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2016年11月

2016年11月 1日 (火)

Meet Atsuhiko at the Jazz Corner of the World~杉本篤彦 Plays ASTORIA

「草加、越谷、千住の先よ、オレんち春日部もっと先」…という野原家の人々が聞いたら文句のひとつも言いたくなるような歌があるようだが、最近の北千住のにぎやかさといったらないよね。
昔は「おばけ煙突」でよく知られる東京電力の火力発電所がこんな街中にあったんだから驚いちゃう。日本のバタシーね。
この発電所は1963年に稼働を終了したというから、私は実物を見た記憶がもちろんないのだが、父の「前から見ると四本、横から見ると一本」みたいな話にものすごく興味をひかれたのは覚えている。
それよりずっと前、江戸時代から明治の初期にかけては、隣の南千住に「小塚原刑場(こづかっぱらけいじょう)」という罪人の処刑場があって、磔刑(はりつけ)、火刑(火あぶり)、梟首(きょうしゅ、さらし首このこと)がそこで行われた。
高杉晋作が師匠の吉田松陰の骸を掘り出しに行ったり、杉田玄白が死刑になった罪人の腑分け(解剖)を行ったのもココ。
この腑分けのあたりは杉田玄白の仲間で、『ターヘルアナトミア(解体新書)』を苦心惨憺の末に訳出した前野良沢のことを記した、吉村昭の『冬の鷹』という小説に詳しい。コレ、メッチャおもしろいよ。私なんかいつも英語でくろうしているので、大層興味を持ちつつ読んだ。

10_2今日の舞台…。
駅を背に左に線路沿いに進むと、細い道に無数の呑み屋が林立している。
まぁ、どこも特徴豊かな雰囲気で好きな人にはタマらないだろう。
その路地を進みしばらく行って右に曲がると、ちゃんこ屋の奥に…

30v 
ソレがある。
20v
Birdland!

40_2 「Birdland」とは1949年、ジャズの黄金期にマンハッタンの西52丁目にオープンしたジャズ・クラブがオリジナル。
モダン・ジャズの開祖であり人気絶頂だったCharlie 'Yardbird' Parkerにちなんでその名前がつけられた。
クラプトン、ベック、ペイジが在籍したことでしか日本では評価されないThe YardbirdsもCharlie Parkerのニックネームを借用している。
当時の52丁目はジャズのメッカ。
ジャズ・クラブがひしめき合っていて、セロニアス・モンクが「52丁目のテーマ」という「カッパの黄桜」みたいな曲を書いていることはジャズ・ファンなら誰でも知っているところ。
20年ぐらい前に訪れてみたけど、ジャズらしいものはな~んにもなかった。
マンハッタンもロンドンみたいにプラークをやればいいのナァ。かなり面白くなると思うよ。
さて、オリジナルのバードランドは1965年に閉店したが、1986年に場所を変えて再オープンした。
私は15年ぐらい前に穐吉敏子のオーケストラを観に行ったことがあったけど、ヴィレッジ・ヴァンガードとは異なり、観光スポットみたいな感じだったな。

