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2017年6月 3日 (土)

NATALと祝う石川達也のバースディ <その3> ~REDRUMとグランド・フィナーレ

  
今日は6月3日。
「Rock Meの日」ということで、土曜日だけど変則的にMarshall Blogを更新しちゃいます。
というより、三本立てのクロージングを週またぎにしたくないもんね。
  
『Tatsuya Ishikawa’s 27tth Birthday Live Event』も最後の出演者がステージに上がった。
しかし、ナンだね。
このイベントは、各バンドの持ち時間が30分というほぼちょうどいい長さであることに加え、完全に機材を使い回したことにより、大幅に転換の時間を短縮できたところがすごくヨカッタね。
ドラマーがひとりだったので、最も時間を要するドラムス周りの転換や調整の必要がなかったのだ。
こういうイベントの成否は、演奏の中身もさることながら、いかに転換の時間を短くできるかにかかっていると私は思う。
どんなに素晴らしい演奏を目の当たりにしても、幕間の待ち時間のイライラでそんなの吹っ飛んじゃう。
データが残っているのかどうかは知らないけど、ウッドストックなんてどうだったんだろうね?
「演奏している時間」と「転換に費やした時間」の割合はどれぐらいだったんだろう?
映画なんかを観ているとサクサク進んでいるような感じがしなくもないけど、トラブルは多かったようだし、転換に膨大な時間を使っているハズだ。
だからJefferson Airplaneの出番が明け方になったり、日曜日にトリで出演する予定だったJimi Hendrixの出番が月曜日の朝になって、50万人いた観客がたったの3万人になってしまった。
だから、私なんかもコミ入ったイベントの現場に行った時、最初に目を通すのはタイムテーブルに載っている転換の時間。「転換20分」とか書いてあると、もうその日は覚悟を決めなければならない。
ミュージシャンも大変だよ。
お客さんである皆さんがステージに接するのは本番だけだけど、日中から始まるイベントなんか、トップバッターは朝8時頃現場に入らなければならない。
一番最後に全員参加のフィナーレなんてのがあると、12時間以上現場にいなければならない。一日の仕事の大半が「待ち」ということになる。
「待ち」ってのはミュージシャンに限らず、ショウビジネスでは避けられない仕事の一部なんだけどね。
それでみんな手持無沙汰なもんだからタバコを吸っちゃう。
見てるとゲームをやって時間をつぶしている人もやたら多いね。
読書をしている人はあまり見かけない。ましてや心を落ち着けるために写経をしている人なんかはいないナァ。
  
「entertainment」には「娯楽」という訳がよく当てられるが、「もてなし」という意味もあって、お客さんを「もてなす」には飽きさせないことを考えるのが肝要なのね。
ところがね、あんまり矢継ぎ早に次から次へと出し物をステージに上げちゃうと、それはそれで観ている方もゲンナリしちゃうものなのよ。
このあたりのサジ加減が難しい。
さすがに14歳の時から40年以上古今東西のコンサートを観てきているので、自分なりのこだわりの進行ってものがあって、イベントの台本を書いていていつもこのあたりにすごく神経を使うのね。
昨年のMarshall GALAの台本を書いていて最も時間をかけて考えたのは実際にこの部分だった。
その点、この達也くんのイベントは飽きずに比較的アッという間に最後まで来ちゃった。
  
最後に達也くんの誕生日を祝ったのはREDRUM。

10_3QUORUMから北川遊太。

20v_3同じくQUORUMから盆子原幸人。

30_2そして、石川達也。
泣いても笑っても本編最後の出し物!

