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2019年9月 9日 (月)

【イギリス-ロック名所めぐり】vol.37~キンクスに会いに行く! <前編>

 
先日、Shige Blogでレポートした通り、今回はロンドン滞在中、家内が先に帰国した後安宿へ引っ越しをした。
規格外の重量のスーツケースを注意深く押しながら、ほうほうの体でブルームズベリーからキングス・クロスへやって来た。
「European Hotel」というロンドンでよく見るタイプの「ホテル」とは名ばかりのB&B。
どうぜ寝るだけなんだからそれで充分。
荷物を置いたらすぐに出発。
今日の予定は今回の旅のハイライトのひとつなのだ!

08ホテルからキングスクロス駅までは歩いて1分。
ロケーション最高!

20天気も最高!

10まずは地下鉄ピカデリー線で「Finsbury Park(フィンズベリー・パーク)」へ。

30もうコレは何回もやってるけど、もう1回。
フィンズベリー・パーク駅といえば、グラハム・ボンド。
60年代にはGraham Bond Organisationというバンドを率いてロンドンのブルース・ロック/ジャズ・シーンを牽引したブリティッシュ・ロックのパイオニアのひとりだ。
見るからにアブなそう…。

40vGraham Bond Organisationはジャック・ブルースやジンジャー・ベイカーを輩出したことでよく知られている。
いわばCreamの母体…もっと言うとロックの1ページを飾ったトリオの産みの親がグラハム・ボンドだ。

50s代表作の『Solid Bond』ではジョン・マクラフリンも参加して、ナゼかロリンズの「Doxy」なんか演っちゃってる。
しかし、スゴイよね、Creamのリズム隊に、マクラフリン、ディック・ヘクトール・スミス、ジョン・ハイズマンまで参加してるんだもん。夢のようなメンツじゃん?
ちなみにマクラフリンは向こうでは「マクラッグリン」と発音します。

60sそして、最近Spotifyで出くわしたBBCの発掘音源。
マクラッグリンがチャンとしたトラディッショナルなジャズを弾いているのがおかしい。
このプレイが後に「ミクロネシアン・マイナー」とか「ナポリタン・マイナー」とか言う人と同一人物とはとても思えん。
レパートリーを見ると、「Bluesology」、「Kelly Blue」、「Oleo」、「Sack O' Woe」といったジャズ・チューンから「Hallerujah I Love her so」、「I Saw Her Stadning There」等のポップチューンまでゴッチャゴッチャ。
ジャズがリスナーの身近にあった。そして、コレらが国営放送の電波に乗って一般家庭に入り込んでいた。
ブリティッシュ・ロックってのはこういうシーンが礎になっているんだもん、そりゃ日本のリスナーなんて赤ちゃん同様だわな~…今でもね。

70sそして、このグラハム・ボンド、後にアレイスター・クロウリーにのめり込んで、精神を病んで自殺してしまう。
このフィンズベリー・パーク駅のホームで、入線して来る電車に飛び込んだのだ。
その飛び込む直前、ホームに手ブラで立っていた初めて会う男の子の名前とその子がギターをやっていることを言い当てたという。
このフィンズベリー・パーク駅はピカデリー線とヴィクトリア線の2つの路線が乗り入れているのね。
そうなると気になるのはグラハム・ボンドがどっちの線に飛び込んだのか?…ということになる。
ちなみにこの駅は、新宿駅の総武線と山手線のように同じホームにその異なる2路線が乗り入れているロンドンの地下鉄でも珍しい駅。
荷物が多い時など乗り換えに大変重宝する。

80写真はピカデリー線のようす。
ココに飛び込んだのか…、それとも反対側のヴィクトリア線か…。
そこで、ロンドンに住んでいる音楽業界で働くイギリス人の友人にこのことを相談してみた。
するとすぐに答えが返って来た。
「それは間違いなくヴィクトリア線だよ、シゲ」
「ナンでわかんのよ」
「アノね、ヴィクトリア線っていうのは、ピカデリー線に比べて電車がホームに入って来る時のスピードが断然速いんだ。
だから自殺をしようとするヤツは間違いなくヴィクトリア線を選ぶのさ。そっちの方が確実だろ?」
エ~、ココってそんな物騒な駅なのッ?
それにナンでそんなこと知ってんの?
コレにはビックリしたけど、ロンドンの豆知識が増えたわ。
ところが、後になってわかったのだが、グラハム・ボンドはピカデリー線に飛び込んだのだそうだ。
ナンのこたぁない、ウィキペディアの英語版に出ていやがんの。

90ホラ、この駅にもコレ!

