高梨康治 -CureMetalNite vol.1- <後編>
さて、『CureMetalNite vol.1』の後半。
私のアニメといったら「鉄腕アトム」から始まって、「オバケのQ太郎」、「ワンダー3」「魔法使いサリー」、「巨人の星」、「あしたのジョー」、「ゲゲゲの鬼太郎」、「タイガーマスク」、「狼少年ケン」、「チキチキマシン」、「ひみつのアッコちゃん」…アニメじゃないけど「怪奇大作戦」だの「キャプテンウルトラ」だの「河童の三平」だの…それに「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、「変身忍者嵐」、「スペクトルマン」、「ミラーマン」、「バロムワン」等のヒーローもの…全部リアルタイムで見てるのよ。
コレ、ロックだったら大変だよ。The Beatles、Led Zeppelin、Deep Purple、Beck Bogart&Appice、Free、Pink Floyd、Grand Funk Railroad、ELP、Jethro Tull…こういうのの全盛期を全部ナマで見てるようなもんだからね。
でも、ロックはチョット遅かったんだよ。もう5~6年早く生まれていたら全部観てたな。
そのかわりアニメに関しては最初の黄金時代のいい時を過ごさせてもらったと思ってる。
「ド根性ガエル」面白かったな~…どうしてるかな~、ヒロシとか、京子ちゃんとか、梅さんとか…ナンテね。
今はもうまったく見ないよ。
だから当然この『CureMetalNite』もなんの予備知識もなく接したワケ。それなのに、バラエティに富んだ曲がジャンジャン出て来てまったく飽きさせられる気配なし。
アッという間に後半になっちゃったよ!「宿命の戦士」~「プリキュア・ビートアップ!」~「プリキュア!オープン・マイハート!」と続く。
後半といえどもテンションが全く落ちない鉄壁のパフォーマンス!
私は昔からヴァイオリンが参加しているジャズやロックが好きでしてね、渡辺さんの参加はうれしいな。
「いよいよ御大の登場!」という感じで一段と大きな歓声が巻き起った。将棋でいえば「入玉」か?この日のハイライトのひとつと言えよう。
「ドラゴンフォース」~「ログ・ホライズンメインテーマ 2014 ver.」などを披露。
ここでまた場面が変わる。
メンバーが続々とステージから姿を消し、残るは打楽器チームの2人。
PAスピーカーから流れるはチャイコフスキーの『大序曲1812年』!そうです、HR/HMファンにはおなじみのアレです。
アレを和太鼓とドラムでやっちゃおうというワケ。うまいこと考えたな!
死力を尽くして、数々の和太鼓を叩き倒す姿は圧巻!この腕だもん!
迎え撃つPONさん。四肢を思う存分駆使してくり広げる超絶ドラミング!PONさんのドラム、ホント派手で好きだわ~。
もう1曲続けて演奏されたのは「疾風伝」。
ところで、この打楽器アンサンブル。印象深い演奏として渡辺香津美さんの『KYLYN LIVE』の村上秀一さんとペッカーさんの共演が挙げられよう。そちらはドラムとパーカッションの組み合わせだが、手に汗握るスリリングな演奏は何人も否定し得ない名演だと思う。
今回のこのシーンもそれに勝るとも劣らない激演だった。アレレ、偶然ドラマーはふたりとも「PON」だ!
エエイ、また見せちゃえ!
これがPONさんのドラム・キット。NATAL(ナタール)といいいます。
元は1965年創業のイギリスのパーカッション・ブランド。
数年前にMarshallが買収してドラム・キットのビジネスを展開しているが、これが大変好評で世界中のドラム界に浸透してきている。
日本でもMarshall Blogではスッカリおなじみだが、たくさんのプロ・ドラマーから高い評価を頂戴しています。ありがとうございます。
まだまだ続く濃密な演奏。
「プリキュア・スマイルチャージ!」…
「プリキュア・ハートキャッチオーケストラ!」。
なるほどね、このコンサートは下準備が大変なハズだわ。キメも多いし、曲数も多い。コード譜さらって、ハイ後は本番よろしくね~…なんてワケには絶対いかないわ。
先回も触れたが、このコンサートは当初この日一日だけの公演のハズだったが、あまりにも人気が高いために前日に追加公演が催された。
そんなバックグラウンドだったにもかかわらず、「まったく同じ曲を演奏するのは気が引ける」…と高梨さんが気を利かして、当日の朝、Remiさんにムチャぶりしてお願いした…というのが次の曲。
高梨さんのキーボードをバックにオペラチックな美しい声で独唱を披露してくれた。
ホント、色んなことやるわ~。
バンド・パフォーマンス、ソロ・パフォーマンス…種々入り乱れての構成はYesみたいじゃんね。
「プリキュア大好き!」…庄太郎ちゃんのフレンドリーなMCも。
本編もいよいよクライマックスを迎え、一丸となったメンバーの激演は一層の凄みを増した。
「堪忍袋の緒がきれました!」~「明日への戦い」
庄太郎ちゃんの必殺技、ファイヤー・フィンガーボード(仮称)!うまく撮れた!
