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2016年9月15日 (木)

ロック・インスト・ナイト

ロックを聴き始めた本当に最初の頃、歌詞カードの「Instrumental」といういう表記を謎に思ったものだった。
歌がないその曲を聴いてすぐに意味を察したが、当時は「歌のない曲」を奇異に感じた記憶がある。
ロックにも慣れて、楽器が暴れるパートを聴いて「カッコいい!」と最初に思わせてくれたのは、Deep Purpleかナァ。
その後、プログレッシブ・ロックにのめり込むと歌のないロック、あるいはインスト・パートが普通になった。
それから、80年代に入って新しいロックを全く聴かなくなり、ジャズに夢中になってからは当然ほとんどがインスト。ま、ボーカル・ジャズも大好きで、聴くには聴くが…。
そして、今ではクラシックをよく聴くようになって当然インスト。オペラや声楽曲はたまにしか聴かない。
こうして振り返ってみると、私の音楽人生ってほとんど「インスト」なんだナァ。
あ、歌がキライなんじゃ決してありませんからね。
何と言っても「歌」は楽器のチャンピオン。
クラシックの声楽の連中が自分の声のことを「楽器」と呼んでいるらしいことは以前にも書いた。
ドイツでもフランスでもオーストリアでもない、イタリアの音楽こそが「世界の音楽の最高峰」とされるのは声楽が盛んだからだ。
…でも、今日は前フリにあるようにインストゥルメンタルのロックを演奏するライブのレポートなのよ。

Img_0182吉祥寺のシルバーエレファントでシリーズで展開しているのが『ROCK INST NIGHT』。
先ごろBLINDMANに正式加入した、ドラムの 實成峻と…

S41a0087_2TORNADO-GRENADEのベース、寺沢リョータが中心となって企画している。

S41a0043今回は、ギターに田崎慎也を迎えての開催となった。
田崎さんはかつてReyというアニソン・バンドで活躍。
今どきの若いギタリストにしては、シュレッディングに重きを置いたスタイルではなく、トラディショナルなフィーリングでジックリと弾いて聴かせるタイプ。
インストを演るような若いギタリストで、ピロピロ弾かない人はずいぶん久しぶりのような気がする。

S41a0039今回は4100と1960を使用。
音もぶっとい!

Img_0015 7月は田川ヒロアキがゲストに招かれた。
もちろんMarshall。

Img_0136冒頭は、基本の三人による演奏だ。

Img_0004オープニングの曲は「Red Field」。
田崎さん作によるミディアム・テンポのメロディアスなナンバーだ。
S41a0246
中盤では一曲目にしてベースとドラムのソロが炸裂!

Img_0142何といってもこのセッションの主役だもん。

S41a0050峻くんの呼び込みで田川ヒロアキ登場!
いきなりトークブッコミ!
このチームのリズム隊はTAGAWAジュニアであることなどに触れた。
峻くんは浩二さんのお弟子さん、リョータくんはてらちんのご子息だからね。

5_s41a0286いきなり盛り上がっちゃって次の曲に入りにくくなってしまった!
考えてみるとヒロアキくんは演奏もそうだけど、いつもトークも達者な先輩たちに囲まれて鍛えられてるからね~。
簡単にトークが暴走してしまう…が、ヒロアキくんは時間には相当厳しい人だから大丈夫。
ヒロアキくんを迎えての二曲目は、TAGAWAでもおなじみの「Stranger Destroys Arms」。

Img_0105ヒロアキくんが20年以上前に書いた反戦曲。
タイトルは「武器を捨てろ」でも曲は今にもケンカがおっぱじまりそうなガチガチの硬派メタル。
ヒロアキくんの金属サイドのショウケース的な曲だ。

S41a0281今回はツイン・ギターなのでよりサウンドがヘビーだ。

Img_0114三曲目は「Technical Difficulties」。
Paul GilbertがMr. BIGを脱退後、13年ぶりに再結成したRacer Xからのナンバー。
コレ、誰かも演ってたナァ。
タイトルが印象的なので曲は覚えている…けど誰が演奏していたのかが思い出せない!
本人だったっけかな?
最近こんなのバッカリよ。
もうすぐまた来るね、Paul。
今回はJVM210Hを使うそうだ。ヒロアキくんの愛機と同じ。
さてこの曲、やはり今回のセッションの中でも難解チューンのひとつで、ギター二人の高速ギターのハモリが聴きどころ。
ギターだけでなく、ドラムとベースも厄介なフレーズが多い。

S41a0077それを必死に再現する峻くんとリョータくん!

