TAGAWA with OA(pneumothorax)
田川ヒロアキ、寺沢功一、長谷川浩二からなるというスゴ腕トリオ、TAGAWA。
アルバムを発表し、全国的なツアーもこなしてその評判は高まるばかりだ。
そのTAGAWAが、東京で三回目のワンマン・コンサートを開催した。
今回はpneumothoraxというオープニングアクトつき。
「pneumothorax」をパッと見て発音できる人は英語を勉強している人。
読みにくいよね、病気の英単語って
コレは「ニューモソラックス」と「ソ」にアクセントを置いて発音する。。読まないなら「p」くっつけんなよ~。
「気胸」という意味。
「pneumo-」というのは「肺の」という意味を表す接頭辞だから、「pneumo」が頭にひっ付いた単語は「肺」に関する単語と考えて間違いない。
もっとも有名なのは「肺炎」を意味する「pneumonia(ニューモニア)」だろう。
メンバーの病歴がバンド名になっているそうだけど、「アンスラックス」にも引っ掛けているのかな?
西川翔太
雄太くんはMarshall。エライ!
親の顔が見てみたい…もうすぐ見れるよ。
お察しの通り長谷川浩二さんの息子さんだ。
ギターを遅くに初めてまだ間もないらしいが、もう8弦ギターをバリバリ弾きやがる。やっぱ血は争えんのう。
知久光一
實成峻(みなりしゅん)
浩二さんのお弟子さんの峻くんは大分前から知ってる。
実はもう何回もMarshall Blogに登場してくれているのよ。
そう、将来を嘱望されながら惜しまれつつ解散したCrying Machineに在籍していたからだ。
リンキン・パーク等の曲をパワフルに演奏していた。
ゴメンね、おじちゃん、そこ辺りのことよくわからないの。
パークじゃなくてカークなら大得意なんだけど…ローランド・カーク。
JVM210Hと1960B。
愛器はJMD501だが、スッカリJVM210Hも自家薬籠中のものにしてしまった。
コレがTAGAWAのファースト・アルバム『Flying Carpet』。
もうみんな知ってるか…。
このアルバムでもヒロアキくんはJVM210Hと1960Bをスタジオに持ち込んで自由に爆音を轟かせてギターを録音した。
CDを一聴すればわかる通り、コレが真空管のギター・アンプで鳴らしたギターの音だ。
こういうのを「いい音」という。
斯界では手軽で便利なアンプの類が色々出回っているが、どうあがいてもコレにはかなうまい。
上質のカツオと昆布を使い、手間をかけてとったダシがグルタミン酸ナトリウムでできた化学調味料に劣るワケがないのと同じ。
オープニングはCD通りの「Stranger Destoys Arms」。
コレがTAGAWAなのだ!
二曲目は田川スタンダードの「My Eternal Dream」。
疾走感あふれる人気ナンバーだ。
スケールの大きなベース・ラインで極限まで曲をドライブさせる。
売れっ子ロック・ベーシストの面目躍如たるプレイ。
三曲目は今やTAGAWA名物のムチャな「Led Boots」。
Jeff Beckが怒るのではないか?というアレンジとされているが、大丈夫、大丈夫。この曲の作者はMax Middletonだから。
それにJeffには短気で神経質なイメージもあるようだけど、楽屋では結構ニコニコしてるよ。
このアレンジを聴いたら「仲間に入れて!」って言うかもよ。
続いて乗り物コーナー。
「乗り物」ったって三人が何かに搭乗するワケではない。「乗り物」をテーマにした曲を二曲お届けしようという寸法だ。
Marshall Blogでは「乗り物」が登場するレコード・ジャケットの解説をしているページがあるので興味のある方は是非コチラをご覧頂きたい。
まずは「train」。
電車に乗ってヒロアキくんのライブに行こうてェ曲。
つい顔がほころんでしまう、ほのぼのムードの愛らしいメロディが魅力の一品。
MAZDAのイベントのテーマ・ソングに採用された曲で、コンサートやイベント会場限定でシングルCDも発売された。
このCDはもう手に入らないが、この曲は今月17日に新しくリリースされたアルバムにも収録された。
安心してください!入ってます。
主旨に真っ向から取り組んだキャッチーな仕上げがいかにもヒロアキくんらしい。
こういう誰にでも歌えるようなポップ・チューンから、ともすれば近所迷惑にもなりかねないヘヴィ・チーン、果ては設計図も完成図もないフリー・インプロヴィゼーションまでをカッチリとキメるところが彼のスゴイところ。
その正体は真ん中の「ヘヴィ野郎」なんだけどね。
作品の意図を完全に咀嚼して曲に魅力を加えるリズム隊の技巧にも特筆すべきものがある。さすが百戦錬磨の職人ワザだ。
続いては、市政60周年を記念して、府中市から委嘱された曲、「府中に夢中」という曲。
「府中」ってのは東京だけかと思っていたら広島県にもあるのね?その広島の府中市からの依頼だ。
ヒロアキくんは官需が多いのも仕事の特徴のひとつだ。
もうしばらくしたら、無事に片付けたドデカい仕事をMarshall Blogでレポートするのでお楽しみに!
