真夏のJazz葉山 2024~杉本篤彦BAND featuring そうる透
さぁ、今年もやって来た葉山…我が家の唯一の「夏のお出かけ」。
例によって時の流れは早いモノで、ナンダカンダ言って2014年に『真夏のJAZZ葉山』に初めてお邪魔した時から丸10年が経ったわ。
まずは恒例、高速道路の渋滞を避けるために家を早く出るとどうしても間に合っちゃう葉山名物の朝市。8時前にもかかわらず今年も結構な人出だった。出ているお店は10年前に比べてずいぶん変わった。
でもこの後、もっと大きく変わったことに出くわしてガッカリしてしまった。
この葉山港が「日本ヨット発祥の地」であることはこれまでに幾度となく触れて来た。
一方、世界的ではオランダがヨットの発祥地とされているらしい。 そんなワケで周辺にはいくつか大学のヨット部の合宿所があって、「♪その名ぞ我らが母校」もこんな立派な施設を持っている。そのすぐ近くには「♪陸の王者」の合宿所。
「戸塚ヨットスクール」とは様子が異なり、ハタから見ていると結構皆さんいつも楽しそうにしていらっしゃる。
昨年、とある若いバンドの取材で町田のライブハウスを訪れた時、客席にいる数人の若い女性が来ているシャツの背中に慶応大学のヨット部のロゴが入っていることに気がついた。
「もしかして」と思い、「葉山の合宿所から来たの?」と尋ねると驚いたように「そうだ」と言う。
「コレはいいや」と葉山の話を振ると女の子たちのノリもよく、存外に盛り上がってしまった。
一番盛り上がったのは…合宿所の並びにある「あぶずり食堂」のこと。
ホント、ココはナニを食べてもとてもおいしくて、いつ行ってもお客さんでイッパイだった。 ところで「あぶずり」なんてヘンな名前でしょ?
以前にも説明したことがあるが、コレはこの辺りの地名で「鐙摺」と書く。
「鐙(あぶみ)」とは馬に乗った時に足を引っかけるための馬具のひとつ。
源頼朝が1177年に三浦を訪れた時にここいらの山道が狭く、鐙が岩に触れて摺れてしまったことからそう名付けられた。そのヨット部の彼女は「あぶずり食堂の刺身定食ってすごくおいしんですよ!」とスマホを引っ張り出してワザワザ写真まで見せてくれた。
下がそのヨット部の彼女が言っていた刺身定食。
私もコレをよく注文してそのおいしさを知っていたのでさらに会話に弾みがついた。
「来年の夏も行くと思うので、現地でバッタリ会っちゃったらオモシロイね!」なんて言ってお別れした。
ところが、もう彼女には永遠に会うことができなくなってしまった…と言うのは。今回行ってみたら、ナント!5月に廃業してしまったというのだ!
60年以上やっていたのか…。
ま、後継者問題だろうナァ。
後期のオバさん数人で切り盛りしていたからナァ。
残念で仕方ない。
まさか私が後を継いで厨房に入るわけにもいかないし。
コレで葉山のひとつの歴史が幕を閉じたって感じだわ。
しかし、この丸10年の間、コロナでイベントが開催されなかった時を除いてこの丸10年間、ずいぶんと葉山を堪能させて頂いた。
といってもヨットに乗ったワケでもなし、海に浸かったワケでもなし、はたまた御用邸にお呼ばれされたワケでもないんだけどね。
例えばこの大正天皇崩御の地跡の「葉山しおさい公園」。 草津温泉の父、「蒙古斑」の名付け親で、東大医学部で教鞭を執り日本の医学の発展に大きく貢献したエルヴィン・ベルツ先生の顕彰碑が立てられている「森戸神社」。
どうしても待ち時間が長いので、近隣を探索するのを常としていたワケね。
しかし、ナンと言ってもとてつもなく大きな収穫だったのは、朝市の会場のすぐそばにある「日影茶屋」だ。
世に言う1916年(大正5年)の「日影茶屋事件」ね。こちとら浅学極まりないものだから、コレで初めて大杉栄と伊藤野枝や辻潤のことを知り、瀬戸内寂聴の本を夢中になって読んだ。そこから甘粕正彦を経て内田吐夢らの「満州映画」のことを知り… 「元始、女性は太陽だった」の平塚らいてうが主宰した日本初の女性だけで作る文芸誌『青鞜』に興味を持ち下の写真にある同誌発祥の地を訪れた。
こうやってイモづる式に何かの知識を蓄えていくというのは大変に楽しいことでしてね。
葉山にはとても感謝をしている。
葉山くん、長い間どうもありがとう!
