LED ZEPAGAIN AGAIN~『Live at Earl's Court』 40周年記念 <後編>
<第一部>が終了し、現在20分の休憩中…。
ステージの前でボーッとしていたら、Marshall Blogをいつもご覧頂いているというお客さんが私に近寄って来てある話しをしてくれた…それがスゴイ話しで…。
このお客さん、ある日小型のMarshallコンボを買おうと思い立った。
「オ、いいのがあるじゃん。値段も手頃だ」…と携帯から気軽に注文した。
ところが数日後、荷物が家に届いて腰を抜かした。
「デ、デカイ…。ハコがデカすぎる…。ナゼだ?小さいMarshallを注文したハズなのに…」
で、届いたMarshallに目をやると、それは創立50周年を記して製作されたハンドワイアードの1962 Bluesbreakerだったのだ!
このお客さん、ナント、携帯の小さいディスプレイで注文したものだから、値段をヒトケタ見間違えてしまったのだ!
でもスゴイのは、「返品しようと思ったけど、50年に一回のことだから記念に買っちゃおう!」と購入してくれちゃったのだ!
あのモデルは私の親友のSteve Dawson(元The Animalsのギタリスト)がMarshallを辞める前に心血を注いて監修した彼の「白鳥の歌(Swan Song)」なのだ。だから、持っておいてきっと損はないハズだ。
でも、お支払いはよっぽどの富豪でない限り、伊達や酔狂で引き受けられるようなレベルではない。
いかほどするのかはインターネットで調べてみてください。普通の小型アンプを買おうと思っていた人なら返品するのが常識的な値段であることだけは間違いない。何しろケタが違うのだから。
このお客さんもケタ違いに男の中の男だったのだ!
この場をお借りしましてMarshall製品お買い上げとMarshall Blogご愛読の御礼を申し上げます。100周年の時もどうぞよろしく!
皆さんもネット・ショッピングには十分注意しましょう。
実は私もコレと似たようなことがあってね…大学の時の話し。スケールはグッと小さいが…。
ある朝新聞のコンサート情報の小さい文字に目をやると、ベルリン・フィルが来日し、ベートーベン、ブラームス、チャイコフスキーらの人気交響曲でカラヤンが棒を振るという。
クラシックに疎い私でもヘルベルト・フォン・カラヤンは観ておきたいと思って小遣いを握りしめて、数寄屋橋のソニービルの一階にあったプレイガイドにチケットを買いに行った、
席は安い方でもいい。どうせよくわかんないんだから。
当時大スキだったチャイコフスキーの六番とブラームスの三番を演奏する日の二日分で一万円とかその程度のものだった。
で、意気揚々とプレイガイドで「あ~、チャイコとブラームスのヤツをください。C席で結構」かなんか言ったところ、応対してくれたお姉さんが優しい声で…「合計で十万円になります」と言いながらチケットを差し出すではないの。
ナ~ニ~?やっちまったな~!
そう、新聞の告知広告に出ていた小さい文字で記載してあった値段をヒトケタ読み間違えてしまったのだ!何せクラシックのコンサートなんて行ったことなかったからね。恥ずかしかった~。
クレジット・カードなんて持っていなかったから、Marshallのお客さんみたいにチケットを買い取ることはできなかったし、仮に持っていたとしても一回五万円じゃね~。
それから七年ほど経ってカラヤンは死んでしまったが、無理してでも見ておいたほうがヨカッタかな~?…とは思えないな。アレでヨカッタんだ。
こうして恥をかいて人間は成長するのだ。イヤ、全然してないか…。
<第二部>はアコースティック・セットから。
さて、この大抵コンサートの中盤で出て来るアコースティック・セットってのは今ではアチコチで見かけるようになったけど、Led Zeppelinが開祖なのかしらん?
詳しいことは知らないんだけど、『III』をリリースした後ぐらいから始まったのかナァ?
このコーナーもLed Zeppelinの大きな魅力だったんだろうね。Deep PurpleやBlack Sabbathはやらなかったでしょう?
