真夏のJAZZ葉山2025~杉本篤彦バンド&いわし
今年も楽しみにしていた葉山に行って来た。
何しろウチの夏のお出かけは2014年以来ずっと葉山だけ。
海を目にするのも1年を通じてほぼこの時だけだ。
コロナで開催されなかった2020年と2021年を除き毎年『真夏のJAZZ葉山』のお手伝いをさせてもらってきた。
そして今回の往訪でとうとう10回目を迎えた。高速道路の渋滞がコワいので、いつも朝6時には東京の家を出るようにしているのだが、何もなければ(今まで何かあったことは一度もないのだが…)7時過ぎには葉山に到着してしまう。
まさか朝の7時から機材を入れることは出来ないので、しばらく時間をつぶす必要が出て来る。
そこで毎回寄っているのがココ。葉山の朝市。
もう何度もココで紹介しているが、どうも正式な名称を「葉山マーケット日曜朝市」というようだ。
10も回来ていて初めて知った。露店の数は10もあろうか?
小規模ながらの市なれど、毎年訪れているとココでしか販売していないモノに愛着が湧いて来て、いつの間にかそれが我が家の夏の風物詩になった。
ここ数年はナントいってもスイカ。
この朝市で買ったことはないのだが、聞くと三浦地方ではスイカの生産に力を注いでいて、レベルの高い商品を送り出しているのだそうだ。
それは誇張でも何でもなく、ま~、甘くてみずみずしくて文句のつけようがない。
私は生来スイカが大好きなのだ。
で、今回「黄金ナントカ」という銘柄のスイカを買ってみたのだが、切ってビックリ!
「黄金」というぐらいで、それは黄色いヤツだった。
充分おいしく頂いたが、私は赤い方がいいな~。それでも時間が余るので、いつの頃からか葉山エリアの名所旧跡を事前に調査しては訪ね歩くことにした。
それで一番収穫が大きかったのは何と言ってもこの高級料亭「日影茶屋」。
もちろん食事をしたりお茶を飲んだりするワケではござらんよ。
そんな経済的な余裕は全くありません。
ココで大正5年に起きたいわゆる「日影茶屋事件」に大きな興味を持ったのだ。この事件については「私の葉山」と「私の葉山2」の2本に2年がかりで書いたので詳しいことは省略するが、日影茶屋のおかげで大杉栄の「自叙伝」や甘粕正彦の伝記等の周辺の本を読み、伊藤野枝のつながりから平塚らいてうの「青鞜」まで手を広げて大正5年まであった事務所の跡まで訪れた。
やっぱりこういうものは読書をすることにって知識が知識を呼び寄せ、それらの知識の島の間に橋がかかることが何よりもオモシロい。
そしてそれはインターネットでは決して味わうことのできない大きな快感と言ってよいであろう。
当然本をたくさん買うようになるが、読書は「積ん読(つんどく)」で十分。
経済的に問題がなければ、チョットでも興味を持った本は片っ端から買うべし。
読んでみて期待していた内容でなかったり、書かれている文章がソリに合わなければサッサと止めて、そういう本が溜まったらブックオフに持って行けばいい。
ツマらない本に時間をかけるのはバカバカしい。さて、今回の葉山行きでは下の「蘆花記念公園」というところに行こうとしていた。
京王線の「芦花公園」じゃないですよ。 この「蘆花」は明治の作家で、思想家の「徳富蘇峰」の弟の「徳富蘆花」。
その蘆花を記念して造られた公園。
下はその代表作にして大ベストセラーになった『不如帰』。
今では「ほととぎす」と言われているけれど、蘆花は「ふじょき」としていたらしい。伊香保温泉から始まり、逗子が舞台の一部となっているこの作品を、蘆花はこの近くにあった「柳家」という貸し部屋で書いたのだそうだ。
それで文学碑がこの公園に設置されているというワケ。
他にも德川の第16代宗主「家達」の別邸などもあるというので行こうとしたが、「駐車場がない」という理由で断念したのが昨年のこと。 明けて今年、今回は海辺にある近隣の駐車場に車を停めて歩いて行く決心をして臨んだ。
ところが駐車場の案内板を見てビックリ仰天!
