Sound Experience 12
今年4月にリリースされたセカンド・アルバム『Orchestral Supreme』を発表した三宅庸介。流行やスタイルのとらわれないワン・アンド・オンリーな世界とギターという楽器の魅力を十二分に伝える内容で評価は上々のようだ。
その三宅庸介が毎回ゲストを迎え、シリーズで展開しているコンサートが『Sound Experience』。
Marshall Blogではレギュラーでレポートをお送りしているが、今回で12回目となった。
今回のゲストはSTAND。もうマーブロ読者にはおなじみだろう。
歌にベースに、回を追うごとに自分の世界を拡大していく征史さん。
弾いている人もスタイルも機材も同じなのにCONCERTO MOONの時とはまったく違う表情を見せるノンちゃんのギター。スンゲェ~いい音!
胸のすくようなドラミング!そのサウンドの表情は豊か極まりない。
ハードなロックンロールから深遠なバラードまで、幅広いレパートリー。
この日はギタリストがお互いにゲスト演奏するという形でふたつのバンドが交流することとなった。もちろん「ふたりのギタリスト」とは、STANDの島紀史と…
曲は、三宅さんが征史さんや金光さんとずいぶん昔に組んでいたHypeというバンドのレパートリー。
征史さんのオリジナル曲だ。
三宅さんはもう丸っきり忘れていた上に、アレンジが以前とまったく異なっていたというが、始まってしまえば「立て板に水」状態の怒涛の演奏!
気が合うのだろう…見ていているだけでふたりの演奏のコンビネーションがシックリ来ているのがよくわかる。
楽屋でも放っておけば飽きもせずズ~っとギターとRitchie Blackmoreの話ししてるわ。
こっちは征史さんと時折落語の話しをしたり、金光さんにドラムのことを教えてもらったり…。
ホーム感満点で楽しいの。
山本征史の詳しい情報はコチラ⇒BLACK CAT BONE
後半は三宅庸介率いるStrange, Beautiful & Loud。
今日の三宅さんのMarshallはJVM210Hだ。
VintageModernなき後、セカンド・チョイスでJVMを使用してくれている。
それに加え。何回か前のここでの大谷令文さんのJVMを使ったプレイに接してまたJVMの魅力を見出してた。
結果、三宅さんはJVMを「新しい友達」と呼んでくれている。もちろんサウンドはく最上…友達だからね!JVMも一生懸命働きます。
左は三宅さん使用のJVM210Hと1960B。向かって右は征史さんのSUPER BASSだ。
当意即妙とはこういうことを言うのであろう。フロントとリズム隊、どちらが引っ張るでも、ついて行くでもなく、自然発生的に音楽がクリエイトされていく。ここを味わうのがこのバンドの正しい楽しみ方のひとつ。
ニュー・アルバムに収録されている「murt 'n akush(マラケシュ)」。好きな曲。
脱線タ~イム!三宅さん、チョットいい?だって思い出しちゃったんだもん…。
それは「マラケシュ」について。
「murt 'n akush」というのはベルベル語で「神の国」を意味するらしいが、モロッコの第三の都市だ。
ヒッチコックに『知りすぎた男(The Man Who Knew Too Much)』という1956年の作品があった。この作品は『裏窓』と『ハリーの災難』とならんで長い間日本で公開されず、何十年ぶりだかのリバイバル上映ということで大学生の時に映画館に観にいった。
これは1934年の『暗殺者の森(原題同じ)』という作品のセルフ・リメイクで、「Ambrose Chappell(アンブローズ・チャペル)」という謎のキーワードを軸に、見知らぬ土地で息子が誘拐されて要人暗殺事件に関わってしまうというヒッチコック得意の「巻き込まれ型」サスペンスの秀作だった。
映画は実に面白かったのに、長い間人目に触れなかったせいか、結果的にはアカデミー賞を受賞した主題歌ばかりが名を残すことになってしまった。
で、この映画の舞台がカサブランカからマラケシュへの移動中という設定なのだ。
私はコレが好きで、後にビデオを入手して何回か観ているうちにあることに気が付いた。
映画の中で主演のジェイムス・スチュアートがでレストランかなんかでヨソの人と話している。
「最近の音楽はいかがですかね?」
「イヤ~、なんですかアレは?『ビ・バップ』っていうんですか?アレはイケませんね~、やかましくて…」
字幕には出てこないが「ビ・バップ」という言葉が出てくる。やっぱりBenny GoodmanあたりのSwingに慣れた当時の人の耳にはParkerやGillespieの音楽がうるさく聴こえたんだろうね。
ますますBe Bopが好きになるわ。
でも!この会話はおかしい。この映画の公開は1956年。舞台がリアルタイムということであれば、ジャズ界はハード・バップ真っ盛り。この当時ビ・バップはすでに過去の音楽になっていたハズなのだ。
邪推するに、一般の人にはビ・バップもハード・バップも関係なくて、40年代の古き良きスウィング・ジャズを愛聴していた世代には、50年代のジャズが猛烈にやかましく聴こえたということなのかもしれない。ロックと何ら変わらないね。
ところでこの映画でアカデミー主題歌賞を獲った曲とはDoris Dayが歌う「ケ・セラ・セラ」である。ああ、コレ書いてたらまた観たくなってきた!
脱線終りました!
さて、SBL。
「Petal」、「Ring」と続いて本編を終了した。
さっきとまったくメンバーは同じなのに、丸っきり違うバンドが演奏しているようだ。
「曲が違うのだから当たり前」なんてことは言いなさんな。「空気」が違うのである。
音楽は「空気」を作ることができるのだ。
60~70年代のロックの「黄金期」たる所以の大部分はこの「ロックの空気感」なのだと思う。この空気感の伝承に失敗したことが日本のロックの悲劇といえるのではなかろうか…。
もちろんこのふたりにはその「空気感」がイヤというほど漂っている。
何しろ、放っておけば一日中でもギターやRitchie BlackmoreやJimi Hendrixの話しをしている連中なのだから!
曲は「Virtue」。
前回の田川ヒロアキとの共演による「Bloom」もあきれるほどカッコよかったけど、今回もあまりにも素晴らしい!
「ギターが2本あるとミラクルが起こる」と言ったのはMcLaughlinだったかCoryellだったか…。これはアコギのことを言っているのだが、エレキも同じ。
三宅さんの曲はマルチ・ギターが実にシックリはまるのだ。
そして、ソロの応酬!その緊迫感たるや何をかいわんやだ。
しかし、この日のコンサート、2バンド、出演者4人。ま、コレは以前にもあったけど、ギターまで!だって指板は異なれど、黒のストラトしか出てこなかった、立派!
三宅庸介の詳しい情報はコチラ⇒Strange, Beautiful & Loud