【追悼】KAZ南澤さんのこと
12月20日早朝、KAZ南澤さんが亡くなられた。
予てより闘病中とはお聞きしてはいたが、突然の訃報に驚いた。
私はKAZさんとはほんの数回お会いしただけで、エラそうにここに追悼文を掲載する資格はないかもしれないが、才能ある音楽家をまたひとり失ったことに関する残念な気持ちを書き表さないではいられないし、Marshallをプレイして頂いたファミリーの一員に敬意を示さずにはいられないのである。
KAZさんに初めてお会いしたのは2011年5月2日。仙川のKICk BACk CAFEでのことだった。
それは伊藤広規さんが企画する東日本大震災のチャリティ・イベントだった。
まさにいぶし銀の唄とギターで満員のお客さんを唸らせたKAZさん。
当日の出演者全員で演奏したThe Bandの「The Weight」は涙もののパフォーマンスだった。
この時、KAZさんはMarshallのVintageModernのコンボ、2266Cを弾いてくださり、大層お気に召して頂いた。
終演後、KAZさんとMarshallの話しをした。
KAZさんは『The History of Marshall』の原著を読んでくださっており、その頃発売になったJim Marshallの半生記、『The Father of Loud(爆音の父)』の翻訳の仕事がしたい…とおっしゃられていたのをよく覚えている。
それから半年もしないうちにKAZさんと再会する機会が訪れたのは『いわき街なかコンサートin平』の時のことだった。
2011年10月16日、ステージはメイン会場のいわきアリオス。
森園勝敏、中村哲、そしてここでもリズム隊はA*Iという超豪華メンバー。
持ち時間を大幅にオーバーする熱演で、本当に素晴らしいショウだった。
その名演は伊藤広規& His Friendsという名義で『Relaxin' at IWAKI ALIOS』というライブ・アルバムとなった。
「伊藤広規& His Friends」は森園さんの発案で、アルバム・タイトルは私が提案させて頂いた。
40近くの候補を上げた中から選んでいただいたものだ。出自は「Relaxin' at Camarillo」。Charlie Parkerの代表作でもある「C」のブルースだ。
達人だけがクリエイトできるレイドバックしたあの素晴らしい演奏に「Relax」という言葉がピッタリだと思ったのだ。
私は、撮影した写真を使用して頂いただけでなく、アルバムのライナー・ノーツを書かせて頂くという僥倖に恵まれた。
「好きなだけ書いていい」とのご指示を頂戴し、1曲ずつの解説を交え、アッと言う間に9,000字も書いてしまった。
あの演奏に言及し出すと筆が止まらなかったのだ。
Steve Millerの「Baby's Callin' Me Home」で始まったこのステージ…
Rascalsの「Groovin'」やKAZさんのオリジナル曲も演奏され、まさに「音楽を聴いた~」という充実のステージとなった。
この時もKAZさんは2266Cを使用し、四人囃子の「Lady Violetta」ではシブ~いギターソロを聴かせてくれた。
そういえばこの時、どなたかがおいしい日本酒を差し入れてくれて、開演前にみんなで結構飲んだんだっけ。
さらに1年後の2012年10月20日、またしてもいわきアリオスでご一緒させて頂いた。
楽屋にご挨拶に行くと、KAZさんは一番奥の窓際に座っていらして、ニコニコしながら元気に「オーっす」っと挨拶し返してくれた。
唄にギターにとKAZさんは溌剌としたパフォーマンスを披露してくれた。
結局、私はKAZさんもアオジュンさんも、演奏に接するのはこの時が最後になってしまった。
この時はVintageModernのハーフ・スタックをご使用頂き、バリバリとソロを弾いてくれた。
とにかくKAZさんは隅々まで心を込めて丁寧に歌い、そしてギターを弾いていらした。それは、もはや「好き」を通り越した、生半可ではない音楽へのリスペクトの表れであり、ものすごい「気迫」に満ちたものであった。
また日本の音楽界はひとつの宝を失った。
KAZさん、素晴らしい音楽をありがとうございました。