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2017年7月12日 (水)

Song for You~amber lumberの魅力

  
最近、征史さんに感化されてまた落語が気になっている。
落語は音楽と違って、BGR(バック・グラウンド・落語)というワケにはいかないので、一旦聴き出すとひと言も聞き逃すまいとジックリ噺と対峙しなければならない。
持て余している時間がゼンゼンない昨今、落語の生活への闖入は困りモノなのだが、古今亭志ん生のCDを買って来て「稽古屋」、「後生うなぎ」、「らくだ」あたりを久しぶりに聴いた。
コレがもうおもしろくて、おもしろくて…やっぱり聴き出したらヤメられんわい。
征史さんの落語に対する情熱や造詣の深さには全く及ぶべくもないが、どれも大学の頃、一時期落語に夢中になった時分に耳にした音源ではあるものの、細かいところはもう大分忘れていた。
また、昔に聴いた時とものすごく噺の印象が違っていて、今では、なんというか「風情を味わう」っていうのかな?
志ん生が発する言葉のひとつひとつに興味が集中してしまう。
今の生活の中では決して聞くことのない単語の数々や江戸っ子ならではの言い回しみたいなものが最高に愉快なのだ。
「横丁の隠居のデコボコ」なんて表現、何度聞いても吹き出してしまう。
落語は情景から登場人物までのすべてをたったひとりの演者が表現する世界でも稀有なパフォーマンスだと聞く。
人前でパンツ一丁になって笑いを取ろうするようなあまりにもクダらない芸とはワケもケタも違うのだ。
特に志ん生は声の質がユーモラスな上に、天衣無縫な語り口と奇想天外なくすぐり(ギャグ)が最高におもしろい。
関東大震災の時に東京中の酒がなくなったら困るというので真っ先に酒屋へ飛び込んだという話や、高座で居眠りをしてしまった志ん生を敢えて起こさず、お客さんがその寝ている志ん生の姿を見て楽しんだとか、エピソードにもこと欠かない。
噺の前半と後半でいつのまにか主人公の名前が変わっちゃってる…なんて録音も残っている。
学生の頃、『びんぼう自慢』なんて自伝も読んだが、まさに落語を演るために生まれて来たような人だ。
ジャズ・ギターで言えば間違いなくウェス・モンゴメリーだろうナァ。
一方、「黒門町の師匠」、八代目桂文楽もよく聴いた。
長い噺を何度演っても数秒しか変わらなかったという完全主義者。
こちらはパット・マルティーノだ。
そんな大名人文楽も、「道場でなら負けないが、志ん生さんと真剣で勝負をしたら斬られる」と言ったとか。
カッコいいナァ~、昔の人は。
今じゃ文楽ってペヤングだぜ。
失敬ながら、私は円鏡は「円鏡」、こぶ平は「こぶ平」、小益は「ぺヤング」と呼んでいる。
私は13歳ぐらいからドップリとロックにハマったが、10代の終わりにジャズと落語の愉しみを知ったのは超ラッキーだった。人生がまったく変わった。
今ではクラシックに持っていかれそうなの。
先日、征史さんと二人で「噺塚」を訪れたのだが、実は征史さんとは噺家の好みが正反対なのよ。
あんまり志ん生や文楽の話をしていると後で怒られそうなので今日の本題に入ることにしよう。
  
『Song for You』と題したアコースティックのイベント。

10ココに出演したのがamber lumber。
アコースティック・ギターとベースのデュオ・チームだ。

20ボーカルスとギターは森永JUDYアキラ

30v同じくボーカルスと、ベースの山本征史
この二人がamber lumber。

40v「アンバーです!」「ランバーです!」「ふたり合わせてアンバー・ランバーで~す!」なんてことは全くない。ディーゼル・エンジンじゃあるまいし…。
「amber」は琥珀。「lumber」は材木。
もちろん征史さんのこと、このふたつの単語を並べたのには幾重にも重なる深い意味があるのだ。
今年1月に結成され、5月に下の10曲入りのファースト・アルバム『運命の輪っか』を発表した。

50cdおおよそ私がプライベートで聴くようなサウンドではないのだが、征史さんからサンプル盤を頂戴してハマってしまった。
コレが実にいいのだ。
そのライブがあるというので駆けつけた。
今日はその際のレポートだ。