50_2 さて、喜々として脱線しておりますが…。
そのオリジナルのバードランドで収録された名ライブ・アルバムというモノは枚挙にいとまがなく、もっとも有名なのはアート・ブレイキーの『A Night at Birdland(バードランドの夜)』だろう。(下の写真の左から3列。ジャケット違いで私は3種類持ってるの)
ブレイキーは、その後も二種類のバードランドでのライブ音源集をリリースしている。どれもカッコいい!
今日の記事のタイトルはそのアルバム・タイトルにちなんでいるというワケ。
自慢になって恐縮だが、私はアート・ブレイキーに会ったことがある。
しかも、富山のホテルで!
当時勤めていた会社の隣りが富山市で最も高級なホテルで、ジョージ川口さんの記念コンサートが富山で開催され際、出演者ご一行がそのホテルに投宿していたのだ。
その中には渡辺香津美さんもいらっしゃった。
それを知った私は当然のごとく仕事をチョット抜け出して隣のホテルに忍び込んだ。
今にして思うとよく入れたと思うのだが、宿泊階でウロチョロしていたら、真っ黒のオジイさんが向こうの方から「ハ~イ、ハ~イ、ハハハ」とニコニコしながら歩み寄ってくる。
「アレ?もしや…あの声…」
近くで見たらブレイキー!
よく見たらアート・ブレイキー!
私を待たせていたかのように自然に握手。そしてバイバイ。
コレだけなんだけど、マァ~うれしかったな~。
当然その晩のコンサートに行ったんだけど、エルヴィンや松本英彦、香津美さんが加わってRoland Princeの「Antigua(Anti Calypso)」を演奏してくれたのには涙が出た!
さて、バードランドに戻って…。
この店にはピー・ウィー・マーケットというミュゼット、すなわち「小人」の名MCがいて、ジャズを聴き出しら絶対に避けて通ることができないこの『A Night at Birdland』にその名調子が収録されている。
いわゆる「ベランメエ調のミューヨーク英語」というヤツ。
「サンキュー!」を「サンキョ~!」と叫ぶ感じ。
このMCがカッコよくてね~。
ま、ココは興味のない人には面白くもなんともないだろうけど、チョット引用してみようか?
"Ladies and gentlemen, as you know we have something special down here at Birdland this evening.  A recording for Bluenote records...
When you applaud different passages, you hands go right on the record.  That's so when they play the over and over thtoughout the country, you may be someplace and ah, so well that's my hand on one of these records, that I dug down at Birdland...."
と、マァ続く。
コレはいい加減なモノでもなんでもなくて、どうしてもマーケットが何をしゃべっているのかが知りたくて、昔、少しの間英語を教わっていたカナダ人の女の子にディクテイションしてもらった。だからほぼ正確だ。
もちろんこのカッコいいMCに続く、スタンダード曲「There Will be Never Another You」のコード進行を借用したホレス・シルバーの「Split Kick」から始まるこの二連作には最高の演奏が収められている。
ちなみにロビン・ウィリアムスの『ガープの世界(ジョージ・ロイ・ヒル監督)』って映画あるでしょ?
あの中で効果的に使われているナット・キング・コールが歌っている曲が「There Will be Never Another You(あなただけを)」。『Two in Love』というロマンチックなアルバムに入っているので興味のあるロマンチストの方はどうぞ。
55_2さて、北千住のBirdland…

100_2 またコレがものすごく感じのいいお店でビックリ!
マスターもめっちゃナイスガイだ。

90v
入り口にはちゃんとチャーリー・パーカーの写真が飾ってあるし…

80_3
招き猫で千客万来!
この猫ちゃん、右手を挙げているとお金を呼んでいて、左手だとお客さんを呼んでいると言われているんだよね。
私だったら両手を挙げさせちゃう。
Birdlandさんは左手を挙げているので千客万来。

85_2

ということで、今日のライブは…

60v 満員御礼!
杉本さんのギター・トリオ。
写真が撮れん!

110_2
ステージにはASTORIA CLASSICがセットされているのよ!

70_2杉本篤彦

120v納浩一

130v 板垣正美

140v いいナァ~、こういうジャズ特有の雰囲気!

150v まずは「Four on Six」。
ガーシュインの「Summertime」のコード進行に基づいて作られウェス・モンゴメリーの代表作。
コレは杉本さんから教わったんだけど、タイトルは「4本の指が6本の弦に乗っている」サマを表しているそうだ。
ジャンゴだったら「Two on Six」ってコレ何度も書いたか?
ワンパターンということなかれ!「ブレない」マーブロなのです。

160続いてはロバート・グラスパーという黒人ジャズ・ピアニストの曲。
全然知らないけどいい曲!