Img_0134続けては田崎さん作の「Dangan」。
「弾丸」というのは…っていつかやったね。

Img_0018_2同じ田崎さんの作品で、ミディアム・テンポでメロディアスな形式でも一曲目とはまた違った作風だ
。「なんとなく、ヴィニー・ムーアを彷彿とさせる」とはヒロアキくんの弁。
サビのリズムを倍にしてし、田崎&田川のコンビネーションで、のびやかな旋律を奏でる。
ココはダブル「田」だね。
もしふたりでバンドを作ったら名前は「でんでん」にしよう。

S41a0275一部の最後は、これまたTAGAWAでおなじみ「That's Over」。

Img_0110TAGAWAのライブでは、この曲でてらちんのベース・ソロと浩二さんのドラム・ソロが大きくフィーチュアされる。
当然、ジュニアにも同じことをしてもらう!
張り切っていってみよう!

Img_0158二人とも若さあふれるプレイで(…と書くとシニアの方はかなり年老いているように聞こえるが、そんなことは一切ございません)、暴れまくる。
双方、父と師匠譲りの技はもちろん、彼ら独自のテイストも満載で観衆の大喝采を浴びた。
そう、若者は遠慮しちゃイカン。
リョータくんのプレイもケタ違いの迫力!何しろ単位が「テラ」だから。
あ、コレはfacebookで紹介したんだけど、こないだカメラ屋さんでレンズを見ていたら、店員さんが寄ってきた。
その名札を拝見したら、ひらがなで「めがさわ」さんって書いてあったんですよ!
「メガ沢」?…アタシャびっくりしちゃって!
場所が場所だけに完全に「メガ・バイト」の「メガ」だと思い込んじゃったワケ。
ネタを明かせば「女ケ沢」さんという東北がオリジナルの姓だとのこと。
家に帰ってこのことをウチのセガレに話した。
「こうなると『ギガ沢』さんに現れて欲しいね!」
すると息子がこう答えた。
「ダディ、ナニ言ってんの!ベースの人は『テラ沢さん』じゃん!そっちの方がスゲエ」
なるほど!…若者の感覚はサスガだわい。(私のことを「ダディ」と呼んでいるというのはウソです。時々です。)

もうチョットいい?
そこで、調子に乗って調べてみた。
メガ、ギガ、テラと来て、次は何か?
「ペタ」というそうです。5を意味する「ペンタ」の「ぺ」。
さすがに「ペタ沢」さんはいないだろう。
初対面の相手に名刺を差し出して…「お世話になっております。ペタ沢と申します」なんてやったら自分でも吹き出しちゃうゼ!
もうちょっと続けると、次が「エクサ」。6をあらわす「hexa」から。
さらに、ゼッタ、ヨッタとくる。
その次がハーポとグルーチョっていうらしいんけど…ウソだろ~。
コレ、マルクス兄弟の名前だぜ!
グルーチョとなると10の30乗ともなり、まず使うことはないらしい…ってんで適当な名前を付けたんじゃあるまいな?

脱線!
Queenの『オペラ座の夜』とか『華麗なるレース』っていうアルバムあるでしょ。
アレらのアルバムはマルクス兄弟の『オペラは踊る(A Night at the Opera)』と『マルクス一番乗り(A Day at the races)』から転用している。
コレらの元は…

5_img_0008_2 コレです。
名盤の誉れ高いQueenの二枚の代表作だけど、映画の方も最高に面白い。
1930年代の映画。クレイジーだとかドリフだとかのネタの出本がこのあたりにあることが容易に察せられる。
昔の放送作家はマルクスを徹底的に研究してうまくパクったんだと思うよ。

5_img_0003 もうチョットいい?
「若者は遠慮しちゃイカン」ってよく聞くじゃない?
アレ、若いウチはわからなかったけど、自分が年を取って若者を見てるとホントそう思うね。
ガン!といっちゃう積極性は若者だけが持つ魅力なんだよね。
「イエイエ、結構です」は似合わない。このことが最近よくわかるようになった。
若い人は本当に可愛いよ。

リョータくん、ゴメン!テキストと写真がついこんなに離れちまった!

Img_0129曲の終盤はブルース。

 S41a0417
「でんでん」のギターバトルで盛り上げて第一部の幕を下ろした。

Img_0112 第二部の幕開けはTAGAWAのセカンド・アルバム、『Wind』に収録されているアップテンポなシャッフルナンバー「Bound」。
タイトル通り、弾む気持ちを表現したヒロアキくんの作品。
峻くんのチョイスだそうだ。
イントロのタムまわしのフィルは、オリジナル(=師匠)ソックリ!

S41a0082それにしても、「弾む気持ち」ってヒロアキくんに一体どんないいことがあったんだろうね?