アータ、30分で1,200円だって!
銀座の真ん中か!?
海水浴のハイシーズンだから事情はわからなくはないけど…どう考えても高すぎる。
しかし、夜はまたずいぶんと安いな…昼間の1/24か!コレで蘆花記念公園には一生行かれないことがわかったところで、おなじみの「葉山福祉文化会館」へ行って…
第23回目の『真夏のJAZZ葉山』に臨んだ!
私は10回目。今年も司会は「晋藤はるみ」さん。
「いわしTシャツ」をお召しになってのご登場。 今回2番手で舞台に上がった「いわし」。
まずは3人でごあいさつ。
晋藤さんが「いわしのトーク・ショウ」と紹介していたが、ホント、このベテランのトリオ漫才のような板のつきようは生半可ではない。
これからこの3人がカッコいい音楽を奏でるなんて一体誰が想像できようぞ!演奏のコーナーが始まった。
ラテン・ビートに乗せたワルツ。新藤陽吾
和佐田達彦
井上尚彦
さっそく和佐田さんのスラップ・べースが炸裂!
2曲目はガラリとリズムが替わって楽し気なスカ・ビート。
曲は1曲目同様、進藤さん作の「Sersine Cloud」…「イワシ雲」ね。
進藤さんが奏でる愛らしいテーマ・メロディから…美しいソロへと展開した。
そして、「1(イ)」、「0(ワ)」、「4(シ)」…「あだルと~」!
観客を爆笑の渦に引き込みながらの新色のTシャツやCDの話題を交えたトーク。
井上さん作の7/8拍子の曲「Odd Time Story」。
ガツンとドラム・ソロがフィーチュアされた。
「1(イ)」、「0(ワ)」、「4(シ)」…「あだルと~」
ココでは「老い」をテーマに笑いを取っておいて…和佐田さん作のバラード「君ヲ想フ」。
「最近会っていない人を思い出しながら聴いて頂きたい」とこの曲を紹介した和佐田さん。
シンプルで素朴なメロディがまさにそういう雰囲気を醸し出していた。
出番の最後を飾ったのは昨年も演奏したドン・グロルニックのブルース「Nothing Personal」。
コレは本当にカッコいい曲だ。
それをいわしがカッコよく演奏して出番を締めくくった。
最後はもちろん「1(イ)」、「0(ワ)」、「4(シ)」…「あだルと~」。
あ~、楽しかった!ココは「葉山福祉文化会館」の入り口ホール。
出演者のグッズやパンなどの軽食を販売する屋台が並んでいる。コレが上演中に何度かやっていた「あだルと~!」の出典のサード・アルバム『あだルと』。
よく言ってタイポグラフィ、普通に見てジャケット・デザインが出来上がる前のサンプル…このジャケットはあまりにも強烈だ。
私もMarshall Blogでレコード・ジャケットについての文章をたくさん書いたけど、ココまでインパクトの強いジャケットは洋の東西を問わず存在しないではなかろうか?
あっパれ~!です。おなじみの「いわしTシャツ」。
お値段は3,000万円。
最近1億7,500万円でS席のチケットを買って外タレのコンサートに行った友人に聞いたのだが、会場で売っていたTシャツの値段が6,000万円だったって!
ヒエ~!
チケットもアリーナ席ではなく、1階の後ろの方だったらしい。
コレに足代を加えて、帰りにイッパイやろうものなら3億円コースだよ!
私が若い頃は外タレの武道館のコンサートは3,800万円とか、高くてもせいぜい4,500万円だった。
1970年代の後半の話ね。
チョットお小遣いを貯めれば高校生でも十分にコンサートを観にいけるいい時代だった。
Tシャツなんて一切売っていなかったし。
しかし、このTシャツのデザインは本当に秀逸だと思う…なんて思っていると。ロビーの壁をフト見て気が付いた。
アレ?