100ロンドンの地下鉄には時折このように長いトンネルを経て昇降する駅があるんだよね。
サッカーで有名な隣のアーセナル駅も確かそう。

110コレが存外にオモシロい。
設計ミスでこんなんなっちゃったのかね?
「アレ、こんなとこホジっちゃったよ!」みたいな。

120長いトンネルを経て地上に出た!
駅前には比較的大きなバス・ターミナル。

130ね、となりがアーセナルだから、こんなショップが駅舎に入っている。

135駅のすぐ横を走る「Seven Sisters Road(セブン・シスターズ・ロード)」。
この先の右側にある「Queens Hotel」というところに数日滞在したことがあった。
部屋のポットの湯気を利用して、レトルトのお粥を温めようとしたら水蒸気が盛大に上がってしまい、それに火災報知機が反応して大騒ぎになってしまった。
ホテルのお姉さんにこっぴどく叱られたわ。
お世辞にもお上品なエリアとは言い難く、この駅前のエリアだけでフライドチキン屋が7軒もあった。
どういうことか大体わかるでしょ?
吸殻を拾って、それを直接口にくわえていたヤツも見かけた。
ところが、そのホテルの前にある「フィンズベリー・パーク」の美しさと言ったら!

140その反対側。

150国鉄(オーバーグラウンド)のガードの下にはこんな広告。
「教会をお探しですか?日曜日の10時にそれが見つかります」
…というミサへの勧誘。
年配の洋楽ファンには左側の建物のイラストに馴染みがあるだろう。

160そう、「Rainbow Theatre(レインボー・シアター)」。

170レインボー・シアターを背に今来た駅方面を振り返るとこんな光景。
初めて来た10年以上前と基本的には変わらないが、こんな高層ビルは影も形もなかった。
あ、右側には古い、日本で言うアパート風の建物が立ち並んでいたけど取り壊しちゃったんだな。
ロンドンはドンドン変わっている。

180レインボー・シアターはもう何度も来ているし、何度もMarshall Blogに出てきているので、ごく簡単にもう一度書いておくにとどめるが、1930年映画館としてオープンし、その後コンサート・ホールとして60~80年代のブリティッシュ・ロックの黄金時代に活躍した。
重要な歴史を持つ建造物として、一応「Grade II」というカテゴリーに分類されて保護されているが、確か「Grade II」は「ナニがナンでも壊しちゃイカン」というほどの強制力はなかったように記憶している。
それゆえこうして時々ココに来ては定点観測をしているのだ。
現在はさっきガード下の広告にあったようにブラジルのエジル・マセドという教祖が1977年に開宗した「Universal Church」という宗教団体の施設になっている。
サンパウロに「ソロモン寺院」という本拠地を構える「Universal Church」は128か国に7,000以上の教会を持つ強大な力を持つ宗教団体なのだそうだ。
そばまで寄ると、中から2人の黒人の信者が仲睦まじく手をつなぎながら歩み出て来た。

190エエイ、折角だたかもう一回やっとくか…。
ご存知Deep Purpleの『Live in Japan』の海外バージョン『Made in Japan』ね。
このジャケットに使われている写真はココ、レインボウ・シアターで撮られたモノ。
そしてイアン・ギランが叩いているコンガはNATAL製だ。
ちなみにこの『Made in Japan』というのは「粗悪なモノ」という意味。
かつて、欧米において日本製の商品は「安かろう悪かろう」の同意語で、「Made in Japan」というサインが入っていると「ダメだ、コリャ」ということを暗示させた。
で、このアルバム、当初はメンバーがライブ録音に乗り気でなかったが、思ったより演奏がうまくいって発売となった経緯があるそう…つまり「Made in Japan」ってみんなバカにするけど、実はいいモノなんだぜ…なんてことが言いたかったのかね?知らんけど。
しかし、どうしてレインボー・シアターの写真を使っちゃったのかね~?「Made in England」の意地かね?

