Chris Duarte Live in Japan 2013 <東京編>
「森林浴」ってあるじゃない?
アレと同じだと思った。思う存分いい音楽を浴びるのが「音楽浴」。
今年もやって来たChris Duarteのジャパン・ツアー。その東京公演。まさに「音楽浴」のようなパフォーマンスだった。
Chrisは昨年の夏に東京で収録されたライブ・アルバム『CHRIS DUARTE GROUP LIVE』を8月にリリース。その国内盤が、今日レポートするコンサートの前日の11月13日に発売された。
今回の来日はレコ発ツアーとなるワケ。
このライブ・アルバムについては、すでにMarshall Blogで紹介している。アルバム・ジャケットに使われているのはすべて私が撮った写真であることも記事内に記した。いまだにとてもうれしい。
今回のメンバー。
Chrisの足元のようす。コンパクト・エフェクターをズラズラと並べた懐かしい光景。昔はみんなこうだった。
今回は全ツアーを通じEDENを使用。ヘッドはWT-800、キャビネットはD410XSTだ。
Johnは全公演でNATALのメイプルのトラディショナル・カスタムを使用。
トラディショナル・カスタムは12"Tom、14"Floor、16"Floor、22"Bass、14"x5.5"Snareという構成(configuration)だ。色はGloss Black。
冒頭に述べたように「音楽を聴いた~」感にあふれる素晴らしい演奏だった。そうなることはわかっていても、十分に素晴い内容だった。
この日のセット・リスト。
「きゅけい」とか「ざんきょう」とひらがなが混ざっている、断っておくが、オガンちゃんが書いたものではない。
Chrisの直筆セット・リストなのよ。
もちろん「きゅけい」は「休憩」。「ざんきょう」は「残業」のこと、つまり「アンコール」を意味している。
こうしてちゃんとセット・リストは用意されるのだが、Chrisの気分で急に曲順が変わってしまうこともあるそうだ。
東京公演のオープナーは『Vantage Point』収録の「Let's Have a Party」。
『Texas Sugar/Strat Magik』から「Letter to my Girlfriend」。
そして、2010年の『Infinite Energy』の1曲目、「Ridin'」へつながる。
ジミの「Rock Me Baby」を想起させるこれまたエキサイティングなナンバー。転調、キメ、リズム・チェンジと内容は格段にハイパー。
チョッ~ト、なにこのドラム?! メチャかっこいい!
最新スタジオ・アルバム『My Soul Alone』から「Yes, It's You」。
ちょっとポップな8ビート・ナンバー。
こうした愛らしい曲もChrisの魅力のひとつ。
同じアルバムのオープナー、「Show me That You Want it」。ベッタベタのシャッフルはオガンちゃんの腕の見せ所!
重いマイナー・ブルース「Bottle Blues」。
軽快な「Sweet Little Girl」。
これも新しいスタジオ・アルバム「My Soul Alone」の収録曲だ。
それにしても強力なこのリズム隊!
8ビート、シャッフル…一丸となってうねりまくるリズムの饗宴だ。
最高のリズムにのって得意のブルース・フレーズから奇抜なフレーズまで何かに憑依されたかのように縦横無尽に弾きまくるChrisのみずみずしさといったらない!
一部の最後は「101」。
「きゅけい」を挟んで飛び出したのは「The Best That I can Do」。
このバンド、オガンちゃんのコーラスも大活躍なのだ。それにしてもゴキゲンなナンバー!
今度はストレートなブルース「I Buckled it up」。
さらにニューアルバムのタイトル・チューンともいうべきドへヴィな「Leave my Soul Alone」。
来日公演のチラシで初めてJohnを見た時、まるでNeville Brothersにいそうな強面で思わず「コワッ!」とつぶやいてしまった。
ところが会ってみると、Marshall Tucker Bandの話しで盛り上がったりして実にやさしくて素敵な人だった。とにかくデカイ!
しかしさ、黒船の時代、初めて白人を見た日本人はさぞかし驚いただろうし、コワかっただろうな~…なんてことを思ってしまった!
そのJohnがNATALを大層気に入ってくれた。「7歳からドラムをやってきたけど、今までで最もいいドラムだよ!」なんて言ってくれるんだゼ!
お世辞かと思うでしょ?でもね、マジで叩くその姿は本気だと思った。
Chrisはある曲でコルトレーンの『Village Vanguard』の「Chasin' the Trane」みたいなことをするんだけど、ChrisのギターをギンギンにあおるサマはElvinというより、白いDennis Chambersだったな。
John恐るべしなんだけど、NATALもかなり恐るべしだゼ。ますます気に入った!
2011年のアルバム、『Blues in the Afterburner』からワルツのバラード「Hold Back the Tears」。ん~、いい曲!
やっぱりすごいオガンちゃんのベース。動くんだよね~、バンドが…グイッと!バンドが動くのが目に見えるようなのですよ。これが世界のレベルなのか…と今回も感動。
今回はJohnというルックスが同系統のメンバーを得たオガンちゃん。旅先では、スレ違う人が小声で「オイ、あれどこの団体だ?」と話しているのが聴こえて来たことが何回かあったそう。
「団体」とはバンドではなくて、当然「プロレス」のことである。
イヤイヤ、この体型が音に出るんですよ!楽器と同じ。Johnとオガンちゃんのコンビを見かけたら誰しもそう思うわな~。Chrisはレフェリーか?プロモーターか?
「Make me Feel so Right」、「Carelessness(この曲のスタジオ・バージョンはヴァイオリンが入っていてCurved Airみたいで滅法カッコいいよ~)」、「Outta my Way」他が演奏された。
最新作の『Live』のレコ発でもあったが、演奏された曲は『My Soul Alone』からのモノが多く、そのレコ発も兼ねたステージとなった。
本編最後は「Like Eric」。
これがさっき触れた「Chasin' the Trane」みたいなヤツ。もちろん曲調は全然違うが、Chrisの頭の中はコレに違いない。
「Eric」というのは「Eric Johnson」のことでしょう?
演奏スタイルはロック・ビートに乗っているが、精神は完全にジャズだ。
Chrisは前回コルトレーンの「Moment's Notice」を取り上げた。
ブルースとロックを混ぜて、イヤ、他の言い方をすれば、ジャズ・フレーズを一切使わずギターで「シーツ・オブ・サウンド」を実現し、断片的にコルトレーンの世界を作ろうとしているように私には見える。だからおもしろい。
「ざんきょう」では「Hideaway」他1曲を演奏。
Marshall Blogでも度々触れているように私はブルースが苦手…というか、長時間聴いているのがシンドいんだけど、Chrisはいいな~。もちろん演ってる曲が全部ブルースというワケではないからね。
「ブルース・ギタリスト」という看板は掲げているけど、ジャズとロックを十分に吸収して、それを泡が立つまでよ~くブレンドして、それから「ブルース」という型枠に流し込んでオーブンで焼き上げた音楽…それがChrisの世界。
「あ~、いい音楽を聴いたな~」、「ホント、いい演奏を観たな~」…Chrisのコンサートの帰り道はいつもコレだ。
小笠原義弘の詳しい情報はコチラ⇒Dancin' Funky Bass!!!
John McKcNightの詳しい情報はコチラ⇒John McNight REVERBNATION(英語版)
Chris Duarteの詳しい情報はコチラ⇒Chris Duarte Official Web Site(英語版)