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2014年5月 9日 (金)

ジャパニーズ・プログレッシヴ・ロック・フェス 2014

これは間違いなく素晴らしい企画だった…『ジャパニーズ・プログレッシヴ・ロック・フェス 2014』。
「日本で開催される「プログレッシヴ・ロックのお祭り」ではなく、「日本人がクリエイトするプログレッシヴ・ロックのお祭り」と、『ジャパン・プログレッシヴ~』と区別しているところがうれしい。

日本は『クリムゾン・キングの宮殿』が世界で一番売れる国と聞いている。本場イギリスのバンドのみならず、イタリアをはじめとするヨーロッパ諸国のプログレッシブ・ロックも流通する世界でもまれに見るプログレッシブ・ロック大国なのだ。
どこの国とロックの話しをしてもここまでていねいにプログレッシブ・ロックを聴きこんでいる国はない。これまたプログレが盛んなイタリアの人と話をしても、PFMやAreaはよく知っているけど、Arti e MesteriやQuella Vecchia Locandaは知らない…なんてことがあった。
日本の熱心なプログレ・ファンで『tilt』を聴いたことのない人はまずいまい。

そんなプログレ好きが集まる国の自国のバンドのお祭りだ、ウケないワケがない。
会場は当然の満員御礼。

出演は、新月、ムーン・ダンサー、ステラ・リー・ジョーンズ、ユカ&クロノシップ、ゲスト扱いで難波弘之&センス・オブ・ワンダー。そしてNOVELA 2014。
MarshallとNATALということでNOVELA 2014の取材に入り込ませて頂いた。

10vNOVELA 2014のスタッフTシャツ。
高校の時、クラスメイトの飯島君がNOVELAのデビュー・アルバム『魅惑劇』を学校に持って来てサ…1980年のリリースか…。あれから34年も経ったのか!

20_2まさか今になってスタッフTシャツを着せてもらえるなんて夢にも思わなかったな~。

30_2会場となったCLUB CITTAのステージ脇の廊下のようす。
もう機材だらけ!
難波さん曰く「今日はアナログ楽器の品評会みたいだね!」
まさにその通り。これでいいのだ!昔はどこでもこうだった。

40_2我がNOVELA 2014の関連機材は日下部"Burny"正則のMarshall。

50v_4現行の1987Xと70年代の1960A。
Burnyといえばレス・ポールのイメージが圧倒的に強いが、ちょっと前は335ブームだった。今はそれも過ぎSGにご執心なのだそうだ。

60v_2Burnyはもうずいぶん長いことこのキャビを使っている。
また、ヘッドはJCM800 2210というイメージが強いが、最近は1987Xだ。
2210にしてもレスポールにしても「~といったらギターは○○○○、アンプは△△△△」という定番イメージを作ることは大切だね。カッコいいわ。
その△のところにMarshallが入るケースが多いのはとても光栄なことだし、とても誇りに思っている。
しか~し、ことプログレになると△に「M」の字が入らないことが多いんだな~。CrimsonやらFloydの影響もあるんだろうな。「適材適所」は大切なことなので、無理は言わないが、プログレッシヴ・ロック好きとしてはくやしい…。
だから今日はうれしい!ありがとうBurny!!

70v_3足元のようす。なんかメッチャ男っぽいな~。80_2そしてドラムはNATAL。

90叩き手は山口PON昌人。

100_212"&13"タム、14"&16"フロア、22"バスというコンフィギュレーション。フィニッシュはシルバー・スパークル。マニキュアにしてもいい感じの色!
スローンとペダルもNATALだ。

110_2さぁ、NOVELA 2014、イザ出陣!