Mijレインボー・シアターの建物が確認できてホッとしたところで駅に戻る。

200今度は反対側のガード。

210歩道にはお休みの方々がゴロゴロ。
今回、街にホームレスが激増していてビックリしたな~。
しかも20代と思われる若い女性のホームレスがたくさんいたのだ。
私が初めてロンドンに来た17年ぐらい前は誓ってそんな輩はいなかった。
ホームレスといえばオッサン、そしてホントにタマにオバサンを見かけるぐらいだった。
それが今では若い女性だよ!
そして、ロンドンだけではなくて、ホームレスはミルトン・キーンズ駅にもゾロゾロいたし、マンチェスターでもたくさん見かけた。
このことをスコットランド出身の友人に話すと、イングランドはそうしたホームレスへの対応が手薄なのだそうだ。一方、スコットランドはホームレスが少ないらしい。
それはスコットランド政府がキチンとしたホームレス対策を打ち出しているからなんだと…。
そんな話を聞くと、「ホームレス云々」よりも「イングランド vs. スコットランド」の根強いライバル意識の方が気になるわい。
とにかく、日本にいるとあまりわからないけど、こうした変化を目の当たりにすると驚異的なスピードで世の中が悪くなっていることを実感するね。
日本は消費税が上がった10月以降、一体どうなっちゃうんだろう?
もう日本は一般庶民が政治家や大企業の果てしない欲望にソロソロ付き合えきれない段階に達しているのではなかろうか?
それに日本で言っている「軽減税率」っての?…イギリスに行って、もう一度言葉の意味を含めて税金のあるべき姿を勉強して来た方がいい…と、イギリスに行くとこんな経済オンチの私ですら思うのだ。

220が―トをくぐるともうひとつのバス・ターミナルがある。
そして、そこからこの「W7」のバスに乗る。

230ヨッシャ~、まんまと2階の一番前の席をゲット。
行き先は「Muswell Hill(マズウェル・ヒル)」。
The Kinksの地元だゼイ!250そういえばIron Maidenのニコ・マクブレインってこの辺りの出身じゃないかな?
フィンズベリー・パークの街を抜けると…

370景色がガラリと変わる。

280住宅街を抜け…

290また街…イヤ、「町」か。

300それがまたどこもステキなのよ。
ああ、2階席の一番前でヨカッタ。シアワセ~!

310興奮してなりふり構わず、夢中になって写真を撮っちゃったんだけど、私、一体どんな風になっていたんだろうか?
そうか、コレが「旅の恥はかき捨て」というヤツか!

320おお、坂だ!
ま、「Hill」ってぐらいだから坂はあって当然なんだけど、ロンドンってどこもかしこもほとんど真っ平だからね、すごく新鮮。
結構アップダウンがあってね、すごくオモシロかった。

330そしてやって来たのが…

340「Muswell Hill(マズウェル・ヒル)」!

350そうか~、ココがキンクスの故郷か~。
レイ・デイヴィスもデイヴ・デイヴィスもここから出て来たのか~。

360「マズウェル・ヒル」…ああ、なんてステキな響きなんだろう!
380マズウェル・ヒルのハイ・ストリート、「Muswell Hill Broadway」をまずは歩いてみる。

0r4a0038ロンドンの都会から少し離れて、町がとてもユッタリしていていい感じ。

400ホラ、「ヒル」だけあってロンドンの街がこうして見下ろせるのだ!
この景色は感動するよ~。
しばらく見とれちゃった。

410…なんて感心している場合じゃない。
ココからどこへ行けばいいのか。
いくら何でも町並みを見てるだけじゃツマらない…ということでデイヴィス兄弟の生家の向かいにある「The Clissord Arms(ザ・クリソールド・アームズ)」というパブへ行くべし。
そこはキンクスの聖地。
私設キンクス博物館になっていることは知っている。