そういえば「葉山良二」という日活の俳優がいたね。
『乳房よ永遠なれ』とか『美徳のよろめき』とか『マダム』とか月丘夢路との共演作を何本か観たわ。
なんて書くと葉山にもう行かないようだけどそうではありません。
これからも楽しみにしております。
そうして今年も『真夏のJAZZ葉山』が開催された。会場はいつもの「葉山町福祉文化会館ホール」。レポートの最初は当日2番目に登場したおなじみの「いわし」。
ステージに現れて挨拶をした瞬間から客席は大爆笑。
「ご挨拶がわりに…」と1曲目に演奏したのはいわしのテーマ・ソング「Groovi'n Sardine」。
バラエティに富んだパートが次から次へと飛び出してくるゴキゲンな1曲。和佐田達彦
進藤陽吾井上尚彦3人のソロがタップリとフィーチュアされ、客席から大きな歓声が送られた。 1曲目に続いて2曲目も進藤さんの作品で「Oriental Flight」。
テーマからそのまま続く密度の濃いソロ!スネア・ドラムの音が小気味よい井上さんのドラムスに乗って… 和佐田さんのソロが続く。
前曲では壮絶なスラップの妙技を見せてくれたが、ココではツーフィンガーで起伏に富んだアド・リブ・フレーズを披露した。
和佐田さんを中心にトークが弾む。
考えてみると、これまでいつも和佐田さんはステージの後方に陣取っていたが、今回はフロントだわ。
コレの方が全然いいですよ。
トークがハズむってもんです。
ココではいわしのオリジナルTシャツの話。
デザインが大好評で、毎年新しい色のTシャツを作ってきたところ膨大な数の種類になってしまったという。
実際このデザインすごくいいもんね。今回はそのTシャツをガバチョと持ってきた…というワケ。演奏のコーナーの3曲目は「Odd Time Story」。
「odd」は「変わった」とか「半端な」という意味。
だから「奇数」は英語で「odd number」という。偶数は「even number」。
デヴィッド・ボウイの「スペース・オディティ」もコレ。
「oddity」というのは「ヘンな人」という意味ね。
昔、ジャック・レモンとウォルター・マッソーが主演した『おかしな二人』というコメディ映画があった。
脚本がニール・サイモン、音楽が昔ウディ・ハーマンのところでトランペットを吹き、後にカウント・ベイシー・オーケストラに数々の名曲を提供したニール・ヘフティ。
この映画の題名が「The Odd Couple」だった。
で、音楽の世界で「odd time」というのは「変拍子」という意味。
7/8拍子の井上さんの作品。
進藤さんが弾くモントゥーノをバックに… 井上さんのドラムスが暴れまくる!
ド迫力のドラム・ソロに客席から大きな拍手が沸き上がった!先日、和佐田さんが床屋へ行って「ブラッド・ピットにしてくれ」と注文したところジョージ・クルーニーになってしまったという話…ホントだ!ジョージ・クルーニーはジャズ歌手のローズマリー・クルーニーの甥っ子さんね。
ずっと「息子」だと勘違いして間違えて書いていたことがあったので、こうして機会があるごとに訂正させて頂いております。
さっきからいわしの演奏からラテンっぽいテイストがガンガン飛び出しておりますが、ラテンの大スターであるペレス・プラードとローズマリー・クルーニーが共演した『A Touch of TABASCO』というアルバムは名作です。
ラテンを滅多に聴かない私のラテンの愛聴盤。
ロージー(ローズマリー・クルーニー)のチョット鼻にかかった声がいいんですよ~。 それと和佐田さんの「ブラッド・ピットみたいにしてくれ」という床屋さんでのリクエストね。
上にチョコッと出て来た月丘夢路さん。
彼女は宝塚出身で、卒業後は大映、松竹、日活と移籍を繰り返した超大スター女優だった。
当時、美容整形外科へ来る女性は、もれなく月丘さんの写真を先生に差し出して「この目にしてください」とリクエストしたそうだ。
美女中の美女に近づこうとするなんて、あまりにも実現不可能な注文である。
でもね、終演後に和佐田さんから見せてもらったジョージ・クルーニー変身直後の写真は「あ、なるほど!」って感じでしたよ。 次はいつも演っているジョージのベースをフィーチュアするバラードのコーナー。
今回取り上げたのは和佐田さん作の「君ヲ想フ」。
美しい新藤さんのピアノと…優しい井上さんのブラシで… 和佐田さんは珠玉のメロディを歌い上げた。 いわしのステージの最後を締めくくったのはカバー曲。
ここのところウェイン・ショーターの「Pinocchio」を演奏していたが今回はドン・グロルニックの「Nothing Personal」…と言っても私は知らなかったんだけど、カッコいい曲だなコリャ。進藤さんのシャープなソロ!最高にカラフルな井上さんのソロ。
ギンギンにスイングする和佐田さん。
ん?この曲ってテーマやキメがトリッキーだけど、曲としては普通のマイナー・ブルースなんですな?
