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2019年9月13日 (金)

Sound Experience 31~Strange,Beautiful and Loud, 梵天 and AN-16

 
前回めでたく30回目の開催を達成した『Sound Experience』。
つづく今回は「31回目」…新たなるステップに踏み出すべく、普段通りに開催された。
でも、珍しくトリプル・ヘッドライナー。
そして、すべてインストゥルメンタル。
この手の音楽が好きな方には最高の一夜となった。

10_2まず登場したのはAN-16。

20Akky(山田章典)
山田さんとは2017年5月にココで開催された小松優也のさよならライブでご一緒させて頂いた。
アレからもう2年以上経ったのかよ!信じられん。

40vJIN-JIN(前田仁)

50vAYA(K.)

8_s41a0019 若い感性のインスト・ミュージックとでも言おうか、従来の形にとらわれない自由な発想による器楽音楽。
トラディショナルな音楽をミッチリ勉強したうえで、こういう発想を広げ、時代の音楽をクリエイトするAN-16のようなバンドがドンドン出て来ることを期待している。

60続いては梵天。

70チャーリー田中

80vセキタヒロシ

90v星山哲也

S41a0063 「三宅さんとご一緒できることをとても楽しみにしていました」とご挨拶したチャーリーさん。
Marshall Blogにはチョー久しぶりのご登場。
何と2013年以来!
前回もStrange,Beautiful and Loudと一緒にココGrapefruit Moonでの取材だった。
その時が『Sound Experience』の何回目だったかと言うと…実はそれは『Sound Experience』ではなくて、『Harvest Moon』という梵天のイベントにSBLが客演した格好だった。
だから、もしかしたら『Sound Experience』というシーンでは梵天はMarshall Blog初登場?…かどうかは三宅さんが知っている。
全部頭に入ってるから。

110_ar_31曲目は「Arion」。
ゴキゲンな5/4拍子のヘヴィ・チューン。

130「Arion」は2016年にリリースされたアルバム『梵天~Bonten~』のオープナー。
このアルバム、ジャケットがまずいいよね。
そしてこの中にはチャーリーさんの無限の音宇宙が広がっている。

120cdチャーリーさんは以前1987Xをご愛用頂いていたのだが、今回の相棒はコレ。
なんとJCM2000 DSL100EC。
昔、私がMarshallに頼んで作ってもらった限定モデル。
D_DriveのSeijiさんが以前使っていたDSLだ。
案外こんなに時間が経って再会するもんなんですナァ。
自分の仕事の軌跡を目の当たりにするようでうれしい。
今もだけど、一生懸命やって来たからナァ。
コレでキャビがMarshallだともっとうれしいんですけどね~。

140そして、チャーリーさんのもうひとつの相棒。
私もかなりのコンサートを観て来ているけど、こんなに堂々とサンダル履きでステージに上がる人も珍しい!
以前、サンダルで新幹線に乗って名古屋から東京に来て、そのままステージに上がる…という方がいらっしゃったが、堂々さということで言えばチャーリーさんも引けを取らないだろう。

150次の「Pluto〜Tango O'Five」はチャーリーさんの5/8のアルペジオをバックに…

160セキタさんのフレットレス・ベースが幻想的なメロディを重ねる。

170星山さんのスネア・ドラムがクレッシェンドしながら入って来、曲は一部4/4拍子のパートを経て…

180チャーリーさんのハードなギター・ソロをはさみそのまま最後まで5拍子基調で走り抜ける。
特に「タンゴ」のリズムが取り入れられているワケではないが、チャーリーさん中に「タンゴ」のイメージがあるのだろう。
あるいは「ピアソラ」とか「アルフレッド・ハウゼ」とか。
タンゴか…後の人は知らないな~。
日本で最初の地下鉄銀座線はロンドンではなくて、ブエノスアイレスの地下鉄をお手本にして作られたのは知っているけど…コレはショックだった。
そもそも、アルゼンチン・タンゴとコンチネンタル・タンゴの違いもわからなかったからね。
アルゼンチン・タンゴは発祥の地、その名の通りアルゼンチンのタンゴで、楽器の中でも最高難度の演奏技術を要すると言われるバンドネオンが必ず使用される。
190v一方、コンチネンタル・タンゴはヨーロッパのタンゴ。別名「ヨーロッパ・タンゴ」。
フィンランドなんかは「フィー二ッシュ・タンゴ」っていうのがあって、とてもタンゴが盛んなんよ。
大分前にその「フィー二ッシュ・タンゴ」のCDを買ってナンノ気なしに聴いていたら「Satumaa」という知っている曲が出て来て驚いた。
Frank Zappaの『You Can't Do That on Stage Anymore vol.2』にこの曲が収録されてるの。
この曲はフィンランドではスタンダード中のスタンダード。
このライブ・アルバムはヘルシンキでの録音で、ザッパは「ご当地ソング」としてレパートリーに取り入れたのだろう。

