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2014年11月 3日 (月)

Holy Winter~Kelly SIMONZのクリスマス・アルバム

テレビや新聞で盛んに報じていたが、最近のハロウィンの喧騒ぶりはなかなかにスゴイものがありますな。
様々な出で立ちで街を行き交う姿を目にするのはにぎやかで楽しくなくもないが、このイベントの意味を正しく理解している若者も少ないだろう。
「ハッピー・ハロウィ~ン」と声を掛け合って自慢の仮装装束を見せ合う若者の多くは毎年10月31日は「コスプレの祭典の日」と思っている人も多いのではないだろうか?「この日だけはコスプレで街を歩いても許される」みたいな…エイプリルフールじゃありませんよ~。
少なくとも私が学生の頃にはこんなトレンドは日本には全く存在しなかったし、「Trick or treat!」の意味を知る者もいなかった。

ご存知の通り、これは古代ケルトに端を発する秋の収穫や悪霊を祓うアメリカのお祭りで、海外では仮装するのは基本的には子供の仕事だ。
それがここ最近、ものすごい勢いで盛り上がるようになったのは、まさしくかつて「万聖節」と呼ばれていたこの異教徒の祭典が、大きなビジネスの対象になると認知されたからであろう。
そして、あの渋谷での乱痴気騒ぎ。昔の若者はあんなことはしなかった。
犬神サアカス團の「VIVAアメリカ」という曲に「♪あなたもアメリカ病、わたしもアメリカ病」という一節が出てくるが、ハロウィンの顛末を見ているとこの曲を思い出すのだ。

我々は、ハロウィンでワケもわからず仮装して大騒ぎするよりも、4月8日が何の日かを先に知るべきだと思うけどね。

一方、日本人に完全に溶け込んだ西洋のお祭りといえばなんといってもクリスマス。
こちらはビッグ・ビジネスの温床としてもはや避けては通れないイベントのひとつになって久しい。

そのビジネスの一環としてクリスマス・ソングがある。
ビング・クロスビーの美声で「ホワイト・クリスマス」を聴きながら、七面鳥を頂き、プレゼントにワクワクする。これがアメリカ人のステレオタイプのクリスマスの過ごし方。
もちろん、BGMはビング・クロスビーでなくてもいいワケで、クリスマス・ソングを集めたアルバムがなんとたくさんあることよ!
クラシック、ジャズ、ロック、カントリー…ジャンルを超越してこれほど素材に供される音楽は、クリスマスとビートルズを除いて他にないだろう。

まさか灼熱のビーチで「そりすべり」を聴く人もいなければ、桜の時期に街で「ホワイト・クリスマス」を耳にすることはまずあるまい。
つまり、このクリスマス・ソング・アルバムが商売になるのは一年に一度きり、クリスマスの前だけなのだ。
にもかかわらずこれほど多くの種類のアルバムが世に存在するのはよほそクリスマスが大きなビジネスになっているということなのだろう。

Bing 私はヘソ曲りで誰もがやることはよしとしないので、どちらかというと「アンチ・クリスマス」派だ。
したがって、クリスマス・アルバムといえば上の『White Christmas』ぐらいしか持っていない。

イヤ、持っていなかった。

それが、今では2枚に増えたのだ。
新しく我が家にやってきたクリスマス・アルバムの送り主はなんとKelly SIMONZだった。
以前よりKellyさんがクリスマス・アイテムの制作に取り組んでいたのはもちろん知っていたが。いよいよ出来上がり、発売直前となった。

それにしてもクリスマス・ソングを料理するのは難しいと思うね。
先に書いた通り、すでにあらゆるジャンルの音楽でアレンジされているし、元の曲が宗教歌だけに、何の毒もないアヴァイラブル・ノートだけの音列であることに加え、誰もが知っているおなじみのメロディが多いので自分エッセンスを織り込むことが困難なハズだ。

ただし、やはり曲はどれも素晴らしい。トラディッショナル・ソングは当然だが、Mel Tormeの「The Christmas Song」なんてのは名曲中の名曲だよね。もっとも私がこの曲を好きなのはクリスマス臭さが希薄だからなのかもしれないが…。

Xcd Kellyさんのクリスマス・アルバム…どうやってスタンダード中のスタンダードを料理したのか…楽しみだ。
コレがKelly SIMONZのクリスマス・アルバム『Holy Winter』。
実は、私は勘違いをしていて、クリスマスのコンピレーション・アルバムに1曲とか2曲で参加している…そんな企画かと思っていた。それにしてはずいぶん長いこと根を詰めて取り組んでるな~と不思議に感じていたところ、出てきたのがフル・アルバム。
コンピレーションどころか収録された全15曲、すべてKellyさんのパフォーマンスじゃないの!
なるほどコレは大変だった!

