6弦BEAST☆翔己セミナー
6弦の達人、翔己のベース・セミナーのレポート。
イギリス本国に倣い、私も昔は「Marshall Roadshow」と称したMarshallのクリニックをずいぶんやらせて頂いた。
さて、今、私は「セミナー」と「クリニック」という言葉を使った。
恐らく皆さんは、こと音楽関係のイベントを指す場合、これらのふたつの言葉を同じ意味で使っているのではないだろうか?
私も同じだと思っているが、どちらかといえば「クリニック」という言葉を使っている。
双方チャンとした英単語ゆえ「ダブル・ヘッドライナーとツーマン」のようなケースとは異なり、特に言葉の使い分けにこだわりはないのだが、この手のイベントにおいては自分の場合、客席より舞台の上にいる機会の方が圧倒的に多かったので、出演者として「セミナー」なんて言うとチョット偉すぎな感じがしちゃっててね。結果、自然と「クリニック」と呼んでいた。
イギリスの連中はそういうデモンストレーション・タイプの企画のことを「Clinic」と呼んでるかな。少なくとも「Seminar」って言っているのを聞いた記憶がない。
ところで、この二つの言葉、もちろん意味が違う。
意味が違うから言葉が分かれてる。
「セミナー」というのは、その時々の大きなテーマを決めておいて、参加するメンバーでその当該のテーマに基づいたことを研究したり、意見を交換したりするイメージだが、講義の形を取ることも多い。
要するに「ゼミナール」だよね。
私は大学の時、出席が足りず「ゼミ」は単位を落としているので、実際にどうなっているのかを知らない。
一方、「クリニック」は、出席者個人個人が抱えている悩みや問題点を見つけ出し、それぞれのレベルをアップさせることを目的とする会合のイメージ。
だから、Marshall Roadshowは本当は「セミナー」だったんだな。
実はこういうヤツにはもうひとつ「ワークショップ」というのがある。
コレは講師がテーマについて一方的に講義する形式とは異なり、参加者した人が自分から入りこめるような機会を作って参加者した人たちの意見を聞き取りながら進めていく方法。
だから「セミナー」と「クリニック」を合体させたようなものか?
そういえば、アメリカに長く住む日本人が、著名なフィンガーピッカーのギター集中講座に通っていたことを指して、「〇〇のワークショップに参加していた」と表現していたな。
ナンカ「ワークショップ」と聞くと、「実験工房」みたいなイメージが強いんだけどな。
何人かが集まって「アレをやってみようか?」、「こういうのはどうだ?」と研究する感じ?
ま、いいや…。
とにかく今日のイベントは翔己くんのベース・セミナーなのだ。
ステージにはホワイト・ボードが置いてあっていかにも「セミナー」なムード。
翔己くんは珍しいツイン・ベースのインストゥルメンタリゼーションで知られるARESZ、並びに新生FEEl SO BADのベーシスト。
6弦ベースがトレードマークだ。
今日は真剣な面持ちでセミナーの講師を務めるというワケ。
勉強しには行ったものの、途中で逃げ出してしまったので音楽理論はわからない…という翔己くん。
理論はわからなくても「ツイン・ベースはどうあるべきか」ということについて独自の研究を重ねて来たという。
それが彼独特のベースサウンドであり、奏法であり、フレーズであり…そういったことが実演を交え一時間半にわたって丁寧に語られた。
まずはバッキング・トラックを使っての模範演奏。
ARESZのステージで必ず演奏される「我が生き様誉れ」だ。
この曲の中で使われているテクニックについて解説。
翔己くんのプレイング・スタイルの中でも取り分け人気の高いテクニックであるタッピングがこの曲でもふんだんに使われているが、コレはキーボーズを意識してのことだ。
初めてARESZを聴いた時、すぐにそれがわかったよ、オジちゃんは。
そして、ボーカルズにもギターにももう一本のベースにも負けない音を作らないとただの「落ち着きのないベースの人」になってしまうと思い、10年以上もかかって自分だけのサウンド作りをしてきたという。
ウン、ベースの人って落ち着いて大人しい人が多いからね。
奏法はもちろんのこと、弦高等の楽器の調整にも余念がなかったとのこと。
今や翔己くんのトレードマークとなっている6弦ベースだが、いきなり手にしたワケではない。
「バンドにベースが2人いる意味がわからない」と言われ、試行錯誤を繰り返し、ツイン・ベースの意味や効果を追求していくうちに徐々に弦の数が増え、5弦ベースを経て6弦ベースにたどりついたのであった。
何しろアイデア先行で、触ったこともないのに楽器屋さんに6弦ベースをオーダーしちゃったんだって!