S41a0267ステージの雰囲気に慣れ切ったところでサクサクと曲が進む。
今度はCozy Powell Gary & Mooreから「Sunset」。Cozyのソロ・アルバムからの選曲(なんでしょ?)。
田崎さんがグイ~ン、グイ~ンと弾く泣きのメロディがうねっていた。

S41a0018後半ではヒロアキくんも絡んで、さっきの高速バトルから一転した泣きのギター会話を披露した。

S41a0285ヒロアキくんのテーマ・ソング「My Eternal Dream」。
代表曲だけあってヒロアキくんのステージで取り上げられることも多く、いろんな人との演奏を聴いてきたが、この若手バージョンも魅力タップリだ!

Img_0148そういうところがセッション・ライブの面白さのひとつだね。
「歌がない」のでキーの問題もなく、演りやすいということもあるかも知れない。
S41a0424
サビのパートを本番直前のリハーサルで田崎さんに覚えてもらって即実践。
バッチリ、バッチリ!

S41a0095最後に選ばれたのはChick Coreaの「Spain」。
そうですか…、スペインですか…松本孝弘バージョンだそうで…。
また、脱線しちゃおうかな~。
イヤ、後にしよう。
ヒロアキくんがメインを弾き、みんなでテーマをユニゾンでプレイ。
そうですか…、スペインですか…。

S41a0242話題になったロック・アレンジだそうで…(私にはアタマの譜割りがシックリこないけど)。
とにかく四人の熱演で大成功!
これまた大きな喝采を浴びた。

★ココから下、☆までは読まないでください。
「Spain」ね~。
バンドのみんなゴメンね~。
正直言って「Spain」にはもうゲンナリでさ…。
「Spain」と「Burn」はホントにツライ。
「ジャム・セッションの東京音頭」よろしく、どこへ行っても出てくるんだもん。
あの執拗に繰り返すテーマ…。
それでも『Light as a Feather』を聴いたときは感動したもんです。まだ十代だったからね。それから35年の間に何万回聴いたことか…。
今では、アタマの「♪ティラリ~」がチラっときこえてきただけで「ウワ!またスペインか!」と「青菜に塩」状態になってまうのよ。
ちなみにこの「♪ティラリ~」はもちろんロドリーゴの「アランフェス協奏曲」の第二楽章。「アランフェス」はコレばっかり有名だけど第一楽章がメッチャいいんだゼ。
さて、「飽きた」ということの他に何が言いたいのかというと、ChicK Coreaには他にもカッコいい曲がたくさんあるんだよってこと。
すなわち、こういう若い人たちにはまだまだ面白いネタが残されているんだってことだ。
例えば、誰もがすなる「Spain」だったら、「La Fiesta」をロックっぽくアレンジして演った方がゼンゼン目立つと思うんだけどどうだろう。「Sicily」なんかでももいい。
そうだなぁ、チョット乱暴だけど1981年の『Three Quartets』ぐらいまでのChick Coreaは比較的どれも面白い。
ベタだけどReturn to Foreverの「第七銀河」だってあるじゃん?あるいは「Captain Senor Mouse」?
ドラム・フィーチュアなら「Nite Sprite」とか。
私が最近チョクチョク聴いているChick Coreaといえば、60年代後半の『Now He Sings』あたり。
『Tones for Joan's Bones』とか。カミソリのようなアドリブ・ソロがすこぶるカッコいい。
余計なことを書いてゴメンね~、オジさんのことキライにならないでね~。
☆秘密コーナー、おわり~。

で、本編最後は田崎さんの曲で「The Rising」。
「魔界錬闘会」というプロレスがらみのショーのクライマックス・シーンで使用された曲だそうだ。
7分にも及ぶ曲ながら、親しみやすいメロディで聴く者を飽きさせない大作だ。

Img_0009アンコールはマイコーの「Beat It」。
「Beat it!」って意味は知ってるでしょう?「出ていけ!」とか「逃げろ!」っていうことだよね。
コレがなんでそういう意味になるか不思議じゃない?
この「it」は地面のことなんだって。
で、バッと走り出したりする時、第一歩は地面を蹴るイメージがあって、「地面を打つ」という表現でそういう意味が出てくるらしい。
信じるか信じないかはアナタ次第だ。
Img_0102
何でもJohn 5のアレンジだとか。
John 5はMarshallの重要エンドーシーだ。
先攻はヒロアキくん…
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後攻は田崎さんというオーダーで、ギター・ソロからエンディングまですさまじいふたりのバトル!
S41a0097
バック陣もダマっちゃいない!
S41a0054もてるテクニックと情熱でフロントのふたりを盛り立てる!

Img_0125若者の情熱にあふれるバラエティに富んだインストの一編だった!

田川ヒロアキの詳しい情報はコチラ⇒FretPiano

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(一部敬称略 2016年7月29日 吉祥寺シルバーエレファントにて撮影  ※記事制作協力:田川ヒロアキ)