様式美大作戦2023~Jill's Project
さて、これまで4回にわたってレポートして来た『様式美大作戦 2023』。
今日で最後…ナンカ寂しくなっちゃうね。
そんなイベントを締めくくったのは、当然Jill's Project。オープニングSEはグスタフ・ホルストの『惑星』から「火星」だ。
「戦争の神」がテーマの曲だから当然重々しい。
それにガミガミと誰かのガナリ声が被さる。
絶望的に不吉に演出された雰囲気の中、まずは4人がステージに姿を現した。 ホルストはイギリスの作曲家だ。
強大な軍事力と狡猾な植民地政策によって19世紀にはほぼ世界を征服したイギリス。
極東の小国で自分たちの国がまさか「イギリス」などと呼ばれていることを知っている人がまずいないイギリス。
文化の面では、日本と肩を並べる文学大国(実際には日本が世界一)でありながら、食事の質を犠牲にしてまで産業革命に勤しんだその国民性ゆえなのか、音楽や美術の「創作」に関してはさして大きな業績を残すことはなかった…文学国ゆえ、演劇はスゴイ。
音楽に関しては、ロンドンのジミ・ヘンドリックスと同じフラットに住んでいたヘンデル(ハンデル)は元々はドイツ人だし、誰でも名前を知っているイギリスの他の作曲家といえば、エドワード・エルガー、ヴォーン・ウィリアムスにベンジャミン・ブリテンぐらいか?
今となってはアンドリュー・ロイド・ウェッバーも仲間に入るのかな?…後は一気にビートルズか。
…というぐらいなので、『惑星』を「クラシックの名曲」のひとつにカウントさせた純イギリス人のホルストの業績は計り知れないほど大きいと言ってよいのではなかろうか?
一方のエルガー、イギリス人はとにかくナニかにつけて「威風堂々(Pomp and Circumstance)」を演りたがる。
どんなイベントでも最後はいつでも「威風堂々」。
それゆえエルガーの功績は大きいといえようが、それはイギリス人にとっての話し。
エルガーといえば他に『エニグマ変奏曲』が有名だけど、アレを構成している曲のメロディを口ずさめる日本人はほとんどいないのではなかろうか?
かく言う私も何度聴いても印象に残らない。
さて、かつてロンドンにはフル・オーケストラが入って録音することができるレコーディング・スタジオというモノがなかった。
「それじゃぁ…」とEMIが作ったのが誰でも知ってるセント・ジョンズ・ウッドの「アビィ・ロード・スタジオ」。
コレ、元々は「EMI Recording Studios」という名前だったが、ビートルズのアルバムが定着したため名称を変更しちゃった。
下はその入り口。
向かって左側にかかっている緑のプラークには、「1931年11月12日、作曲家サー・トーマス・エルガー(1857-1934)がこのスタジオのオープニング・セレモニーを務めレコーディングした」と書いてある。
もちろん演目は「威風堂々」だった。
それほど「威風堂々」はイギリス人にとって重要な曲なワケで、「第2のイギリス国歌」と言われている。
しかし、それに異論を唱えたヤツがいた……私である。
コレは単なる受け売りに端を発する話なんだけど、アメリカの「第2の国歌はホーギー・カーマイケルの『スターダスト』」というのはよく知られているところだが、イギリスの第二の国歌は「威風堂々」ではなく、ウィリアム・ブレイクの歌詞にメロディを付けた「エルサレム(Jerusalem)」だろう…という話しを耳にして、どうしてもその真偽を確かめたくなってしまったのだ。
そこで、ココはせっかくイギリスの会社に勤めているのだからと、何人かのホンモノのイギリス人に尋ねてみた。
彼&彼女たちに「Questionnaire(クエスチョニア)」、すなわちアンケートをしてみたのである。
ちなみに「アンケート(enquete)」はフランス語ですからね、要注意。結果…質問の「第2の国歌」の定義の曖昧さを指摘しながらも、全員が「エルサレム」を挙げたのには驚いた。
どんな曲かといえば、昔からロックを聴いている方々なら間違いなく知っているハズ。
エマーソン・レイク&パーマーの『恐怖の頭脳改革(Brain Salad Surgery=脳ミソサラダの外科手術/なぞなぞ商会)』収録の「聖地エルサレム」がそれ。
グレッグ・レイクの美声で歌いあげられるこの曲をELPのオリジナル曲だと思っている人がいたのには少々驚かされたこともあったが、コレも要注意。スイマセンな、この長いシリーズの最終回なのでもう1回チャンと脱線しておこうかと思ってよ。
ココまではサブ脱線。
では、脱線のメインに入ります。
コレでホルストのスゴさがわかった。
下の写真の右側…ホルストはこの「The Anchor」というパプの常連だったそうだ。
場所はロンドンの中心から地下鉄で20分ぐらい西へ行ったハマースミス。
ホルストはこの近くの女学校で音楽の先生をしていた。
ちなみのこの写真のチョット手前の辺りがクイーンの映画『ボヘミアン・ラプソディ』に出て来るよ。
契約のシーンだったかな?