もちろんLED ZEPAGAINにとっても重要なショウの一部だ。
まずは三人で「Going to California」。
<前編>にも書いた通り、Led Zeppelinといえばまず真っ先にヘヴィな曲を期待してしまうが、こうして聴くと、ホント、静かな作品にもツェッペリンの魅力ってのは詰まっているもんだよね。
クドイようなだが、こういうヴァーサタイルな部分も人気の秘密だったのだろう。
アコースティック・セットの最後は楽しい「Bron-Y-Aur Stomp」。
ウェールズのグゥイニッドというところにあった小屋の名前がタイトルになっている。意味は「金の胸」だとか…。原曲はPentabgleのBert Janschによる「The Waggoner's Lad」。
ウェールズの英語はキツイよ。
Marshallにもひとりウェールズ出身のヤツがいて、ナニを言っているのか最初サッパリわからなかった。今は結構慣れて平気になった。
Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch(ランヴァイル・プルグウィンギル・ゴゲリフウィルンドロブル・ランティシリオゴゴゴホ)という世界一長い名前の駅がウェールズにあるのはよく知られている。
Derekも加わって「♪ドッチドッチ」と盛り上げる。レコードではJohn Bonhamはカスタネットとスプーンを鳴らしてるんだってね。
お客さんもノリノリの手拍子でにぎやかにアコースティック・セットは完了!
ここで機材のトラブルにより<第一部>で演奏できなかった「Kashmir」をプレイ。
コレってBilly Cobhamの「Stratus」に共通する部分を個人的に感じるのね。その心は「知らない間に人気曲になってた」という。
ま、この曲に関してはそんなことないんだろうけど、隠れた名曲的な立ち位置だった印象が強く、「え?ホントにみんな昔から好きだった?」という感じがするんだよね。
「Blag Dog」とか「The Ocean」とか「Candy Store Rock」とかZeppelin式変拍子の名曲。
カッコいいよね。
「♪ジャカジャッ(うん)ジャガジャッ(うん)~」に合わせて会場中のおきゃくさんが膝を上下させていた。
かえってこのアコースティック明けのタイミングの登場でヨカッタような…。
その名曲の名リフを奏でているのはMarshall。
1973年製の1959。
詳しくは<前編>をご覧あれ。
続いて「No Quarter」。
<前編>でも書いた通り、静かな曲はパスするクチだったので知る由もなかったが、この「quater」ってのは「憐みの心」みたいな意味なんだね。
「25セントコイン」も持ってない貧乏人のことを歌った歌なのかと思っていた。失敬。作詞はJPJ。
でも、コレもいいよね。
やっぱり刷り込みってのは恐ろしいもんで、『永遠の詩』のC面のせいでスッカリとっつきにくくなってた。
場面はガラッと変わって跳ね飛ぶキーボードのイントロから「Trampled Under Foot」。
「trample~underfoot」は「~を蹂躙する」という熟語。歌詞の内容はRobert Johnsonから拝借した性的な内容だそうだ。
やっぱりこの1975年頃は『Physical Graffiti』もリリースして、完全にレパートリーが広がり切ったところだったので、それだけ出し物的にもヨカッタんだな~。
そして、ソロソロ出るかと思った通りの「Moby Dick」。
このリフも最高だ。
ん~、なるほど…Bobby Parkerって人の1961年の「Watch Your Step」ってのとほぼ同じだナ…。中にはビートルズの「I Feel Fine」に似てるっていうヤツもいるみたいだけど、それは乱暴ででしょう。ブルース形式じゃないし。
コレにドラム・ソロをくっつけるなんてアイデアは問答無用でスゴイよな~。
しかもそれが1970年にはシングル盤になってる。
この時代、いかにロックが、そしてロック・ビジネスが貪欲になっていたかが伺えるような思いだ。
ここからは新加入のDerekの独壇場。
ドラム・ソロって大抵ショウの後半に持ってくるでしょう。
ホントにいつも思うんだけど…かわいそうでしょう、ドラマーが!