40_2REDRUMは達也くんが参加していたQUORUMの前身バンド。
REDRUMは「murder(殺人)」のバックワード(逆さ読み)。
しかし…一体何回観たかな~『シャイニング』。
大学の時か?封切り時に映画館へ観に行ったけど、ダニーが書いた「REDRUM」の文字が鏡に逆さに映るシークエンスにはゾッとした。
ワタシ、好きでコロラドにあるこの映画のモデルになったホテルへ泊まりに行ったから。
そして、劇中で使われている音楽の一部がバルトークの「弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽」の第三楽章であることを数年前に発見してすごくうれしかった。
あのダニーが幽霊を見ちゃう時のコワい音楽ね。
でも、この曲、コワいのは第三楽章だけなのよ…第一楽章も結構コワいか?
イヤ、その第三楽章がやたらとコワく聴こえるのもキューブリックがコワいシーンに使ったからなのです。
第二楽章も第四楽章もメッチャかっこよくて、もし、『シャイニング』を観ていなかったら第三楽章も「ヘンな曲だな~」で終わっていたハズ。
スゴいな~、キューブリックは。
キューブリック映画の音楽というと、『2001年』のツァラトゥストラとかシュトラウスばっかり有名だけど、『アイズ・ワイド・シャット』のショスタコーヴィチなんて感動的ですらある。
ま、キューブリックも感動させようとしてやってんだろうけど。
『博士』の「We'll Meet Again」、『オレンジ』の「雨に唄えば」のコントラプンクト、すなわち「対位法」も強烈すぎるぐらい強烈だった。
コレは音楽の「対位法」とは異なり、凄惨なシーンに美しい音楽や陽気な曲を故意にかぶせて印象を強くする演出技法ね。
映画を観ているとよく出て来るやり方なんだけど、ものすごくショッキングにコレが使われていると思うのは黒澤明の『生きる』だね。
それはブランコに乗って志村喬が口ずさむ「ゴンドラの唄」ではなくて、「逢引きをやめる」と切り出す小田切みきにすがる志村喬の憐れなふるまいのすぐ後ろで、裕福な私立学校の女学生たちが楽し気に誕生パーティをしているシーン。
コレは強烈だった。
もうちょっとキューブリックで脱線ね。
私が初めてキューブリックの映画を観たのは1975年に公開された『バリー・リンドン』だった。
ビデオがない時代、もちろん映画館へ赴いた。
それが長いばっかりで退屈でね~。こっちは13、14歳だったから西ヨーロッパの歴史的背景なんてサッパリわからないから。
でも、映画の中で使われていたクラシック音楽の数々がすごく気に入って、映画を観た数日後に御茶ノ水の駅前にあった小さなレコード店でミュージック・テープを買った。
収録されていたのはおとなしい曲ばかりであったが、好きで一時期結構聴き込んだ。
題名がもうわからないのだが、特にモーツァルトの一曲と、メインのテーマ曲として使用されたシューベルトの「ピアノ三重奏曲第二番」が気に入っていた。
キューブリックは、この作品で18世紀の様子をリアルに再現しようと、最新の機材を導入し、ローソクのほのかな明かりだけで夜間の室内のシーンを撮影した。
そればかりでなく、音楽もすべて原作の時代に合わせ、18世紀の曲だけを採用しようと努め、その当時使われていた楽器、すなわち実際に1700年代に製作された楽器を使用して録音しようとしていたらしい。
こういうところ、『赤ひげ』で内部が絶対に見えないにもかかわらず、大量の薬の引き出しの中すべてに実際に薬を入れさせて撮影に臨んだという黒澤明と同じですな。
さて、この『バリー・リンドン』、あれから40年近く経って、イギリスが身近になった今観るとメッチャクチャいいんだよね。大スキ!
ストーリーも役者の演技も映像も音楽も、どれも素晴らしい。
『時計じかけのオレンジ』の撮影の時、マルコム・マクダウェルが「どうやって作品を監督するんですか?」と巨匠の監督手法について尋ねた時、キューブリック本人がこう答えたという。
「I don't know what I want but I do know what I don't want」
カッコよくね?
達也くん、ゴメン!大幅に脱線しちまった!「REDRUM」なんて言うもんだから!
50_2遊太くんも幸人くんも久しぶりのMarshall Blog登場。
昔はQUORUMにもしょっちゅう出てもらっていたんだけどね。

60曲はQUORUMの「3J」とJimi Hendrixで「Voodoo Chile」。

7026曲目まで来た!

80その三人にRosebud Twinsが加わる。
Rosebud!「バラのつぼみ」やね?
私が中学の時、『ローズバッド』という映画が封切られた。

90コレコレ!
私は観ていないんだけど、チラシを持ってる。
ピーター・オトゥールにリチャード・アッテンボロー、ピーター・ローフォードも出てる。名優ぞろいだ。アッテンボローは『ジュラシック・パーク』の琥珀のおじいちゃん。著名な映画監督でもある。
名前を挙げたこの3人、すべてイギリス人。アメリカ映画なんだけどね。なんでなんだろう?
監督はオットー・プレミンジャー。
原作はヘミングウェイの孫娘のひとり、ジョーン・ヘミングウェイの共著。ヘミングウェイにはマーゴという女優のお孫さんもいて一時日本でもずいぶん話題になったが、自殺したんだってね。
下のチラシに「シネラマ」ってあるでしょ?
今の若い人はこんなの知らないよね?
要するに超大画面の映像システム。3台のカメラで同時に撮影して、それを同じく3台の映写機でスクリーンに画像を映し出すシステム。
当然、この手法で撮影された作品は上映できる映画館が限られており、私が何回か経験したのは銀座一丁目にあったテアトル東京だけ。
『七人の侍』はシネラマではないけど、小学生の時、父に連れられてこの映画館で観たな。
シネラマは制作にアホほどコストがかかるためそれほどは普及しなかったらしい。
「大きいことはいいことだ」のいい時代の産物だ。
今、何でも小さくなっちゃったもんね。
小さいギター・アンプなんてあまりに悲しいわ。
ひとつ、映画の規格について話が出たところでおもしろい曲をひとつ紹介しておく。
それは1957年のミュージカル映画『絹の靴下(Silk Stockings)』。夏木マリじゃござんせんよ。
音楽はCole Porter。音楽監督は、今はクラシックでブイブイいわせているけど、元はジャズ・ピアニストのAndre Previn。
元はもちろんブロードウェイ・ミュージカルで「All of You」という大スタンダードを生み出した作品として知られる。
コレに出てくる「Stereophonic Sound」というフレッド・アステアとジャニス・ペイジがデュエットする挿入歌がおもしろい。
「広告なんか出さなくても、スターが出ていなくても、Glorious Technicolor、Breathtaking Cinema Scope、それにStereophonic Soundがあれば心配ない」と歌詞に色々な映画の専門用語が出て来る。
歌のテーマが映画でなくても、こういう類の曲って日本はまったく出て来ないね。
こういうところにアメリカの文化を感じ取るんですよ、私は。
この映画、あの破天荒に美しい、私の父の世代のあこがれ、シド・チャリシがコミカルなロシアのスパイ役で登場するのもうれしい。
昔の美人は本当に美しかった。
そして、昔のアメリカのエンターテインメントは本当にスゴかった。

