大谷一門会~ギターバカ一代<後編>
最近、六嶋由岐子という古美術商や美術関連の翻訳の仕事をしている方の『ロンドン骨董街の人びと(新潮文庫)』というエッセイを読んだ。
中古レコードに興味はあっても、私は別段骨董に興味はない。時折読んでいるイギリスやロンドン関連の本の中の一冊ということにすぎないのだが、おもしろいことが書いてあった。少し長いが引用させていただこう。
「もしも、よりよい生活をめざしてこつこつと働き、子育てのために生活基盤に執着する現実的な『利口者』だけがこの世に生を享けるのであれば、なるほど人類の生存にとっては合理的だったことだろう。」
とやっておいて…、
「しかし、創造主は、そんな人の世の青写真を描いてみて寒気がしたのである。ロマンや美学、冒険に無縁な生き物など退屈だし、それらが群れ集う光景となると想像しただけでおぞましい。もしかしたら人の世を彩るのは、生存不適正な連中ではないか。」
ひとことで言えば「マジメ」くんばかりじゃどうにもならんということね。そして、創造主はどうしたかというと…
「そう思いついた神様は、木の実の採集や皮むきがへたな者や、貨幣の勘定にジンマシンが出るような輩が、淘汰されないようにと知恵を絞った」
もうここまで来るとおわかりですな…
「(神様は)彼らを生かす方法を考え出し、手品師から売春婦、画家、俳優にいたるまでのありとあらゆる職種が」取りそろえたのだという。」
原著ではもう一歩突っ込んだ箇所で古美術商という職業が出現した理由を説いている。
これは原著に書かれていないことだが、『その代わりに神様は「生存不適正な連中」には「才能」という贈り物を授けた』んですな…。
私など「生存不適正」にして「才能なし」といういわゆる箸にも棒にもかからない者の代表のようだが、今日登場する3人は(生存不適正ということではまったくないが…)その才能を与えられた稀有な芸術家たちだ。
つまり、「ギターを弾くために生まれて来た」男たちなのだ。そして、Marshallにはそうした人間のために大きな存在意義を発揮する。
そこで今日も「大谷一門会」。その<後編>だ。 昨日は山本征史率いるSTAND…
三宅庸介率いるStrange Beautiful & Loudにご登場願った。
この日登場したMarshallたち。
左から、令文さんが使用したレンタルのDSL100と1982B(通称Hendrix Stack、もしくはBarneyのBキャビネット)。
向かって右は三宅さんのDSL100と1960BV。
こちらは上手。
向かって右はノンちゃんの1967MAJORが2台と1960B。
向かって左のヘッドは1977年製の1992 SUPER BASS。
モデルはどうあれ、やっぱり令文さんはMarshallがよく似合う。
ナニも知らない人がこの曲を聴いたら間違いなくイギリスのバンドのオリジナル曲だと思うだろうな。
「Lady Spider」にしても「Razor Boogie」にしてもそうだけど、令文さんの曲はそういうクォリティだ。
掛け合いを楽しむ2人!
こうなると三宅さんもダマってはいない。
2人とも取っておきのフレーズの応酬!ロックをトコトン知り尽くしている人たちのギター・ソロ合戦だ、スリリングでなかろうはずがない!
2番手は島紀史。
「大谷師匠の演奏を目の前で見てやられた」というノンちゃん。実は三宅さんも共通の経験をしている。2人とも令文さんのプレイでロック・ギターの虜になったのだ。
これから行う師匠との演奏を誇示するかのように客席をあおってからスタートした。
曲は島紀史のソロ・アルバム『From the Womb to the Tomb』に収録されている「Jackhammer」。
ま、説明は不要だと思うけど、ノンちゃんのソロ・アルバムの中で実際に共演した曲。
ライブ演奏はこれがはじめて!
CDでも令文さんが入って来るところなんざ鳥肌もんだけど、やっぱりナマはスゲエ。
レコーディングの時はノンちゃんのリクエストで令文さんはストラトキャスターを弾いたのだった。
今日はレスポールでドッカン。ノンちゃんも弾くわ弾くわ!
こっちのクラスも実に楽しそうだぞ!
曲は「なんでやねん?」という感じがしないでもないElectric Sunの「Electric Sun」。
歌うは令文さん。
でも令文さんって「Polar Night」とか演っちゃうかんね。これもまたよし。
「よし」どころか、すさまじい演奏!イントロからノケゾリだ!
このアルバムは出た時にすぐ買ったっけナァ。そして、この曲にはぶっ飛んだ。
それがこうして目の前でギンギンにホンモノの人間に弾かれちゃタマらんわ!
この手で令文さんにやられるの2回目だ。以前は「Black Rose」ね。しっかし、このアルバム今聴くとずいぶんジミヘンだな~。「Third Stone from the Sum」とチャイコフスキーがこんがらがっちゃったりして…。
でもメチャクチャカッコいい。いつもはホンワカしてるあのウリがイザとなるとこんなにカッコいいんだからね~。
そして近づくあの真ん中のキメ。
ドワ~「♪ティラリラリラリラ、ティラリラリラリラ」完璧!これは感動以外のナニモノでもないぞ!
よかった~、今日来て!
キマッタ~!
今度、この3人でこのアルバム全曲演ってくんないかしらん!
3人とも本当に楽しそうだ。
ギターを弾くこと、音楽をクリエイトすること、そして師匠と演奏すること…そのどれもを存分に謳歌しているのだ。
あ~、今日も本当に素晴らしい演奏だった。
「ギターに対するほとばしる愛情を見た」…なんて表現はこの3人に対してはあまりに陳腐だ。
「ギターバカ一代の姿を堪能した」…これでいいのだ。
いつまでもギターバカでいて欲しい。Marshallとともに!
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