コレ…レリーフが「いわし」になってるじゃん!MCであれだけ宣伝していたからね…和佐田さん自らが屋台村に席を陣取ってTシャツの拡売業務に精を出されていた。
もちろん大繁盛!「いわし」に続いてステージに姿を現したのは「杉本篤彦バンドfeaturingそうる透」。
1曲目は2019年にリリースした25枚目のアルバム『CLUB DAZZ』から「Winter Sky」。
『真夏のJAZZ』にメローな「冬の空」!杉本篤彦
そうる透
MAKO-T
田中晋吾
正岡淳
今回初めての参加となる「小林憂旗」。
ソロで珍しく1曲目から過激に弦をかき鳴らした杉本さん。
それはコレのせいかしらん?
この日の杉本さんのMarshall。
ヘッドはこのステージで毎回使用している「JVM」。
今回は4チャンネルの「JVM410H」。
一方、スピーカー・キャビネットは趣向を変えていつもとは異なるモデルを配置してみた。
それは両端の1x12"キャビネットの「1912」。
念のためにいつも使っているキャビネット「1936」も用意したのだが、チラリと弾き比べをしたところ、杉本さんは即座に「1912」×2を選んだ。
コレが本当にいい音だったのよ!
しかも「コレはケーブルを使いましょう!」とご自分でワイアレスのシステムを取り払ってしまった。
それで音がますます良くなってしまった!JVMのクリーンチャンネルはどこまで行ってもクリーンなので安心して音量を上げることが出来る…のはいつものこと。
それを「1912」が分厚く、太く、それでいてコンパクトな音にして出してくれたのだ。
それと今更ながら感心してしまったのだが、音のヌケのよさが猛烈に良かった。
会場のどこにいても杉本さんのギターの音色をPAからではなく、スピーカー・キャビネットから出ている直接の音を味わうことができるイメージと言えばおわかり頂けるであろうか?気持ちよさそうに弦を弾くこの杉本さんの表情をご覧頂いた方が話が早いか?
要するに杉本さんの音楽にあまりにもピタリとマッチしているギターのサウンドなワケ。
歌声だけでなく、楽器も演奏する音楽にその音色がふさわしいかどうかは最重要課題のひとつですからね。
やっぱり仮面ライダーが軽自動車に乗っていたらおかしいでしょ?「皆さん、今年も『真夏のJAZZ葉山』へようこそいらっしゃいました。
暑い中、どうもありがとうございます。
今日の1曲目はリクエストがありまして…真冬のクリスマス・ソングでした。
この暑い季節にチョットいいんじゃないかと…」
なるほど…だからか。「さて、ボクが初めてCDを出してから30年が経ちました。
そして今回28枚目のアルバムを発表しました。
ステージにはレコーディングに参加してくれたメンバーもいます。
これから演奏する曲を最初に録音したのが1989年…ボクが20代だった頃に横浜で博覧会がありまして、JRのパビリオンの夜のテーマ曲の制作を依頼されて作りました」曲は今年発表したニュー・アルバムに収録されている「Night Talk」。
この曲の最初の録音はMCで触れていたように1995年に発表した杉本さんのファースト・アルバム『Club Apple』で、今回のニュー・アルバムでのレコ―ディングが3度目となったそうだ。
つまり杉本さんの思い入れがタップリと込められている曲ということだ。MAKO-Tさんのムード満点のピアノ・ソロ。
曲のタイトルを聞いてすぐにアタマに浮かんだのはハービー・ハンコックの「Tell me a Bed Time Story」…「夜のおしゃべり」だから。
透さんの色気のあるリズムがそんな雰囲気を作り出してくれた。反復フレーズを多用し、得意のオクターブもふんだんに取り込んだ説得力のある杉本さんのソロ。
ココでも弦を力強くかき鳴らしたのは今日のMarshallが出す音がよっぽど気持ちよかったから?
よくわかる~!コレが今年5月に発表した杉本さんの28枚目のアルバム『Regroth』。
まずはジャケットが目を惹く。
表のパネルがアメリカン・フットボール装束。裏パネルがギタリスト。
このユニフォームに身を包んだ杉本さんは18歳!
タイトルが「Rebrowth(再成長)」。
このアルバムは収録された8曲のウチ、6曲が上で触れたファースト・アルバム『Club Apple』のセルカバーなのだ。
「30年経ってこんなに成長しました!」という杉本さんの音楽の報告書?
