恐るべき電気の騎士達 <前編>~ASIAN BLACK
ベテランから新しいバンドまでバラエティ豊かな出演者の顔ぶれでショウを構成する『恐るべき電気の騎士達』も息の長いシリーズ・イベントだ。
今回レポートするのは「MOMO & THE SHOCKERS」と「ASIAN BLACK」というベテラン・バンドのダブル・ヘッドライナー。
この日、はじめにステージに上がったのASIAN BLACK。
長年にわたって日本のロックを支えて来た腕利きミュージシャンが集結したチームだ。
かつてMarshall Blogでは昨年発表したアルバムを紹介したが、実際のステージを拝見するのは初めてで、この日が来るのをとても楽しみにしていた。 屋台村にはCDとオリジナル・グッズを販売。そして、いよいよASIAN BLACKのショウがスタート!藤原"MAX"正紀日下部"BURNY"正則松本慎二高橋"Roger"和久オープニングは最新アルバムのタイトル曲「赤い薔薇」。
ミディアム・テンポの歯切れのよいヘヴィ・チューン。
コレが昨年の7月に発表したアルバム『赤い薔薇』。
『Red Rose』としなかったところがうれしい。
何でも英語にすりゃいいってもんじゃないのよ。
私なんか、こういうやり方にASIAN BLACKの「日本のロック・バンド」としての矜持を感じちゃうね。
そんなASIAN BLACKに敬意を表して今回「薔薇」という漢字を書けるようにした。
「ラ」はいいんだけど、「バ」がどうにもわからなかったから…というのは「薔」なんて字は「薔薇」以外に使われているところを見たことがないでしょう?
そんな字が書けるワケがない。
この「薔」というのは音読みで「ショウ」とか「ショク」と読むらしい。
一方、訓読みでは「薔」一字で「ばら」と読ませたり「みずたで」と読むそうです。
ま、私も長いこと日本人をやっているので、「薔」の1字ぐらいなら10回も書けば楽勝で覚えるわな。
コレ、ワープロでやっていると一生覚えませんからね。コワいですよ。
ASIAN BLACKのおかげでひとつ利口になった。
「SOUR YELLOW」かなんかいうバンドが出て来た時には「檸檬」という字を覚えることにしよう。藤原さんのマイク・スタンドもケーブルも赤!
こういうこだわりはステキですね~。
そんなワケで藤原さんが来ているTシャツの前見頃にも漢字で「赤い薔薇」と入っている。
こうして見ると『赤い薔薇』という新作映画のTシャツみたいだな。それで思い出したのが1966年(昭和41年)の大映映画『赤い天使』。
若尾文子主演で増村保造が監督した中国戦線の従軍看護婦の話。
この映画はスゴいよ。
「増村+若尾」のコンビで言えば前年に公開した田村高廣が若尾さんの主人役で共演した『清作の妻』も最高にショッキングだった。
もうひとつ、1967年の『華岡青洲の妻』と併せて「増村+若尾」作品をおススメしておきます。
バキっと1曲目をキメると、分厚いギター・サウンドでバーニーが弾くリフが矢継ぎ早に飛び出してくる。
曲は同じく『赤い薔薇』から「罪」。
その「分厚いギター・サウンド」を出しているのはMarshall。
バーニーはかつて長年にわたって「JCM800 2210」という2チャンネルの100Wヘッドを愛用していたが、低出力のモデルに乗り換えて現在はこのSTUDIOシリーズを愛用してくれている。
藤原さんの赤いマイク・スタンドとバーニーに白いMarshall。
大変おめでたい取り合わせなのだ。
ヘッドは「SV20H」。
カバリングは純白の「エレファント・グレイン」。
バーニーはジャンプ(=リンク)をしない。
いつも通り左上のHighトレブル・インプットにケーブルをつないだ。
2×12"のスピーカー・キャビネットは「1936」だが、カバリングはヘッドとお揃いの「ホワイト・エレファント・グレイン」に、フレット・クロスは「LC(=Large Check)」に、そしてスピーカー・ユニットを試行錯誤のうえCELESTIONの「G12M-65」、通称「クリーム・バック」に乗せ換えた。もちろんこのMarshllが『赤い薔薇』のレコーディングでも大活躍した。
結果、今では当たり前のライン・レコ―ディングによる「のっぺらぼう」のサウンドとは全く異なる、昔ながらの生々しいことこの上ないギターのサウンドが収録された。
『赤い薔薇』を鑑賞する時にはゼヒこの辺りにご注目頂きたい。
やっぱり昔はヨカッタね。
バーニーの足元のようす。バーニーはこのリグで「ロック・ギターの塊」とでもいうべき極上のプレイを聴かせてくれる。
「JCM2000 TSLシリーズ」のコンボ(TSL601とTSL602)が発売される直前からバーニーとは四半世紀に及ぶお付き合いをさせて頂いているが、初めてそのプレイを目の当たりにした時と今日のプレイの印象はナニも変わっていない。
完璧なリズム感と豊富なロック・ギターの語彙…要するに「ロック・ギターの権化」なのだ。
この日もエキサイティングなソロを連発してくれた。そして、表現力に富んだ藤原さんの歌声。
オリジナリティあふれるASIAN BLACKのフロント陣は強力だ。「こんばんは!ASIAN BLACKです!