弦はステンレス。コレもサウンドを考慮してのチョイスだ。
そして、音の要であるアンプ。
コレも翔己くんならではの自己流。
ある時、ベースをギター・アンプで鳴らすことを思いつき、試してみたらその音がスッカリ気に入ってしまった。
音ヌケが格段に良くなったのだそうだ。
そこで、現在はMarshall系とEDEN系の2セットを同時に鳴らすのが翔己くんの正式なバックライン。
エフェクターは使用せずベースとアンプは直結だ。
Marshall系のヘッドは300Wの3530。
3530は1987年にMarshallの創立25周年を記念して発売した25/50 Jubilee Bassシリーズのひとつ。
本来であれば、フロント・パネル左下の「300」の表記の右には「25/50 JUBILEE BASS SERIES MODEL 3530」という銘が入っているハズなのだが、きれいサッパリ消え失せている。
25周年を過ぎてからの製造だったのかしらん?
このあたりのモデルの資料が乏しくて詳しいことがよくわからん。
このヘッドをギター用スピーカー・キャビネット1960Aにつないでいる。
EDENチームのヘッドはTERRA NOVA TN501とWTP-600とキャビネットはD410XST。
コチラは普通のベース用アンプの組み合わせだ。
Marshallが歪み系のサウンドを担当し、EDENがクリーン系のサウンドを受け持っていて、両方をミックスするのが翔己くんが行きついたアンプのセッティングだ。
「試しに…」とそれぞれ単独の音を聴かせてくれてその音色の違いを説明してくれた。
アシスタントはARESZのギターの那都己くん。
会場の都合などで機材がフルで持ち込めない時はMarshallチームの方だけを使用している。
Billy Sheehanに憧れたという翔己くんらしいベース・サウンドだが、あくまでもオリジナルのトーンだ。
特にピッキングについて詳しく説明をしていた。
というのは、人差指、中指、薬指と長さの違う指を使ってどうやって同じ音を出すかという研究をかなりしたのだそうだ。
とにかく苦労したのが弦をはじく指の順番が変わっても同じ音をキープするということ。
ホワイトボードを使って説明していたが、こうしたバッキングの練習を毎日2時間以上していたのだそうだ。
こういう地味な練習が一番ツライんだよね。
コレを克服できた人が才能のある人。練習できる人が「才能のある人」。
私はまっぴらゴメンだ!つまり才能はないということになる。それでよか。
翔己くん曰く「練習の時はドMになるべし」。
やはりみんなが気になるのはタッピングのテクニック?
ホワイト・ボードも駆使して熱の入った講義を展開した!
自分の愛器を持参するお客さんも数人いたし…
翔己くんのベースをイジらせてもらうコーナーもあった。
「ホ~、そんなことやってんねや?」とARESZのメンバーさんにも日頃の努力をアッピール?
そして、模範演奏では「6弦ベースのための超絶技巧曲第一番ロ短調」も披露した
観に来てくれたお客さんが「ベースをやってみようかな…」と思ってもらえるようなセミナーを目標にしていたという翔己くん。
まさにそんな目標を達成したような内容の濃いセミナーだった。
こういうのってイザしゃべり出すと「アレも」、「コレも」ってな具合で止まらなっちゃうモノなんですよ。
翔己くんは時間配分に気を配りながら実にうまくまとめていた。
おもしろかった!
さて、コレは先月リリースされたFEEL SO BADの新作『PENTAGON』。
先日の伊藤広規さんの新しいライブ・アルバムが『Tetragon』だったので、このタイトルを聞いた時はチョットびっくりした。
もちろんレコーディングには翔己くんも参加している。
Marshall、NATAL、EDENそろい踏みの作品。
FSBならではの世界をトクと楽しんで頂きたい。
そして翔己くんは明日、『FSB presents "LIVE PENTAGON vol.01 ~TOKYO~"』と銘打ったこのアルバムのレコ発ライブに出演する。
FEEL SO BADの他にもARESZとNAKED MACHINEが登場。
翔己くんはFSBとARESZの2バンドで登板する。
場所はココと同じ吉祥寺CRESCENDO。
お見逃しなく!
ARESZの詳しい情報はコチラ⇒official web site of ARESZ
FEEL SO BADの詳しい情報はコチラ⇒Official facebook