ホッコリしたジャケットのイラスト。
冬は好きだ~。このジャケット、真夏には一種の清涼剤になるかもしれないよ。

10cdいかにもKellyさんらしい壮大にオーケストレーションを施した「Joy to the World」で幕を開けるこのアルバムは、おなじみのクリスマス・ソングと2つのKellyさんのオリジナル曲で構成されている。

20まるで1曲目の第二楽章のようにするどく切り込んでくるアップテンポのパワー・コードの刻み。
そしてオクターブで奏でる「White Christmas」の美しい旋律。
こうした手法は誰しも知っているメロディをロックにする時の常套手段だが、ヘタをするとパンクになってしまう。イヤ、逆か?パンク・ロックがそうしたスタンダード曲を演っているのか?
いずれにしても、めくるめくテクニックで「白いクリスマス」を「銀(メタル)のクリスマス」にうまく塗り替えた。楽しそうに弾いているKellyさんの姿が目に浮かぶな…。

30v続く「Ave Maria」にはナイロンによるVerseがつけられていると思ったら、この「Ave Maria」は17世紀のイタリアのカッチーニの「Ave Maria」。知らなかったッチーニ。いつもの「Ave Maria」ではない。
この曲、おっそろしくJerome Kernの名曲「All the Things You Are」に似てるな~。というか一部コード進行が同じだわ…ということは~?
かの大作曲家Jerome Kernがパクったのかと思ったら、なんと、この「Ave Maria」は1970年代にロシアのウラジミール・ヴィヴァロフという人がカッチーニの名前をかたって世に出したらしい。
要するに逆佐村河内状態。そして、「All the Things You Are」は1940 年代の曲なので、Jerome Kernの方が先ということ。もっともこのロシアの人が「All the Things You Are」を真似たかどうかは知らないが、ジャズを知っている人なら、この曲を聴いたら絶対にギョっとするハズ。
あ、いかんいかん脱線しちまった。
Kellyさんのアコースティックはエレキの時の正反対で、ナイロンを弾いても、スティールを弾いてもとてもやさしい響きがする。

40大きな聴きどころのひとつはアルバート・ケ・リー。ワザワザTelecasterを用意して吹き込んだカントリー調の「Winter Wonderland」。
ダブル・ストップを使ったテーマと爽快なソロはDanny Gattonもビックリ?!

60
そして、2曲のKellyさんのオリジナル曲。「All In One Piece」はアコースティック・ソロによるあたたかくやさしい一編。
そして、「H-I-K-A-R-I」はKellyさんが内面のすべてをさらけ出しているかのような深遠な演奏。ほとんどただメロディをなぞるだけというストレートさが感動を誘う。
70
「When You Wish Upon a Star」、「Amazing Grace」等アルバムのコンセプト上どうしても静謐なテイストの曲が多いがどれもKellyさんのギター魂を詰め込んだ入魂のパフォーマンスが全15曲で展開している。
80
とはいえ、「We Three Kings of Orient Are」のようにダークなイメージでKelly節をしっかり聞かせてくれたりもする。
とにもかくにもノリにノっているKellyさんの今とアイデアと普段とは違ったギター・テクニックがテンコ盛りになった力作だ。
あとひと月とチョット、へヴィ・ローテーションで12月24日と25日は「Guitar Christmas」とキメ込んで欲しい。

50v2014年4月5日に開催された東京キネマ倶楽部でのコンサート『BLIND FAITH The Brave New Wolrd Order 2014』 を収録したDVDも好評発売中だ。

Dvd

『Holy Winter』は2014年11月5日の発売。

Kelly SIMONZの詳しい情報はコチラ⇒Kelly SIMONZ Official Website

10cd_2

※本稿に掲載されているの写真はすべて9月28日に開催された『Guitar☆Man#19』で撮影したものです。
Kellyさん出演の『Guitar☆Man#19』のレポートも近日中に登場します。乞うご期待!