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2014年10月28日 (火)

三宅庸介『Sound Experience 13 』~Tribute to Jimi

歳が押し迫ってくるとアチラコチラでお目にかかったり、耳にしたりするのは『忠臣蔵』と『第九』と日本では相場がキマっている。
どちらもジックリ観たり聴いたりすることはないナァ…。『忠臣蔵』どうもピンと来ないし、『第九』は「第四楽章」より「第一楽章」のほうがカッコいいし…。
ま、「季節の風物詩」ということで楽しみたい人は今年もそれらを楽しんで欲しいと思う。

一方、我々ロック・バカの「季節の風物詩」のひとつは9月にやってくる。
9月18日近辺に頻繁に開催される追悼コンサートの類…James Marshall Hendrix、すなわちジミ・ヘンの追悼コンサートだ。
今日レポートする三宅庸介のStrange Beautiful & Loudのシリーズ・コンサート、『Sound Experience』の第13回目はJimiに捧げるものとなった。
10三宅庸介
40v
ま、三宅さんは、アバラ骨の出具合がJimiに似ているということだけでうれしい人なので、年がら年中Jimiを追悼しているようなものだが…。20そして、三宅さんのギター・サウンド。
その激烈な音色は、「抜け」だとか「太さ」とか、そういったギター・サウンドの良しあしを評価する言葉を超越した特別なものだ。
Robin TrowerのようにJimi Hendrixに強い思慕の念を持っているものだけが成し得る特別なサウンドなのだ。

30もちろんそのサウンドはMarshall以外から発されることは一切なく、もしそのトーンを欲する者はMarshallを制し、自家薬籠中のモノにしなければならない。

70

三宅さんのMarshallはJVM210Hと1960B。
ご存知の通り、以前は1997年製のJCM2000 DSLを愛用しており、今でもファースト・チョイスはその自分のMarshallだが、最近完全にJVMの魅力を発見してしまった。
…ということはですよ、チョット大ゲサに言えばJVMがJimi Hendrixの使用機材の系譜に入ってくることを示しており、世が世ならJimiがステージで使っていたかもしれないのだ。
「Yeah, It's my JVM,  discovered in the purple haze!」なんてコピーといっしょにJimiがJVMの広告に登場しているのを想像すると楽しいね。

80v

足元のようす。

90

三宅さんがJVMを使うのを見るのがはじめてというワケではゼンゼンない。
以前もスゴイ音を出していたのだが、正直今回はチョット勝手が違っていたね。
なんというか、パスタをもっともいい状態のアルデンテで救い上げた感じ?イヤ、なんか違うな…。
とにかく一番おいしい部分を引っ張り出したってこと。
もちろんギターの音の良し悪しは70%指がキメるものだから、三宅さんと同じ音楽を聴いて、機材を同一にして、三宅さんの指と脳味噌を拝借しないと絶対に同じ音にはならない…だけど、参考までにセッティングを紹介しておこう。
150v
まず、チャンネルはCLEAN/CRUNCHのRed。歪まない方のチャンネルの一番歪むモードね。
チャンネル内のセッティング;
GAIN      5-
TREBLE        3.5
MIDDLE        8-
BASS           3.5
VOLUME       7.5

数字はフロントパネル上の目盛り。数字の後の「5-」は「5のチョット手前」という意味。三宅さんらしい。こういう人になるとこの「チョット」が大きな音の差となって表れるからだ。

続いてマスター・セクション。
PRESENCE      2
RESONANCE   3
MASTER 1      8-
REVERB          0

キャビネットは「V」キャビ、つまりVintage30が入っているBaseタイプがお好みで、三宅さんによれば、それが用意されていればPRESENCEとRESONANCEは「0」になっていただろうということだ。
そして、三宅さんがアンプのセッティングと同じぐらい気を配っているのはマイクの狙い位置。マイクのセッティングは絶対に人には任せないという。

