マーシャル・ブログ博物館 第11回:マーシャル・タイムマシン<その5>
今回の「Marshall WORLD」は1972年5月号。
タイトル・バナーを見ると…ナゼか定冠詞の「THE」がなくなっている。
前号までは「THE Marshall WORLD」になっていたのだが…コレにはナニか意味があるのであろうか?
絶対あるな。
ゼヒとも理由が知りたい!
第1面。
「スティーヴン・スティルス」が「マナサス」のヨーロッパ・ツアーでガンガンMarshallの製品を使っています…という記事。
アコースティック・ギターを弾いている写真なのが残念だな。
それとこの写真…マイクの影が思いっきりスティルスの眉間に写り込んでしまっている。
私だったらこんな写真絶対に使わないけどナァ。
こういう時代だったのか?
そのお隣はジョー・コッカ―が3年ぶりのイギリス国内ツアーでMarshallのPA機材を使用するという記事。
そのツアーのウチのひとつが『Great Westerm Express Festival』。
「バードニー(Bardney)」というところで1972年の春のバンク・ホリデイに開催されたフェス。
ジョー・コッカ―はヘッドライナー扱いだったようだ。
他の出演者があまりにもスゴイ!
ビーチ・ボーイズ、フェイセズ、スレイド、ハンブル・パイ、ロリー・ギャラガー、ジェネシス、ナザレス、ビリー・ジョエル、リンディスファーン、ストローブス、シャナナ、グラウンドホッグス(←見たかった!)等々。
夢のようなラインナップではあるまいか?
「バンク・ホリディ」というのは、スコットランドは日程が異なるもののイギリスの国民の休日のこと。
イギリスは日本とは違い国民の休日がほとんどない。
その代わり夏とクリスマスのシーズンにドカッとまとめて仕事を休む。
でも「まぁ、そんなに働きなさんなよ」ということで、年に8回ぐらい銀行を休みにして強引に世の中が動かない日を設定した。
それが「Bank Holiday」。
コレは知らなかったんだけど、『第三の男』で有名な「キャロル・リード」の1938年の出世作に『Bank Holiday』という映画があるのだそうだ。
観てみたい。
一方、このフェスの冠になっている「Great Westerm Express」。
コレは現在「Great Western Railway」という名称に変わる、イングランド西部や南西部方面の路線を運行している鉄道会社。
下がその本社。
パディントン駅が拠点。
下はその真隣りにある2枚上の写真の本社社屋。
要するにこのフェスティバルはロンドンから北に遠く離れた「バードニー」というところに「Great Westerm Expressに乗って豪華なアーティストを観に行こう!」というところなんでしょうナ。
40,000から50,000人がこのフェスに参加したそうだ。
「レッド・ツェッペリン」もイギリスじゅうから臨時列車を運行させて「アールズ・コート」でコンサートを開いていたね。
次…「オレオ・ストラット」。
…ハードロック、ロックンロール、ブルース系の新しいイギリスのチームらしんだけど全く知らないナァ。
と思って色々調べてみたけど手がかりをつかむことが出来なかった。
ヒトラーが演説をする時に使っていたというドイツのマイクロフォンのブランド「A.K.G.」。
一体そんなマイクがMarshallと何の関係があるのかと思ったら…関係なかった。
ただA.K.G.の新商品がMarshallの商品とともに「Crystal Place Festival」というイベントで使われたという便乗記事。
ローズ・モーリスはA.K.G.の商品のディストリビューションもしていたのでしょうナ。
ココで「Crystal Place Festival」と言っているのは、「Crystal Palace Bowl」という日比谷野音のような野外コンサート会場で1972年6月3日に開催された『Garden Party III』というイベントのこと。
出演したのはジョーコッカー&クリス・ステイントン・オールスターズ、リッチー・ヘヴンス、シャナナ、メラニー、ビーチ・ボーイズ、などなど。
でも一番興味深いのはこのイベントの司会を務めたのがキース・ムーンだったということであろう。
ジョー・コッカ―のところの「クリス・ステイントン」というのは長年コッカ―のバンドでキーボーズやベースを担当した人で、「ウッドストック」の「With a Little Help from my Friends」であの印象的なオルガンを弾いているのもこの人。
スティントンはスプーキー・トゥースやエルキー・ブルックスらと活動をともにし、一時期マイク・パトゥとオリ―・ハルソールの「ボクサー」のメンバーでもあった。
クリスタル・パレス・ボウルというのはテムズ川南岸の「ブロムリ―」という地区にあって、近くには1000年以上続いていることで有名な「Borough Market(バラ・マーケット)」がある。
つまり「Garden Party」はかなり都市型のフェスティバル…というよりイベントだったんだね。
1972年5月号の第3面。
「マーシャル、エドガー・ブロートン・バンドを救助」
どういうことか?
