Masha~Live at Home <後編>
Mashaくんのソロ・ライブ『Live at Home』の後半のレポート。
ショウの冒頭でMashaくんが伝えた通り、後半はゲストを迎えての展開となった。
最初のゲストは松浦和亦(以下「カズマ」くん)。
「じゃ、何はともあれ1曲一緒に弾いてみたいと思います。
カズマの高速クライング!」
「ムリ!高速はとても勝てないです!」
「イヤイヤ。ヨシ、負けないぞ!」
カズマくんを迎えての1曲目は、Mashaくんが昔作った「Violent Storms」に手を入れたその新しいバージョン。
自身のバンド「伝々夢史」や「Damian Hamada's Creatures」で大活躍中のカズマくん。
ステージ上手にセットされたカズマくんのMarshallはMashaくんとほぼお揃い。
プリ・アンプが「JMP-1」、パワーアンプがMashaくんの「9100」のアニキ分で100W+100Wステレオ仕様の「9200」。
9200のガラス・パネルに描かれているトンボのようなマークは「和亦」の「亦」という字をデフォルメしたモノ。
エ、トンボなワケないって?
イヤイヤ、トンボっていうのは前にしか飛ばない「勝虫」の異名を取るとても縁起の良いモノなんですよ。
もっとも後ろへ飛んで行く虫なんて見たことないけどね。
「亦」というのは漢文の授業で習った通り、字としては「やはり」とか「また」という意味。
有名なのは…「有朋自遠方来 不亦楽」かしらん?
「朋有り、遠方より来たる。また楽しからずや」という『論語』の中の孔子のご箴言。
「友達がたくさんいても、趣味が合うとか、同じ目標に向かってガンバっている人が近くにいるなんてことは珍しいものでしてね。
そういう同志に出会うことが出来たてラッキー!と思ったとしても、たいていは遠くに住んでいるもんだから滅多に会うことができやしない。
だからそういう気心の知れた友達が遠い所からワザワザ訪ねて来てくれて、久しぶりに近況を報告し合ったり、意見を交わしたりするのは大きな楽しみであると同時に人生そのものを豊かなものにするもんですよ」という意味。
そんな友達とギターの弾きっこをしているのはそれはそれは楽しかろうて!
JMP-1は今から10年以上前、「RoHS(ローズ)」というヨーロッパの法令が導入された時に生産終了となったが、パワーアンプ類は継続して製造されていた。
ところが、ラック式アンプの時代が通り過ぎて久しく、<前編>で説明した「9100/9200」の後継機種である「EL34シリーズ」も生産終了となってしまった。
このパワーアンプはすこぶる性能がよく、シビアなオーディオ・マニアも一目を置いていたぐらいだった。
「いつまでもあると思うな親とMarshall」…コレはギター弾きの間では誰もが知っている格言だけど(ウソこけ!)、「無いと欲がるヤツ」ってのはいるもので、カズマくんもその内のひとりだった。
そうなると中古で探すより他に手がない。
正直、私がディストリビューターでMarshallを担当していた時もパワーアンプなんてシロモノはバンバン売れるような商品ではないので、中古市場に出回っている数もそう多くなく難航が予想された。
そこで下のようなチラシを作ってカズマくんが登場する回のMarshall Blogに掲載したりもしたが、残念ながら反応はなかった。
そのウチ「見つかりました!」という連絡がカズマくんから入って一件落着。
上の写真の「亦」マーク入りの「9200」にはそんなビハインド・ストーリーがあったというワケ。
そんな苦労話があるのに折角の9200を使ってギターでケンカなんかしていやがる!
ウソウソ!コレでいいのだ!
剣先にチョットでも触れようものなら容赦なく音符の血が盛大に噴き出しそうなスリリングなシュレッド合戦!
それだけではなくて、2人で持ち寄った演奏技術でこの起伏に富んだ曲をひとつの「音楽」に昇華させようとしている感じがしたね。
「松浦カズマ、カズマ松浦、スゴイ!