60征史さんのマメさとamber lumberにかける思いが化学反応を起こしたかのように会場にはいろんなアイテムが用意されていた。
コレはジャケットに使われたイラストの原画。
もちろん山本画伯の作品。
私はフザけて「幼稚園生の作品」などと言ったが、描けるもんじゃありませんよ。
そんなこたぁよ~くわかっていてそう言ったのだ。

70裏ジャケに使われた緑色の蝶。

80スリーヴ表4のハートの炎のローソク。
器用なもんですナァ。
またナント発想の柔らかなことよ!

90当然『運命の輪っか』も販売していて、その他にも…

100手作りのブレスレット…

110花札の絵柄をあしらったキーホルダー(コレはアキラさんの作)なども並んでいた。

120来場特典としているのは「本日のエッセイ」。

130征史さんは別バンドのSTANDのライブの時、お客さんにその日に演奏する曲の歌詞を印刷して配っていたりしたが、amber lumberでは征史さんとアキラさんが毎回エッセイを書いてお客さんに読んでもらうという趣向を取り入れた。
ココに「amber lumber」の由来なども詳しく記されているので、気になる人はどうにかしてバックナンバーをゲットするべし。
ひとつだけ…vol.1には琥珀の説明から流れ流れてマッコウクジラが登場するのだが、アレって英語で「Sperm whale」っていうんだって。
それを指して征史さん曰く「なんだか他人とは思えない」だって…バカなこと言ってんじゃないよ!
とにかくマメです。

140さらに最近よく見かけるスタンプラリーみたいなこともしていて、特典のCDも用意されていた。
写真はないのだが、このスタンプがまた凝っていて、消しゴムで作った手作りのハンコなのよ!
このCDのラベルもそう。
イモ判の要領で消しゴムを削ってペタンとやってるの。150ライブの1曲目はアルバムの最後を飾っているアキラさんの作品「毒を吐く」。
アキラさんが語るように歌う恨み節にのって…

170v_dh征史さんのべースが絡んでくる。
独特なサウンドだ。
歌詞はズトっと重いが、決して暗くはない。
「♪歌え、歌え」のリフレインがすさまじく印象的だ。

180v征史さんはエレクトリック・アコースティック・ベースをMarshallで鳴らしている。
コチラはStrange,Beautiful and Loudでおなじみの1978年製の1992SUPER BASS。

190vそして、メインで活躍したのがASTORIA CLASSIC。
ギター用のアンプだが、色々試した結果、このサウンドが征史さんの理想に一番近かったとのこと。
以前、是方博邦さんがエレガットをコレで鳴らしたが、やっぱりナチュラルで素晴らしい音色だった。
やはり、その楽器の持つ最も美しい部分を自然に引き出すことを使命に生まれて来たASTORIA CLASSICならではの仕事だ。

2002曲目は征史さん作の「Amber Lumber」。
テーマ・ソングということになるのかな?
「ガラクタだけどお宝だ」…なるほど。「ガラクタ」の中には「タカラ」が入ってるんだね。

210_al4ビートで軽快に飛ばすゴキゲンなナンバー。
後半ではアキラさんのKAZOOが登場する。

210vMCをはさんでamber lubmerのファンク・チューン、「Eしか弾けない」。
Sly Stoneがお好きだというアキラさん。
その影響が反映されているのかしらん?
ところでアキラさんのニックネームの「JUDY」。
何でも山下洋輔さんの命名なのだそうだ。
Judy Garlandの「JUDY」かと思ったら、「ジュディ・オング」の「ジュディ」なんだって!