ノルウェイをツアー中のバンドが雪崩に襲われ、運転手は鎖骨を折る怪我を負い、機材すべてがオシャカになってしまった。
それを聞きつけたMarshall、直ちに6セットのスタックを供給し、バンドは無事にスカンジナビアのツアーを完遂することができたとさ。
「エドガー・ブロートン・バンド(Edgar Broughton Band)」は1968年にシンガーのブロートンを中心に結成されたブルース・ロックバンド。
ヒプノシスがジャケットをデザインした下のアルバムでご存知の方も多いのでは?
私もこの2枚しか持っていないが、久しぶりに聴いてみたところなかなかヨカッタです。
はい、私もジャケ買いでした。
1969年に結成したイギリスの6人組のバンド「ロウ・マテリアル」。
ん?
何度数えてみても写真に写っているメンバーは5人なんだけどな。
ココにはそのバンド結成のいきさつが書かれていて、かなり期感されているような雰囲気が伝わって来る。
音楽的には「ジャズに強く影響を受けたブルース・ロック」とされていたようだけど、実際に音を聴いてみると、やたらと元気がない曲調にジャズ感は皆無。
ただ、ヴィブラフォンがプレイできるメンバーがいるらしく、それはすごくいい感じだった。
その下には「クライマックス・シカゴ(旧名:クライマックス・シカゴ・ブルース・バンド)」のことが書いてある。
このバンドには「ピート・ヘイコック」というギターの名手がいた。
ヘイコックがMarshallを使ってくれていたとはうれしいね。
上のエドガー・ブロートンのところでヒプノシスを出したので、コレも紹介しておくか。
クライマックス・シカゴの1971年のアルバム『Tightly Knit』。
ジャケットのデザインはヒプノシス。
ゴキゲンな1枚。
「Mass」というバンドを紹介する記事。
何でもエジプトで一番最初にMarshallの機材を使ったバンドだそうだ。
現地のファンの間では「プロッグ・ロック」にカテゴライズされていた。
きっと温かいサウンドだったんでしょうね…カイロで人気があったようだから。
おあとがよろしいようで。
コレはどういうことなのかナァ?
テキストは「アメリカン・トップ40」のグループと言っているのでおそらくヒット曲をコピーして演奏するバンドなのであろう「ミュージック・メイカーズ(Music Makers)」というチームを紹介している。
このバンドはこの時点で過去8年にわたってMarshallの機材を使ってきてアメリカの東海岸ではそれなりのステイタスを築き上げたという。
ん?…ということは、この新聞は1972年に発行しているので、そこから8年遡ると1964年からMarshallを使っていることになる。
アメリカではじめて使われたMarshallはロイ・オービソンが持ち帰った「1962」だという説があるんだけど、この1962(ブルースブレイカー)が発売になったのが1965年だからね。
この記述は合点がいかないナァ。
とにかく、そんなMarshallに感謝の気持ちを込めてこの度バンド名を「Marshall Law」にしたっていうんですよ。
何回か前の回で触れたけど、「戒厳令」を意味する「マーシャル・ロウ」は「Martial Law」ね。
でもこのバンドが新しくつけた名前はドンズバで「Marshall Law」だからね。
かなりの思い入れだったに違いなし。
で、そのテキストの隣の写真がその「Marshall Law」だと思うでしょ?
でも写真は「East of Eden」と紹介されている。
East of EdenといってもD_DriveのYukiちゃんがギターを弾いているバンドじゃないよ…見ればわかるか?