390でもスッカリ困ってしまった。
別の回に書いたように、時間がなくて事前の準備が不十分で「クリソールド・アームズ」の情報を持って来なかったのだ。
しかも、私のスマホは海外で使えないときてる。
420「そうだ、こんな時こそPRETだ!」と、得意のプレタマンジェに入ってWi-Fiを使おうと思ったが、近くに見当たらなかったので、今回はスターバックスのWi-Fiを使うことにした。
イギリス人のお好みではないのか、飽きられたのか、アメリカがキライなのか、こっちのスターバックスは日本みたいに混んでいるのを滅多に見かけない。入ってすぐに座ることができる。
でも、ナンカおいしくないんだよね、コーヒーが。
味が薄いというか、コクがないというか…。
でもキンクス関連のウェブサイトで「クリソールド・アームズ」が「Fortis Green(フォーティス・グリーン)」という通りにあることを難なく突き止めることができた。
「Fortis Green」なんて「Village Green」みたいでカッコいいじゃんよ!

Vgp通りの名前さえわかれば後はこっちのもの。
町角に立っている地図で場所をチェックすればチョチョイのチョイ。
こうしちゃいられない!と薄いアイスコーヒーを飲み残して外へ飛び出した。
 
「チ~ズ~、チ~ズ~…さてさて地図はどこかいな~?」
実際マズウェル・ヒルにはとてもおいしいチーズがあるということを、後に地元に住んでいるイギリス人から教わった。
そんなことより!ないのよ地図が!
ロンドンの中心部なら通りの角々にあるこういう地図がない!440本屋に行って25万分の1の地図でも買って来ようかとも思ったが、それもモッタイないし、本屋を探すのも面倒だ。
仕方なしに「ロンドン野生の勘」を頼りに歩いていたら、下の写真の交差点に「Sainsbury's(セインズベリー=イギリスの大手スーパー)」があるのを見つけた。
もしや店内にこの辺りの地図でも貼ってあるのではないかと寄ってみると…あった、あった!

430でもこんなヤツ!
オイオイ、ココから「Fortis Green」を探すんかいな~。
「You are here」の表示すらない!
仕方がないので地図の左上からジワリジワリと通りの名前を1本ずつチェックしていった。

450すると程なくして「Fortis Green」という文字が目に入り、その場からさほど遠くないということがわかった。
ルートも簡単、今いる道がそもそもフォーティス・グリーン・ロードで、コレを写真左の方向に進み、1回左折するだけだ。

460「♪フォ~ティ~ス・グリ~ン、プリ~ザベ~ションソサエティ~」なんて適当な鼻歌を歌っちゃったりなんかして歩いて行く。
Fairport Conventionのサイモン・ニコルもマズウェル・ヒルの出身。
このFortis Greenと「Tetherdown(テザーダウン)」という通りが交わるところにあった「Fairport」と呼ばれるニコルの実家でFairport Conventionはそのキャリアをスタートさせたのだそうだ。
え、そっちは行ってみたのかって?
イヤ、私、Fairport Convention チト苦手なんですわ。
それにBonzo Dog Doo-Dah Bandのヴィヴィアン・スタンシャルも晩年はマズウェル・ヒルの「Hillfield Park(ヒルフィールド・パーク)」というところで過ごしたそうだ。12img_9697しかし、いい加減遠いな…。
歩けど歩けどそれらしき建物が見えて来ない。470「コリャ、道を間違えたかな?」
ヒザがいつ痛くなってくるかも心配だ。
もう少し歩いてダメならバスに乗って近くの地下鉄の駅にでも行こうか、と考えているウチに…

480着いた~!
まさか壁にこんな絵が描いてあるなんて思っていなかったので、看板の文字がハッキリ見えて来るまでわからなかったのだ!
コレが「クリソールド・アームズ」か!
ということは、その通りの反対側は~?490<中編>につづく

200 
(2019年6月9日 ロンドン、マズウェル・ヒルにて撮影)