それに新曲と既出曲のバージョン違いをひとつずつ収録した。
しかし、録音の方法は「成長」どころかデジタル・テクノロジー華やかなりし現在にあっては「後退」も著しい「つぎはぎ皆無の完全一発録り」。
やっぱり録音はそうでなきゃいけネェ。
聴いてみると、杉本ミュージック以外のナニモノでもありはしない。
どんなに成長してもの根本は全くブレていないということよ。
実は「幕末維新バンド」名義で29枚目のアルバムも今月20日の発売を待つばかり。
タイトルを見ると「佐賀の乱」にまで幅を広げた、例によっての佐幕倒幕の英雄が入り乱れてのフュージョン具合がアクロバチックだ。
この江藤新平にまつわる曲は佐賀県知事からの依頼だったそうだ。
次は「彰義隊」かな?それに「天狗党」、まだまだネタはたくさんある!
そして、30枚目…ナニを企画しているのかがとても楽しみだ。そのまま続けて杉本さんのア・カペラのソロ。
やさしく弦をつま弾いて奏でているのは…イーグルスの「Desperado」。
こういう無党派スタイルも杉本さんの魅力のひとつ。
ダイナミクスのコントロールが感動的!
クドいようだけど、ナニを演ってもホントにいい音だわ。そのまま曲は途切れることなく「Love, It's Love」へとメドレーした。
これまたいかにも杉本さんらしいホンワカ・ムードの愛らしいテーマ・メロディの1曲。
1回聴けば覚えちゃう。
歌詞を付ければその場で歌曲になってしまうようなわかりやすさ。バック陣も杉本さんの音楽を完全に咀嚼していて…
最良の伴奏を付けてくれる。
小林さんのソロ。
開演前、杉本さんは私に「デヴィッドT」の名前を挙げて小林さんのことを「ソウル・ギタリスト」という風に紹介してくれた。なるほど、そのハート・ウォーミングなプレイはまさに「ソウル・ギタリスト」!
1音1音に込めた気魄が伝わって来る。曲はホンワカでもソロの最後後半はハードにキメた杉本さん。
その熱気のこもったプレイに客席から歓声が沸き上がった!
時折ピックも使用していたが、基本は杉本さんおっしゃるところの「ツー・フィンガー・ストローク」。
初めて知ったのだが、この杉本さんのシグネチャー・モデルはセミアコースティックなんですってね。
今回この奏法とギターとMarshallの組み合わせが得も言われぬ最上のコンビネーションを発揮したと言えるのではなかろうか?今回はMCが超短め。
ココでバンドのメンバーを紹介して最後の曲に取り掛かった。最後に取り上げたのは『Regrowth』収録の「Hey, Don't You Cry」。
2つの音だけで構成した超シンプルなイントロ・メロディからテーマを経てソロへ。
MAKO-Tさんのソロが続いて…
小林さんがバトンを受け取る。
リズム隊もダマっちゃいない!
田中さんのシャープ極まりないスラップ・ベース。エキサイティングな正岡さんのパーカッション・プレイ!
そして透さんがフィーチュアされる!
いかにも透さんらしいシンバルとタムタムの全てを打ち鳴らすダイナミックなソロ!
再び杉本さんにソロのバトンが回って来ると…
スイング・ビートでのソロを経て…
最後は思いっきりストロング・スタイルでまとめてくれた。
充実のグループ・エクスプレッション。
もしかして、今までの「葉山」での杉本さんのステージで最も長い演奏だったのではなかろうか?「どうもありがとうございました!」
いつも通り、長年にわたり全くブレることのない「杉本ミュージック」をジックリと聴かせてくれた。
この分だと30枚目のアルバムが陽の目を見るのはそう遠いことではなさそうだ。演奏の後は晋藤さんのインタビュー。
『Regrowth』について、健康について、趣味の歴史について、色々な話が飛び出した。
杉本篤彦詳しい情報はコチラ⇒杉本篤彦公式ウェブサイトインタビューが終わるやいなやロビーの屋台村へ!
お買い上げ頂いたCDにサインをする杉本さん。もちろん『REGROWTH』がフィーチュアされて多くのお客さんが手に取っていた。
(一部敬称略 2025年8月3日 神奈川県葉山町福祉文化会館ホールにて撮影