やっぱ我々はバンドマンだわぁ。1人じゃアカンわ…アカンこともないけど。
メチャクチャうれしくなった!楽しい!
今日は来てくれてどうもありがとうございます。
カズマくんとは知り合ってもう10年ぐらい?
お互い昔やっていたバンドで埼玉のイベントで一緒になったことがあったね。
その頃からスタイルが変わらないね。全くブレない。
でも一緒のステージでギターを弾くっていうのは初めてだよね?」
「お招き頂いてどうもありがとうございます!
皆さま、どうもよろしくお願いします。
そう、気付けばもう10年…長いですね。
あの時はCRYING MACHINEとウチのTORNADO-GRENADEでしたね。
今日、初めてご一緒させて頂いて良くも悪くも緊張してます。
でも緊張しないで『今日はイケるわ!』って日はだいたいミスするんですよね。
気が抜けてるんでしょうね…でも今日はそんなことないですよ!」
「今日は2人でギター・コラボをするということで、新曲を作ってお互いの曲の中でギター・ソロを弾くことにしました…ギター・バトルですね。
ボクのは今演った曲に和亦くんのギター・ソロを入れてもらってCDにして今日販売しているんですが、カズマくんも2曲入りのCDを持って来ているんですよね?」
コレはMashaくんが持参したCD。
コレに今演った「Violent Storms」が収録されてカズマくんが弾いたソロを聴くことができる。
一方、コチラはカズマくんグッズ。
Mashaくんが今MCで触れたCDをはじめ、ステッカー、バッジと「亦」マークがズラ~リ!
「はい、2曲入りのCDを持ってきました。
そのウチの1曲でMashaさんにギター・ソロを弾いて頂いていますので、ゼヒMashaさんとボクのと両方よろしくお願いします!」
と、お互いのグッズを紹介して次の曲について触れた。
「普段、ボクは『伝々夢史(でんでんむし)』というバンドをやっているんですが、その曲を演奏したいと思います。
本来は歌があるんですが、今日はMashaさんと一緒に『ギター・インスト・バージョン』をお届けします。
曲の途中でバトルも出て来ますので熱く演らせて頂こうと思います!」
次に2人が演奏したのは、その伝々夢史のレパートリーから「十六夜(いざよい)」。
旧暦では新月が月の始めだった。「Lunar Calender」ってヤツね。
で、その新月から数えて15番目の夜に月は満月になる…要するに「十五夜」だ。
そして、その夜を境に月は欠け出していく。
その欠け出す最初の夜を「十六夜(いざよい)」と呼んだ。
「いざよい」という言葉には「ためらい」という意味があって、16番目の月は15番目の月より出て来るのがすこし遅いのだそうだ。
つまり姿を現すのをためらっているというワケ。
何てロマンチックなんだろう!
本当に日本語ってのは素晴らしい…大好き。
曲の「十六夜」が始まると、まず尺八の音色が場内に響き渡る。
それが止むと2人のアンサンブルが展開する。
歌のメロディをドラマティックにナゾるカズマくん。
ちなみに伝々夢史のシンガーは女性です。
当然この曲でもソロのパートでは丁々発止のバトルが展開した。
押したり引いたりなんてしちゃいられない!
お互いに一歩も引かず、ただただ押しまくるのみ。
ギター好きにはタマらないでしょう?
クライマックスは最後の2人のアンサンブルのパート。
ピッタリと息を合わせ、複雑かつ緻密なフレーズを完璧に弾き切った!