そして、「Rosebud」といえば『市民ケーン』。
「映画好き」として恥をさらすことになるけど、私、この映画史上ナンバーワンの名作といわれる『市民ケーン』を観ていないのです。
PDの映画のDVDって、今すごく安く買えるじゃない?
「やっぱり『市民ケーン』は観ておかないとマズイだろう」と思い、数年前に意を決してDVDを買ってきたら不良品で見事再生できず。
結果、観ずじまい。
ココでまた映画の話題で脱線したいところだけどヤメとく。
脱線の〆にひとこと。
こういう脱線の箇所を飛ばして読んでいる方も多いと思うんだけど、あるいは古い話ばかりでウンザリしている方もたくさんいらっしゃることでしょう。
アノね、私は脱線で古いモノとか懐かしいモノを紹介しているつもりは毛頭ないんですよ。
ただただ「いいモノ」を紹介しているつもりなの。
中には完全に騙されたつもりで、脱線で紹介した映画なり音楽なりを体験されて「すごくヨカッタ!」とお礼を言ってくださる方もいらっしゃる。
こういう時はうれしよね。
だから脱線はやめられません!

50r4a5840 The Rosebud MouthからSEKUとTAKA!

100_2それぞれのオリジナル曲を演奏。
いいぞ、いいぞ!
QUORUMナンバーは「Limousine」と「Danger」。久しぶりに聴いた~!
The Rosebud Mouthから「Rock’N'Roll Chauffeur」と「Life In The In Groove」を演奏した。
「chauffeur」なんてフランス語だからなかなか綴りが覚えづらいよね。「お抱え運転手」という意味。
昔、ジム・マーシャルのショウファーを長年務めたジョン・ケントっていうおジイちゃんがいてね。私はずいぶん可愛がってもらった。
ある時、「今日は孫の誕生日なんだよ!」なんて話をしてくれて、「何をプレゼントするの?」と訊くと、「『ナニを』だって?Marshallにキマっているじゃないか!」って誇らしげに言ってたな。
お孫さんはギターをやっているらしく、当時出たばかりのミニ・スタック(今でいうMGシリーズ)をプレゼントしたらしい。
なつかしいな~。
ジョンがMarshallを離れて以来一度も会ってないけど元気にしてるかナァ?
私ね、工員さんを除いての話、ディストリビューターまで含めて、多分世界のMarshall関係者のOldest10に入ってると思う。
向こうの人は簡単に職を変えちゃうからね。続けているだけで自動的にドンドン古くなっていっちゃうの。

110_2こうして本編が終了。
31曲でドラムを叩いた達也くんが何かを手にして奥から出て来た。

120プレゼント・コーナー!
KANちゃんがクジを引く役。
「♪ナニがでるかな?」と、ここでも大活躍!
Marshallからも1959の三段積みを賞品に提供したんだけど、達也くんが楽屋に忘れてきてしまったので写真には写っていない…というのはウソで、ささやかにMarshallバッグとNATALティーシャツを提供させて頂きました。

130_2そして、アンコール!

140全員参加しての最後の一曲はKISSの「Rock & Roll All Night」。

150_2ハダカ祭!
「安心してください、はいてますよ!」ってのゼンゼン見かけなくなったな。

160_2アラ?リョータくんもいつの間にか加わってる!

170v_2ボーカル陣大ハッスル~!

190_2最後は達也くんからひとことご挨拶。
「アンコールを入れて32曲叩かせて頂きました!来年は無いわ」だって!

200v_3で、肩車。
結局みんなコレをやりたい。

S41a0120 「ありがとうございました~!」

210で、終わり。
すぐに30歳になっちゃうよ。
そして、30代なんてアッという間だよ。
40代はもっと早い。
すぐに50歳になってアレよアレよという間に還暦だ!
還暦の時またやろうぜ!NATALがあれば楽に叩けるよ、32曲。
…って、オレ、生きてればその時「米寿」だわ!
あ~、めでたいなったら、めでたいな!

230ココで今回のレポートの一番最初の達也くんの言葉に戻る。

240「全32曲…もしNATALじゃなかったらとても最後まで叩けなかったと思います!」
達也くん、ありがとう!
そしてお誕生日おめでとう!

60 <おわり>

1965年創業のNATAL(ナタール)はMarshallのドラム・ブランドです。

M_natal_square

★NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
★NATAL製品は全国有名楽器店にてお求めください。
★NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。ドラマーの方、「NATALの部屋」ご指名でお出かけください。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2017年4月8日 大塚Hearts+にて撮影)