なんてことはお構いなしに遠慮なく叩きまくるDerek。
あるプロのレコーディング・エンジニアから聞いた話し…最近の若い人達はLed Zeppelinを聴いて、「ドラムがスカスカで軽い」って思うらしい。
今のデジタルレコーディングとイヤホンで聴くドンシャリのアミノ酸サウンド(人工調味料という意味ね)に慣れ切っちゃっているためだ。
我々からすると、今の若い人達のドラミングを見ていると、汗みどろでシャカリキになって叩いているワリにはひどく音が小さいナァ~と思うことがあるよね。もちろん全員じゃないよ。
もしくは音は大きくて手はよく回るけど、やたらと騒々しいばっかりとかね。
年齢は倍以上でもベテランの現役ドラマーは絶対そんなことをしない。
サラッとドラム・キットを撫でただけで大きく、そして美しい音を出す。もちろん音が大きくてもちっともうるさくない。
NATALを使っているから言うワケじゃないけど、岡井大二さんなんかはまさにソレ。
スティックを握った手をほんのチョット動かしただけでビックリするほど大きな音が出て来る。それでいてちっともうるさくない。
そういう意味で一番驚いたのは、ロックでなくて恐縮だけどニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードで観たPaul Motianだな。
すごいチャンジーなんだけど、ペロペロっとドラム・キットを撫でただけで爆発的にデカくてきれいな音が出ていた。その音の大きさだけ聴くと、この人が本当にBill Evans Trioのドラマーだったとは信じられないぐらいだった。
でもね、時代というモノは実に自然にうまく移ろうもので、大二さんのドラミングが今の「ありがとう」バンドにマッチするワケがない。全員ドラムに負けちゃうもん。
シャカリキに叩いて音が小さいぐらいが草食系ロックにはちょうどいいのだ。
またそのうちJohn Bonhamの時代が来るさ。
Derekの「死闘」とも呼べそうな壮絶なドラム・ソロを聴いていてそんなことを思ってしまった。
大歓声に応えるDerek。
どこにこんなスタミナが残っていたのか?
長尺かつパワフルなソロは観る者すべてを魅了した。
今度はあのベースのイントロ。「Dazed and Confused」だ。「幻惑されて」の訳はウマい。邦題反対派の私だけど、コレはいいな。
この曲はJimmy PageのThe Yardbirds時代からのレパートリーで元はJake Holmesというアメリカのシンガーソングライターの作品。というか、全く同じ。それがPageクレジットになっていたので当然モメた。
でも原曲にもあるこのベースのフレーズもブルースからの引用ではなかったか?
それを圧倒的なパワーで振り切ったのがLed Zeppelin。
それにはMarshallが必要だったのさ!
ステージにひとり残ってひたすらヴァイオリン・ボウでギターをこすり、そして叩く。
コレは一度でいいからやってみたいよね~。
桜井さん、次回は自分のレスポールを持って行くのでチョットでいいからやらせて!
あ、言っておきますが、私のレスポールはLes Paul本人がその写真を見て「美しいギターだね~」って言ってくれたのよん。その写真のウラにサインをもらった…自慢コーナー終わり。
タップリと桜井さんの妙技を味わった後、曲はクライマックスへ!
皆さんお待ちかねの「Stairway to Heaven」。
コレもアメリカのバンド、Spiritの「Taurus」という曲の引用といわれているが、そうかナァ。似ているのはイントロの二小節だけでゼンゼンそういう感じはしない。
曲のイメージが全く違うのだ。
でも、昨年、Spiritのベーシストが作曲者である故Randy Californiaの名前をクレジットさせようと起訴したが、証拠不十分で失敗。もしウマくいっていれば550万ドルの印税が転がり込んでくるところだったそうな。アータ、6億6千万円だよ。この一曲だけでZeppelin号は一体どれだけ儲かったのよ?って話し。
Led Zeppelinは実際「Fresh Garbage」というSpiritの曲をレパートリーにしていたこともあったそうだ。
ちなみにSpiritの中心人物であり、ギタリストであるRandy。「California」ってヘンな名前でしょ?コレ、Jimi Hendrixが付けたんだよ。同じバンドにもうひとり、Rady Palmerってのがいて、区別するために出身地を名前にくっつけた。ひとりはRandy California、もうひとりはRandy Texasだった。
アメリカだからいいけど、日本だったたチョット…ね。長野とか千葉のような普通の苗字にある名前だったら自然だ。でも沖縄太郎とか鳥取次郎とか新潟三郎とかはシックリこない。でも日本人の苗字の70%は地名だっていうからね~。
やっぱりZeppelinの中でも一、二を争う人気曲だけあってあのイントロとあの歌にはお客さんも全身を耳にしていた。
Frank Zappaもビッグ・バンドでユニゾンで演った有名なギター・ソロは完璧。シゲさんの「Purple Haze」じゃないけど、コレも桜井さんの方が本家より数多く演奏しているんじゃない?
まさに渾身の演奏だ。
「Whole Lotta Love」…ナントこれも訴えられたんだってね?
元はMuddy Watersでおなじみの「You Need Love」。奇しくもMuddy Watersはチョット前にやったばっかり。作者はWillie Dixon。コレは似てないって!