185
久しぶりにドップリと機材のことを書いたな…。
私は古い人間で、世の中にこんなに機材の種類がない頃にもっともギターに夢中になっていたので、やたらとゴチャゴチャ色々なものをひっつなぐのには少なからず抵抗があって、「音は指で作るもの」を是としている。
ま、それでも商売のこともあるし、釣りやゴルフと一緒でとっかえひっかえ、ああでもないこうでもないと機材をイジくるのは楽しいことも分かっているつもり。
ところが、先日の鮎川さんや、この三宅さんのシンプルなセッティングからこんなにいい音が出てくるところを見てしまうと、やはりシンプルな機材の方が圧倒的に優位だということを確信せざるを得ないのだ。

今回これだけ書き込んだのは、とにかく問答無用で三宅さんの音が素晴らしかったこと。そして、「機材大好き派」の皆さんにこのセッティングでJVMを試してもらいたかったからなのだ。

240v

ベースは山本征史

50vドラムは金光健司。

60v征史さんもいつものMarshallだ。

1001977年製の1992 Super Bass。
三宅さんのJVMとの年齢差は40歳近い。それらが一体になってひとつの音楽を作るのだからおもしろい。
足が4本付いた真空管の入ったブラウン管式のテレビと最新式の薄型液晶デジタルテレビの両方でひとつのテレビ番組を見ているのと同じことだ。
それができるのは、手前味噌ながらMarshallはブレていないということだ。または、進歩がないということか?

110vすさまじい熱量で三宅ミュージックをドラマチックに演出するKK。

120vNATALのメイプル。フィニッシュはシー・スパークル。
NATALは日本では完全にゼロからスタートしたが、このロゴもスッカリおなじみになってきた!みなさんありがとうございます!
ジャンジャン広めちゃってください~!

1301曲目は「Stratify」。

140v

Strange, Beautiful & Loudの1枚目『Lotus and Visseral Songs』のオープナー。この曲のイントロが聞えるといかにも「オー!始まるぞ!」という感じがする。

160「Stratify」もいいけど「Marshalize」とか「Marshallogy」って曲を早くこの3人で演奏してくれないかナァ。「Marshallification」でもいいや。

1702曲目は2作目の『Orchestral Supreme』収録の「mani」。SB&L流へヴィ・ワルツ。

180vコレが2作目の『Orchestral Supreme』。
今時、精神性を疑いたくなるような硬派な音世界。もちろん、我々にはコレが普通の世界。
MarshallとNATALサウンドがふんだんに盛り込まれているので安心してお召しあがりくだされ。

T_cd カッコいい「Ring」。ったくもう、この曲のリフときたら!
ん?改めて聴いてみると、このリフ、クロマチックの音移動にワザワザ開放弦を使ってる。カントリーの人がよく使うテクニックね。
ちょっと複雑で、コピーしているととても時間がなくなってしまうから三宅さんにこのことを確認してみた。
するとヤッパリ!
そんなものでは収まりきらない大きなトリックがこのリフには仕組まれていたんですよ。
先人が作り出した偉大なロックの遺産への、三宅さんさらではのトリビュート…とでも言おうか。
バッハじゃないけれど、こういう音のダマシ絵みたいなのは大好き。
ギタリストの皆さん、ぜひコピーしてアナリゼしてみてくだされ。

190vそのギター・リフだけでなく、この曲は見所満載だ。何といってもコロコロと変化する曲の展開と、それに呼応する3人のスリリングなアンサンブルが素晴らしい。

200人気曲、「murt 'n akush」。

210vKKのフィルに導かれるエキゾチックなリフとそれに続くテーマがすこぶるカッコいい。

220v6曲目は「Petal」。
征史さんのMarshallから発されるトーンがまた一段と素晴らしかった。

230v時に文楽のように折り目正しく、時に志ん生のように臨機応変に三宅さんの音楽と向かい合う姿勢は長年の付き合いこそがなせるワザだろう。

260v
シレっとア・カペラで弾き出したのはJimiの「Angel」。
「Jimi Hendrix追悼」といってもJimiの曲をやらないのが三宅流。さっきも書いた通りサウンドといい、精神といい、別の形で一年中追悼しているから。でもここはチョットだけ。

