Speak of the Devil ~ ビックリしたな~モウ!
ウェイン・ショーターの人気盤に「Speak No Evil」というのがあるでしょ?あれは「見ざる、聞かざる、言わざる」という意味。で、似たようなルックスの英語のことわざに「Speak of the Devil」がある。
これは日本で言うところの「ウワサをすれば影」という意味。今日はそんなお話し。
ところで、ロンドンの街を歩いていると色々なところで丸くて青い銘鈑を見かける。
こういうヤツね。
これらは「Blue Plaque(ブルー・プラーク)」と呼ばれ、ロンドン市内にある名所旧跡…というより主に著名人・文化人・政治家等の住居後を記すためのもの。「Plaque」というのは「飾り板」と訳されるようで、1960の左下やよくアニバーサリー・モデルや限定品にくっついてる金色のプレートを「プラーク」と呼んでいる。
実際、この言葉は「そこに住んでいた人物の記念額」とそのものズバリの意味もあるらしい。まさにロンドンのこれがそのまま単語の意味になっちゃったのかな?
私はこのロンドン市街地のブルー・プラークを探して歩くのがすごくおもしろくて、Charing Cross RoadのFoylesでこんな本まで買ってしまった。
ブルー・プラークの設置場所とその人のプロフィールが記してあるガイド・ブックだ。
この本を買ったのは、『ロック名所めぐり』のネタになりそうなロック・ミュージシャンの知られざるブルー・プラークのありかを知りたかったからに他ならない。
本にはプラークの登場人物の職業別索引がついていて、買うやいなや 「Composers, Conductors & Musician」をチェックした。ナンディ、全然ロック・ミュージシャン少ないでやんの。 それも前から知ってるヤツ…。
たとえば…。
ジミ・ヘンドリックスが住んでいたフラット。ジミはチャス・チャンドラーとつるんでこの他にもいくつかのロンドン市内のフラットに住んでいた。今度ロンドンに行く機会があった時にそれらを徹底的に調べてみようかと思っている。「名所めぐり」でジックリとジミ・ヘンドリックス特集を編んでみようかと思っているんですわ。
「キース・ムーンがここで演奏しました」。Marquee後についているプラーク。Marqueeも「名所めぐり」でジックリやります。
ジョン・レノン。これしか書いてない。どこについているかはこれまた「名所めぐり」で触れます。
ね、気がつきましたか?この偉大なる3人の「アーティスト」…どこにも「Artist」って書いてないでしょう?いかに日本語の「アーティスト」という言葉が誤用されているのかがわかる。
さて、このブルー・プラーク、一番最初につけられたのは19世紀のことだったらしい。ところが、おそらく放ったらかしにしておいたらみんなジャンジャン似たようなものを勝手に作っちゃったんじゃないかね?1986年にはEnglish Heritageというイギリス政府関連の団体これの管理を始めたが、現在は経済的な理由で活動が止まっている。ナンダ、案外だらしねーな。
ということでプラークにも色々なタイプが見受けられる。これがまたおもしろい。
これなんかはかなり古そう。17世紀の詩人・小説家、ジョン・ドライデン。
この写真ではわかりにくいが、これなんか壁に埋まっちゃってる。絶対ハズさない!という意思表示かね?Robert Walpoleはイギリスの最初の総理大臣。メッチャ偉い人みたい。
これなんか勝手に公式なブルー・プラークに似せて作っちゃったクチじゃないの?St. Martin's Theatreについているもの。アガサ・クリスティの「世界で一番ロングランの劇『The Mousetrap(邦題:ねずみとり)』の50周年記念イベントが2002年11月にここで開催された」というプラーク。1954年の初演以来、20,000回を軽く超える上演回数に上っている。
2枚抜き!
