Silex『The Ultimate Faith』<後編>
MarshallにNATAL…ロック・フィーリング溢れるステージの情景。
こういう言い方は淋しいけれど、達也くんがSilexとの最後の時間を過ごすにピッタリの設定ではなかろうか。レポートの<後編>はSilex名物のインストルメンタル・コーナーから。
Choくんがステージを降りて4人の兵(つわもの)が演奏したのは…Mashaくんが敬愛するジーノ・ロートに捧げた「Wind From the East」。
ジーノへの思いのタケを思う存分込めた熱情のパフォーマンス。
Mashaくんのプレイも極上だが、やっぱりギターのサウンドがよくないとこういう感動は生まれて来ないんだな。その美音を出しているのはMarshall。
JMP-1をJCM800 2203のパワー・アンプでアンプリファイするシステム。
キャビネットはJCM900 1960A。
そして、リズム隊もステージを去り、Mashaくんだけがステージに残る。壮大なオーケストラのバッキングトラックに合わせて弾くロマンチックなバラード「Celestial Dreams」。
「天空をかける夢」…ぐらいの意味か。転調を効果的に繰り返してドラマを組み立てていく。
泣きのギター曲にありがちな、無意味なシュレッディングでクライマックスを作ったりしないところがMashaくんの音楽性の優れたところ…だと思う。一気に弾き上げて大きな拍手を浴びるMashaくん。
本人も改心の出来…だったのはこの表情を見ればわかる。「ご静聴頂きありがとうございました。
なかなか1人カラオケってのは大変だね!
改めてバンドの楽しさというか、雰囲気というか、やっぱり私はバンドマンなんだなと痛感いたしました」
ココでMashaくんがメンバーを紹介。
ところがキーボーズのKohtaくんには触れず…すると、そのKohtaくんが目の覚めるようなブッ速いマイナーのパッセージを突然弾き出し、音で自己紹介をした。
「スゴイな…」それを受けてKohtaくん、♪ピロリロラリロリピラリラペリロロラリレリロルロロリラ~とキーボーズならではのレンジの広いメロディアスなフレーズを次々とブチ込んで来た!
前回と異なり、今回はステージ上手のチョット奥まったところに陣取っていたのでココまで目立つ機会が少なかったがココへ来て大爆発!
ハハン、さては始めっからそういう演出だったんだな?ホントにカッコよくてね~。
Kohtaくんのスリリングなプレイに大きな歓声が上がった。「オイ、チョット待てよ!」
こうなったら「リーダーの意地」ってものがあるわナ。
ナンのナンの速弾きだったら負けないぜ…とばかりにMashaくんが立ち上がった!
「お、やりますか?」
♪ピロリロラリレロリピルララリラペリ~。♪チロテロタラリレロリチルララリラテリ~。
さすがMashaくん。
Kohtaくんが弾くフレーズを間髪入れずギターで弾いて見せる。
間髪入れると忘れちゃうから。するとまたKohtaくんが…♪リピルララリラペリピロリロラリレロ~と来たもんだ!
お客さん、大よろこび!
この凄まじいバトルはショウの後半のひとつのハイライトとなった。
あのネ、ここの場面をチョット細かくレポートしたのにはワケがあるの。
というのは、こういう楽器の腕自慢でお客さんを楽しませるロック・バンドって年々減って来ているでしょ?
こうした奏者の演奏能力を競うインプロヴィゼーションを味わうことは音楽の楽しみのひとつなんだがな。
若いバンドさんにこんなことができる子はほとんどいないし、そもそも演ったところでお客さんが喜ばないのでする必要もない。
金にならんのだよ。
すると、どういうことが起こるかというと、この手の楽しみが近い将来絶滅してしまう…ということだね。
聴く人がいないければ音楽は存在する価値がないから。
この現象を防ぐ、すなわちどん底まで落ちてしまった聴衆の芸術受容能力を向上させるのは、少子化を防ぐことがもはや不可能であるのと同じ。
途方ない時間と金を要する。
反対はいとも簡単なんだけどね。
だからこういうモノの好きな人は今のウチにできるだけたくさん観ておいた方がいい。
一方、私としてはエンターテインメントのひとつのスタイルをこうして残しておこうと思ってサ。
音も動きもないけれど、Marshall Blogが続く限り2人の壮絶なバトルは写真と文章でココに残る。「2020年代前半にはまだこういうロックがあった」ってね。
「残す」というのはゲニ重要なことなのです。
バトルの途中からバンドが戻り、そのまま「Forevermore」に突入!この「インストルメンタル・スペクタキュラー」とでも呼びたくなるような「鬼の器楽曲」を寸分の狂いもないアンサンブルで披露した4人!
このあたりもまさに「Silexならでは」のエンターテインメントだ!
Choくんがステージに戻って来た。
ショウはいよいよ最後のセクションに突入する。
ココがまたスゴかった!
3曲続けてキラー・チューンを並べ、ブルドーザーが猛スピードで突進していくようにクライマックスに向かって突っ走ったのだ。まずは今日の公演のタイトルにもなっている「The Ultimete Faith」。
初期からずっと演奏し続けている「Cancion De Amor」。
颯くんのソロが炸裂!