このハマースミスというところにはとても愛着がありましてね。
Marshall Blogで2本ほど記事を書いたことがあるので興味のある方はコチラをどうぞ。
あんまり他ではお目にかかれないどうでもいいようなことがタップリと詰まっている(と思う)。
↓ ↓ ↓
★【Marshall Blog:イギリス-ロック名所めぐり】vol.32~ハマースミスが好きだった <前編>
★【Marshall Blog:イギリス-ロック名所めぐり】vol.33~ハマースミスが好きだった <後編>
Jill's ProjectのオープニングSEで「火星」被せられていたダミ声はヒトラーの演説。
ヒトラーについて脱線できることと言えば、演説する時にはAKGのマイクロフォンを愛用していた…ということぐらいか?
イヤ、フランクフルトでエラく恥をかいたことがあったんだ!
その時のようすはコチラ。これからドイツに初めて行くような機会がある皆さんはゼヒ読んでみてください。
ナニせ私はドイツのPolizei(ポリツァイ)にもお世話になったことがあるんよ。
↓ ↓ ↓
【Marshall Blog】私のフランクフルト <vol.1:2003~2006年>(全7回)
脱線終了! いよいよ『様式美大作戦 2023』レポートの最終回!
「♪ビヤァァァァ~!」
岡垣さんの奏でるパイプ・オルガンがそのホルスト&ヒトラーのSEを引き継ぎ…Jill's Project発進!
1曲目は「Reach out for Something」。
まずお見舞いしたのは超重量級のドライビング・ナンバー。
Dio Ken島紀史
関勝美
アニかつさん、期待通り今度はJill's ProjectのTシャツだ!金光健司そして3度目のご登場となるJill提督…岡垣正志。2曲目はピアノの音色から…ノンちゃんのクリーン・トーンで繰り出すもの悲しいフレーズでまずは舞台を整える。そして金光さんが叩き出す3連のグルーブでアンサンブルが動き出す。金光さんはもちろんNATAL。先日2人でスタジオにこもってNATALのビンテージ・テイストの新商品「ZENITH(ズィーニス)」を試したんだけど、メチャクチャよかったわ~。
金光さんはいつもシングル・タムだからね、このキットに持って来いの人なんだ。
皆さんにも早く実戦でお見せしたい! 曲は「I Have the Shakes」。
重く重く展開していく曲をさらにヘヴィに演出するKenちゃんの歌声。エキゾチックなパッセージを存分に盛り込んだソロ。サウンドは「島紀史が出すMarshallの音」。
言葉で表すとコレしか言いようがない。
もうひと言付け加えるのであれば、ノンちゃんのトーンって驚くほどクリーンなんだよね。
こうして弾き手の持ち味と機材本来の音を本当にうまくハイブリッドさせているという人は案外いないもんよ。
令文さん亡き今、ノンちゃんとか三宅さんはその格好の例と言えるでしょう。
ノンちゃんのMarshallは愛用の1967 MAJOR。この曲、後半にギターやピアノのア・カペラのソロがあったりして恐ろしくドラマチック!そんなドラマを凄まじいまでの歌声で演じ尽くすKenちゃんがまだスゲエ迫力! そして、曲を締めくくるのはノンちゃんのソロ。
CONCERTO MOONの時とは明らかに異なる精神で弾いているのがよくわかる。
そのバックのベース・ライン!
攻める、攻める!
コレを聴きのがしたらモッタイない。金光さんとの噛み合わせ具合も完璧だ! キマった~!KenちゃんのMC。
「Jill‘s Projectです。
4年前でした…4年前に大阪で演って以来で、やっと東京に戻って来たって言っていいのかな?
戻ってきました~!
『最後の鹿鳴館』ってアチコチに書きまくったんですけど、めでたいことにコレについてはお詫びをしなくちゃいけなくなってしまいました。
多分来年もやりそうですよね?」
「みなさん、大変だったと思うんですけど…5時間くらい?
まだ大分ありますよ!