120NOVELA 2014はこの日、トリでの登場。

130_3みんなこの日を長い間待っていたのであろう、モノスゴイ歓声だ。

140_2五十嵐"Angie"久勝

143v永川敏郎
以上の2人がオリジナル・メンバー。
150サポートとして参加したのはギター、日下部"Burny"正則

145vベース、寺沢功一

160v_2そしてドラムが山口"PON"昌人という泣く子もうれしいオールスター・メンバー。

170v正直に言うと、私は現役時代にNOVELA夢中になったクチではなかった。
いつも書いているように、プログレッシヴ・ロックは大好きですよ。でも残念ながらNOVELAは聴かなかった。したがって本項にて曲について述べることは自粛する。…というかできない。
しかし、それだけに今回の素晴らしいステージは感動の連続で、現役時代にも押さえておけばヨカッタと後悔した。

180v_2写真撮影のためにいつも通り客席の最前列とステージの間に入り込ませて頂いた。つまりステージを見つめるお客さんの顔がよく見えるのだ。
お客さんは皆私ぐらいの年齢で、「若い」とお世辞を言うとかえってイヤミに聴こえるかもしれないレベルの方々だ。ひとことで言えばオッサンばっかり。
そのオッサン達が実に…実にいい顔なのですよ!もう今自分の目の前で起こっていることが夢でもあるかのようなウットリとした視線!
それを見ているだけでも幸せな気分になってしまった。

190_3「Don't Stop」で幕を開けたステージは王道ナンバーではなく、ファンの方に言わせればどちらかというと意外なチョイスだったらしい。
210v_2しかし、曲を知らない私にとってはどれもコレも新鮮でホント楽しめたな。
それといつもとチョット雰囲気の違う曲を演奏するてらちんやBURNYやPONさんを見るのも面白かった。
もちろん日本のロック界を代表する名手のたちのこと、どんな曲を演ろうとも演奏の密度は生半可なものではなかった。

220v「落ち着くわ~」…Burnyのギターの音。そう我々は屋根裏やロフトでこういうMarshallの音を聴いて育ったんだよね。
経験したことはないけど、気持ち的にはお母さんのお腹の中に戻ったようなとてつもない安堵を感じる。
もちろんBurnyはクチにはしないけど、「あのね、ロック・ギターってこういう風に弾くものなんだよ」と言っているかのようなプレイ。なんというか「ロック・ギターの文法」と「ロック・ギターの体育」のテストがあったらBurnyは間違いなく満点を取れる。
200v情熱的なソロ!
Burnyもいい加減ロックに詳しくて、いつも言っている「いいプレイヤーはいいリスナーたれ」の手本のような人だ。
そんなもんだから我々が寄ると触ると、そばにいる人がイヤ~な顔をするようなマイナーなロング・バンドの話しになるんだけど…

250v_2…Burnyも私も知っている限り、これほどガッツがあっりエモーショナルなギターなソロを聴かせるプログレ・バンドは世界に他にふたつとあるまい。
この日は待ち時間が異常に長く(メンバーさんは入りから撤収まで15時間ぐらい会場にいらっしゃったんじゃないかしらん?)、ロック話しだけでなく、Marshall話し、昔話までずいぶん色んなことをおしゃべりしてすごく楽しかったナ。。
240_2そして、これまたエモーショナルなドラム!

230_2PONさんの鋭くパワフルなショットがアッシュの特徴的なサウンドを引き出す。
ビシーン!バシーン!と恐ろしくヌケのよいトーンがバンド・サウンドを感動的に演出するのだ。
270vこうして見るとPONさん、アリス・クーパーみたいだな…。

260_3感極まってのクライマックス!
PONさんのドラミングはいつだってドラマチックだ。そして、NATALがそれをガッチリとサポートする!