何でも、この曲はいつもヒロアキくんのコンサートに来てくれる市の職員の方による起案だったそうだ。
子供たちのダンス・チーム、ヒップホップよりのロック・テイスト。子供たちがその曲に合わせて踊るワケだ。
これが実に可愛い曲で、これもヒロアキくんのやさしいキャラクターにピッタリだ。
私はコレを聴いてイタリアのLatte E Miele(ラッテ・エ・ミエーレ)というプログレッシブ・ロック・トリオの『Papillon』という作品を思い出してしまった。
Emerson Lake & Palmer調のキーボード・トリオが、ひとつの素朴なメロディを軸にスリリングでテクニカルなパートとシンプルなアレンジのパートを対比させながら、スケールの大きなドラマを構築していく趣向。
オルガン・ロック、ジャズ、ベートーベンからチャイコフスキー等々、まるで音楽の図鑑のページをめくるように様々な要素が切れ目なく飛び出してくる組曲。イタリアン・ロックが好きな人なら間違いなく一度は聴いているであろう名作だ。
その曲の大切な要素のひとつとして取り扱われているのが「児童音楽」だ。
子供に聴かせる音楽、あるいは子供が演奏する音楽をバカにしてはならない。かなり音楽的に密度が濃かったりするのだ。
ウチの上の子が小さい時に、『おかあさんといっしょ』のカセット・テープを買って来て、何気なく聴いていたら、実にいい曲がたくさん入っていて驚いた。
して、クレジットを見ると作曲が渋谷毅さんだったりする。「そりゃ当然いい曲になるわ」といった次第。
以前にも書いたことがあるが、渋谷毅オーケストラのライブ盤に収録されている、Carla blayがアレンジした「Soon I Will Be Done With The Troubles Of This World」というトラディショナル曲は何度来ても涙がこぼれ落ちる思いだ。(YouTubeで合唱ものを検索してもダメ。ゼンゼン違うの)
げに童謡は素晴らしい。
ところで、イタリア語ってのは思ったよりロックにマッチするんだよね。すごくロマンチックに響く。
ヒロアキくんも何か一曲イタリア語で歌ったらどうだろう。
フランス語は意外にダメよ。怪奇なイメージを出すにはフランス語は持って来いだ。シャンソンは最高。
カンツォーネやシャンソンがいいのは、当然のことながら地の言葉で歌うからだ。英語がロックにシックリはまるのも同様。
しからば、日本語はどうか?
やっぱり演歌や民謡、あるいは歌謡曲ということになるんだろうね。でもそれじゃ面白くないので、強引に舶来の音楽を組み合わせるとしたら、やっぱり自然なところではフォークということになるだろう。
してみると、テレビで見かけるような、「フォークをただバンドでやってみました」という体の今の草食系ロックが定着したのは自然の成り行きだったのかもしれない。
また府中はタンスの特産地で四角い引き出しに革を張って作った太鼓があるそうで、その音もレコーディング時に使用したとのことだ。
ということでギターをパーカッションに見立てて叩きまくるヒロアキくん。
低音暴力団組長の名に恥じない超アグレッシブなプレイ!
愛知県警捜査第四課の方が差し入れの焼酎を手にして、このてらちんの雄姿を見にいらしたという。組長の力のスゴさが容易に計り知れるというものだ。
浩二さんのソロも炸裂!
火の出るようなすさまじいソロの数々でリズム隊に立ち向かった。弾き方ヘンだけど…。
それにしてもJVMっていい音だな~。
アンコールは「Space Walker」。
私はこの曲が好きなのだ。
前回の八王子の時、MCが長すぎて電車の時間がヤバくなっちゃって、その時もアンコールで演奏されたこの曲はサワリしか聴くことができなかった。
「8時だよ!全員集合」を想起させるメイン・テーマ。
私はこういうダイアトニック・ノートだけでメロディを練り上げたタイプの彼の作品を、親しみを込めて「校歌ロック」と呼ばせてもらっているが、コレもヒロアキくんならではのテイストだ。
反対にブルーノートを使った校歌なんて聞いたことないでしょ?
そのテーマ・メロディをワザワザ否定するかのように展開するその後のパート。
計算しているんだか、行き当たりばったりでつなげたのか、はたまた自然なのか、強引なのか?まるっきり先が読めない曲の成り立ち。
演奏させられる方もタマッタもんじゃないだろう…というほどのスペクタクル巨編だ。
やるな~、ヒロアキくん。
考えてみれば、歌は入っていないものの、「Space Walker」は先に挙げたヒロアキくんの音楽の要素をすべて注ぎ込んだショウ・ケース的作品なのだ。
恐るべし「校歌ロック」!
それにしても忙しいヒロアキくん。身体に気をつけて欲しいものだ。
そして、ますますの前進を期待しているでござる。Marshallと一緒にね!
次回は暑かったアレでご登場頂きますのでよろしく!
田川ヒロアキの詳しい情報はコチラ⇒fretpiano