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2015年11月11日 (水)

三宅庸介 『Sound Experience 17』 ~ Tribute to Jimi

ヒョエ~!
三宅庸介のSound Experienceももう「17」ッ?! しょっちゅうやってるワケでもないのに早いな~!
年に一回の正月やクリスマスよりがアッという間にやって来るのより早く感じるわ。
初めてお邪魔したのはまだ全然数字が若いウチだったよ。それからは皆勤。
他の人がやらない、自分だけの音楽の研鑽を積む三宅さんの姿に毎回刺激を受けに行くのだ。


今回の『Sound Experience』は山本征史率いるSTANDとステージを共にした。2バンドで出演者4人という例のエコ対バンシステム。でも内容はドロッドロに濃いぞ!
まずはSTANDの登場だ。

10ボーカル&ベース、山本征史。

20ギターは島紀史

30vドラムは金光KK健司。

40v安心してください。今日は全部MarshallとNATALですよ!

50征史さんのワイルドなベース・サウンドは…

60Marshall 1992 SUPER BASS。

70vノンちゃんのリッチなギター・サウンドも…

80vMarshall 1967 MAJOR

90vKKのクリスピーなドラム・サウンドは…

100vNATAL アッシュ。フィニッシュはグレイ・スパークルだ。

110STANDももう何回もMarshall Blogに登場してもらっているが、観るたびに音楽性の幅を広げ、変化を遂げて来ていた…ように私には見える。

120その変化もひとえに征史さんの音楽的感性によるのであろうが、ここのところチョット、ファースト・アルバムの『煩悩good!』の頃のシンプルでパワフルなハード・ロックンロールから離れて、抒情的な面を押し出す傾向が強いように感じでいた。

130vそれでもCONCERTO MOONの時とは爆発の仕方が一味違ったノンちゃんのギターと…

140Strange, Beautiful & Loudでは征史さんの恋女房の、そして、ノンちゃんとは相性抜群のKKのドラミングが征史さんの頭の中にある音楽をバッチリと具現化してしまうところが大きな聴きどころでもあった。

150それが今回のステージでは最初の頃のSTANDに戻ったような雰囲気で、コレもまたやっぱりいいもんだとスッカリ楽しんでしまった。

160v「拳をあげろ!」と呼びかける「From the Bottom to the Top」。

170v何となく横尾忠則の美術を思わせる言葉の混沌がカッコいいバンドのテーマ・ソング「STAND」。作詞が征史さん、作曲はノンちゃんだ。

180vKKのストレートなドラミングとNATALアッシュの組み合わせがすこぶる気持ちいいぞ!

190「インキュベーション」。「出る単」にも恐らく載っていない「incubation」の意味は「孵化」。
雰囲気満点の曲だ。

200記事のタイトルにある通り、このライブはJimi Hendrixに捧げられた。開催された9月18日はJimiの命日なのだ。
ロンドンのラドブローク・グローブとノッティングヒル・ゲイトの中間ぐらいのあったサマルカンド・ホテルで、ゲロをのどに詰まらせて窒息しているJimiを恋人のモニカが発見したのは現地時間の午前10時20分。その後、ハイ・ストリート・ケンジントンのセント・メアリー・アボッツ病院に担ぎ込まれたのが10時40分。そして、息を引き取ったのが11時25分…とされている。
日本時間で1970年午後7時25分。Jimi Hendrixは28歳だった。

Jimi Hendrixと言えば「エレクトリック・ギターの可能性を広げた偉大なるイノベーター」という枕詞が付いて回るじゃんね。我々ギター弾きの周辺は特にそうだ。
まったくその通りだと思うけど、その辺りのJimiの偉業はJimiがいなかったとしても、もう少し待っていれば誰かが同じようなことをしていたんじゃないか?…なんて。
ま、こういう妄想が結構おもしろい。
その心はMarshallとストラトキャスターだ。
このふたつの神器とチョコットしたアタッチメントがなければアレは実現しなかったでしょう。
だってぺランペランのクリーン・トーンとレスポールやテリーでは「ギュイーン」はムリだったし、そんなワザを思いつかなかったことは必定でしょう。
…なんていったらファンの方々に怒られそうだけど、まだ話しは続く。
Jimiのスゴイところはそれらの道具を使って自分だけの音楽を作ったということなんだと思うワケ。
Jimiが死んで45年。誰もJimiを越せないでしょう?
Charlie Parkerしかり、John Coltraneしかり、Miles、Monk、Mingus、Evans、Ornette(この人は最近亡くなった)、Zappa…いくら時間を費やしても超すことが出来ない巨人の業績というものは、決して演奏の技術だけが作るのではなくて、残した音楽のオリジナリティの高さとイマジネーションの強さだと思うんですよ。
Jim Hendrixが書いた曲や、彼が選んで演奏した曲って問答無用でカッコいいし味わい深いでしょ?
このJimiの音楽に対するオリジナリティがあったからこそ「Jimi Hendrix」が成立したのではないかと、今だからこそ思ってる。
同時にその礎となっているMarshallを誇りに思う。だって、色んな偶然が重なったにせよ他のギター・アンプにはできなかったんだから!