220_eアキラさんが押さえているのは、なるほどE7#9。
いつの間にか世間では「ジミヘン・コード」と呼ばれているヤツ。誰か「Strange Kind of Womanコード」と言ってくれ!あの「B→A→E7#9→B」ってメッチャかっこよくない?
amber lumberのE7#9は「♪Eっていい」、「カッコいい」のコール&レスポンスでクライマックスを迎える。

220vこの曲はCDの1曲目に収録されていて、楽器好きの方ならアキラさんのコード・ストラミングに絡んでくる征史さんのベースに耳を奪われることだろう。
ホンの少し歪んだトーンが実にカッコいい。

230vこの曲のサウンドはアコースティック・ベースで録ったオリジナル・トラックを1992と1960Aでリアンプしたものだそうだ。

235v

240コレ見て!
征史さんが全曲録音の手順を図解で記録したモノ。
エフェクターのつなぎ順はもちろん、アンプのセッティングまで詳細に記してある。
ま~、ずいぶん色んなことをやってるんだね~。
やっぱりこうやって徹底的に作り込まないといいモノはできないよ。
ココで岡井大二さんの名言…「名盤ができるまでには、それが名盤となる過程を経て来ている」(若干アレンジ済)。

250

アキラさんが「E」でキメた!

260「青い月夜」。
一切飾りのない四分音符だけの四つ切りギターに、アキラさんの深い声が乗るふたりの共作のバラード。

270v

「♪泣いて 泣いて 泣いて 君の涙が涸れたなら 僕が舟をだすから」…なんてロマンチックな歌詞なのよ!
作詞は征史さん。
私は夜叉の頃からの征史さんを知っているが、その時は単なる豪放磊落なベーシストだとばかり思っていた。
ところがSTANDの時に、征史さんが作る曲を聴いて「ウワ~!この人めっちゃロマンチックじゃんけ!」と気が付いた。
このamber lumberの世界はその「征史ロマンチシズム」の世界でもあるのだ。

250vこの曲のレコーディングではMS-2も使用された。
Marshall GALAの時にMarshallの社長、ジョナサン・エラリーから出演者にプレゼントされた世界に50個しかないサイン入りMS-2だ。

240v次はアルバム2曲目の「あたし待ってんの」。
アキラさん作の16ビート・チューン。
『運命の輪っか』のアルバムとしての魅力のひとつはこの曲が2番目に収録されているということ。

280_amつまりカッコいいということ。
CDでもコンサートでも2曲目にトロいの持ってきちゃ絶対ダメ!…というのが私の持論なのさ!
歌詞と曲調とアキラさんのドスのきいた声が完璧にマッチしていて実にエキサイティングだ!

290vアキラさんの熱唱に呼応するように気迫のこもったソロを展開する征史さん。

Img_0505 とにかく楽しそうなふたり。
いい大人が音楽で遊んでいる感じ。
すごく無邪気で明るい雰囲気が伝わってくる。
音楽を作る楽しさやうれしさを改めて教えてくれてるようだ。

300ココで征史さんのロマンチシズムが極限まで炸裂する。
曲は自作の「思えども思えども」。

310_ooコレはね~、何だか知らないけど、きますよ~。
ヘタするとポロっときちゃう。
「ネコになりたい」なんて思ったことは生まれてこの方一度もないけれど、ものすごく胸が締め付けられる曲なの。
こんな曲滅多にない。
征史さんの声と歌い方でなければダメ。
いつもStrange,Beautiful and Loudで狂ったようにハードなベースを弾いている人のやることとは到底思えん。
音楽ってホントおもしろい。

320vまたねぇ、控えめに合わせるアキラさんのコーラスが泣かせるんだ。
この作品は静かなるキラー・チューンだよ。

330amber lumberの出番もいよいよ最後に曲となる。

340_ku音数の少ないギター・アルペジオでアキラさんがポツリ、ポツリと言葉を置いていく「ここにある宇宙」。350v場面は一転!
征史さんのベースが大爆発。

360v相対するように雄たけびを上げるアキラさん…とはならない。
まるで征史さんのベースが別の次元の出来事であるかにように自分の世界からは出ないでいるのだ。
ナゼならアキラさんの宇宙がそこにあるから。

370vなんのこっちゃない、ディレイを派手に使ったりして、SBLの時よりよっぽどクレイジーなベース・プレイなのよ。
コレもamber lumberのウリなんだな。

380全7曲。
短い時間ではあったが、存分にその独特の世界を展開したふたり。

390v今後の活動が楽しみなamber lumberなのであった!

400vamber lumberの詳し情報はコチラ⇒amber lumber Official Website

410(一部敬称略 2017年5月26日 目黒LIVE STATIONにて撮影 ※レコーディング時写真提供:山本征史氏)