170v続いては今年5月にリリースしたアルバム『Tomorrow Land』から「怪人二十面相」。
190
コレが『Tomorrow Land』。
ギターはすべてMarshall JVM210Hと1936で録音した。
マァ、とにかくこの素晴らしいMarshallクリーンを聴いてもらいたいものだ。

146cd_2

ストレート・アヘッドな4ビート以外にも抜群のグルーヴを聴かせてくれる納さん。
「怪人二十面相」はややロマンチックにしてハードなマイナー・ワルツだ。

180v

杉本さんの後ろに見える「怪盗」のような、職質はまぬがれないような、サングラスのオジさんは若き日のチック・コリア。
1970年前後?
この頃のチックはメッチャかっこよかった。以前にも書いたけど私的には『Three Quartes』までかな?
最近ではスッカリ「スペイン恐怖症」になってしまった。
ネコも杓子も「スペイン」ばっかり!
ロックでは「Burn」がもうウンザリ。
クラシックでは「カルミラ・ブラーナ」だ。
日本人ってどうしてこうなっちゃうんだろう?

200_2 杉本さんのMCはとてもステキだ。

230 ジャズメンに落語好きが多いのはよく知られていることで、テナーの中村誠一さんはソロ・アルバムで、有名な噺のサゲばかりを集めてくっつけた「フリー落語」というのをやっていた。
いいアイデアだ。
学生時代の杉本さんは有名なアメリカン・フットボールの選手で、決して落研に属していたワケではないのだが、落語をやってもかなりいい線イケると私はニラんでいる。

240v まず声がいいのだ。
噺家は声が太すぎるとエラそうになってしまって、滑稽話ができない。
そこへいくと杉本さんの声は硬すぎず、妙に柔らかすぎずでちょうどいい。噺家の声だ。
そして何よりも、話し方がとてもリズミカルなのだ。
で、次の曲を紹介する。
グラント・グリーンの人気盤、『Feelin' the Spirit』から「Deep River」。
杉本さん曰く…「深川ですね」。
ね、見事に落とした!

250v_2 そして、Bobby Hebbの「Sunny」。
ウェス・モンゴメリーの演奏も人気があるが、ウェスに捧げられたというパット・マルティーノの演奏がすさまじかった(『Live!』収録)。
杉本さんの「Sunny」はまさにお日様のあたたかさ。
ASTORIAもいい仕事してます!
ま、正直、お値段もお値段なんだけど、それだけのことはあるね。
聴いていてこれほど価値のあるいい音は、弾いた感触はたいていその何倍も価値あるいいものなんだよね。

260 休憩をはさんで第二部。
こぢんまりしたジャズ・クラブって休憩の時間がまたいいんだよね。
今まで目の前で演奏していたミュージシャンと親しくおしゃべりができたり、イッパイやたりして…。
280

 曲は「Three Coins in the Fountain」。杉本さんはハンク・モブレーの名前を出して「なじみのないスタンダード」と紹介されていたが、「なじみがない」のはスタンダードではないのでは?…というのは単なる揚げ足取り。杉本さんゴメンナサイ!
これは『愛の泉』という映画の主題歌で、1954年、オスカーの「オリジナル主題歌賞」を獲得した。
作曲はジュール・スタイン。作詞はサミー・カーン。サミー・カーンはジャズ・ギタリストで元カーラ・ボノフの旦那さんのスティーヴ・カーンのお父さんね。
スティーヴには昔、1936を貸したことがあったっけ…。
杉本さん、よくこんな曲を演ってるな…と思ってピンときたのはグラント・グリーン?
この曲が収録されているモブレーのアルバム『Workout』にはグラント・グリーンが参加しているのだ。
270