タッピングを交えて表情豊かなソロを聴かせてくれた。
頂点に近づくにつれ、ますます指の回り方に鋭さが増してくるMashaくんのソロ。
そして3曲連続の最後は「Standing on the Grave of Yesterday」。
デビュー前にMashaくんが聴かせてくれたはじめてのSilexの曲。
その時、「ホホウ、コレがSilexの音楽か…」とすごく納得したことを覚えている。その時のメンバーはもうMashaくんしか在籍していないが…
紛れもなくSilexの音楽がココに息づいていることを確信した。
音楽ってそういうものなんだね。
それも自分たちが作った、自分たちだけの曲があるからこその話。
コピーだとナニも残らないからね。「ありがとうございます。
『Silex春のライブ』…そんなタイトルじゃなかったナ。
もっとカッコいい横文字のヤツや…『Silex Live2023 The Ultimate Faith』にお越し頂きありがとうございました!
みなさんにとって耳染じみのない曲もあったかと思いますが、これから責任をもってそれらを形にしていきますのでゼヒよろしくお願いします。
次で最後の曲となりました。
でもね、我々はアンコールはしない方針なんです。
スッパリするのもいいのかな~って…全部やり切って帰りたいから」も~、コレは立派だと思うよ。
今はどこへ行っても本編の最後の曲が終わっても客電を点けない阿鼻叫喚の「アンコール地獄」でしょ?
いつからこんな風になってしまったのか?
先日70年代の初頭から第一線で活動をして来た日本のロックのパイオニアのバンドのドラマーとギタリストからお話を伺ったのだが、昔はこんなことはなかったらしい。
本編が終わり、ステージに上がらずに公演を終えることは全く、珍しくなかったし、どうしてももう1曲演らないと収集がつきそうにない時にはステージにもう一度上がってごく簡単な曲を1曲演奏していたそうだ。
クラシックに比べればロックはプロレスみたいなモノだから「仕込み」という風に考えればそれでいいのだろうが、ヘタをすると本編より長くアンコールをするバンドもあるからね。
それはやっぱり「アンコール」の精神に合致しないと思うよね。
「アンコール」というのは今ではよく知られているが、コレはフランス語で「もう一度」とか「さらに」とかを意味する「encore」のこと。
ところがコンサートの時にこの「encore」という言葉を使うのは英語圏の人たちだけで、当のフランス人は、コンサートの時「アンコール!」とはやらないらしい。
「bis!(ビス!)」とか「Une autre!(ウノトハッ!→ハッはあのタンを切る時みたいなヤツ)」と叫ぶようだ。
ナゼかというと、古来より「フランス語は神に話しかけることが許されている言葉」と言われるようにフランスの文化は常にヨーロッパ諸国の憧れの的であり、フランス語を取り入れるのがオシャレとされていたかららしい。
ちなみに「馬に話しかける言葉」はドイツ語と言われているよ。
わかる~!
今シリーズ唯一の脱線の最後に、折角の機会なので『Encore』という1974年のライブ・アルバムを紹介しておきましょう。
バンドは元ゾンビーズでリック・ウェイクマンの後任としてYesに加入する可能性があったキーボード・プレイヤー、ロッド・アージェント率いるArgent(アージェント)。
ギター/ボーカルはRainbowの「Since You've Been Gone」や「I Surrender」、KISSの「God Gave Rock'n' Roll to You」を作曲したラス・バラードだった…私が観た時はMarshall 1959を使っていた。
ちなみにサンタナの「She's Not There」はロッド・アージェント作、ザ・カーナビーツの「好きさ好きさ好きさ(原曲:I Love You)」はゾンビーズの曲。
このArgentというバンドにも「Hold Your Heads Up」他のヒット曲があって、私は高校1年の時にこのアルバムを時折聴いて楽しんだものだった。
キューブリックの『シャイニング』でおなじみ、ベルリオーズも『幻想交響曲』の第5楽章で引用している聖歌「怒りの日」をはじめとしたインストルメンタル・パートがもテンコ盛り。
そういえば、このバンドのドラマーのボブ・ヘンリット(キンクスにも在籍)と人形町の居酒屋でイッパイやったことがあったっけ。
脱線終わり。
Mashaくん、マイクを返します。 「Silexの最新のCDとしては、達也と颯が加入した後の『In the Light of Destiny』というEPが最新なんですが、その中の曲を最後に演ろうと思っておりまして…でも、それを演ったら終わっちゃうんだよな~。
演ったら終わっちゃうんだよ。
なんかヤッパリ『思い出』って言ったら変ですけど、達也との思い出の曲じゃない?
コレを演って終わるのか?