イヤ~、3人ともカッコよかった!そして最後はもちろん…
「1(い)」!「0(わ)」!「4(し)」!
「ア・ダ・ル・トォ~!」で締めくくった。
お客さんのノリも完璧だった!そして、演奏後は「司会の晋藤さん」vs.「ピアノの進藤さん」のインタビュー・コーナー。
ピアノにおしゃべりと進藤さんも忙しい!物販コーナーではジョージがTシャツを大PR!
いわしTシャツ1枚3,000千万円!お買い得!ただ今転換中。
来年、葉山町は「町政100周年」を迎えるそうです。
続いては我らが杉本篤彦バンドの出番。
一昨年にワイアレス・システムを入手した杉本さん、今年は客席後方からギターを弾きながら現れた!実はステージの上では他のメンバーさんが準備が整っているにもかかわらず、なかなか杉本さんが姿を現さないというひと幕があった。
杉本さんに後でその理由を伺うと、ステージのスタンバイをロビーで待っていたらお客さんに声をかけられてしまい、無視するわけにもいかず入って来れなくなってしまったのだそうです。
ハハハ、いかにも杉本さんらしい!
「君といつまでも」のクォーテーションを交えながら会場を練り歩く。そして杉本さんがステージの上にバンドに合流。
杉本さんのコード・ストラミングからバンド演奏がスタート。
曲は2016年発表の『Tomorrow Land』から「I Got It」。杉本篤彦そうる透MAKO-T田中晋吾正岡淳杉本さんのギターを鳴らしているのは今年もMarshall!昨年同様、クリーン・サウンドも得意とする「JVM210H」と2×12"スピーカー・キャビネット「1936」が杉本さんの演奏をサポートした。 MAKO-Tさんのソロから…杉本さんのソロへ。
得意のオクターブ奏法を巻き込んでソウルフルなソロを聴かせてくれた。
曲は|Bm7|Em7|A7|D△7|というシンプルな循環モノだが杉本さんの手に掛かると曲が一気に深くなる。
曲はひたすら頭を打ち続ける印象的なキメで締めくくられる。
コレで曲の雰囲気がわかりましたか?
そう、会話のなかでよく使われる「I Got It」というのは「わかりました」という意味。
アメリカ人はこれと「アィガリッ」と発音する。
だから相手が自分の言ったことができているかどうか確認する時、アメリカ人は「ガリッ?」と訊いて「アガリ!」と答える。
完全に寿司屋での会話である。
イギリスでは「アイガッ~トウイットゥ」と発音するハズ…「ハズ」というのはイギリス人がコレを口にしているのを聞いたことがない…ような気がするから。 「本日はどうもありがとうございます!
まず最初に今日のメンバーを紹介します」
と、早速ステージの上の4人を紹介。
皆さん売れっ子の腕利きミュージシャンとあって杉本さんもスケジュールをアレンジするのが大変とのこと。
「2曲目はオーソドックスなジャズのスタンダードみたいなモノを書いてみたくて作った曲です」曲は「夜風のスイング」。
いいね、タイトルがまずいいよ。
2022年の『Laule'a』収録されている、タイトル通りの純粋なスイング・ビート(4ビート)の1曲。
1950年代の後半から60年代のはじめ頃、パーカッション入りのジャズが流行ったのか、ブレイキーとかケニー・バレルとかウィントン・ケリーとかのコンボでキャンディドというパーカッション奏者が大活躍した時期があった。
コンガが加わると、不思議と全体のサウンドが柔らかくなるんだよね。
やっぱり正岡さんのパーカッションがいい味なのだ。愛らしいテーマのメロディをシングル・ノート、オクターブ、ダブル・ストップ、コードとバラエティに富んだテクニックで奏でる杉本さん。
右手は不動の「ツー・フィンガー・ストローク」。ウェス・モンゴメリーのアイデアがガッツリ出て来るソロも楽しいな!