征史さんはベーシストだが、最も尊敬している音楽家はJimi Hendrixなのだそうだ。
…ということで、STANDからJimiに一曲捧げられた。
210v征史さんが選んだのはJimiの死後初めて未発表音源として発表されたアルバム『The Cry of Love』から「Ezy Rider」。
この曲、別名を「Slow」とか「Lullaby for the Summer」といい、映画『イージー・ライダー』に触発されてこのタイトルが付けられた。
ちなみにJimiのセカンド・アルバム、「Axis:Bold as Love』に収録されている「If 6 was 9」はこの映画に使用されている。

Img_1817 根っからのBlackmoristのノンちゃんだが、Jimiナンバーでもギター・プレイが冴えわたる。

220vここでノンちゃんの右手を見てみよう。
親指の関節の角度に注意。
曲がってるでしょ?

230その曲がっている親指を伸ばす作業によって弦をはじく。
これを若干の手首の動きと合わせてものすごいスピードで繰り返すのがノンちゃん流。
信じられないぐらいしなやかな指の動きなのだ。マネしてみたけど全然できん。

240弦にあたる角度は、いつもではないがこんな感じ。
メッチャ親指の爪を短く切ってる!コレ、深爪で痛くないの?
ま、高熱を出しても東京から神戸まで運転して来ちゃうぐらいの人だから深爪なんて屁でもあるまい。

250征史さんの右手。指弾きがメイン。

260「クライミング」をはさんで「STANDのJohnny B. Goode」と紹介された「ジェット!」。

270さらに「スパイラル」。
「ジェット!」と「スパイラル」はともに『煩悩good!』に収録されている曲だ。
全七曲中三曲が『煩悩good!』から演奏された。STANDの原点を見たような気がした。

280v「自慢のジャンボジェット」…Muddy Watersなら「ナマズ」か?サンハウスなら「魚雷」だ。
『煩悩good!』のジャケットにあるようにブルースに造詣の深い征史さんならではの一曲ではないか!それがSTANDの魅力!

300v山本征史の詳しい情報はコチラ⇒BLACK CAT BONE

310続いてはYosuke Miyake's Strange, Beautiful and Loud。

320三宅庸介

330vノンちゃんや征史さんがビンテージ系Marshallなら三宅さんはコンテンポラリーに迫る。

340今ではスッカリお気に入りとなったJVM210H。キャビネットはこだわりのBaseタイプ。

350v一曲目は三宅スタンダードの一角「if」。

360STANDで暴れまくった二人は今度はサポートにまわる…

370vといってもS,B&Lはこの三人が主役だ。
ひとりかけても音楽が成立しない。

380vん~、相変わらずの素晴らしいトーン。JVMの得意なところを全部引き出してくれているかのようだ。

390v全部で六種類のサウンド・キャラクターを持つJVM210H。
これまでにも数えきれないほど使用し、試行錯誤を繰り返していたが、CLEAN/CRUNCHのオレンジ・モードがシックリ来ているとのこと。
ゲインはフル、マスターは7.7~8。トレブル3.5、ミドル8、ベース3というセッティング。
要するに大爆音だ!

400二曲目は「murt 'n akush(マラケシュ)」。

420

三宅さんのレパートリーではわかりやすい5/4の人気曲。確かにこの曲のリフが一番口ずさみやすい。

410レパートリーの中では古い部類に入る曲、「bloom」。
これまた三宅さんの感覚がおもしろい…「ベイクド・ポテトに出ているような達人たちの演奏の仕方とムードを想像しながら作った」という。三宅さん、Michael Landau好きだからね。
そして、元々は曲のメロディがうっすらとコードの中に存在しているといった感覚で演奏していた。その後、アルバムに収録する際にメロディをドンと一番前に持ってきて、曲の主役をハッキリはっきりさせたというのだ。
S,B&L以前から演奏していた曲だが、このトリオの演奏のために完全にアレンジされ、生まれ変わった。

430v中間部のづりー・インタプレイはショウのひとつのハイライトにもなっている。
Img_1912
三宅さんにとってはそれが三人で語り合うとても楽しい時間なのだそうだ。

Img_1919
いつもとても注意を払いながらこの曲を演奏しているとのことが、作曲についてはスンナリといったそうだ。特にAパートのメロディとコードの動き方がお気に入りだとか。
ソロの後半に繰り返されるアルペジオのような部分は三宅さんが二十歳の時から使っている演奏法で三宅スタイルの特徴的な部分を占めている。

450
持ち時間も中盤に差しかかり、まずますおしゃべりに夢中になる!