本編最後は「最速キュアメタル」といわれる「プリキュアオールスターズ大活躍!」。
全員が汗みどろの熱演だ~!
高梨さんのキーボードに少しでも触れんと熱狂する最前列の観客。コンサートの盛り上がりようがわかるというものだろう。
こうして興奮のうちに本編が終了した。
さらに「PRIDE」。コレで終了。みんなで記念撮影。
しかし!アンコールがまったく鳴りやまない。
…ということで、この日はダブル・アンコールが実現。オープニングに演奏した「燦然!プリキュアオールスターズ」が追加で演奏された。
あらかじめわかっちゃいたけど、やっぱりへヴィで重厚なサウンドにすっかり夢中になってしまった。
そして、このコンサートの熱狂の中で改めて再確認したのは、「ロック」という音楽の在り方が従来とまったく変わってしまったという事実。ま、コレもいつも書いているんだけどサ。
アニメ、ゲーム、動画投稿サイト等をなくしては軽音楽はまったく成り立たなくなってしまったということだ。
音楽が魅力を失ったのか、アニメやゲームの力が強くなったのか…。きっとその両方なのだろう。
とりわけ昔「ロック」と呼ばれていた硬派でエネルギッシュな音楽はもはや単体では存立しにくくなってしまい、その中心をアニメとゲームに移した。
「イヤイヤ、ドームなんかで大きなロック・コンサートが開催されて満員になっているじゃないか?」とおっしゃる方もいるだろう。
アレはロックではなくて、昔の歌謡曲がバンドの形態に変わっただけの話し。各地でにぎわいを見せているロック・フェスティバルにしても、音楽よりもフェスのブランドを楽しむことが優先されているように見える。もちろんコレは間違いではないが…。
加えて、ロックの分野はもはや女性プレイヤーを除いては成立しなくなった。特にハード&へヴィ・メタルの分野。功罪はあれど、音楽学校の普及によるものだろう。「男がすなる日記を」…なんて『土佐日記』のようなことは完全に言わなくなった。
女性は勇ましく鋼鉄の肉食獣と化し、数少ないテレビの音楽番組に出演しているような男の子のバンドはますます女性化が進んでおしとやかになり、かつ草食化しているというのが現状だろう。
ホント、最近のガール・バンドは問答無用でカッコよく、そして頼もしい。
ちなみに、優秀なガール・バンドが多いのは、今日では日本のロック・シーンの大きな特徴になっている。ロックの本場であるイギリスでもこうした現象を見ることはできない。
それでは、今日このコンサートに集まっている若者たちからアニメを取り払い音楽だけを残したらどうなるか?この素晴らしいメンバーが演奏した音楽は見紛うことのない良質なハード・ロックあるいはへヴィ・メタルである。
こうした音楽がアニメの中であろうとなかろうと元気に演奏され、かつ支持されているのはとてもうれしいことなのだが、若者たちは果たして音だけでこのスタイルの音楽を楽しむことができるのだろうか?
音楽だけで今日のコンサートを楽しんだ私には皆目見当がつかないが、若者のみんなも楽しんでくれることを大いに期待したい。
そして、カッコいいと思ったら、この音楽をクリエイトした高梨さんが憧れたリッチー・ブタックモアというギタリストが所属したディープ・パープルというバンドの音楽に興味を持って、そして聴いてもらいたい。
高梨さんもそう願っていると確信している。
時代は変わった…。
「いいロック」は永遠に不変であり不滅だ。ただ「ロックの在り方」が変わっただけなのだ。
本当に充実した内容の素晴らしいショウだった。
いまでも大熱狂の会場の様子がまぶたに焼き付いている。『vol.2』の開催を期待している。
高梨康治の詳しい情報はコチラ⇒ROCKMAN
NATALの詳しい情報はコチラ⇒NATAL Drums Official Web Site(英語版)
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(一部敬称略 2014年8月24日 表参道GROUNDにて撮影)