最後はガッツあふれるコード・ソロで締めくくった。
しかし、ウォームでクリアでメチャクチャいい音だな。
次にピアノ・ソロ…ベース・ソロが続き…透さんのド迫力のフォー・バースを経て曲を締めくくった。 「ボクは生まれが築地なんです。
ですから物心ついた時から銀座のネオンが目に入っていました。
あの頃は1960年代で街角にまだジャズが流れていた時代ですね。
その頃ナマで聞いた音楽は多分こんな感じでしたかね…」
と、『♪君といつまでも』、『♪思い出の渚』やヴェンチャーズの一節を奏でた。 「ところで、葉山町は来年で町制100年、葉山マリーナが60周年だそうで…そしてウチのお袋が90歳。
ということで次にバラードで『なんて素敵な夜なんだろう』という曲をお送りします」
今年90歳というと、杉本さんのお母様は昭和9年生まれでいらっしゃる。
卒寿、おめでとうございます。
そう、今年「昭和ひとケタ」の皆さんは全員90歳におなりになられたのです。
そしてこの4月、日本から明治生まれの男性が消滅した。
もう1人もいらっしゃらない。
現在の男性の最高齢者は大正2年生まれで110歳になられる厚木の方。
杉本さんや私が子供の頃は、明治や大正生まれの人なんか周囲にゴロゴロしていたものだったけどね~。
そもそもおジイちゃん&おバアちゃんは明治生まれ、オジさんやオバさんは大正生まれたったから。
自分の年嵩に驚いてしまうよ。杉本さんが「なんて素敵な夜なんだろう」と紹介した曲はエリック・クラプトンの「Wonderful Tonight」。
少々ユックリとしたテンポに乗っておなじみのメロディが紡ぎ出される。ソロに入ると…お、ダブル・オクターブ!
今、この技術を使ってギターを弾く人はほとんどいないのではなかろうか?
2オクターブ離れた音を同時に弾く技法。
ピアノと異なりギターの場合、コレができる弦の組み合わせは1弦と6弦しかないので出せる音が極端に少なくなるのと、ポジションの替えがきかないので音程を変える場合は100%ネックの方向に手を動かさなくてはならないので大変な技術を要する。
杉本さんは時々この奏法を取り入れてソロを組み立てている。
コレはウェス・モンゴメリーの発案なのかナァ?
ウェスは『Solitude』というライブ盤の「Here's That Rainy Day」でこの奏法をガンガン披露したが、他の録音で聴きた記憶がない。
やっぱりムリがあったんじゃないのか?
これまたハートウォーミングな演奏でMarshallのクリーン・トーンが大活躍した。
最近ではジャズギターの大家、ジョー・パスがMarshallを使っている昔のビデオも発掘されたからね。
Marshallの活躍の場はロックだけではないのだ。
そのサウンドの魅力を知っている杉本さんはサスガである。早くも最後の曲。
これから演奏する曲について説明をする杉本さん。その曲とは、勇猛なキメからスタートする坂本家に公認されている坂本龍馬のテーマ「Dragon Horse」。「坂本龍馬のテーマ」というより「杉本篤彦のテーマ」というぐらい必ず演奏される杉本さんのキラー・チューンのひとつ。最後はバンド・メンバー全員が思う存分ソロを披露して大いに盛り上がった!
まずがピアノから。続いてベース・ソロ。
強力なスラッピング!透さんのドラムスをバックに正岡さんがコンガを叩きまくる!ステージ上手で各メンバーのソロを見守る透さんと杉本さん。そして透さん!「杉本篤彦バンド featuring そうる透」の名の通り鮮やかなスティックさばきで激烈なドラム・ソロを聴かせてくれた!そして杉本さん。これまた龍馬への思いの丈を込めた迫真のソロ!全4曲。
冒頭のシーンから最後の最後までバラエティに富んだ内容で今年も大いに観客を楽しませた。演奏後に晋藤さんとのインタビュー。
冒頭で観客に衝撃を与えたワイアレス・システムについての話を展開した。
杉本篤彦の詳しい情報はコチラ⇒杉本篤彦公式ウェブサイト
ということで今年も大いに楽しかった葉山。最後にもうひとつ。
昨年、帰りにスイカを買って食べてみたらコレが殺人的においしかった!
私、スイカ大好きなんです。
ってんで、今年も去年と同じ銘柄を買って帰った。
やっぱりおいしかった~!
☆☆☆Marshall Music Store Japanからのお知らせ☆☆☆
バディ・ガイに認められた実力派ギタリスト/シンガー、ローレンス・ジョーンズ。
現在ヨーロッパで大活躍中!
<Anywhere With Me>
コチラはMarshallのアーティスト紹介ビデオ<Artist Spotlight>。
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