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2016年4月13日 (水)

プログレッシブ・ロックの聖地から~Neo-ZonkとZLETOVSKO

音楽の現場などでお近づきになった方に「どんな音楽がお好きなんですか?」などと社交辞令的に尋ねることはそう珍しいことではない。
クラシック?ジャズ?ロック?演歌?と徐々にターゲットを絞って行って、「あ、ワタシ、プログレッシブ・ロックが好きなんですよ」と答えられた場合、相手がどんなプログレッシブ・ロックを聴いているとあなたは想像しますかいね?
Yes?King Crimson?EL&P?Genesis?Pink Floyd?等の一時代を築いたメイン・ストリーマー?
ホッとする答えではある半面、もうさすがに会話が燃えないか?何せ40年ぐらい聴いて来てるでナァ。
Soft Machine?Matching Mole?Caravan?Hatfield & The North?National Health?Henry Cow?Gilgamesh?Slap Happy?…
カンタベリー好きだ~。2回行ったぐらいだから。
Jethro Tull?Manfred Mann's Earth Band?Hawkwind?Van Dar Graaf Generator?Beggar's Opera?…
そういうのってプログレか?
ナニナニ、イギリスものには飽きた?じゃ
Area?PFM?Banco?Gong?Ange?Magama?Focus?Finch?Trace?
イギリス以外のヨーロッパ列強ものもいいよね。でも、私はドイツものはからっきし苦手。レコード屋のプログレッシブ・ロック・コーナーで「ドイツ」のところはスッ飛ばす。
Anekdoten?Matts-Morgan?SBB?Omega?
辺境系は中古CDの値段が高くて買いにくい上に当たりハズレが極端にデカいからな~。
他にも南米系にもいいのがあるようだけど、残念ながら聴いたことがない。
…とナニが言いたいのかというと、プログレッシブ・ロックは実にすそ野が広い。
上記に限らず、もちろんアメリカや日本国内も含めて世界中で展開しているし、スタイルもあまりにもバラエティに富んでいて、ヘタをするとワケのわからないものとか、尺の長い曲はすべて「プログレッシブ・ロック」としてひとくくりにされている感じすらあるもんね。
だって、Third Ear BandとBrandXを果たして同じジャンルに突っ込んでいいものだろうか?
機械任せのKraftwerkと人力音楽曲芸の極致、Gentle Giantを同ジャンルとして捉えることにはどう考えたってムリがある。
これがブルーグラスだったら話しは簡単だ。ま、細かくは色んな流派があるんだろうけど、ブルーグラスは全部ブルーグラスのように思える。
ブルースもそう。極端なことを言えばコード進行がひとつしかないんだから。

つまりプログレッシブ・ロックはおもしろい…ということなのだ。(ドイツものは受け付けないけど)
で、何度も何度もMarshall Blogに書いてきているけど、プログレッシブ・ロックの本場、イギリスはダメよ。今は誰も聴いていないというイメージが猛烈に強い。
こんな雑誌も出ているには出ているけど、思い返してみるに、イギリスの人は自国のロックについてよく知っている人が多いけど、「プログレ・バカ」って今まで行き会ったことがないな…。
かつてのMarshallのエンジニアだった親友のスティーヴ・ドーソンと車の中でロックの話しをしていた時にプログレッシブ・ロックの話になって…あんなに色んなロックを聴いている人であるにもかかわらず、「ジェネシスなんてよう聴かんわ…(実際は英語)」と漏らしたのを聴き逃さなかった。
このようなことから、本場イギリスでもプログレッシブ・ロックの存在というのは特殊なものなのではなかろうか…というイメージが今ではとても強いのだ。
そんなだから、「貧すれば鈍する」で、本家にもいいバンドがいないのだろう。
先月、「これが"レジェンド"!! ブリティッシュ・プログレッシブ・ロックの新伝説!!」とMarshall Blogもビックリの「!」とともに帯に記された宣伝惹句に惑わされて「LEGEND」とかいうイギリスのバンドの1990年代初頭のアルバムを買って聴いてみたが、あまりにつまらなくてイッパツで目が覚めたわ!!
では私がそれにどんなサウンドを期待していたかというと…Yesかな?Gentle Giantかな?PFMかな?…要するに、好き嫌いの度合いは別にして、それらが私にとっての「プログレッシブ・ロック」という言葉の定義なのかもしれない。
(下の一番右のデザイン、メッチャかっこよくない?Genesisの『Foxtrot』特集)