ちなみに、十六夜⇒十五夜と下がっていくと、「十四夜」には荒井由実の「14番目の月」があるよね。
コレは十六夜の反対で、欠けていく月よりもこれから満月になる14日目の月の方がいい…ぐらいのことを歌った曲。
その前は「十三夜」。
コレは旧暦の9月13日の夜のことを指す。
「十五夜」、すなわち8月15日に次いで月が美しい夜なのだそうだ。
そこで十三夜にはススキを飾って秋の豊穣に感謝したり、魔除けをしたりしながら月見をする。
風流だネェ。
でも、「十三夜」といえば樋口一葉でしょうナ。
乞われて身分の違う裕福な家に嫁入りした娘が、嫁ぎ先でイビられてイビられて、それに耐えきれず十三夜の晩に幼子を置いて実家へ帰って来てしまう。
ところが、お父さんが心を鬼にして「嫁ぎ先へ帰れ」と愛娘に命ずる。
失意のうちにその娘が駿河台かどこかの嫁ぎ先の家へ帰るために人力車に乗ると、その車夫が昔好きだった男なワケ。
すると実はその男も昔娘のことが好きだったが、彼女が裕福な家に嫁いだためにガックシきて、人力車夫に身をやつしてしまっていた。
さぁ、どうなるこの2人…ってな話が「十三夜」。
樋口一葉のことを書き出すと比較的キリがなくなってしまうので気を付けなければいけないが、日本映画に巨大な足跡を残す映画監督、今井正が「にごりえ」、「大つごもり」、そしてこの「十三夜」という一葉の代表作を『にごりえ』というタイトルのもと、オムニバス形式で1953年に映画化している。
映画の中で「十三夜」の娘を演じたのが下の写真の「丹阿弥谷津子(たんあみやつこ)」。
『池中玄太80キロ』の坂口良子のお母さんを演じた上品な感じの人ね。
私はこの女優さんが結構好きで、この前年に上原謙とやった『東京のえくぼ』というコメディ作品がすごく気に入っている。
丹阿弥さんは大正13年、つまり関東大震災の翌年(1924年)のお生まれでジム・マーシャルのひとつ年下。
ご存命で今年101歳におなりになる。
一方、そのお相手の車夫を演じたのは芥川比呂志。
芥川龍之介の長男にして芥川也寸志のお兄さん。
淡島千景、久我美子、杉村春子等のとてもよい役者が出演していることもあって『にごりえ』に収められている3本はどれもヨカッタ。
でも原作の方が断然いい。
そして、やっぱり樋口一葉といえば『たけくらべ』だねェ。
美登利ちゃんと信如ね。
一葉が作品を発表していた頃はまだ文語で文章が書かれていた。
正確に言うと一葉の場合、セリフは口語体、その他は文語体という「雅俗折衷体」のスタイルを採っていて、何しろ文章の格調が高い。
それを声に出して読んでみると大変に気持ちがいいのだ。
読めばこんな私でも少しは利口になった気がしてくる。
この時代、二葉亭四迷なんてのが『浮雲』なる作品を引っ提げて出て来て「言文一致活動」が盛んになったため、一葉は「最後の文語による作家」と言われている。
一葉は不幸にして24歳で結核によって斃れたが、もし短命でなかったとしても口語で文章を書けなかったので作家としての命は長くなかったであろうと言われている。
そういう意味では、一番輝いていた時期に作家人生を全うしたシアワセな人と見る向きの同業者もある。
脱線終わり。
「素晴らしいネェ。演ってみてどうですか?」
「やっぱり普段歌があるものをギター・インストとして演奏するのは思ったより難しいんですね。
是非『伝々夢史』を調べてみてください」
「素晴らしい!伝々夢史はとてもいいバンドですよね。
今回一緒に演るということで、音を聴かせてもらったんですがすごく好きですよ。
カズマくんは素晴らしいプレイをすると思っていて、なんかこう…タイプは違うんだけど同じモノを求めているところがあるよね。
年齢は結構離れているんですけど、好きな音楽とか、音楽感とか、バンド感なんかもすごく似たところがある。
今まで一緒に演らなかったことが不思議なくらいですね」
「そういうこと言ってくれるからホントにMashaさんが好きです。
10年越しの夢が叶いました!