8_vol2 「ありがとうございます。
今の曲は'Pluto'と言いまして、冥王星から頂いたタイトルです。静かな星をイメージして作りました」
 
「水金地火木土天海冥」なんて覚えたけどね。「ドッテンカイメー」と、土星のところで撥音便変化するのが気持ちヨカッタ。
英語では「My Very Educated Mother Just Served Us Nine Pizzas(学のある私のお母さんはピザを正確に9等分した)」ってやるわね。「Educated」が「Earnest」になっているのを見たこともある。
ま、我々は太陽系(英語で「ソーラー・システム」という)の惑星の名前や順番を覚えるよりこの英文自体覚える方が大変だったりするからね。
でも、コレ今は違う。
2006年に冥王星が太陽系をクビになっちゃったから。
正確に言うと「惑星」から「準惑星」に格落ちしてしまったので、「太陽系惑星」のウチに数えられなくなってしまった。
だから今は「スイキンチカモクドッテンカイ」だよ。
ちょっと関西弁みたいだ。
「オイ水金、地火木、取ってんかい!」みたいな。
一方、英語の方はどうなるか…「My very educated mother just served us noodles」なんて案があるらしい。
また、冥王星が格落ちしたことにより、「pluto」を他動詞で使って「降格させる」とか「~の価値を低く評価する」という意味が出来たらしい。
アメリカのスラングだからよい子の皆さんは覚えないでね!
英語はイギリスの言葉です。イギリス英語を進んで学びましょう。

185v次の曲もチャーリーさんの静謐なギターでスタートするスロー・ナンバー。
260vアルバムの収録されている「Funeral Dance」。
テンポはスローでも独特のギターのフレーズで織りなしていくお葬式には十分にハードだ。

200最後はアルバムに収録されている曲を2つ続けての演奏した。
まずは「Siesta」。
S41a0027とても柔らかいサウンドなのにすさまじい緊張感。
コレは昼寝どころではないぞ!

210最後はアルバム2曲目の「La valse du chat noir」。
「vlase」はフランス語で「ワルツ」のこと。
だからタイトルは「黒猫のワルツ」というという意味。
ちなみに「黒猫のタンゴ」は(今日はタンゴがよく出るな)、日本の曲じゃありませんからね。
イタリアの曲がオリジナル。
あの子どうしてるかね?

230「valse」って単語を覚えたのはコレ。
1956年のSonny Rollinsの名盤『Sonny Rollins Plus 4』。
コレの1曲目が「Valse Hot」というジャズ・ワルツなのだ。
でもそれぐらいではタンゴじゃない、単語ひとつ覚えることはできない。
名曲なのだ。
だからすぐ覚えられる。
ロリンズはテナー・サックスの最高峰としての存在だけでなく、「St. Thomas」、「Oleo」、「Doxy」、「Airegin」、「Tenor Madness」、「Don't Stop the Carnival」等々、ジャズ史に残る名曲をたくさん作った大作曲家でもある。
この「Valse Hot」を聴いていい曲だと思えない人は音楽を聴くのを止めた方がいい。そういう人はどうせ先行き、本当にいい音楽にはめぐり合うことはできないよ。
チャーリーさんがこういう独自の音楽で頑張ってくれているので、それを援助する意味で私もハッキリ言うけど、テレビなんかで「今の音楽シーンがオモシロい」なんて言っている人…ま、宣伝でやらされているんだろうけど、そう思ってたり言ったりしている人は、「音楽を知らない人」とみなして何ら差支えない。
本当にいい音楽にまだめぐり合っていない、あるいは「音楽」という氷山の一角のカケラから出た削り氷の一部程度にしか音楽を聴いていない人たちだ。
だから音楽を聴く側もいろんな音楽を聴いて勉強しないとダメね。
聴き手のレベルが低いと、レベルの低い音楽しか出て来ないのは道理ってもんだ。
 
あ、このアルバムのもうひとつの聴きどころの「Pent-Up House」もロリンズの代表作だわ。
私はロリンズを2度ほど観たが、今年で御年90。
最後のジャズの巨人だ。

P4ところでValseなのに全然4/4なんですけど!…と思ったのは最初だけ。
すぐに3/4となりグイグイと攻めてくる!

240vしかし、厳しい音楽ですな。
SBLもそうなんだけど、従来の音楽の型にハマらない音楽。
でも新しくはない。また新しくある必要もない。
高い器楽演奏の技術に裏打ちされた自由な発想の音楽だよな。
どこへ行くのがわからない。
でもどこから来たのかというと、ひとつは…コレは私の勝手なイメージですよ…Paul Williansがいない時のAllan Holdsworthが取り組んでいたモノに近いのではないかと思う。

250ま、バンド名が「梵天」ですからね。
梵天はヒンドゥー教の「創造神」にしてトリムルティの一角である「ブラフマー」の仏教版。
トリムルティは他に、「ビシュヌ」と「シヴァ」の3柱からなる。
ジョン・マクラッグリンの「マハビシュヌ・オーケストラ」の「マハビシュヌ」は「マハ(偉大なる)」な「ビシュヌ」ということ。
釈迦牟尼、つまりゴータマ・シタールダが悟りを開いた時、その悟りを広めることをためらったが、梵天さまは寅さんでおなじみの帝釈天さまと組んで「イヤイヤ、その教えをどうか世にお広めください」とお釈迦さまに勧めた。
コレを「梵天勧請(ぼんてんかんじょう)」というらしんだけど、コレがなかったら世界三大宗教のひとつ「仏教」はこの世に出て来なかったとされている。
だから梵天さまがいらっしゃったからこそ仏教が生まれ、我々はお葬式を仏式ですることができるのだ。
そして、「どうぞ面倒ですから、何でもかんでもイッショクタにしちゃいましょう」とやるのが「ドンブリ勘定」という。
 
