SOUL OF ROCK vol.23 <前編>~ Strange,Beautiful and Loudと石井ムーア
希代の名盤、『Sheik Yerbouti(シーク・ヤブーティ)』。
Frank Zappaの1979年の作品。
このLP2枚組の最後を飾っている曲の題名を「Yo' Mama(ヨー・ママ)」という。
マザコンのヤツを嘲る歌だが、なぞなぞ商会も取り上げ、実にうまく料理していたっけ。
私は15歳の時にZappaを聴いて以来、40年間ほぼ間断なく聴き続けてきたが、やはり名盤の誉れ高いこのアルバムを耳にしている回数は他のアルバムに比べても多い方か…。
つまりそれだけ多数回、「Yo' Mama」という曲を聴いてきたことになる。
サウンドのスゴさは言うに及ばず、こんなことを歌っているミュージシャンは日本にはほとんどいないでしょう。
「ヨー・ママ」…すべてのロック・ファンに一聴をおススメする。
もちろんこの曲だけでなく、Lynn Goldsmithの写真をまとったジャケットをはじめ、アルバム全体が「名作」のカタマリのようなモノだからして、老若男女を問わず「ロック好き」を標榜する人なら誰にでも聴いてもらいたいアルバムが『Sheik Yerbouti』だ。
こっちは「ヨー・ママ」じゃなくて「ヨー・ヨー・マ」。
最近買ったピアソラの曲ばかりを取り上げた『Soul of the Tango』というアルバムもすごくヨカッタ。
「ヨー・ママ」はこれまでの人生で何回聴いたかわからないが、こっちは今回が初めてだった。
それは渋谷の「ラ・ママ」。
1982年の開店というから35年の歴史を持つライブハウスの金看板だ。
コレを言うと多くの方に驚かれるのだが、本当に今まで一度もお邪魔をしたことがなかったのだ。
82年というと、毎度書いている通り、個人的にZappaを除いて、「ロック」という音楽から撤退が完了しつつあった頃だったのでおおよそ行く理由がなかったのだろう。
それじゃ、Marshallの仕事をしはじめてからはどうだった?
コレがまた不思議と足を向ける機会がなかっのだ。
イヤ、何度もあるにはあったのだが、たいてい何かと重なってしまって、結果、今回レポートするライブが初めての訪問となった。
もちろん向かいながら口ずさむのは…
♪Maybe you should stay with yo' mama
She could do your laundry 'n cook for you
ちなみに私は洗濯も料理もOKです!両方ヘタだけど。
…いうことで、初のラ・ママさん、お邪魔しま~す!
で、その記念すべき「初La mama」、35年の沈黙を破ったのは、一体の何の取材だったか?!
それは、シリーズで展開している『SOUL OF ROCK』というイベント。
出演は、Strange,Beautiful and LoudとTAGAWA。
他にも知り合いの方々がステージに上がるということで楽しみにしていた。
「今日はすごいギタリストが勢ぞろいです!」
まずは『SOUL OF ROCK』の主宰者、はらやんがステージ上がってご挨拶。
イヤ、ギタリストもスゴイかも知れないけど、このイベントの歴史もスゴイ!
コレが23回目だっていうんだもん!(今月25回目が開催される)
ものごと、それが何がしか例え新しいモノであっても、初めの一回をやるのはさほど難しいことではない。
ま、もちろん内容によりますよ。
でも1回目ってのは、アイデアはまだ豊富にあるし、勢いに押されて何とかなっちゃう感じなんだよね。
ものごと「始める」ことより「続ける」ということの方がはるかに大変なんだよね。
え、Marshall GALAはどうしたって?
へへへ、マァ、見ててくだされ。
さて、はらやんの歯切れの良いウェルカム・トークに引き続いてステージに上がったのは…
ギターは…誰かと思ったら…THE SLUT BANKSの石井さん!
石井さんは昨年の11月に久嶋喜朗さんの壮行コンサートのレポートでMarshall Blogにご登場頂いた。
キーボードは誰かと思ったら…盛山こういち!
せいやんはKellyさんとの活動でMarshall Blogではおなじみだ。
先日はBLIND BIRDのステージでも活躍していた。
ドラムスは誰かと思ったら…山市修也!
山市さんもかつてご一緒させて頂いた。
「石井ムーア」って何のことかと思ったら、なるほど…石井さんの「石井」にGary Mooreの「ムーア」ね。
「両方とも名字じゃん!」というツッコミが入っていたけどホントだね。
ちなみ「Moore」という名前の発祥は主にアイルランド、そしてスコットランド、そしてイングランドと言われていて意味は「厳格にして崇高」。
英語圏の国ではかなりポピュラーな名字(surname)で、少し前の調査ではオーストラリアでは34位、イギリスでは32位、アメリカで16位という多さ。
日本で34番目に多い姓は長谷川さん、32位が後藤さん、そして16位が松本さんだから、かなり珍しくないお名前。
アメリカで16位を獲得しているのは世界で最も移民が多く送り出したというアイルランドという国の歴史を表している…のかどうかどうかは知らない。私の推測なのでアテにならない。
でも、1曲目は松本さんとは関係なく、Herbie Hancock。
こういう場所でHancockとい~え~ば~、「Chameleon」か「Cantaloupe Island」か…「Cameleon」だ!