250
つなげてファースト・アルバムから「Solitary Past」。

L_img_0035
7曲目の「If」は『Orchestral Supreme』のオープナー。コレも何かが始まりそうな予感を与えてくれる三宅テイスト爆発の曲だ。
ハードなコーラスから美しいサビに入るところはいつ聴いても感動的だ。

M_img_0061 バッツンバッツンと剛速球をど真ん中に投げまくる大リーグ投手のようなドラミング。

270v
パワフルなだけでない緩急自在なプレイは、自身も達者なギタリストであることもあり、三宅さんの音楽を理解しきっているのだろう。
またNATALの音がシックリくるんだ!

235v本編の最後は「Virtue」。

280vもう数えきれないぐらいSB&Lのステージを観てきたが、今回はアタマひとつ抜け出た感がある迫真のパフォーマンスだった。
ギターのサウンドの進化がそうさせたこともあるのかもしれないが、やはり「Jimi追悼」というシチュエーションがマジックを生み出したに違いない。

290

アンコールは『Sound Experience』名物のゲスト・コーナー。

300今回は盟友、岡垣"JILL"正志を招いての演奏。
「以前からこの会場で岡垣さんと演奏したいと思っていた」という三宅さん。絶好のシチュエーションで願いがかなった。

310vまた選曲がエグイ。Deep Purple…といっても「Smoke」や「Burn」ではない。三宅さんが自分のバンドでそういうのを演るワケがない。

315選ばれたのは、「And the Address」から「Space Truckin'」の後半の最後まで聴いた記憶がほとんどないところ(ノンちゃん、ゴメン!)。
340v
子供の頃ってDeep Purpleといえば『In Rock』とか『Macine head』とか『Burn』でしょ?
ファーストとか『タリエシン』とか買う人なんていないと思ってんたんよ!
『ロイヤル・フィルハーモニック』はチョット聴いて結構好きだった。でもこれがLenard Bernsteinのマネっこだったって最近気が付いた。
タイトルも同じなの。Deep Purpleは『Concerto for Group and Orchestra』。Bernsteinのは『Dialogues for Jazz Combo and Orchestra』という。
バンドが出てくるところなんかイメージそっくり。
ジャズの方は「Take Five」で有名なDave Brubeckのコンボが参加していて、鳥肌モノのカッコよさです。

320vこちら「Space Truckin'」も『Live in Japan』に負けないぐらいの混沌ぶり!

330

コレでいいのだ!

356

三宅さんが歌うところの「Little Wing」。
これこそJimiトリビュート!と言いたいところだが、三宅さんはよくこの曲を取り上げるので特別な選曲ではない。

360vここでも岡垣さんのオルガンがメランコリックに大活躍。

350v
最後2曲は三宅さんの曲を持ってきた。セカンドから「hymn」と「Bloom」。
以前三宅さんとCharlie Parkerの話をしたことがあったが、Birdにも「The Hymn」というブルースがあったのを今思い出した(『Dial Sessions』)。

390v岡垣さんはオルガンで実際にこの「hymn」のレコーディングに参加している。
これがまた実にいい感じで、三宅さんの曲は第三の血が入るとまた違う表情を見せるところが面白い。

355
冒頭で触れたように、Jimiは追悼コンサートの類を開催される機会が多いと思うのだが、これは彼が偉大なギターのイノベーターであったからというだけの理由ではなかろう。
優れたシンガーでもあり、なんといってもロック史に残る名曲、いわゆるスタンダードをたくさん作ったからなのだと思う。
そのJimiの作品を1曲とチョットだけ演奏して追悼の意を表したところにJimi Hendrixの魂を受け継いだものの自身の表れを見た。

それにしても、「世界の終り」が来る前に一人でも多くの人にこのギターの音を聴かせたい…。

三宅庸介の詳しい情報はコチラ⇒Yosuke Miyake's Strange, beautiful & Loud

400NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)

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(一部敬称略 2014年9月18日 三軒茶屋Grapefruit Moonにて撮影)