Silex『The Ultimate Faith』<前編>
新体制となったSilexの2回目の東京での単独公演のタイトルは『The Ultimate Faith』。
Silexは以前にも「Ultimate Faith」という表現を使用しているが、今回は「究極の真実」に定冠詞の「the」がついているので、「ひとつしかない真実」という意味か、「アナタが既に知っている真実」ということになる。
その「周知の究極の真実」とは、このステージを最後にドラムスの石川達也がSilexを脱退してしまうということを指しているのであろう。
「ultimate」という単語は普通「究極の」という日本語訳が当てられるが、語源はラテン語の「ultimatus」で、「最後になった」という意味なのだ。
そして、我がMarshall Blogにとっては「こういうSilexがあった」という「真実」を語る最後の機会。
石川達也がドラムスをプレイするSilexの最後のステージを2本立てでお送りして、「Silex」というバンドの歴史の一部をココに刻むことにする。
会場に設けられた物販コーナー。
随分アイテム数がにぎやかになった。
フーディやボマー・ジャケットも充実。
客席は満員。
ショウは定刻通りにスタートした。
Masha
Cho
Kohta
Hayate(颯)
Tatsuya(石川達也)
MashaくんはいつものMarshall。
JMP-1をJCM800 2203のパワー・アンプでアンプリファイするシステム。
キャビネットはJCM900の1960A。
達也くんはNATAL(ナタール)。
メイプルの3タムシステムだ。
今回のオープニングは2017年リリースのファースト・フルアルバムのタイトル・チューン「Arise」。
初っ端からMashaくんのギターがクライングしまくる!
達也くんのドライビング・ドラムスと…
ピックで弾く颯くんの歯切れのよい低音がキレイに絡み合う鉄壁のリズム。
Kohtaくんがサウンドに厚みをつけて…
Choくんのヌケのよい歌声が最高に乗っかって来る!
そして痛快なMashaくんのギターで1曲目から完璧な仕上がり!
これが今のSilex…だった。
続いてはまだCDになっていない新しめの曲「Your Star Will Shine」。
1曲目に続いてお客さんを一気にたたみ込んでしまおうというド迫力っぷり!
ステージ前にズズイと出て来た颯くん。
Silexの低音とステージ上手は彼のモノだ。
もちろんMashaくんのギターもバッチリとフィーチュア。
激しいながらもカッチリとしたドラミングでバンドを猛ダッシュさせた達也くん。
さすがにまだ上を脱ぎ捨てない。
ベロも出さない。
「ありがとうございます!Silexでございます。
帰って参りました!
本日はソロ・コンサート『The Ultimate Faith』にお越し頂きまして誠にありがとうございます。
『今日』という特別な1日をみなさんと共に過ごすことが出来て感無量でございます。
今日は新曲がチョコチョコとありますので、熱~い感じでみなさんに迫っていきたいと思います。
みんなも一緒に盛り上がってください!よろしくお願いします!」
ChoくんのMCはいつも折り目正しくて聞いていて気持ちが良い。
最近、ロックのグラスルーツ・シーンはコロナの後遺症で集客がなかなか難しくなっていて、ワザワザ足を運んで頂いたお客さんに対して威張っている場合ではない。
「オマエら最後までイケんのかァァァァッ?」なんて言ったら、「じゃ途中で帰ってもいいのかァァァァッ?」って言い返される時代なのかもよ。
でも、「皆さま方、お願いですから最後まで観て行ってくださいィィィィィ!」じゃロックにならんな。
昨今のこのロックの斜陽感、ナントカならんのか!?
アメリカがダメなんだよ。
欧米のロックが昔みたいにクリエイティブになって、それを日本人がマネをするという従来型のながれじゃないとこの国のロックは立ち行かない。
ナゼならこの国にはロックのルーツが存在しないから。
ずっとハヤリスタリでやって来たから。
イカン、イカン、せっかくCHoくんが上品にやってくれているのに、こんなところでクダを巻いていてはSilexに失礼だね。
「次の曲は、みなさんよくご存じの曲…私がタイトル・コールしますので、みんなで一緒に叫んでもらえるとうれしいな!
いきますよ…次の曲は~、メタル~…」
「ネイショ~ン!」
バスドラムがズメズメ迫る「Metal Nation」も『Arise』収録の1曲。
縦横無尽に暴れまくるベースがスリリング。

「Mashaメロ」とでも言おうか、一度聴いたら耳にこびりつくようなサビの展開が印象的だ。
転調からのギター・ソロ。
カッコいい~!
Kohtaくんの華麗なキーボーズが追い上げる!
続けても『Arise』から「One Evening in Paradise」。
ちょっとテンポを落として雰囲気を変える。
何度もスティックをグルグルと回して余裕をシャクシャクの達也くん。
Choくん、今日もよく声が出てるな~。
ハイトーンのパートはラクラクに、そしてBメロというか、静かに展開するパートも難なく歌いこなす。
この曲はとてもメロディアスなパートが組み合わされたような格好で成り立っているが、Mashaくんのギター・ソロはそのどのパートにも呼応しているかのような作りになっていて、その巧みさは見事としか言いようがない。
次…。
Kohtaくんのピアノ。
Mashaくんの感傷的なギター。
2人のデュエットから…
前回もココで同じ演出で披露したCDには収録されていない曲「Call of the Northern Wind」。
何たる密度の濃さ!
