「犬神サアカス團」の名前を挙げるのはひとつの手だろう。

250_3本編最後のパートに突入!
270_2「思考実験」、「陰謀論」、「ドグマの呪い」を立て続けに演奏して本編をしめくくった。

260_2アンコールでは「光と影のトッカータ」と「ロンクンロール・ファイヤー」を派手にかます。

280vさらに鳴りやまないアンコールに応え「メメントモリ」と「白痴」で会場を燃え上がらせる!
それに飽き足らず、もう一度「地獄の子守唄」でアンコールに応えた。
アンコールを含めて23曲。犬神の魅力が満載の、サアカス團にしか成し得ないワン・アンド・オンリーのロック・ショウだった!

290v_2冒頭に記した通り、2014年、犬神サアカス團は結成20周年を迎える。
20周年の記念として、2006年以降の曲で構成したベスト盤のリリースとその発売記念ツアーが決定している。

300その千秋楽は7月12日のTSUTAYA O-EAST。ゲストを招いての一大イベントとなりそうだ。楽しみ!
尚、その日以降は凶子姐さんの病気治療のため犬神サアカス團は一時活動を休止する。しばらく寂しくなるが、またすぐに「暗い物語」を元気にづつってくれると信じている。

310v_2犬神サアカス團の詳しい情報はコチラ⇒公式家頁

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詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

320(一部敬称略 2013年12月8日 渋谷TSUTAYA O-WESTにて撮影)