C_img_2013 そして、日本。
御茶の水の明治大学のかつての記念館の前にあるレコード店が『クリムゾン・キングの宮殿』を世界で一番売る店舗であったということを飽きもせず、また引き合いに出すが、日本は間違いなくプログレ天国だ。
あのね、あんなに素晴らしいバンドを輩出しているのに、イタリア人にプログレッシブ・ロックの話をすると、PFMはイケるけど、Areaすら知らないようなヤツらばかりだった。とても「Raccomandata Rievuta Ritrno観たことある?」なんて話はムリ。
同じようにフランス人に尋ねると、GongもAngeも知っていたけど、「古い!」と笑われた。
もちろん訊く相手の世代や年齢にもよるけどね。
そこへ行くと、「自称プログレ好き」を標榜する日本人にプログレッシブ・ロックの話しをすれば、きっとEnglandもQuella Vecchia LocandaもAphrodite's Childも押さえていることは間違いない。
コレ、スゴイことだと思うんだよね。
ところが、イザ、演る方になると俄然寂しくなってしまう。
で、「日本のプログレッシブ・ロック」というと必ず付いて回るのが「四人囃子」の名前。必ず日本のプログレッシブ・ロックの代表みたいに扱われるけど、私にはそんな風にはとても思えない。
「一触即発」も「ネッシー」も「円盤」も「ラム」も音楽的、演奏技術的にシッカリした上質なロックにしか聞こえない。
強いて言えば「ピンポン玉の嘆き」ぐらいかナァ?
こんなにプログレッシブ・ロック好きな国民なのにクリエイトするサイドでは苦戦しているという印象が強いのは私だけであろうか?
言葉の問題なのかナァ。

そんなイメージを持っているだけにNeo-Zonkを発見した時には驚いた。
私にとってのプログレッシブ・ロックのイメージにドンズバだったからだ。
だから、どうしてもみんなに知ってもらいたくて、あるいはプログレッシブ・ロック復権の一助としてMarshall GALAに抜擢させて頂いたというワケ。
その甲斐あってか、評判もすこぶるよく、まだまだプログレッシブ・ロックはイケるのではないかとひとりごちた次第。

さて、話題はチト替わって、吉祥寺のシルバーエレファント。
オープンしたのは私が高校2年の時だったかな?調べてみると確かに1978年の開業だった。
仙川に住む友達と、「吉祥寺に新しくライブハウスがオープンしたらしいよ!」なんて、学校で話をしたことをウッスラと覚えている。
私はPlumage(プルーミッジ)という民間の音楽サークルのイベントで訪れたのが最初だったかな?高校生にしてそのステージに立ったことが猛烈うれしかったのを覚えている。
当時はライブハウスに出演するなんて夢のような出来事だったからね。
その当時は店内の装飾が真っ白だったように記憶している。
吉祥寺はウチから遠かったので、ほとんど行くことはなかったが、Bad Sceneを観に行ったのと、三文役者のメンバーとして再びステージを立ったことを覚えている。
そのシルバーエレファントが知らない間に「プログレッシブ・ロックの聖地」になっているっていうじゃないの。
さすが日本、聖地があるだけ素晴らしい。ロンドンには「パンクの聖地」はいくつかあっても「プログレの聖地」なんてまったくないからね。ま、「UFO」の跡地ぐらいか?

C_img_0248 そんなことをつれづれ考えながら、この日シルバーエレファントに向かったのはそのNeo-Zonkが出演していたから。
「聖地」にピッタリすぎるぐらいのプログレッシブ・ロック。

01大沼あい

02v長崎祥子

03v伊藤ショボン太一
…なんだけど、この日は、実はMarshal GALAの宣伝用の写真を撮りにお邪魔したのです。
なのでライブ・レポートはなし。
でも、アルバム『Luminous』から選ばれたいつもながらのゴキゲンなプロッグ・ナンバーを完璧に演奏してプロッグ・ロック・ファンを狂喜させたことだけは記録しておこう。
今週の金曜日には15日にはワンマン・コンサートがあるそうだ。