Silexのショウはステーキ、焼肉、しゃぶしゃぶ、天ぷら、ウナギをいっぺんに食べるようなモノなのだ。
互いに寄り添うChoくんと颯くん。
今回、こんなシーンを何度も見ることができた。
達也くん、上を脱ぎました!
後は舌だな。
「皆さま、改めましてこんばんは!
もう半年ぶりになりますね?
淋しくしてましたか?…やっぱり。ボクらも淋しかったです。
今日はSilexのライブにこんなにたくさん集まって頂きまして本当にありがとうございます。
『久々の皆さまとの再会を楽しむ』ということもあるんですが、ドラムスの達也が本日のライブを以ってSilexを脱退することになりました。
後程、達也とボクとでみなさんに向けてお話ししたいことがありますのでよろしくお願いします」
「もちろん我々もこの半年の間に何もしていなかったワケではなくて、新しいCDの制作に向けて色々やっていたんですよ。
今回の達也の脱退で足を止めることなく、これからも続けていくという決意を時間の早いウチにお伝えしておきます!
とにかく今日は存分にボクらの音楽を楽しんで帰って頂きたいと思います」
「今、Mashaさんからアナウンスがありましたが、達也さんが今日でSilexを脱退されます。
そんな中で歩みを止めず行く…ということで新曲を披露したいと思います。
この次の曲は音源に収録はされていないんですが、聴いたことのある方もいらっしゃると思います」
そう、新曲コーナーの1曲目は前回も演奏した「Sore Through Endless Time」。
ギターを持ち替えたMashaくん。
目の覚めるようなドライビング・ナンバー。
前回のレポートでも書いたけど、「soar」というのは「舞い上がる」という意味。
同じ発音で「sore」という単語もあるから気を付けれ。
こっちは「痛み」という意味。
「ノドが痛い」時は「I have a sore throat」なんて言うね。
ノドの痛みなど全く無縁のChoくん張りのある声が素晴らしい!
CD収録が待ち望まれる1曲。
前回も書いたけど、間違いなくSilexの新しいキラー・チューンになることだろう。
続けてこの日初めて人前で演奏したのは「Heart Through Endless Time」。
ややテンポを落としたメロディアスなマイナー・チューン。
このメンバー1人1人がアイデアを出し合って作り上げた初めての曲。
端正にまとめたソロもとてもいい感じ!
きっと「人気の1曲」になるでしょう。
後半の大胆なドラミングがドラマチック!
お披露目がうまく行ってペロリと舌を出す達也くん。
「ハハハ、ベロ出たね~!」と言っているワケではないが、Mashaくん、とても楽しそうだ。
「ありがとうございます!
みなさん花粉とか大丈夫ですか?…かく言う私も戦ってるところなんです。
ボーカルズじゃなくてよかったと思います。
このセクションはワタクシと達也でお話しをしたいと思います。
ドラムス…達也!」
「ドラムスの達也です。
本日を以ってボクはSilexを脱退することになりました。
急だったかも知れないですが、バンド・メンバーにとっても急な出来事でした。
皆さんにお伝えする1週間くらい前に決まったことだったんです。
自分の身体のことなんですが、昨年の中頃から症状が出始めて、今までラクに叩けていたモノが急に辛くなって来てしまったんです。
コレはきっと練習量を増やしたり、膝のメンテナンスでナンとかなるだろうと思って色々と試行錯誤を繰り返しました。
例えばセッティングを変えたりとか、もう1回曲を研究し直してみたりとか…色々試してみたんですがドンドン悪化していく一方でした」
「結果、コレは練習が足りないからだと思い込んでしまったんですが、段々それが痛みに変わってきたので、さすがにコレはおかしいと感じて接骨院や整形外科を回ったんです。
ボクはマジメじゃないので、薬を飲んだりとか、『マッサージやストレッチをやりなさい』という病院の指導を実施しないことがこれまでは多かったんですが、今回ばかりはストレッチ等病院で勧められたことをガンバって毎晩実施していました。
ところが状態は悪化していく一方で、ドンドン痛みが強くなって来て私生活にまで影響が出て来るようになってしまいました。
たまたま医療関係の靴を作ってるボクのイトコがいるんですが、相談したところ『一度チャンと診察してもらって来なさい』と足専門の整形外科を紹介してくれたんです」
「その診断の結果が『3ヶ月休んでまたSilexに戻りましょう』という感じではなかったんです。
『長期間休んで自分の身体を見直す時間を作りなさい』と言われたんです。
どれぐらいで元に戻るかがわからないし、Silexにはこのまま突き進んでもらいたい。
ボクの身体が原因でバンド活動を止めさせるワケにはいかないし、ましてや『長い期間待っていてもらいたい』ということも言えなかったので今回の決断をしました。
この場をお借りして、改めてMashaさんにお礼を言いたいと思います。
というのは、このままズット続けていくのは難しいなとは思っていたんですが、年内ぐらいを目処に後任を決めてもらって、その時までは演り続けます…と、このライブが終わった時に言おうと思っていたんです。