初めましての人?…ほとんどかな?
この暑いさなかに集まってくれて感謝しております。どうもありがとう!
今日からオリンピックが始まって、甲子園も予選の真っ最中で、色んな所でロック・イベントが開催されて…熱い夏を過ごしております。
ボクらが初めての人は、今日は短い間ですが最後まで楽しんでいってくれたらうれしいです。
よろしくお願いします!」MCの次に演奏したのは新曲「Prisoner」。ピックで奏でるクリアな松本さんのベース・サウンド。
細部まで練り込んだラインがそのサウンドを重く、深く、そして生き生きと響かせる!そして、ロジャーさんのドラムスのこの安定感!
The Sonsの時、ichiroちゃんが「最高のロック・ドラマー!」とよくロジャーさんを紹介していたが、その言葉に偽りは全くない。
そして、松本さんのベースとロジャーさんのドラムスの完璧はコンビネーションがASIAN BLACKの音楽にベスト・マッチするのだ。誰しも何かに囚われながら日々生きている中、それが決して悪いコトではなく、そのことを糧にしたり、希望になるように後ろから肩を押すような曲にしたという。
藤原さんが力を込めて歌うサビの展開がひと際耳を惹く。曲の主旨を捉えたバーニーのソロが一層の魅力を加えた。
2022年発表のミニ・アルバム『Feel the Beat』から「Move It」。ファンキー・テイスト漂うヘヴィ・ナンバー。ゴキゲンなグルーヴに各種のキメが組み込まれてスリリングな展開を見せた。ロジャーさんのドラム・ソロから『赤い薔薇』収録の「夏の夜のSoliloquy」。弦1本1本の響きが聞こえて来るような極上の歪みでバーニーが、一瞬「Easy Money」を思わせるリフを弾くドッシリとしたミディアム・スローのナンバー。
松本さんのベースがトコトン曲に過重をかけて雰囲気を醸し出す。私の場合、実は『赤い薔薇』を初めて聴いた時、一番インパクトを感じたのがこの曲だった。
重厚な曲調に加えて「♪ねぇ、ボクがこの世からいなくなっても ナニもなかったように暮らしていて」という歌詞が印象的だったのだ。
「soliloquy(ソリロキー)」というのは「独り言」とか芝居の「独りセリフ」のこと。
秋吉敏子さんのビッグバンドに「Soliloquy」という美しいワルツがありましてね、この単語って昔からカッコいいナァとと思っていたのです。曲を締めくくるのはドラマチックなバーニーのソロ。
カデンツァもバッチリとキマって素晴らしい仕上がりとなった。 「ありがとう!楽しんでますか?
去年の7月にテイチクレコードより『赤い薔薇』というフルアルバムが出て、もう1年になります。
よかったらサブスクでもナンでもいいから聴いてやってください」 「ASIAN BLACKは色んなバンドを経たメンバーが集まってできたバンドです。
最小人数で最大の音、日本語を大事にしてやっていこうというボクらのいわゆる『ハードロック』。
オールド・ハードロックを目指して演っていくんで、ゼヒゼヒまた遊びに来てくれたらうれしいです。
よろしくお願いします!」
このコンセプト、大賛成です。
「5年後にはポピュラー音楽のロックのリスナーの割合が40%を切る」と世界では言われている。
今がどれぐらいの割合なのかは知らないが、少なくともアメリカではもう何年も前に音楽マーケットの主流がヒップホップに奪われた。
それからロック人気が回復することなく、現在のアメリカは「大ラテン音楽ブーム」なのだそうだ。
日本も若い人の間では我々の世代が「ロック」と呼んでいたタイプの音楽がほぼ絶滅したことは皆さんの認識の通り。
イカンよ、そんなんじゃイカン。
だからMarshall Blogは日夜、「ロックが最もクリエイティブだった時代のロック」の保護に努めているのです。
でもダメね。
若い連中はもう字すら読まないから。
冒頭の「薔薇」じゃないけれど、字が読めても書けない「半文盲」の状態のことを「ディスグラフィア(書字障害)」と言い、実際にそういう若者が多くなっているらしい。
PCの予測変換のせいだ。
私はこの「書字障害」の危険性を感じて何年もの間肉筆で日記を書き続けている。
年配の皆さん、試しにペンを手に取って頭に浮かんだ文章を書いてみてください。
案外手が自由に動いてくれないか、頭とは少々異なる漢字を書いてしまうかも知れませんゼ。 お!レスポールに持ち替えたバーニー。
短いギターのイントロから「Alone」。バーニーが4分で刻むバッキングに乗せる藤原さんの歌。
そして一度聴いたら耳にこびりつくサビのメロディ。
この曲もCDを聴いた時にすごく印象に残った。AISIAN BLACKはコーラスもとてもいい感じ。
こういうところにも「ベテラン」を感じさせてくれる。図太い音でユッタリとしたメロディを奏でるソロ。
最近はSGや335やレスポールJr.を頻繁に使っているので、「バーニーはレスポール」というイメージが少々薄れた感じがするが、やっぱり「ハムバッキング×2」系のギターがバーニーにはシックリ来ると思うのだがどうだろうか?