 ところで納さんの後ろに飾ってある写真…

290vこの写真は1958年にアート・ケインという人がマンハッタンのハーレムで撮影し、エスクァイア誌に掲載された超有名な写真。
スピルバーグも映画の題材にしたんだって?
写真には57人のジャズメンが写っているが、よく見ると、シャッターを切った時にたまたま疲れて座ってしまったミュージシャンがいて、結果58人が集まっていたことが後でわかったとか。
その58人目はウィリー・"ザ・ライオン"・スミスという1920年代に多くの録音を残したストライド・スタイルのピアニストで、私は中学生の時からこの人の名前を知っていた。
友人のお父さんからレコードをもらったのだ。
その時にいっしょに頂戴したレコードはフランスのピアニスト、アンリ・ルノーのもので、私の人生で初めてレコード棚に入ったジャズのレコードはこの二枚だった。
ハード・ロックに夢中だった時分だったので、そんなモノもちろん聴きはしなかったけどね。
そんなことがあったものだからこの写真には興味があった。
他にココに写っているのは…、
カウント・ベイシー、アート・ブレイキー(本日二度目のご登場!)、ロイ・エルドリッジ、アート・ファーマー、ディジー・ガレスピー、ベニー・ゴルソン、ジョニー・グリフィン、ジジ・グライス、コールマン・ホーキンス、ミルト・ヒントン、ハンク・ジョーンズ、ジョー・ジョーンズ、ジーン・クルーパ(ジム・マーシャルのヒーロー)、エディ・ロックジョウ・デイヴィス、マリアン・マクパートランド、セロニアス・モンク、ジェリー・マリガン、オスカー・ペティフォード、ソニー・ロリンズ、ジミー・ラッシング、サヒブ・シハブ、ホレス・シルヴァー、スタッフ・スミス、ウィルバー・ウェア、レスター・ヤング…等々。
幾人かを除いて、普段から自分が聴いているようなモダン系の人の名前を選って並べてみた。
スゴイね~!スゴすぎて名前だけでめまいがしてくるわ。
白人はほんのチョット。1958年と言ったらまだすさまじい人種差別が横行していた頃でしょう?
どんなだったんだろうね?
パッと見てビックリするのは、マリアン・マクパートランドだ。
この人、OBE(ジム・マーシャルがもらったヤツね)も持っているイギリス人女性なんだよね。
スティーリー・ダンのドナルド・フェイゲンとウォルター・ベッカーが、マリアンとピアノを囲んで実演を交えながら、ジャズについて語ったラジオ番組のCDはおもしろかった。
同じイギリス人女性ジャズ・ミュージシャンでもクレオ・レーンは「Dame(デイム:貴族の称号のひとつ)」をもらっている。
クレオ・レーンはジム・マーシャルの幼なじみだという話も聞いたが、『Shakespeare Jazz』なんてアルバムを出しているぐらいイギリスに根差した音楽活動をしたからだろうか?

300 レオン・ラッセルの「Masquarade」。
そうだ、杉本さんがMCでおっしゃっていたが、この曲正式には「(This) Masquarade」で、頭文字のつもりで「M」で検索しても出てこない…という。
ナルホド!

S41a0124 『Tomorrow Land』から自作曲の「遥かなる大地へ」。
杉本さんらしいポップであたたかな曲。

310v おなじみクラプトンの「Wonderful Tonight」ではダブル・オクターブを披露。
ダブル・オクターブは一弦と六弦の同じフレットを押さえ、ボトルネックのように、ネックに沿って運指する技法。
つまり、2オクターブの音の高低差が生まれる。
この弾き方だと、フルアコースティック・ギターの場合、14、15フレットまでしか押さえられない。つまり、使える音の数が極端に少なく、技巧的にもかなり無理がある奏法なワケ。
オクターヴ奏法の達人、ウェス・モンゴメリーが開祖なのかな?
名ライブアルバム『Solitude』あたりでウェスの演奏を聴くことができるが、その後はほとんど演っていないのではないだろうか?
多分、苦労が多いワリにはフレーズに発展性がない…という結論に落ち着いたのではなかろうか?というのは邪推かな?

330
ショウの中では板垣さんのドラム・ソロもフィーチュアされた。

320v最後には映画『Mo'Better Blues』から。
コレはブランフォードが噛んでいるのか…。
先週の『1000回記念』のメッセージにも書いたが、杉本さんとの音楽的な志向がゼ~ンゼン自分とは違って実におもしろいし、勉強になる。
アンコールは「You've Got a Friend」。
杉本さん、メジャー・ブルース・ペンタでガッシガシ弾かれていた。

340 やっぱりASTORIAの音は破天荒に素晴らしい!
もちろん、それは杉本さんの魅力的な音楽があってこその話しだ。
どんなにいい楽器でも、いい音楽がなければ何の意味もないからね!

350v杉本篤彦の詳しい情報はコチラ⇒杉本篤彦オフィシャルブログ
ASTORIAの詳しい情報はコチラ⇒【Marshall Blog】いよいよASTORIAが出るよ!

360v_2(2016年9月10日 北千住Birdlandにて撮影)