以前、この曲をモチーフにしたインプロヴィゼーションで「トカゲ」って曲を演ってたグループがいたけどね。
Hancockもいい曲がたくさんあるよね。
「Maiden Voyage」は言うに及ばず、「Dolphine Dance」から始まって「One Finger Snap」とか「Tell me a Bedtime Story」とか。「Blindman, Blindman」なんて名コテコテ・ナンバーもあった。
私はジャズを除くロイク系の音楽が苦手なので、ファンク路線のHerbieはツライ…飽きちゃって。
やっぱりジャズ・ピアニストとしてのHerbieが好きだな。
もちろんバンド名に偽りなく「Sunset」他のGary Mooreナンバーを取り上げた。
「全曲インスト・ナンバーは初めてなので緊張します」…なんておっしゃっていたが、安定のパフォーマンスでトップバッターの重責をシッカリこなした。
当日は3番目に登場したStrange,Beautiful and Loud。
記事の構成上、2番目に紹介させて頂くことにする。
1曲目は…アラマ、珍しい、「murt'n akush」を持ってきたよ。
上の写真の向かって左側が三宅さんが鳴らしているMarshall。
JVM210Hと1960BVだ。
征史さんはいつもの1992 SUPER BASS。
コレが大事なんだよ。
金光さんの叩き出すNATALバーチ・サウンドもこのトリオの重要なサウンドの要素だ。
三軒茶屋にあるSBLのホーム的ライブハウスで見慣れているせいか、また、冒頭に記したようにこの日初めてお邪魔する現場だったせいか、いつもとスゴく違う雰囲気を感じたな。
三宅さんは10数年前に令文さんを観にLa mamaへ来たそうだし、30年前には出演もしているとのこと。
2曲目は「devil」。
骨っぽい曲が続く。
ま、三宅さんの曲で骨のない軟弱な曲は1曲たりともないんだけどね。
プレシジョン・ベースの音色高らかに曲の中を自由に泳ぎ回る征史さん!
雰囲気を変えて「bloom」。
ダイナミクス豊かにこのワルツを重厚に演出する金光さん。
シンバル・レガートの一発たりともおろそかにしない。
♪ズダダダダダダダ…ガラッと変わって、スネアのワイルドなフィルから始まる4曲目…
もうコレは曲のカッコよさと3人の命を削るようなアンサンブルを楽しむしかない!
しかしね~、こうして三宅さんみたいに問答無用でグバ~っとMarshallを鳴らしきってギターを弾く人っていなくなったよな~。
「爆音、爆音」って言っている人が多いけど、実はみんなさほどスゴくはない。
私は本当の爆音は機材のよるところはもちろんなのだが、音楽によるところが大きいと見ている。
ま、別に音が大きければいいというワケでは決してないんですよ。
三宅さんなんかは自信では自分の音がそれほど大きいとは思っていないようだ。
が、ひとたび自分の音楽を演奏すると凄まじいパワーを伴った爆音になるんだよね。
鮎川さんとか、令文さんもそう。
若い人なんかはこういう人のプレイを是非参考にしてもらいたいんと思うよね。
5曲目に三宅さんの愛奏曲の「petal」。
この曲はCDで聴くと、何とも言えない絶望的なメロディとバッキングのコードの絡みが悲しいほど美しいのね。
いつかサイド・ギターを加えた編成をナマで聴いてみたい。
もちろんサイド・ギターもMarshallサウンドでなければ絶対ダメ。
Marshallをクランチ手前の音が出るようにしておいて、やや力強く弦をはじいて三宅さんの弾くメロディにコードを付けてやるのだ。
こうしたややスローなテンポの曲での金光さんのドラミングがまたよろしいな。
グイグイ押し出してくる静かなる律動感がタマらない。
最後は鬼気迫る三宅さんのインプロヴィゼーションが聴きどころの「virtue」。
当意即妙なバッキングで三宅さんのギター・ワールドを彩っていくリズム隊のふたり。
8月21日には自身のレギュラー企画、『Sound Experience』で三軒茶屋のGRAPEFRUIT MOONに出演する。
ご覧になったことのない方は是非一度観に来てくだされ。
特にギターをやっている人…きっと得るモノがたくさんあると思うよ。
Strange,Beautiful and Loudの詳しい情報はコチラ⇒三宅庸介facebook
<<<NATAL NEWS>>>
NATALのドラム・キットが叩けるスタジオ、高田馬場のバズーカスタジオに新しい仲間が増えました。
それは14" x 6.5"のスチール・スネア・ドラム。
コレね。
見た瞬間、「オオ~!」っと声を出したくなるようなたたずまい。
実にゴージャスじゃあ~りませんか!
普通のスチールとは異なりチョット黒味がかっている。
パーツはすべて「ブラッシュト・ニッケル(Brushed Nickel)」という仕様。
新型のスネア・スロー(Snare Throw)の感触も実にいい感じ。
カ~ッ!
居合わせたプロのドラマーにチョット叩いてもらったんだけど、何たる音ヌケ!
そして深い!
こりゃアンサンブルの中でもクッキリ音像が浮かび上がってくるのは間違いないな。
自分がドラマーだったら欲しいわ~。
1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
★上記のスネア・ドラムだけでなく、NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。
ドラマーの皆さん「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
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(一部敬称略 2017年6月24日 渋谷La Mamaにて撮影)