こんなこと言ってたらキリがない。向こうの連中は何でもそうやって訴えて金にしようとしているだけなんだろうけど。
それでも、こういうことを書いているのは、鮎川さんがMuddyを通じて教えてくれるように、「ロックはブルースの子供」ということを知っておいてもらいたいからだ。
そして、あわよくば草食系のボクちゃんたちにもそういうロックやそのルーツに興味を持ってもらいたいと思っているからなのだ。
揺籃期のロックがブルースのパクリなのは何もLed Zeppelinだけじゃない。でも、ブルースを下地にしてあまりにもカッコいいロックを生み出してくれた。
MuddyやDixonだって喜んだんじゃないの?「オレの子供たちだ」って。
70年代初頭の日本のロックも、入って来たての海外のロックを利用してコレをやった。だからカッコいいのだ。もちろんブルースも勉強していた。
イカン、つい熱くなってしまった。桜井さん、ゴメンちゃい!
とにかく「Whole Lotta Love」のリフはあまりにも素晴らしい。
誰だったか覚えていないが「いいリフを作るのは本当にムズカシイ」と超一流の海外ギタリストがかつて何かのインタビューで言っていたが、やっぱJimmy Pageはスゴイよね。このリフ、基本的に音をたった三つしか使ってない!
いいリフってのは得てしてシンプルにできているものだ。
コレも一回でいいから大音量でやってみたいナァ。
テルミン・アクションもバッチリの桜井さん!
続けて「Black Dog」。
この曲のアイデアの元がFleetwood Macの「Oh Well」というのはうなずける。その「Oh Well」の元がMuddy Waters?
もうコワくてブルース聴けない。
あ、そうそう、またしつこく書くけど「Blues」の発音について。
これはやっぱり「ブルース」としたい。というかMarshall Blogでは「ブルース」を通す。
実はこの事が気になっていて、何人かのネイティブ・スピーカーを使って調査してみた。
私の調査結果は、確かに「ブルース」と「ブルーズ」の中間のような感じもするが、普通にしゃべっている時は連中は「ブルース」と発音します。
で、「bluesをユックリ発音してみな」というと「ブル~~~ズ」と濁っているように聴こえるが、正直ハッキリとした「ズ」には聞こえない。でも「ス」ではない。一種の音便変化のようなものか?
現実的に日常の会話の中で「ブル~~~ズ」と言うことはないので「ブルース」でよいのではないか…コレが私の研究結果。
コレもヤケクソにかっこいいよね。「Oh Well」もメッチャかっこいいけど、「Black Dog」を最初に聴いた時の衝撃ほどではない。
実際のEarl's Court公演では「Whole Lotta Love」と「Black Dog」はアンコールで演奏された。
実は今回の公演でもその予定だったが時間の関係でマキを入れたようだ。
さて、LED ZEPAGAIN、桜井さんの加入後、満を持して『The Sound Remains the Same(永遠の響)』と題した二枚のアルバムをリリースした。
どちらも無形人類遺産ともいうべきLed Zeppelinの名曲を収めている。
評判も上々だ!
まずは「Heartbreaker」。
続いて「Communiacation Breakdown」。
実はこれらはEarl's Courtの五回の公演の内、最終日にだけ演奏された二曲なのだ。
こうしてLed Zepagainの2015年の来日公演が終了した。
昨年より一時間も短いとはいえ、四時間半近い長丁場で、お客さんは十分にZep温泉に浸かって日頃のLed Zeppelin愛を満たしたことだろう。
客電もついてお客さんが席を立とうとしたら、EXシアターの倉林支配人が再びステージに現れた。
「皆さん、お帰りになるのはまだ早いですよ。機材のトラブルで番狂わせがあったお詫びにもう一曲演奏してもらいましょう!」と告げると大歓声が沸き上がった。
倉林さん…ウマい!
「あの曲を聴きたいでしょう?」
…『Presence』から「Achilles Lat Stand」だ!「アキリース」ね。
前回の公演からこっちの一年間、私はほとんどLed Zeppelinを聴くことがなかった。
また、向こう一年同じことになりそうだ。
これほど素晴らしいLed Zeppelinのコンサートを観てしまったのだから!
LED ZEPAGAINの詳しい情報はコチラ⇒LED ZEPAGAIN Official Web Site
Jimmy SAKURAIの詳しい情報はコチラ⇒MR. JIMMY OFFICIAl WEB SITE