今日は持ってきているCDには次に演奏する曲が入っているんですが、その曲でMashaさんにソロを弾き倒して頂いています。
それを今から完全再現しようと…ウフフフフ」
この日、販売したCDに収録されたカズマくんのオリジナル曲「The Wind Blows」。
まずはア・カペラで徹底的に弾きまくる!
そしてオケが入って来ると、曲はひたすらストレートに突っ走るドライビング・チューンと化す。
カズマくんが主題を弾いて…
Mashaくんがバッキングに回る。
それにしても2人ともギターの音が素晴らしいぞ!
このグイグイと音が前に飛び出して来るのが真空管アンプの真骨頂。
音が太いからだってばよ!
またまたバトル!
ま、他にやることもないしな。
でも大歓迎!
得意のタッピングで攻めまくるカズマくん。
それをMashaくんならではフレーズで迎え撃つ!
もう2人が「ギター侍」どころか、「戦国ギター武将」に見えて来たぞ!
それは武田が上杉か…イエイエどの武将とは言いません。
勝敗が決まっちゃうからね。
「速いね…ソロが速い。
本当にすごいスピード感、疾走感がすごい。
ところでギターの話しをしてもいい?
速弾きってさ、速く音を置くことが速弾きのスリルとイコールしていないよね。
テンポでは測れないスピード感みたいなところに我々はグッとくるワケじゃん?」
わかる。それは弾くフレーズによるところでしょうな。
こんなアルバムがあるの知ってる?
ロイド・エリスというアメリカのジャズ・ギタリストが1958年にリリースした『The Fastest Guitar in the World(世界一速いギター)』。
どんなもんかと思って昔買って聴いてみたけど…遅い!
ま、ジャズのギターは特段速弾きに重きを置くような音楽ではないので一向に構わないんだけど、「タイトルに偽りあり」とは言えそうだ。
当時の人たちは果たしてコレが速弾きと信じていたのであろうか?という疑問が残る。
一方、ビリー・ロジャースという一時クルセイダーズに在籍して来日したこともあるジャズ・ギタリストの1993年の『The Guitar Artistry of Billy Rogers』というアルバム。
コレは速い!もう「ジャズ・ギターのイングヴェイ状態」。
ギターという楽器の構造はジャズに向いていないと言われているだけに、正統派のジャズ・フレーズを速く弾くのはなかなかにムズかしいが、この人は完全に「でもそんなのカンケーねぇ」で、複雑なバップ・フレーズを猛烈なスピードでラクラクと弾ききっちゃう。
渡辺香津美さんはこの人と一緒に演奏したことがあって、お会いした時に「あの人はスゴイ速弾きだった」と実際におっしゃっていた。
残念ながらビリーはクスリのやりすぎで37歳の若さでこの世を去ってしまった。
「MarshallのShigeさんが来ているからってワケじゃないんですけど、今日はアンプの話もさせてください。
今日我々が持参したマイ・アンプなんですが、皆さんは『Marshall』って知ってますよね?
コレはMarshallのラック・タイプのアンプです」
厳密に言うと音は違いますけど、カズマくんの使っているMarshallと兄弟のようなモデルで音は似ていると思います。
ボクの方は『50W+50W』で今日は50Wで弾いています。
けっこうモチっとした音が出てくるって言うか、ホンワカ感が出る。
カズマくんが使ってるのは『100W+100W』でとてもクリーンです」
「それぞれのアンプにしか出ない音がココにあるんですが、今は便利な世の中じゃないですか?
すごく本物ソックリに色々な音を出すことができる便利なアンプもある。
でも、この真空管のアンプにしか出せない音が絶対にあるんですよ。
弾いていると『コレじゃないとアカン!』って言うのがボクらにはあるんです。
我々はMarshallで育って来てサ…この重たいのを買った時のよろこび!
普通、こんなに重たいモノを買ったら『ああ、シンド!』ってなる…『なんでこんな重たいものを買ったんだろう?』って。
でも、重さより『うれしい!』の方が勝つんですよ。
コレね、この大きさで30㎏ぐらいあるの。
荷物なんて少なくて軽い方がラクにキマっているじゃないですか?