このイギリスのEast of Edenは「デイヴ・アーバス」というヴァイオリニストを中心としたブリストルのプロッグ・ロックのバンドだったの。
かつて「ジグ」というカントリー調のヴァイオリンが主役の音楽があって、East of Edenは1970年にそのジグを取り入れた「Jig a Jig」という曲でUKのベスト10入りを果たしている。
イヤもっとスゴいのは、1971年のThe Whoの『Who's Next』。
「Baba O'riley」の後半のヴァイオリン・ソロってこのデイヴ・アーバスが弾いているんだよね。
第4面に移る。
4面の大半を占める下のスぺ―スがまたぞろ変。
右上の白抜きの部分は「Marshallは6月3日の『クリスタル・パレス・フェスティバル』に向かいます…象を見守るために!」ぐらいのことを言っている。
「クリスタル・パレス・フェスティバル」というのは上に出て来た都市型のフェスのことね。
で、左に移る。
「象がジョンとヨーコをバックを務める」というデカい見出しが目に入る。
この「象」というのは「Elephant's Memory」というニューヨークのバンドのこと。
パッと見るとその下の写真がElephant's Memoryだと思うでしょ?
コレは「Stealers Wheel」というスコットランドのフォーク・ロック・バンドでエレファンツ・メモリーではない。
白抜きの部分の下の丸い写真がエレファンツ・メモリー。
でも「クリスタル・パレス・フェスティバル」にはジョン・レノンとオノ・ヨーコはおろか、エレファンツ・メモリーも出演していない。
しからば右上の「象を見に行く」の「象」は一体ナンのことであろうか?
いくら考えてもわからなかった…というか、この部分、レイアウトが錯綜しているとしか思えん!
結局、この部分にズラズラと書かれているのはエレファンツ・メモリーの紹介なの。
以前、Marshall Blogの『ミュージック・ジャケット・ギャラリー』で一度このエレファンツ・メモリーの下の2枚のアルバムを取り上げたことがあったので私はこのバンドのことをかろうじて知っていた。
でもこういう風に説明すればきっと多くの人がエレファンツ・メモリーを認識できるであろう。
それは、エレファンツ・メモリーが上の見出しにあるようにジョンとヨーコのバック・バンドを務めていて、1972年にマジソン・スクエア・ガーデンで録音した下の『Some Time in New York City』や『Live in New York』にそのパフォーマンスが記録されている。
もうひとつ…1969年のジョン・シュレシンジャーの『真夜中のカーボーイ(Midnight Cawboy)』。
この映画にエレファンツ・メモリーの曲が使われている。
どこで使われているのかと思い、よせばいいのに超久しぶりにDVDを引っ張り出して確認してみた。
1曲はあのイカレポンチが集まってドラッグ・パーティをするシーンで使われていた。
私がこの映画を初めて観たのは50年以上前の小学生の時分で、子供ながらにラスト・シーンに涙してしまったのだが、久しぶりに観たせいか、いい年こいて今回もやっぱり落涙してしまった。
しかし、このジョン・シュレシンジャーが描くイメージってスゴイね。
編集がさぞかし大変だったと思う。
チャック・ベリーもMarshall?
下の記事ではイギリスのテレビ番組に出演したということが報じられ、彼がロック界に及ぼした影響の大きさをゾロゾロと記している。
写真を見ると確かにMarshallが写っているが、記事の文中には「Marshallを使った」という記述はない。
またPA用の機材の広告が載っている。
どれも1972年に発売したアイテム。
左下の15chのミキサーは「2050」で1974年に早々と生産終了。
隣のスレイヴ・アンプは250W出力の「2051」…コレは1977年まで続いた。
そしてスピーカー・キャビネットは「2052」。
何とも異様なルックス。
このキャビネットにはセレッションの15インチの「パワーセル・スピーカー」が2台搭載されていて、古いカタログを見ると、どうも上に乗っている2つのホーン・スピーカーは「2052」には含まれていないようだ。
しかもカタログのどこを探してもこのホーン型のスピーカーは見当たらなかったのでMarshallの製品ではなかったのかも知れない。
これらの連続したモデル・ナンバーを見ればわかる通り、「1959⇒1960」同様にローズ・モーリスが片っ端から発売した順番でMarshallの製品に番号を割り振っていたことがわかる。
この「2052」は意外にも長命で生産は1979年まで続けられた。
<つづく>