その前に、最後になりましたけどメンバーひとりずつこのライブへの意気込みを…聞いてもしゃ~ないか、もう終わりだから。
これからの抱負だったり、達也に向けてひと言あればどうぞ」「この場をお借りして達也さんにチョット…。
足の調子が悪いということをおっしゃい始めた時、Mashaさんが『大丈夫か?出来るか?』って訊いたんですよね。
すると達也さんは『出来ます!』って言ってくれて…オレ、すごくうれしかった。
結果的にはこうなってしまったけれど、Silexに対する熱意をすごく感じさせられたんです。
色々とありがとうございました。
大好きな音楽を、好きでい続けるためにも大切な決断だったと思います。
仲間ですからこれからも一緒に頑張っていきましょう!」「今日はみなさん観に来てくださって本当にありがとうございます。
今回のライブは自分がSilexに加入して3回目のライブです。
1回目の大阪遠征を観に来てくださった方もいらっしゃると思うんですが、すごく緊張してガチガチになっている時に、『カッコいい演奏っていうのはどういう風にしたらいいか』ということなどを達也さんが教えてくれたんです。
観ている皆さんが一番ご存知だと思うんですが、達也さん、本当にカッコいいじゃないですか!
今回でSilexとしては、石川達也と道を分かつことになりますが、仲間であることは変わりありません。
音楽って演奏してる方も見てる皆さんも心を動かす素晴らしいモノですよね。
この石川達也という素晴らしいドラマーにはとにかく音楽を続けていって欲しいです。
Silexとしても自分個人としても強い思いがありますので…」「メンバーを含め、色んな方々から温かい言葉かけて頂いて本当に励まされました。
正直、頭の中が真っ白になった期間もあったんですが、そういう時にそうした温かい言葉ををかけてもらったことが大変ありがたかったし、うれしく思いました。
昨年子供が生まれたんですが、この状態をマイナスに考えるのではなくて、神様が『子供と過ごせ』とおっしゃって下さったんだと思うようにしています。
子供と触れ合いながら自分の新しい道を見つけられたらいいな~と考えています」
「でも、正直言うと今演奏してて『ああ、終わっちゃうんだな、やっぱり』と少しずつ思ってきちゃって…。
バンドって家族みたいなモノで、当然家族が離れてしまうのは淋しいワケですが、また自分の巣を見けられるようにガンバります。
もちろん、Silexも新しい家族を迎え入れて、今まで以上の活動をしていってもらいたいと願っています」「今日お越しくださった皆さん、そして、Silexのメンバーとしての達也さんの最後の勇姿を目に焼き付けようと駆けつけてくださった方も本当に今日はありがとうございます。
達也さん自身が『ロックはしんみりして終わっちゃダメだ』ということをおっしゃっていたんで、ボクとしてもしんみりした感じの話はしないようにしていたんですけど…。
でもチョット思い出話をさせて頂きます」「ボクもKhotaくんと同じぐらいのタイミングでSilexに入れて頂きました。
ですから達也さんと知り合ってからそんなに時間が経っているワケではないんですが、達也さんは『パパ友』として最初からとても気さくに接してくださったんですね。
リハの時とかも、諸般の事情(喫煙ポーズ)により2人きりになることが多かったので、その時にいつもスマホで子供の写真を見せ合いながら『カワイイ、カワイイ』と言ってくれました。
でも、本当は自分の子供の方がカワイイと思っているんだろうなと…(親というモノは全員そうです)。
自分の子供の自慢をしたりしましてね…自分としてはそういう何気ない時間っていうのが本当にありがたかったんです。
達也さんがいてくれたからこそ、ボクはSilexでココまで活動してこれたと思ってます。
そんな達也さんがドラマーとしてはお休みになられて、再起するまでの間はお子さんとの時間を大切に過ごされるということです
メンバーとして、かつひとりの友人として、そのことが今後の達也さんの音楽活動を素晴らしいモノにするように願って止みません。
最後の1曲になってしまいましたけれど、みなさんで一緒に盛り上がって頂き『Silexとしての石川達也』の最後の演奏を見届けて頂ければと思います」メンバーそれぞれから達也くんへ言葉が贈られた後、『The Ultimate Faith』を締めくくったのは…
MashaくんがMCで触れた通り、達也くんと作ったEP『In the Light of Destiny』から…
「Destiny」を披露した。
さらば!Silexの石川達也!
去り行くSilexのドラマーに残る4人が熱情を込めた演奏を贈った。
達也くん、最後の打擲!
この瞬間に石川達也のSilexが終了した。
大歓声に応えるメンバーたち。
終了~!イヤ、まだ終わらない!
も~、Mashaくんがメソメソするから、こっちまでホロっと来ちゃったじゃないか!
大勢のお客さんがもらい泣きしてたぞ! …と思ったら達也くんまで!
達也くん、お疲れさまでした!
NATALは今後も石川達也をサポートさせて頂きます。
Silexの詳しい情報はコチラ⇒Silex Official Website
Marshallのデジタル・アンプ「CODE25」のデモンストレーション・ビデオで「Made of Lies」のインストゥルメンタル・バージョンを聴くことができます。
<おしまい>
☆☆☆Marshall Music Store Japanからのお知らせ☆☆☆
バディ・ガイに認められた実力派ギタリスト/シンガー、ローレンス・ジョーンズ。
<Anywhere With Me>
コチラはMarshallのアーティスト紹介ビデオ<Artist Spotlight>。
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(一部敬称略 2023年4月1日 四谷Honey Burstにて撮影)