でも、たかだか自分の体重の半分ぐらいの重量のモノを重たいからって音を犠牲にして便利な方に逃げるのは違うと思うんですよ」
会場から「よく言った!」の掛け声が!…あ、それは私だわ。
「そう、ラックだけどラクではないんですよね(←コレが言いたかった)。
でも音へのこだわりは重さには負けません。
やっぱり捨てるべき憧れと捨てられない憧れってありますよね?」
それでは説明しよう。
コレがわかりやすいだろう。
最近、ウチはパックの削り節を使わないで毎回ワザワザ鰹節をガシガシと削っている。
子供の時、コレをやらされるのがイヤだったけどネェ。
ご存知の通り、鰹節というのは「この世で一番硬い食べ物」なので、刃はもちろんのこと、この削り器自体も堅牢に作られる必要がある。
さもないと鰹節の硬度に負けてしまうのだ。
ウチのは樫なんだけど、他にもウォルナットとか欅等の硬い木材を用いて頑丈に作ってあるだけあって「エ?コレってそんなにするの?」というぐらい結構思い切った決心が要るほどのお値段なのだ(我が家基準)。
でも買ってやってみた。
結論…そこにはパックの削り節とは全く違う世界が広がっていた。
格段においしい!
おいしいから毎回削るのが実に楽しい!
コレは天然の良質な「うまみ成分」だから何に使ってもバッチリよ。
Mashaくんが言っているのはまさにコレと同じ。
やっぱり横着をしないで手間ヒマをかければ良いモノが手に入るということよ。
真空管アンプは重いし、デカイいし、しかもメインテナンスに金と手間がかかる。
でも、良いモノは良くて、決して替えがきかない…と語ってくれたワケ。
そう、「ソックリ」というのは「違う」ということに他ならないのです。
Mashaくんとカズマくんは真空管アンプで、ウチは鰹節で同じ道を歩んでいるのだ。
「しかもマジでMarshallはカッコいいからね。
こんなに重たいけど、すごくいい音してて…自分の音の一部だしね。
しかしよくガンバって持ってきたね~。
キミも相当なMarshallバカだね」
「カッコいいですよね。
Marshallは見た目もホントにイケてます。
ボクはズッとMarshallでいこうとキメています」
カズマくんはマシャくん同様、いつでもどこでもMarshallを使ってくれている。
が!
一度そうではない、やむを得ない事情で「便利なヤツ」を使ったステージに居合わせたことが以前あった。
Marshallを使っていないことは一聴すれば瞭然だった。
その音はMarshallをチャンと使っていれば絶対に出て来ないような細~い音だったのだ。
カズマくんが「想像を絶する重さ」と表現していたのは下のパワー・アンプ。
恐らく単位容積当たりの重量は歴代のMarshall製品の中のチャンピオンでしょう。
Mashaくんは「9100」、カズマくんは「9200」。
この中にはゴッツいトランスが入っている。
トランスってのは鉄のカタマリだから重いにキマっている。
アンプを軽くするのはカンタン…そのトランスを取っ払っちゃえばいい。
その代わり音の劣化は推して知るべし。
私もこのデザインは本当にカッコいいと思っていて、同じく歴代Marshall製品の中にあっては「1959の次ぐらいにカッコいい」と言っても良いのではなかろうか?
「1962 Bluesbreaker」もいいな。
ただ、製品自体の重量に関しては恐らく下のアンプに軍配が上がると思う。
1981年に発売した「2000」というシリーズでギター用の「2000 Lead」、ベース用の「2001 Bass」というモデルがラインナップされていた。
中には目を疑うような巨大なトランスが2ケ入っていて、腰が弱い私なんかはもうそれを見ただけで逃げ出したくなる。
そんな重量を考慮してか、このモデルの上面には持ち運び用のハンドルが付けられていなかった。
取り付けたところで、重さに耐えかねて切れるか留め金がハズれてしまうからではなかろうか?