みんなまた来年も演りたいって言ってますけど…どうですか?」
「ゼヒ来年も集まってください!…ってか最後のMCみたいになってるけど。
今日のイベントとしてはJill‘s Projectが最後なんでそのつもりで皆さんかかってきてください!」3曲目は「Heavy Rain Sheds Blood」。コレまた金光ビートが引き立つミディアム・テンポの重量ナンバー。岡垣さんのオルガンのバッキングがカッコいい!遠慮なくシュレッドしまくるノンちゃん。
繰り出すフレーズが曲調に最高にマッチする。続けて「The Naked Earth」。典型的なハード・ロック・ナンバー。
こういう「♪ジンジダジダ、ジンジダジダ」というリズムを何と呼ぶのか知らないが、もはやこのパターンもブギやシャッフル同様、若いバンドさんの中では絶滅して久しかろう。
岡垣さんと視線を合わせてソロに入るノンちゃん。
「へへへ、イキマまっせ!」で、イッた~!
ノンちゃんが好きなだけ思う存分弾き貫くギター…快感!
「4年ぶりにこうやって集まったんですけど、今回は大マジメにリハーサルを2回演っております。
1回目のリハで4年間会っていなったことがウソのようで、ホントに一瞬で会わなかった4年間がなくなりましたね。
1回合わせただけですぐに感覚が戻って、もう2回目は遊びながら合わせた感じ。
皆さん、満足して頂いておりますでしょうか?」 MCが終わると鐘の音が聞こえて来る。
岡垣さんが壁面側のキーボードを操るところで次の曲はスタート。
壮大でスペイシーなサウンドに包まれてシンセサイザーのソロ・プレイが始まる。そしてオルガンへ移行。
このシーンでも鍵盤の上に足を乗せてグバ~!
鬼気迫る独奏だった。キーボーズとギターがユニゾンで奏でるリフに導かれてKenちゃんが思い入れタップリに歌い込むのは「Crazy Me」。
この曲も次から次へと情景を変えていくパノラミックな展開を見せる。
中間部の静かなパートからギター・ソロへ。ココのソロもスゴかった!
最早、「ギターの鬼神」状態。「サンキュー!
最後に我らがJill 岡垣にひと言頂きたいと思います」 「ありがとうございます。
皆さん、朗報です…次は最後の曲ですよ!
いつまでこんな『暗い』、『重い』、『長い』の三拍子揃った曲を演ってんねん?
ようやく終わりですよ!
Jill‘s Projectは2004年から2006年に立て続けにアルバムを出して、その後しばらくカバーみたいなことばかりしていました。
そうしている間にオリジナル曲がたまって来たのでこのメンバーで1回レコーディングしたいとなと思っています。
前から言っていたんですよ…そろそろやっておかないと老い先が短いじゃないですか。
真剣な話なんですけど、絶対長生きすると思っていたジャパメタ界の人が何人かいなくなっちゃったんで、やれるウチにやらないとアカンって思っています。
お客さんの方も年齢層高いし…。
聴く方も、今日なんかはすごく体力が要りはったと思うし。
で、鹿鳴館が続くとお聞きしたので来年あたりもまた演らせて頂きたいと思っていますのでよろしくお願いします」
「最後です…皆さん長丁場お疲れ様でした!って言っていいのかわからないですけど、本当に最後の1曲です。
最後はみなさんも力を振り絞って、もう1度声を出して頂きたい思います。準備はよろしいですか!」Kenちゃんの「Are you ready?Are you ready?!」の雄叫びでこの日最後の曲が始まった。・ノンちゃんが弾くリフは「Upsurge Unconcscious」。長かったこの日のイベントを締めくくるにふさわしい…
泣く子も黙る急速調のリフ・ナンバー。 客席を圧倒するばかりのkenちゃん!
岡垣さんも客席をアオる、アオる!ノンちゃん、本日最後の弾きまくり!キーボーズのソロもタップリ!楽器を前後に揺さぶるおなじみの激しいパフォーマンス! エエイ、大サービスや!モニターにベースをこすり付けるアニかつさん。最後にKenちゃんがキメのポーズをとって曲は終了した。そして、締めくくりに岡垣さんがマイクを握ってメンバーを紹介し、ご挨拶をしてこの日の全ての演目を終了した。
正直殺人的に長かったけど、それぞれのチームの特徴が大いに発揮されて全く飽きることがなかった。
「様式美」は不滅です!
Jill's Projectの詳しい情報はコチラ⇒Masashi "Jill" Okagaki Official Website
<おしまい>
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Marshall Blogの索引『Marshall Blog INDEX』を作りました。
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調べごとに利用するもよし、マーブロ・サーフィンするもよし、ゼヒご活用ください!
マー索くんはコチラからどうぞ⇒Marshall Blog INDEX
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