でも、このままではマズイとMashaさんが『今後、達ちゃんがドラムスや音楽をキライにならないために今、決めた方がいい』と言ってくれたんです。
そのひと言がうれしくて…。
正直、気合を入れれば年内はイケると思ってたんですが、やっぱり徐々に身体がついて来なくなってきていました。
だからあのタイミングでMashaさんに言ってもらわなかったら、もっと身体がキツくなっていたと思います」
Mashaくん…
「自分もわからないながらもドラムスのセッティングの話をしたりしていたんですが、その不調が痛みに変わってきたっていうのを聞いて…ゴメンね、変な言い方かもしれないけど…見ていられないと思ったの。
自分が出したい音を出せないという、このフラストレーション。
自分も耳の病気を経験していてそれをすごく感じたんですよね。
それが続く中、役割を果たし続けていかなければならないという状態は音楽自体ををキライになってしまうのではないか?と、その時ボクは思ったんですよね。
達っちゃんはバンドメイトでもあるんですが、Silexをやる前…9年前から知っているんです」
「もしSilexをやるとなって、その時にドラマーとして達っちゃんが来ていたら、場合によってはもうチョット無理を言ってたかも知れない。
『もうちょっとガッツ出してガンバってよ!』って。
我々も活動の縁みたいなモノがあって、達っちゃんとの出会い方では、ナンて言うか『ツレ』として放っておけなかった。
達っちゃんも素晴らしい家族が増えてこれからお父さんだしね。
『ドラムスで生きてるお父さん』であり続けて欲しいんです。
ボクのせいでドラムとか音楽をキライになって欲しくないな…と思って。
リハーサルの時、1週目にチョット調子が悪いな…って。
で、2週目も調子が悪いとなった時にココで達っちゃんには休んでもらおうと思った。
こういう話をするとヤッパリ実感が湧いてくるもんですな。
今日もココへ一緒に来たんですが、そんな話は全くせず、今すごく実感した。
達っちゃんがSilexに入ってくれた時、『CD作ってライブやっていくぞ!』となって、その後コロナ禍でホント悔しい。
颯も同じなんだけど…でもいっぱい思い出があるし、これからも思い出を作っていこう!
また『Marshall GALA』に出してもらおうよ!」
「そうですね…Marshall GALAがなかったらMashaさんとおしゃべりできていなかったですからね。
シゲさん、ありがとうございます…『Marshall GALA』のお陰です!
本当に今回、発表後に色んな方からご連絡を頂戴し、こんなに皆さんに気にかけて頂いていることを知ってとてもありがたく思いました。
ありがとうございました!」
「みなさんから頂いたお言葉を糧に必ずまたステージの上に戻って来ようと思います。
その時はまたよろしくお願いします!
4月は出会いと別れの季節でボクは抜けちゃいますが、新しい形のSilexが見られると思えばそれはそれで皆さんもうれしいのではないでしょうか。
新しい姿のSilexも楽しみにしていてください!」
ココだけの話、密かに3回目の『Marshall GALA』を計画しています。
達也くん、その時までにシッカリと治してまた出演してくれよ!
Mashaくんもよろしく頼むぜ!
何せ、Mashaくんと達也くんは2度の『Marshall GALA』に皆勤して頂いていますからね。
達也くんとMashaくんが現在のSilexにまつわる真実を語った後に演奏したのは「Made of Lies」。
達也くんの大のお気に入りの曲。
加入して一番はじめに「こういう曲を作ったんだけど…」とMashaくんからデモ音源が贈られて来た時に「コレはイケる!」と確信したという。
達也くんはリズムに…
Choくんは声に思いのタケを込めて演奏した。
そうだよね、颯くんも同期入隊だからね。
達也くんの脱退は颯くんにとってさぞかし淋しいことであろう。
続いてKohtaくんのピアノと…

Choくんの歌でスタートした「Cry for the Moon」。
ナンダナンダ、ココは思いっきりセンチメンタルに演ろうってのか!?
そんなSilexもタマにはよかろう。
Silexの詳しい情報はコチラ⇒Silex Official Website
Mashaくんと達也くんのMarshall GALAの思い出はコチラ。
★Marshall GALA
【Marshall GALA レポート】 vol.3: THE SHRED MASTERS
<後編>につづく
☆☆☆Marshall Music Store Japanからのお知らせ☆☆☆
イギリス南西部のコーニッシュ出身のキング・クリーチャー。
コチラはスゴ腕リード・ギタリストのデイヴ・エヴァンスが若い時の交通事故の後遺症に悩まされ脱退を余儀なくされた。
デイヴはその後しばらく音楽界から遠ざかっていたが、数日前に活動再開を発表した。
とてもいいギタリストなので、復活は大歓迎だ…大のMarshall好きだし。
本場のブリティッシュ・ハードロックを存分にお楽しみあれ!
<Lowlife>
<Can You Forgive Me>
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