代りに側面に持ち手の凹みが付けられていた。
私が知る限りMarshallがアンプ・ヘッドにこんなものが付けたのはこのモデルだけだ。
「もうひとつ話してもいい?…皆さんが耳にしているギターの音って、極端な言い方をすると実はアンプの音なんですよ。
わかります?
ギターももちろん大事です。
自分が気持ちよくアンプに音を送ることができる楽器ですから、またそういうギターを選んでいるんです。
その良いギターの音をいいアンプで鳴らして初めていい音になるって感じです。
なんかうまく言えないんだよナァ。
ギターの音を最高にロックな音にしてくれているのはアンプなんですね」
ココでもう1回「よく言った!」と叫ぼうかと思ったけどヤメておいた。
ナゼ「よく言った」と叫びたかったのかと言うと、今のMashaくんの発言は昔しょっちゅうやっていた「Marshall Roadshow」というデモンストレーション・ショウで司会を担当していた私がよく言っていたセリフなのだ。
そう、アンプは音の出口だからとても重要なのです。
もちろんMashaくんが言うように音の入り口のギターも良質でなければ始まらないんだけどね。
「さてカズマくん、2人のギター・バトルも残すところ1曲となりました。
激しいヤツいきますか。
最後もハーモニーを奏でて、バトルをして、いい感じに終わりたいと思います。
カズマくん、よろしくね!」
カズマくんがゲストのコーナーの最後はMashaくんのペンによる「The Eyes of the Dawn」。
この曲が大好きなカズマくんからリクエスト。
ココでも2人のア・カペラのソロから。
Mashaくんが先行して弾き出すと…
カズマくんが気合の入った指運びでそれを追いかける。
まるで合唱をしているように2人でテーマを練り上げていく。
ガンガン転調していく曲も緊張感満点!
弾きも弾いたり壮絶なソロ・パート!
「カズマ!」
カズマくんも思う存分弾き切った!
そして再び分厚いアンサンブルで曲を締めくくった。
「ありがとうございます!チョー楽しい~!」
「まだゲストがいるんですけど、気付けばもう9時…大丈夫ですか、皆さん?
ではそのゲストをお呼びしたいと思います。
SilexボーカリストのChoくん、いらっしゃい!」
「こんばんは!
皆さま、あけましておめでとうございます。
ようやく出て来れました。
ご紹介に預かりましたChoです。よろしくお願いします。
すでに熱気でムンムンで、コレを着てきたことを後悔しています…後で脱ぎます。
お招き頂きましてありがとうございます。」
Choくんは約ひと月前にもMarshall Blogに出てもらったんだけど、その時のライブでも待ち時間がスゴく長くて楽屋でゲームをやって耐えていたとか…。
今日も相当待ちましたな~!
「ホント、今日はありがとう。
一緒に楽しんでいきたいと思います。
今日はChoくんの好きな曲とボクの好きな曲と、みんなの好きな曲もあるかも知れない。
それを演るかも知れないし、演らないかも知れない…という感じでやっていきたいと思います。
東京では10月にSilexのライブをココで演ったんです」
「そうですね。
その時は体調もあんまり優れていなくて…皆さんには大変残念な思いをさせてしまったかも知れない。
でも今日は大丈夫です!
その時の埋め合わせをするということで!」
Choくんを迎えての1曲目は「Still Alive」。
2人が好きだったという「Nocturnal Rites(ノクターナル・ライツ)」というスウェーデンのバンドの曲。
コレまた筋金入りのメタル・ナンバー。
Nocturnal Ritesなるバンドはサッパリ知らないけど、Choくんの声が大変に曲に合ってますな。
勉強熱心な私としては、Spotifyでオリジナルの音源を聴いてみた。
Mashaくんはオリジナルではキーボードが奏でているキメのフレーズをチャンとギターで弾いてソロに突入した。
元はシュレッディングにタッピングにとトリッキーなソロだ。
オイオイオイオイオイ、コレって…!