Neo-Zonkの詳しい情報はコチラ⇒neo-zonk site

3_s41a0366今日のMarshall Blogは、この日Neo-Zonkの後に登場したバンドをご紹介したい。
ZLETOVSKO(ズレトブスコ)というバンド。
バンド名はマケドニア語だそうだ。マケドニアってどこよ?
現地の言葉では「Злетовско」と綴るようだ。するってーとロシアの近く?…と思ったらバルカン半島なのね。

10

メンバーは、
キーボードが堀越功。

20vベースが桑原重和。

30vギターが伏見蛍。

40vドラムが吉田達也…という布陣。

50v伏見さんがMarshall JCM900 4100を使用。
伏見さんは他にケラリーノ・サンドロヴィッチのお仕事などをされているそうだ。

60vさっき、日本のプログレッシブ・ロック界は演る方が寂しいと記したが、それは全般的なことで、中にはヤケクソに素晴らしい活動をしている、あるいは活動していた方々もいらっしゃる。
私が知っているウチのそのひとつがこの「POCHAKAITE MALKO(ポチャカイテ・マルコ)」。
そのセカンド・アルバムの『LAYA』は私の愛聴盤のひとつだ。

70cd事前にZonkのあいちゃんから「対バンの方はかつてポチャカイテ・マルコをやっていた方」と聞いていたのでこの日を楽しみにしていた。
リハーサル後にそんな話をZonkの3人としていたら、「あ、ワタシがポチャカイテ・マルコをやっていたんです」と桑原さんが話かけてきてくださった。
少し話をさせて頂くと、やはり民族音楽がお好きとのこと。
もう「ポチャカイテ・マルコをやることはないだろう」というようなことをおっしゃっていたが、日本でももっとこういう音楽が聴かれるようになるといいんだけどナァ。

80vちょっと脱線で、民族音楽。
『LAYA』の中でも「♪サリガマパダニ」とパキスタンの宗教音楽が取り入れられていたが、私もそのカッワーリーが大スキで、今でも時折CDを引っ張り出してきてはヌスラット・ファテ・アリ・ハーンの美声に酔いしれることがある。
そして、最近それに匹敵するヤツを見つけちゃったのがコレ。
『偉大なるクルアーン/イスラムの栄光』という、やはり宗教音楽。
コレを紹介するのは時節柄チョットどうかもと思ったが、あまりにも感動的だったので触れておく。
「クルアーン」というのは「コーラン」のことで、それを4人のオジちゃんたちが朗唱するというもの。日本で言えば般若心経を聴いているようなものなのだが、どうしようもなくカッコいい。
節々の最後に「エキベン」という言葉がやたらついて回るのが実に気になるのだが、アッラーを讃える言葉の一種なのだろうか。
とにかく正確な微分音階を操り、聴いたこともないメロディを熱狂的に織り上げていくサマは圧巻だ。
私も民族音楽が好きで、面白そうな安価なCDを見つけると買い込んで来るのだが、アフリカ系は苦手かな。

90cdそれと今日触れておかなければならないのがコレ。
もうMarshall Blogで何回も紹介しているのは、ホッピー神山さんの『A Meaningful Meaningnessless~意味のないものは、意味がある~ 』。
私の「日本のロック名盤」のベスト10から未来永劫漏れることがないであろう愛聴盤。

100cdこのアルバムでドラムを担当しているのが吉田さん。あまりにもスゴイ!

110肝心のZLETOVSKOといえば、Neo-Zonkのようにアクロバチックなキメをバシバシ決めるというタイプではないが、とにかくプログレッシブ・ロック。

120ギターの形だけではプログレッシブ・ロックには見えないけど、果てしない反復フレーズや独特の節回しはプログレそのもの!
私事ながら、大学の時の友達のトランぺッターにソックリでお会いした時かなり驚いた。

130スゴすぎちゃって「ウマい」なんて言葉が出て来ないね、吉田さんのドラムは。圧巻!
やっぱりこういうドラムでないとプログレッシブ・ロックは面白くならない。

140vピック弾きによる歯切れのよいラインをネジ込んでバンドの輪郭をよりシャープにする桑原さんのベース。

150v吉田さんのオペラ・ボイスも炸裂!
ホッピーさんとのデュオもいつか聴いてみたい!

1602年半のブランクがあったとはとても思えない充実したパフォーマンスで満員のお客さんを魅了したのであった。

170vZLETOVSKOの詳しい情報はコチラ⇒facebook

180(一部敬称略 2015年12月23日 吉祥寺シルバーエレファントにて撮影)