ここで出た「Artist」。このマーカス・ストーンというのは画家ですな。「Artist」という言葉は主に美術に使われるようだ。AKB48は画家ではない。
こんなタイプもある。ジュリアス・ベネディクトはドイツの作曲家。知らねー。
こうして海外の著名人のプラークもジャンジャン出てくる。もっともジミも外国人だもんね。
これはケネディが住んでいたアパート。
その隣にはアメリカ5大財閥の一角の祖、ジョン・ピアポント・モーガンが住んでいた。
モーガンは美術品コレクターとしても有名で、マンハッタンに行くとこの人の自宅を図書館&美術館にした「J. P. Morgan Libraly & Art Museum」という美術館がある。これおススメです。本のコレクションに圧倒されること間違いない。
街を歩いているとブルーに限らず、もう色んなのが出てくるよ。
これは以前Shige Blogで紹介した「類人猿作戦」に関するプラーク。
建物自体にはバンバンつけられる。これはChalk Farmにある操車場を改装した有名なライブハウスというか劇場Roundhouse。 これもそのうち「名所めぐり」で紹介します。
茶色いのもある。『The War of the Worlds(宇宙戦争)』で有名なH.G Wellsのプラーク。
さらに、プラークはロンドン市内にとどまらず、他の都市でも盛んに貼っつけられている。
これはニューキャッスルの「The Tyne Bridges」。これもいつか紹介したタイン川にかかる美しい橋たちのプラーク。
これもニューキャッスルにて。鳥類学者のThomas Bewick。
これはShige Blogの「イギリス紀行」に出てきたサウスシールズの旧市庁舎につけられたもの。
世界的な作家、Catherine Cooksonのプラーク。これもサウス・シールズで見つけた。
…と、イギリスではこのプラーク事業が盛んなワケ。ここまでが前置きです。思いっきりふくらました。
さて、ところ変わってここはロンドン西部のHanwellという街。
マーシャル・ファンにはすっかりおなじみの地名だろう。
すでに『イギリス-ロック名所めぐり』の第2回目でも紹介している。
Uxbridge Roadは街の目抜き通りだ。
その通りの76番地にあるのがこの床屋さん。そう、1960年にジム・マーシャルがドラム・ショップを開店した場所。すなわちMarshall発祥の地だ。
で、現地に取材に赴いた私が思ったことをマー本『Marshall Chronicle(シンコーミュージック・エンタテイメント社刊)』の11ページのコラムにこう書き記した。
「ここがJTM45の故郷であり、マーシャル・アンプ発祥の地なのだ。いつの日かこれらの建物にプルー・プラーク(中略)が掛かれば嬉しいと思う。そのプラークにはこう表示されるはずだ。
ENGLISH HERITAGE
Dr. JIm Marshall OBE
1923-2012
Founder of Marshall Amplification opened his first shop and laboratory here in 1960」
いいですか?
驚いたことに、ナント!このプラークが実現しちゃったのだ!
これを実現させたのは「The Hanewell Hootie」というコミュニティで、地元のパブを会場にした自由参加のロック・フェスティバルがメインの活動。「この街に音楽を取り戻そう!なんてったってここはマーシャル発祥の地なのだから」的な思想を元にしている。
その活動の象徴として街の時計台にこのプラークが設置されたそうだ。
見て、このプラークの文句。ちょっと書き出してみると…
「Hanwell High Street
Jim Marshall OBE
1923 - 2012
Founder of Marshall Amplification sold his first guitaramp here in 1962
76 Urxbridge Road」
「初めてお店を出した年」か「初めてアンプを売った年」かどっちが重要なのかはわからないが、当たり前にしてもあまりにも似ているので驚いた。
『Marshall Chronicle』が出たのが2012年の12月10日。このプラークが除幕されたのが2013年4月6日。マー本の方がはるかに早い。明らかにマー本読んだな…。
…というのは冗談だが、考えていたことがスッポン!と実現しちゃったもんだからビックリしたわ。
そこで「ウワサをすれば影」と題してこのおめでたい話題をお届することにした。