やっぱりストラトだのテリーだののシングルコイル・ピックアップのギターはバーニーのイメージじゃないな。
まさかどこかで使っていないだろうナァ…。
ロジャーさんのバスドラムに…松本さんのベースが乗っかり…バーニーのギターが炸裂。
これぞ「ハードロック」!
「♪Nothing to Lose」のコーラスが神々しい!
続いた曲のタイトルはもちろん「Nothing to Lose」。『Feel the Beat』のオープナー。
やっぱりいいね、ハードロック!
得るモノはあっても失うモノはナニもなし!
ココでお客さんとのコール&レスポンスからライブ関連の告知。
そして「バラード聞いてください」……と『赤い薔薇』から「泣いている」を取り上げた。もちろんバーニーのギターが泣きまくるわね、こういう曲では。
まさに「泣いている」。
この素晴らしいギター・サウンドはMarshallから出ています。
マイナーの曲なんだけど、ところどころメジャーになるパートにグッと来るな。
ジ~ックリと藤原さんが歌い込んだ。続いても『Feel the Beat』のナンバー、「C'est La Vie」。コレまたリズム隊のお二方がウネるのナンのって!
気持ちいい~。 そのウネるグルーヴに呼応する藤原さんのシャウト! ストレートなロック・ビートから全員参加で手拍子だ!ココでメンバーの皆さんからひと言ごあいさつ。
「初めて見てくれる人がたくさんいらしてとってもとっても興奮します。
どうもありがとう!
お互いのバンドを見て『あ、こんないいバンドもいるのか…知らなかった』というイベントになってとってもハッピーです。
どうもありがとう!」「こんばんは…どうも。今後ともよろしくお願いします」
超シンプルなロジャーさん。「実はこの後のバンドのドラムスのPONが、1987年…はるか遠い昔ですが、ボクが出したソロ・アルバムで叩いてくれたんです。
最高のドラムです。見て行ってくださいね!」「え、ナンだって?」とうれしそうなPONさん(コレは想像です)。「それじゃあ、最後のセクションは飛ばしていくんでよろしくお願いしま~す。
ホントに今日はどうもありがとう!感謝します。
また会いに来てください!」最後のセクションの1曲目は「Voyage」。
そうそう!
この曲は『赤い薔薇』のオープナーだからして、コレが私のASIAN BLACKの初体験だった。
このロジャーさんのドラムスと…松本さんのこのブイブイいうベースが聞こえて来た瞬間、思わず「コレだ!」と叫んだよ。 最後に来てますます声に力がこもる藤原さん!またSGに持ち替えたバーニー。
低音域からソロのクライマックスに向かってグイグイと弾き上げていく。そして、エンディングのジャ~ンプ!もちろん間髪を入れず次の曲へ。
これまたイヤというほど松本さんとロジャーさんのコンビネーションの素晴らしさを見せつけてくれる「Vanity Fair」。
今回、何度も同じパターンでリズム隊のお二人のことを書いてしまった…でもね、本当にカッコいいのよ。
書かずにはいられないのよ。
藤原さんがロジャー・ダルトリーばりにマイクをグルングルン振り回す~!ココへ来てもバーニーも切れ味の鋭いソロを遠慮なく放り込んで来る!
さらに『赤い薔薇』から「鼓動」。
「♪拳を高く上げろ 全てが変わる前に」リズム隊の2人だけでなく、このフロント陣のコンビネーションも鉄壁だ。
ASIAN BLACKの出番を締めくくったのは「Brand New World」。
藤原さん、足をばたつかせて全力疾走!
もう4人が一丸となって奏でる伝統的な日本のハードロックだった! 藤原さんはイントロだけでなく、曲を通して全力疾走!
スゴいスタミナ!
コレ、大変だよ!
そして、ジャンプ!念願のASIAN BLACK。
ああ、観ることができてヨカッタ!
そしてかっこヨカッタ!
最後の最後も藤原さんが飛びあがって締めくくった。
ASIAN BLACKの詳しい情報はコチラ⇒The Official Website 日下部"Burny"正則
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