ところで、先日家内のお婆ちゃんの十三回忌に出席して、お坊さんのお経を聞いていた。
元々お経はエイト・ビートなのはわかっていたので、今回は拍数を数えてみた。
すると、お経のくくりは4/4拍子で5小節から成り立っていることを発見した。
時々6小節になることもあるのだが、ほとんどが5小節、20拍で出来ている。
コレは曹洞宗なので、当然宗派によってはこの構成が大きく変わることが容易に想像できるが…。
なにしろ横浜の上大岡で開かれたお葬式に出た時には、お坊さんが木魚を裏拍で打ち、猛然とスイングしていたこともあったからね。
エイトではなくて完全にフォー・ビートになっていて驚いた。

245複雑なビートを難なくこなすリズム隊も素晴らしかった。

270vいつもニコニコの星山さん。余裕しゃくしゃくなドラミングはとてもこんなギンギンな変拍子の曲を演奏しているようには見えないのだ!
初めてお会いしたのはkelly SIMONZさんとご一緒の時だった。

280v後はキャビもMarshallだともっとうれしいんだけどニャ~。

梵天の詳しい情報はコチラ⇒Charlie Tanaka's Website

290トリはもちろんStrange,Beautiful and Loud。

300三宅庸介

310v河野充生

330v金光健司

340vやっぱいいね、金光さんの叩くNATAL。
ベスト・マッチのバーチのキットだ。

350三宅さんはいつものMarshallハーフ・スタック。

360JVM210Hと1960BVのコンビ。

370v今日の1曲目は三宅さんの愛奏曲「Petal」。

380vそして三宅さんのキラー・チューンを続けて…まずは「if」。

390河野さんのスリリングなベース・ライン。
かなりのパートをインプロヴァイズしている。

400続けて「murt'n akush」。
見て!
三宅さんと金光さんのアクションが完璧にシンクロナイズしてる!

415それほどイキがピッタリ合っているのだ。
当意即妙に三宅ミュージックを作り上げていくサマを見ているのは楽しい。

410「こんばんは…メッチャ暑いです。
2年ぶりにチャーリーと一緒になる今日を楽しみにしていました。
たくさん集まってくれてありがとうございます。
大きな音でお騒がせしますけど、この位の音で大丈夫ですか?
大きな音ですが最後までお付き合いください」
音が大丈夫ということでピース!
ホントにネェ…この会場はチョット事情が違うからなんだけど、いつからロックを爆音で演ることが罪悪になったんだろう?
聴く方が「やかましい!」というならわかるんだけど、最近は演奏している方が大音量を忌み嫌ってるもんね。
しかも昔を知っているベテランがそういうことを言うんだよ。
やみくもに音をデカくする必要はナニもない。
でも、「それなりの音量」ってもんがあるでしょう…「ロックの音量」ってのがサ。
音が大きすぎるんだったら耳栓を持参すればいいだけのことじゃん。
私はそういうところにも「ロックの終焉」を見る思いがするんだよね。
その点、三宅さんはスゴイよ。
440vMCの後は「devil」。
500vいいですか?大音量だからこういう表情になり、コレが表現でもあるんだよ。
コレを蚊の泣くような音量でできますか?ってんだ。

420そして、この恍惚の表情。
今、三宅さんは「ギター」というアッチ側の世界に行っている。

430v続けて「virtue」。
Marshall Blog初の試み!
ビデオを挟み込んでみました。
この日、写真とビデオの両方を撮ってみた。
Marshallのほぼ真ん前で撮影しているので音はチョッとシンドイけど迫力は伝わればOK。
次の機会には是非ホンモノを観に来てくだされ。

こうして31回目の『Sound Experience』のSBLのステージも無事終了!
今日も魂をさらけ出すかのような3人の熱演に心を揺さぶられた。

490

470

480Strange, Beautiful and Loudの詳しい情報はコチラ⇒facebook

450そして最後はCharlieさんが加わって1曲。

8_bloom1

510v曲は三宅さんの「bloom」。
三宅さんの曲ってバッキングが入るとまた世界がガラリと変わるんだよね。
三宅さんがもうひとりいるといいんだけどね~…というかなえられない願望を実現してくれたのがチャーリーさん。

8_bloom4_2

520vこの曲は以前、ヒロアキくんと共演した時にも取り上げられてテーマを美しくツイン・リードで奏でたが、今回のチャーリーさんもコレをやってくれた。
実に魅力的なメロディだ。

8_bloom3_2今回も大充実の「Sound Experience」だった! 460v

200_3 

(一部敬称略 2019年7月24日 三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONにて撮影)