Mashaくんはこのギター・ソロを完璧にコピーしていたんだ!マジメだから。
ま、Mashaくんぐらいになればこれぐらいは朝飯前なんだろうけどスゲエな。
…なるほどネェ。
私はMasha&Choバージョンの方が好きかな?
「美しい…美しい声ですよね。
今日はChoくんの声をいっぱい聴いてもらおう。
すごく好きなんですよ。Choくんの声」
「ありがとうございます。イヤ~照れるナァ、ステージの上で…」
「そうね。そういう関係なんですよ。
お互いリスペクトし過ぎてチョットかしこまる場面が度々あります。
大人の距離感?意外と面と向かって言うと恥ずかしいね」
「ホントに照れてるじゃないですか。
日本を代表するギタリストにそう言ってもらうなんて畏れ多いです。
その分、照れもせずに言っちゃう。
ボクも内心照れているんです。
みんなもそう思いますよね?だからこそ来てくださってる。
そんな素晴らしい晩に呼んで頂いてこんなに目立っちゃっていいのかな?
あと2、3曲なんですけど、こうしてMashaさんと一緒に演らせて頂いて光栄かつ身に余る思いです。そんなMashaさんにステージ上で告白までされちゃって!」
「イエイエ。
次に演る曲はボクのリクエストでイングヴェイ・マルムスティーン。
ボクが『イングヴェイ・マルムスティーンを好きじゃない』って言ったら大ウソになる。
大好きな曲です。
イングヴェイのファン過ぎて、皆さんケムたがらないでくださいね。
今日その曲をChoくんと一緒に演奏するのをすごく楽しみにしておりました」
Mashaくんのリクエストは「Like an Angel」。
アラ、期せずしてまたスウェディッシュですな。
大好きな曲だけに楽しみながら作ったというピアノとストリングスのオケにメランコリックなギターを被せる。
Choくんが丁寧にメロディを歌い上げる。
それに呼応してMashaくんが指先にタップリと情感を込める。
Mashaくんはこういうタイプの曲も得意だからね。
私なんか何の前触れもなくポコっとコレを聴かされたら間違いなくコレはSilexの曲だと思っちゃうぞ。
そしてそれにまた応えるようにChoくんの大熱唱が後半で炸裂した。
「ありがとうございます!
チョット怪しかったでしょ?『コイツ、今歌おうとしただろう』みたいな…。
イングヴェイってギタリストからしたら普通なのかも知れないけど、歌の人からすると、オッまだ弾く?みたいなところがあるんですよ。
別にイヤな意味じゃなくてね」
ココでギタリストとシンガーでイングヴェイ談義。
「今から演る曲なんですが、実は違う曲をChoくんにリクエストして一緒に演ろうって言っていたんですが、急遽ボクのワガママでこの曲を演奏させてもらうことになったんです。
ナゼならこの曲を演らねばならないという夢をお正月に見たんです。
そういう啓示がありまして、どうしても演りたくなっちゃたんですね。
スミマセンね~、ワガママをを言って!」
「イエイエ、素敵なエピソードだと思います。
ご快諾!ワタクシメでよければ。
コイツちょっとミスってるなってところがあったら夢で急に言われたんだな?って思ってください」
でも、魂を込めて歌います」
次に演奏したのはCrying Machine時代の「Cry in the Starlight」。
ガツンと哀愁のメロディをMashaくんが奏でて…
Choくんが日本語で歌ってくれる。
この曲、Mashaくんが作詞をした唯一の曲なのだそうだ。
私もCrying Machineは何度か拝見したが、今こうして聴いてみると「Standing on the Grave of Yesterday」なんかの萌芽が見えて興味深いな。
リバーヴを効かせた奥行きのあるサウンドで縦横無尽に弾きまくった!
すごくなつかしいね、クラマシ。
曲の締めくくりは「A Whiter Shade of Pale」…要するに「青い影」。
この時から「G線上のアリア」を取り入れていたと言ってもよかろうぞ。
「なんとか歌えましたがどうでしたか?