280やっぱり圧巻だったAngieさん。
Angieさんは難波さんのNUOVO IMMIGRATOで過去に何度か拝見しているが、この日も伸びやかな声でNOVELAの世界を再現してあまりある迫力があった…というかむしろ感動的でもあった。

290トータル6時間を悠に超す長大コンサート。いくらイス席とはいえ大変だぜ~、これだけプログレ聴いてるの。にもかかわらず最後は観客全員がスタンディング・オベーション。
NOVELA 2014の5人は割れんばかりの拍手に満面の笑みで応えた。

300先に私はプログレッシヴ・ロックが大好きと書いた。ロックのジャンルの中では正直一番好き。
で、最近そのプログレッシヴ・ロックで考えていることがある。

それはロック史を俯瞰するに、ロックがそのクリエイティヴィティやオリジナリティを保持し得ていたのはプログレッシヴ・ロックの全盛期までだったとということだ。
「ロックは1969年で終わった」という説は、もう3年ぐらい延ばして、是非プログレッシブロックの終焉までを包含して欲しいという立場を私は採る。
バンド単位で言うと、ナゼかYesにそのトドメを感じている(ヒイキとかいうことではないですよ、個人的にはKing Crimsonの方が全然好き)。
音楽性、演奏技術、さらに普遍性の高さも考慮した時、ロック史の終幕を飾った「ここまでやっちゃ~おしまいよ」的作品は『Close to the Edge』ではないかと感じるのだ。これが1972年。

イギリスのプログレッシヴ・ロックが衰退した時点でロックの歴史はひとまず幕を下ろし、その後は順列組み合わせでナントカ息継ぎして来た…というのが私の見方。
新しくなったのは音楽商品を制作するためのテクノロジーだけで、パンク、ニュー・ウェイヴ、テクノ、ハウス、ラップ、ナントカメタル…色んなものが出て来たが、音楽的に新しいものは何ひとつ生まれていないのではないですか?すべて誰かが以前に手掛けている。
もっとも、その時代のロックも、「今ロックがやっていることはオレがもう20年前にやっていたことだ」と1970年の最初の方でCharles Mingusにやられている。
なるほどMingusの『Pithecanthropus Erectus(『直立猿人』、1956)』も『The Clown (1957)』も曲によっては至極ロック的だ。

今から16年前、70年代に活躍したあるイギリス人ギタリストと話をした。こっちは当時何もイギリスの生の情報なんてなかったもんだから、「イギリスは今でもプログレッシヴ・ロックは盛んなんですか?」なんて訊いてしまった。
彼は「もしかしてプロッグ・ロックの事を言っているのか?そんなもんを聴いているヤツは今のUKにはひとりもいないよ!」と言われ大きなショックを受けたことがあった。

私は産業革命並みのイギリス人の発明が「プログレッシヴ・ロック」だと思っていて、それはイギリス以外のヨーロッパ諸国の人にも、アメリカ人にも、日本人にも真似することのできない独特のものだ。
大英帝国然とした、暗く、バカバカしいまでに大仰な世界はイギリスの歴史やあの風土、さらにマズイ食べ物をすべて吸収した結果編み出された音楽がプログレッシヴ・ロックなのだ。
その誇り高きプログレッシヴ・ロックが本場で絶滅に等しい状態にあることは実に嘆かわしい。

それだけに地球の裏側でこのようなフェスティバルが開催されることに快哉の声を上げたいのである。(シャレではありません)
ただ、オールドファンのための懐古イベントに終わらず、こうした企画こそ若い人に観て欲しいと思う。
今の若い子は「プログレッシヴ・ロック」という言葉すら知らないのが当たり前だ。もしかしたレコード会社の若い人も知らないないのではなかろうか?
ファンとして復興を祈るばかりである。

最後に、この素晴らしいイベントに楽器スタッフとして参加できたことをとてもうれしく思っている。

310NATALドラムは高田馬場バズーカスタジオでお試しになれます。バーチ、メイプル、そしてアッシュのキットの他、各種スネアドラムも用意しています。
おかげさまでNATALが設置されている部屋のご指定もたくさん頂き、ますます高い評価を頂戴ております。
詳しくはコチラ⇒バズーカスタジオ公式ウェブサイト

(一部敬称略 2014年3月30日 CLUB CITTAにて撮影)