440v三宅さんも大のお気に入りのNATALサウンド。
私もずっとそう思っていたのだが、NATALの響きはとても音楽的だ。
三宅さんもそういう風に評価してくれていてうれしい。
そう、NATALがステキなのは、ドラマーだけでなく、共演の人たちからも「音がいい」とホメられるところなの。ギター族の私としてもすごくありがたい。
三宅さんのように尋常でなく音にこだわるミュージシャンにそう言ってもらえるとさらに自信がつくナァ。

460「Stratify」もS,B&Lより以前からあった曲だ。
元々はもっとユッタリした曲だったが、この顔触れになってテンポをアップさせハードロック化させた。

470vここで三宅さんの右手も見てみよう。

480チョット見ただけでもおわかりだと思うが、異常なぐらい、ピックが弦に当たる角度、深さ、弦を弾く位置を使い分けている。

490これも常にギターが完璧な状態で、その音質の変化を忠実に表現してくれるギター・アンプがないとこの努力も徒労に終わる。
すなわち真空管アンプだけができる仕事だ。それを知っているからこそこういう人は必ずフル・ヴァルブのアンプを使うのだ。

500三宅さんお気に入りの「Petal」。
人生で一番「作曲」という言葉を意識して作ったそうだ。

510そして最後は「Virtue」。
今のレパートリー中では「bloom」と並んで一番古い曲。
2007年の冬に作られた曲で、三宅さんはその頃チャイコフスキーとマディ・ウォーターズをよく聴いてたそうだ。
Jimiは「ヘンデルとマディ・ウォーターズを合わせた音楽をやりたい」と話してた記述があるんだってね。
で、三宅さんもそれをやってみたい…ということでペンを進めたそうだ。
実際に作曲に取りかかってみると、チャイコフスキーというよりはヴィヴァルディを思い描くようになり、「調和の幻想(L'estro Armonico=クラシックの連中は「アーモール」とか呼ぶでしょ、コレ?)」という曲のイメージを保ちながら完成させたのがこの作品。
「Blues Meets Vivaldi」をやりたかったのだという。
ちなみに、ロンドン時代のJimiの家はヘンデルの家の隣だったんよ。

520vコレはロンドンのソーホーに近いビーク・ストリートというところにある「ヘンデル博物館」のリーフレット。
青くて丸いプラークが付いてるでしょ?
向かって右の茶色い方がヘンデルが住んでいたフラット。向かって左はJimiが住んでいたフラットだ。
ヘンデルは数少ないイギリスの作曲家みたいに思われているフシがあるけど、この人はドイツ人。会ったことないけど。イギリスに帰化した。

O_img_0275 若者の草食系、年配のコピー・バンドが花盛りのロック界にあって、こういう自分だけの音楽を愚直なまでに追求する人ってのはカッコいいね。
かなりアクの強い音楽だけに好き嫌いがかなり分かれるところだろうけど、演奏を一度見れば三宅さんの振る舞いに音楽の求道者の姿を見るハズだ。
ロック好き、ギター好きの諸兄には絶対に一度観てもらいたい。


そうだ!
考えてみればMarshall Blogでそういうコンサートでもやったらどうだろうか?
「百聞は一見にしかず」ってヤツよ。
いつもMarshall Blogで活躍しているガッツのある音楽家たちをかき集めたコンサート。
司会は私で、ボヤキとウンチクと自慢話しばっかりするの。
イメージとしては「動くMarshall Blog」。
そんなのがあったらみんな観に来てくれるかな~?どう?

530アンコール。
昨年同様、Jimiへ捧げる一曲。

540曲は「Angel」。
オ、奇しくもまた「The Cry of Love」!征史さんと事前に示し合わせておいたのかな?

550歌は三宅さん。
「♪Fly on my sweet angel~」…心を込めて心の師に囁いた。

560vそして、ノンちゃんとの壮絶なギター・バトル!

570珍しい。
メジャー(長調っていうことね)でこういうギター・バトルって滅多にみかけないじゃんね。

590…と思って終演後三宅さんにそれを伝えたところ「それが狙いだったんですよ!」だって。ヤッパリね!
次回も楽しみなSound Experienceなのであった。

600最後はチョット『In the West』風に…。

三宅庸介の詳しい情報はコチラ⇒YosukeMiyake's "Strange,Beautiful&Loud"

O_s41a9135 1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。
M_natal_square
★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版:現在日本語版作ってます!時間がなくてなかなか進みません!)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2015年9月18日 三軒茶屋GRAPEFRUIT MOONにて撮影)

P.S. ところで、この「Grapefruit Moon」ってTom Waitsなのね。ダメなのよ、またTom Waitsが…イチイチこんなことばっかり言ってすみませんね。