人生で初めてこの曲を人前で歌いました…っていうか大声で歌ったの今日が初です。
風呂場で練習していました」
「どうもありがとう!サスガがやナァ~。
Choくん、Silexに入ってくれてありがとう!
紆余曲折ありましたがもう2年経った!
これからもガンバりましょう!
さて、最後はカズマくんも呼んで一緒に演りましょう!」
カズマくん登場。
「実はカズマさんと2018年くらいにステージ上で一緒になったことがあるんですよ」とChoくん。
「そうなんですよ。
当時ボクがやってたバンドでサポートでChoさんに歌ってもらったことがあるんですよ!
今日はそれ以来です」
3人が集まってショウの最後に披露したのは、前半に取り上げた「One Evening in Paradise」。
ルパートで2人ギターによるイントロを付けて曲に突入。
Choくんは自家薬籠中の曲だけに、もう遠慮なく声を出しまくる!
「カズマ!」
カズマくんが行った~!
「Masha!」
2人とも最後のソロを存分に弾き込んでお客さんから大きな歓声を浴びた。
そして感動&納得のエンディング!
「ありがとうございました!
『ソロ・ライブ』と言っておきながら3人の演奏がナニ気にハイライトでしたな。
カズマくん、Choくん、そして皆さん、今日は本当にありがとうございました!
カズマくん、最後にナニかある?」
「今日はお越し頂きましてどうもありがとうございました!
ゲストという立場ではございますが、これからもSilexとMashaさんをよろしくお願いします。
Choさん、Silexに入って頂いてありがとうございました!」
お母さんかッ?!
「皆さん、ありがとうございました!
前回の雪辱を果たせたのではないかと思っております。
Silexは新作を作っていますし、4月にライブもキマっています。
ガンバって活動していきたいと思いますのでよろしくお願いします!」
「皆さん、もう感謝しかありません、
ボクも楽しませて頂きましたが、次はバンドですね…もうキマっていますし。
そしてまたMashaソロ・ライブをやる時にはゼヒまたお越しください。
長丁場お疲れさまでした。
コレにてMashaソロ・ライブ終了です。
ありがとうございました!」
Silex同様アンコールはなし。
それでいいのだ。
ナルシソ・イエペスやジュリアン・ブリームじゃあるまいし、こうやってギターだけでコンサートを開くってのは大変なことだと思いますよ。
曲作りやギターの音質へのこだわりはもちろん、カバー曲の選択やアンコールをしない主義も含めて、Mashaくんは「ギタリスト」という枠を飛び出して、もはやひとりの「音楽家」になって来ていることを私はこの日認識したような気がしたね。
Mashaくんとカズマくんで開演前に「Marshallラック兄弟」の記念撮影をしてくれた。
ご愛用ありがとうございます!
Masha/Silexの詳しい情報はコチラ⇒Silex Website
<NEW!>松浦和亦の詳しい情報はコチラ⇒Kazuma Matsuura Official Site
最後に…この「ラック兄弟」は揃ってMarshallのビンテージ・リイシューのペダルのビデオに出演してもらっています。
コチラもゼヒご覧くださいまし!
<Mashaくん編>
Mashaくんが作ってくれた「Marshall GALA」のテーマ曲を「ひとり四重奏」しているシーンをお見逃しなく!
<カズマくん編>
伝々夢史の曲を取り上げています。
カズマくんの「ひとりギター・バトル」をお楽しみあれ!
<おしまい>
☆☆☆Marshall Music Store Japanからのお知らせ☆☆☆
今風のロック…なんだけど、やっぱりシッカリしたギター・リフがあったりして、日本のそれとは違うんだナァ。
やっぱり本場のロックは「ロック」なんだということをこういう作品で思い知ったりする。
5曲入り12インチ(30cm)シングル。CDなし。
<Control>
<Stigma>
<Heads or Tails>
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